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京都市消防局

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平成28年5月号 ザ☆救急

ページ番号197225

2016年5月2日


 「○○管内,火災受信中。」との指令センター無線。「ピーーーッ。」という出動指令信号。皆さん,好きですか,この音? 私はこの音を聞くだけで心臓がバクバク。一番聞きたくない音です。

 平成28年4月,右京消防署で,指揮隊長として,久々の現場です。最前線です。日々,冷や汗をかきながら,奮闘しています。縁があって「過去」,「若かりし頃」の記憶をたどる機会を得ました。

 平成7年に発生した阪神・淡路大震災,平成23年に発生した東日本大震災,そして平成28年の九州・熊本地方の大地震による大震災。私の消防人生の節目には,なぜか大きな大震災が発生し,その前後に幸か不幸か,私の人事異動が絡んでいます。阪神・淡路大震災が発生した年の4月には,今の防災危機管理室への異動・勤務,東日本大震災が発生した年の4月には,安全救急部市民安全課への異動・勤務,そして,九州・熊本地方の大地震による大震災が発生したこの4月には,右京消防署への異動・勤務。

 唯一,絡んでいないのは,平成17年4月に安全救急部救急課付けでの救急振興財団への出向でした。このときの主な任務は,全国から集まってきた救急隊員を救急救命士として育て,国家試験に合格させること。私の知識や経験をフルに生かし,伝え,共に勉強をする日々でした。思い出深いです。私が救急隊員になり,救急救命士を目指した理由は,ある出来事があったからです。そのある出来事について,今日は書きます。

 平成9年5月,現在の防災危機管理室,当時は防災対策室という名称でしたが,そこで,ひたすらパソコンに向かい,市役所や区役所の間を走り回る忙しい日々を送っていたある日のこと,私の携帯電話の着信音が鳴り,出ると妻の悲壮な声。「パパが倒れた。今,心臓マッサージをしてる。人工呼吸のやり方を教えて。」そして,遠くから救急車が近付いて来る音…。

 今,義理の父は82歳。かなり年老いましたが,何の後遺症もなく,元気に日々を過ごしています。

 そんな父の命を救ってくれたのは,妻の手による心臓マッサージと引き継いだ救急救命士(当時,お世話になった救急救命士は,今も消防局内で元気に勤務されています。)による迅速,的確な応急処置でした。その処置の中には,当時,医師と救急救命士にしか認められていなかったAED(自動体外式除細動器)による除細動がありました。救急隊の現場到着時,モニターに映る波形はVF(除細動適用波形),医師の指示により一回の除細動を実施後,波形は正常に戻ったそうです。しばらくして呼吸も回復し,病院収容,その後の医師の高度な処置もあり,倒れた翌日には意識が回復し,こともあろうか挿入されていた気管挿管チューブを自ら抜管するというおまけ付きでした。まさに絵に描いたような「救命の連鎖」。

 そして,私が救急救命士となり,救急隊長として活動を開始したある日の朝,出動したあるお宅の居間には,必死に夫を助けようと心臓マッサージを実施している奥さんの姿がありました。救急隊が積載しているAED波形はVF(除細動適用波形),医師の指示を受け除細動を一回,数秒後には正常な波形が現れ,しばらくして呼吸も回復し…。数箇月後,その御夫婦が元気に消防署を訪ねてこられました。聞けば,お二人とも学校の先生で,消防署が実施する応急手当の講習を,毎年,受けておられたとのことでした。 

 現在,救急救命士が行う特定行為は更に高度化し,広範囲にわたる処置を行っています。また,市内のあらゆる場所にAEDが設置され,市民の方の誰もがAEDによる除細動を実施することができるようになっています。しかし,最も大事なのはベーシックなCPR(心肺蘇生法)とその継続による救命の連鎖であると思います。一人でも多くの市民の皆さんに応急手当を学んでいただき,そして,毎年は無理でも,機会があれば,積極的に何回でも講習会に参加してください。大切な人,大切な家族を守るために。

 今の若い救急救命士や救急隊員には,「自分がこの人を助けた。」という思いではなく,「自分はこの人の生きたいという気持ちをサポートしただけ…。」との思いで,救急の現場活動を実施してほしいと願っています。

 救急件数は増加の一途をたどっています。「ただひたすらに」という表現が過言ではない程の出動件数ですが,119番通報し,救護を求めてこられる方は各々一件です。救急隊員としての役割・役目をしっかり認識し,日々の救急業務を遂行してほしいと願っています。

 さあ,今日は当務です。一日が始まります。「災害のない安心・安全都市 京都」でありますように!!そして,ひとたび災害が発生した場合の迅速・適格な活動を実施するための備えとして,車両点検開始です。

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電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195