平成28年12月号 予防タイムズ・リターンズ
ページ番号207754
2016年12月1日
後輩:先輩!危険物施設について教えてほしいのですが。
先輩:君は初めて危険物担当となったんだね。一体,何が分からないんだ?
後輩:先ほど危険物施設を保有している事業所の方が相談に来られて,先輩は「消火設備は,消防法
(以下「法」という。)第10条に基づいて設置される。」と指導していたのですが,法第17条の間違い
じゃないですか?
先輩:なんだ,そのことか。よし,危険物施設の位置,構造及び設備について分かりやすく説明してやろ
う。
後輩:いえ,消火設備について聞きたいのですが・・・。
先輩:まず,危険物施設の位置,構造及び設備については,法第10条第4項に定められているんだ。条
文を読んでみなさい。
後輩:「製造所,貯蔵所及び取扱所の位置,構造及び設備の技術上の基準は,政令でこれを定め
る。」と記載されています。
先輩:そうだな。知っていると思うけど,指定数量以上の危険物を貯蔵し,又は取り扱う場合には,許可
が必要になる。当然のことだが,危険物施設において許可を受けるには,この法第10条第4項で定
められた技術上の基準を満たしたものでなければならないんだ。
後輩:はい,以前先輩に教わりました。では,技術上の基準というものはどのようなものなんですか。
先輩:具体的にはあとで説明するので,まず法令のどこに定められているかを見ておこうか。技術上の
基準を定めている政令というのは,危険物の規制に関する政令(以下「危政令」という。)の第3章の
製造所等の位置,構造及び設備の基準の部分を指すんだ。その中で製造所,貯蔵所,取扱所の
各施設の区分によって,危政令第9条から第19条に,施設ごとの位置,構造及び設備の基準が定
められているわけだ。
後輩:そうか。例えば,製造所でしたら危政令第9条の基準を満たしていれば,許可を受ける要件を満た
した施設となるわけですね。
先輩:そうだ。と言いたいところだが,それだけでは不十分だ。
施設ごとの位置,構造及び設備の基準は危政令第9条から第19条によって定められているわけだ
が,危政令第20条から第23条においての基準も満たさなければならない。このうち危政令第20条か
ら第22条は,消火設備,警報設備及び避難設備の基準が定められているんだ。ちなみに,危政令第23条は位置,構造
及び設備の基準の特例について定められている。
話を戻すと,つまり,危険物施設における消火設備の基準は,法第10条第4項によって定められてい
ることになる。
後輩:そうだったんですね。
先輩:続いて製造所と一般取扱所の位置,構造及び設備の基準を説明しよう。
後輩:製造所は危険物を製造する施設,一般取扱所は給油取扱所,販売取扱所,移送取扱所以外の
取扱所ですね。
製造所の基準は危政令第9条,一般取扱所の基準は危政令第19条に定められていますが,どう
して製造所と一般取扱所の基準からなんですか。
先輩:製造所は,危政令で最初に基準が定められている危険物施設だ。そのため,他の危険物施設に
おいて,基準が準用されている項目が多いんだ。その例として,一般取扱所が挙げられる。
後輩:確かに,一般取扱所の基準の危政令第19条第1項には「第9条第1項の規定は,一般取扱所の位
置,構造及び設備の技術上の基準について準用する。」と定められています。
先輩:そうだ。つまり,危政令第19条第1項の一般取扱所の基準は,製造所の基準と同じということだ。
後輩:なるほど。それで,具体的にはどのような基準がありますか。
先輩:順番に見ていこう。まず,位置の基準の一つ目の保安距離だな。
保安距離は,危険物施設で事故が起きたときに,事故の被害が拡大するのを防止するためにとる水
平距離のことだ。また,保安距離が必要となる対象物には高圧ガス施設や特別高圧架空電線など
もあるが,これらについてはどちらかの施設で事故が起きたときに,その影響が他方に及ぶことを防
止するためなんだ。
後輩:なるほど!
先輩:続いて位置の基準の二つ目の保有空地だ。保有空地は危険物を取り扱う建築物又はその他の
工作物の周囲に空地を保有しなければならないものだ。どうしてか分かるかな。
後輩:延焼防止のためですよね。
先輩:それもあるが,消防活動に使用するための空地という意義もある。
後輩:なるほど!
