平成28年11月号 ザ☆消防
ページ番号206764
2016年11月1日


みなさんは「守・破・離」という言葉を耳にしたことがありますでしょうか?
ビジネス本やインターネット等でもよく引用されていますので,ご存じの方も多いとは思いますが,日本における師弟関係の一形態を示す言葉で,簡単に説明すると以下のような感じです。
守 師匠に言われたこと(型)を「守る」
破 言われたことを自分なりに解釈して(型)を「破る」
離 師匠の(型)から「離れ」自分の(型)を創る

わたしが消防士として勤務し出してから14年になりますが,その間,こちらから勝手に師と仰がせてもらっている方が何人かおられます。
「守・破・離」になぞらえて,その方々に言われたことは「守」ってきているつもりですが,なかなか,次の段階である「破」に到達できていないのが現状です。
ある方からは,災害現場活動において,そのとき選択している活動方針が行き詰まった際でも臨機応変に対応できるよう,常に「二の手,三の手」を考えておけと教えていただきました。
言うは易し,行うは難しで,現場活動においてこの教えを守ろうとしても,「一の手」すら決まらないときがあります。
例えば,最近,毎日のように発生している「玄関施錠の屋内急病」事案で,内部確認をする際の破壊の判断などは何回出動しても迷います。建物内に人がいるのは確実で緊急性があると判断し,ベランダの窓を小破壊して屋内進入したところ,高齢女性がベッドで寝ているだけだった…のような事案は,皆さんも経験しているかと思います。
そこで,どんな状況でも適切な一手を導き出せるように,災害現場だけでなく,日常生活や趣味に講じているときでも「二の手,三の手」を考えて行動するよう努力しているのですが,なかなか思いどおりにはいきません。

「守・破・離」の「守」の部分で,師匠の教えを守り続けようにも,教える側の人間と教えられる側の人間は,育った環境や時代が異なる人間ですので,完璧にコピーすることは不可能です。故に,教えられたことの本意を外れないように自分流にアレンジすることが必要ではないかと思います。
京都消防では近年の災害の発生状況や社会の変化に伴う警防態勢の見直しにより,水槽車の活用やそれによる部隊の車両の入れ替えを行ったり,救急需要の増加に対応するため救急隊のみの出張所が開設されるようになりました。
それでは,われわれ職員自身のスキルについてはどうでしょうか。
消防活動総合センターにおいて,より現場に近い形での訓練が可能になってはいるものの,先輩たちが経験してきたような災害現場自体が減少傾向にあり,現場活動における経験値の低下は否めません。このような現状を「守・破・離」に置き換えてみると,多くの現場を経験してきた先輩の(型)を破るには到底至っていないと思います。
しかし,炎上火災が多く発生していた時代を経験してきた先輩そのものになることもできません。必要なのは,今の京都消防を取り巻く環境に適したプロになることだと思います。



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