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京都市消防局

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平成29年1月号 企画課News!

ページ番号212804

2017年1月8日



    日本国憲法(以下「憲法」という。)は,国家と国民の関係を規律した国の最高法規です。また,憲法は,国民の権利や自由を確保すること(個人の尊重)を基本原理として,国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の3原則を中心とした構成となっています。

1  国民主権

    国民主権とは,国家の政治的意思を国民が決定することをいいます。憲法前文に,「ここに主権が国民に存することを宣言し・・・国政は国民の厳粛な信託によるものであって,その権威は国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する。」と規定されています。これを基に,日本では,代表民主制として,国家の政治的意思については,国民の代表者が意思決定をしています。

2  基本的人権の尊重

    基本的人権とは,人が生まれながらにして享有する普遍的権利のことをいいます。具体的には,平等権(差別されない権利),自由権(自由に生きる権利),社会権(人間らしい生活を営むことを要求する権利),参政権(政治に参加する権利),受益権(国に対して一定の行為を請求する権利)があり,憲法に規定されていない権利であっても,自由権の解釈によって,「新しい人権」として認められることがあります。代表的な新しい人権として,プライバシー権や自己決定権などがあります。

3  平和主義

    平和主義とは,憲法前文に規定されている「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意すること」,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」などの部分を宣明したものです。また,憲法第9条(戦争の放棄,戦力及び交戦権の否認)が,その理念を具体化したものであるとして,内閣法制局が見解を述べています。


    これまで述べてきた憲法の原則,とりわけ国民(市民)の人権については,「侵すことのできない永久の権利」(憲法第11条)とされていますが,全く無制約のものではなく,場合によっては他者の利益を守るため,公共の福祉による制約を受けます。

    例えば,消防の任務における人権制約を示す一例として,消防法を根拠とした消火活動上の緊急措置(消防法第29条)における消防対象物の使用,処分又は使用の制限が挙げられます。消防吏員は,延焼の防止又は人命救助のために必要がある場合は,市民の財産に対する緊急措置権が与えられています。

    しかし,憲法上,財産権については,次のように規定されています。


   つまり,憲法上,市民の財産権を侵すことはできませんが,公共の福祉に適合する範囲(相手に義務を課す時間がないときや,義務を課しても効果がないときなど)の権限行使については,消防法(個別の法律)において一部権利の制約が認められると解されます。

   消防の緊急措置権については,消防が持つ権限の中でも,特に市民の財産権に与える影響が大きいため,権限の行使に当たっては,決して濫用にならないよう注意を払う必要があります。

   また,NBCテロ災害や武力攻撃災害など,国民を保護するための人権制約が,あらかじめ想定されている災害については,「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」において,次のように「基本的人権の尊重」をはっきりと明示しています。


   つまり,武力攻撃事態等によって国民生活等に影響を及ぼす場合において,行政機関が,国民(市民)の権利や自由を制限したり,義務を課す指示,命令等の措置を実施したりする場合は,「公正・適正な手続きの下」で,「国民の自由と権利を尊重」した「必要最小限」とする責務を有しています。

    これは,同法律と人権制約の関係性について,あえて明示したものであり,この基本理念が,消防関係法令を含む全ての法令に当てはまることは言うまでもありません。

    以上のように,消防職員は,緊急時において,公権力を行使し,市民の自由や権利を制限する立場にあることから,特に市民の人権を考慮する必要があると考えます。

     したがって,憲法の基本原理をしっかりと認識したうえで,消防の業務を遂行することが重要です。

  • 目次

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京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195