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京都市消防局

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平成28年6月号 ザ☆消防

ページ番号199466

2016年6月1日


 平成4年に消防学校の門をくぐってから,消防士生活も今年で24年目を迎えることになりました。大きなけが等もなく今日まで来られたのも,支えてくださった皆さんのお陰と感謝しております。

 さて,この24年の間に音楽隊や救急隊,消防隊で勤務させていただきましたが,その中で記憶に残っている現場を振り返ってみたいと思います。


 音楽隊では,各種防火運動等での啓発や「防火ふれあいコンサート」等で,たくさんの市民の皆さんの前で演奏をさせていただきました。その中で印象に残っているのは,ある年の春の火災予防運動での演奏です。

 その日は,午後に2つの老人ホームでの演奏があり,1回目の演奏後,早急に撤収し,2回目の老人ホームへすぐに移動する予定でした。1回目の演奏後,拍手をいただいて「さぁ,すぐに撤収!」というときに,最前列で聞いておられた高齢女性が,右手を差し出して近付いて来られました。「ありがとうございました。」と私も握手をさせていただいたのですが,握られた右手に左手も添えてこられました。そして,「亡くなった旦那にそっくりや。」と思い出話を始められました。急いでいるとはいえ,手を振りほどくわけにもいかず,話を聞いていると,目の前をほかの音楽隊員が2回目の演奏会場へ向け楽器を積み込んでいきます。しかし,私は楽器を持ったまま,右手を高齢女性にギュッと握られたままです。「どうしようかな…。」と困っていると,施設職員の方が「○○さん(高齢女性の名前)。音楽隊さんは次の演奏に行かれるのよ。手を放してあげてね。」と助け船を出してくださいました。少し寂しそうな顔をされましたが,私の右手は開放され,大急ぎでバスに乗り込んだ思い出があります。


 救急隊は2隊のみの勤務でしたが,色々な経験をさせていただきました。その中でも思い出深い現場の話です。

 ある現場に出動したときです。指令センターからの情報で,「市バス内で高齢女性が心肺停止」の現場でした。停車している市バス内に隊長が入っていくと,意識レベルは悪いものの呼吸も脈もある状況でした。隊長の指示ですぐに車内収容することになったのですが,一緒に女性の御主人が市バスに乗っておられたので,救急車へ同乗してもらいました。観察処置を実施しながら,隊長と救命士が御主人に,奥さんが倒れた状況や既往症,掛付け病院を聞こうとしたのですが,御主人からは「?」な返事が返ってくるばかりでした。そして,「あんたら,この前うちに来て妻を運んでくれたやんか。」という具合です。話では,以前に高齢女性は自宅でも同じように倒れ,救急搬送されたようなのです。私たちは初対面でしたので,もちろん違う救急隊の話なのですが,御主人には理解してもらえず,「なんで,同じことを聞くんや?」と思われたようです。「救急隊は状況等を聞きたい。」でも,「御主人は一度話した。」で,進展がみられません。

 そこで,私が御主人に話を聞くことにしました。「御主人。この前,奥さんを救急搬送させてもらったけど,私らたくさん出動してるので,そのときに聞いた話を忘れてしまったんです。こんな私にもう一度,話してやってもらえませんか?」とお願いしました。すると,御主人は少し怒りながらも,「仕方ないなぁ。若いんやし,しっかりせなアカンで。」と奥さんの倒れた状況や既往症,掛付け病院を教えてくれました。その後,無事に奥さんの掛付け病院が受入れ可能であったので,搬送できました。


 M消防署のN消防出張所に勤務していた頃の話です。

 冬の午前中,基準火災指令が掛かり,隊長以下4名で出動しました。現場は有名なお寺の西側付近で,南北に4軒続いた長屋の北端からの出火でした。私の隊が到着したときは南へ2軒目の家まで延焼しており,3軒目にも延焼拡大危険が迫っていました。指揮隊長から3軒目の延焼を止めるように指示がありました。玄関前に分岐管を置き,屋内通路にホース延長し,屋外階段を通り,2階ベランダから放水する体形を取りました。2階ベランダで隊長と副隊長が筒先を構え,私は分岐管を開放するべく,玄関前に戻りました。

 分岐管開放後,2階ベランダに戻ろうと屋内通路に入ったときです。私の隊が放水している2階ベランダの下階に既に延焼しており,屋内通路に放炎していました。「2階ベランダが焼け落ちてしまう。」と判断し,本部救助隊の同期生と2人で分岐2線放水体形を取り,1階に進入し,放水を開始しました。不思議な構造の建物で,1階で放水して火炎を一旦は抑え込むのですが,すぐに別の開口部から火炎が噴出してきます。濃煙の中,同期生と2人で踏み止まっていたのですが,分岐管を開放したまま帰ってこない私を隊長が探しに来ました。「何してるんや!」と怒鳴られたのですが,私が放水している場所を見て,驚かれました。今まで隊長が放水していた2階ベランダの下階で私が放水していたので,先ほどまで怒っておられた隊長が一転,「絶対に消せよ!」と言われました。

 鎮火後,図面作成のために計測をしているときに気が付きました。私の隊が放水していたベランダのある部分は,かなり雑に増築された部分だったのです。色々な所から火炎が噴出してきたのも,それが原因だったようです。

 様々な部署で,いろいろな経験をさせていただきました。消防士としてはまだ折り返し地点を通過したばかりですが,皆さんに教えていただいたことを心に刻み,これからも頑張っていきたいと思います。


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