後輩:ほかにはどんな基準がありますか。
先輩:よし,構造及び設備の基準についても説明しよう!
標識及び掲示板だな。危険物施設の所在を周知し,また施設の防火に関し必要な事項を掲示する
ことにより徹底を図るために必要だ。
続いて,建築物には地階を有することはできない。空気より重い可燃性蒸気等が流入し,滞留する
のを防止するためだ。
主要構造部は不燃材料としなければならず,窓及び出入口には防火設備が必要だ。また,延焼
のおそれのある外壁は,出入口以外の開口部を有しない耐火構造としなければならず,出入口を
設ける場合には,随時開けることができる自動閉鎖式の特定防火設備を設けなければならない。こ
れは,ほかの施設で発生した火災の影響を防ぐとともに,施設内で発生した火災の延焼拡大を防止
するためだ。
また,屋根は金属板などの軽量な不燃材料でふかなければならない。これは,火災が発生した
場合に,建築物内の圧力が急激に上昇するため,上方に放出させることにより,周囲への影響を最
小限に止めるためだ。
窓や出入口にガラスを用いる場合は,網入ガラスとしなければならない。これは,火災等の災害
により,ガラスが飛散することを防止するためだ。
後輩:ちょ,ちょっと待ってください。
先輩:まだまだあるぞ。
液状の危険物を取り扱う建築物の床は,危険物が浸透しない構造とするとともに,適当な傾斜を付
け,かつ,貯留設備が必要だ。危険物が流出したときに,流出範囲を局限化し,回収等の事後措置
を容易にするために必要だな。
さらに,採光,照明及び換気の設備も必要だ。事故を防止するために明るい場所で取り扱うこと
が必要だ。また,換気により,施設内の室温上昇を防ぐことも必要だな。
可燃性の蒸気等が滞留するおそれのある場合は,換気設備とは別に,可燃性蒸気等の排出設
備もいるな。可燃性蒸気等を屋外の高所に排出し,拡散することが目的だな。
指定数量が10倍以上だと避雷設備も必要だ。一定量の危険物を保有している場合に,落雷によ
り火災が発生した場合に甚大な被害が出るのを防ぐために定められている。
あとは,危険物を取り扱う設備,配管についての基準もあるな。
後輩:先輩,一気に言われても理解できません。
先輩:そうだな,下に分かりやすく図に示した。今説明した基準以外にもあるが,大まかにはこんなところだ。
後輩:先輩,今説明してもらった製造所と一般取扱所の基準について,分からないことがあるんですが。
先輩:なんだ言ってみろ。
後輩:自家発電設備を所有している一般取扱所に査察に行ったことがあるのですが,自家発電設備の
部屋が地下にあったんですが。先ほど地階は有することはできないって言いましたよね。これって,
基準に合っていないと思うのですが・・・。
先輩:おっ!いい質問だな。でも,それだけでは基準に合っていないとは言えないな。
後輩:どういうことですか?
先輩:まず,製造所及び一般取扱所の規制の範囲を考えてほしい。建築物内に製造所や一般取扱所を
設置するものにあっては,通常,建築物全体を規制範囲として見るんだ。
後輩:はい,それは聞いたことがあります。
先輩:ところが,一般取扱所では建築物の一部のみの規制を認めているんだ。危政令第19条第2項に,
位置,構造及び設備の基準の特例が定められている。
後輩:本当ですね。「次に掲げる一般取扱所のうち総務省令で定めるものについては,総務省令で,前
項に掲げる基準の特例を定めることができる。」と記載されています。でも,この特例と「地階を有し
ないものであること。」という規定にはどういう関係があるんですか?
先輩:この危政令19条第2項の基準の特例を適用するとき,建築物全体を規制対象とした危政令第9条の
規定の一部は適用しないということが定められている。
後輩:なるほど!つまり,一般取扱所の部分規制の規定には,「地階を有しないものであること。」の規
定は適用されないということなんですね。
先輩:そういうことだ。
「地階を有しないものであること。」の規定以外にも適用されない規定が定められているから確認す
ること!
後輩:はい,分かりました。
先輩:屋内貯蔵所など他の危険物施設にも,このような基準の特例が定められているものがあるが,そ
の説明は次回にしよう。
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