平成28年4月号 予防タイムズ・リターンズ
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2016年4月1日

平成24年度から26年度まで,機関誌「京都消防」に掲載していた「予防タイムズPART3」。予防業務の経験が少なくても理解しやすいということで,非常に好評だった新人消防士とベテラン司令補の対話形式での記事が,この度,「Web京都消防」で復活!!「予防タイムズ・リターンズ」として,平成28年4月号から,同形式で掲載することとしました。
まず今月は,第1回として,今年度から施行される法令改正について解説します。

後輩
先輩,お久しぶりです!
先輩
おぉ~,久しぶりだなあ!1年ぶりかぁ…元気にしていたか?
後輩
はい!
ところで先輩,平成28年4月1日から病院の基準が変わると聞いたのですが,何が変わるのですか?
先輩
おっ!早速の質問だな(笑)。
病院の基準が変わるのではなくて,消防用設備等の設置基準に応じて項判定が細分化するもので,これまでの用途などの取扱いが変わるわけではないぞ。消防法施行令(以下「令」という。)別表第1は知っているな?そこに掲げられている6項イが,これまでは「病院・診療所又は助産所」としか示されていなかったんだが,今年度からは,

となったんだ。
後輩
何でそんなことをするんですか?病院や診療所って,どれも同じなのでは…?
先輩
平成25年に福岡県福岡市の診療所で火災があったのを覚えているな?あの火災を契機に,病院と診療所に対する防火基準を見直すことになったんだが,病院等の実態を調査していくうちに,病院や診療所といっても様々な形態があって,規模や構造だけでは火災発生時の人命危険の判断が難しいことがわかったんだ。
後輩
そんなに違いがあるんですか?
先輩
まず,病院は入院患者数が20人以上と決まっていて,それ未満の診療所とでは,規模が違うだろう?それに,入院しているといっても,全部の患者が避難ができない人ばかりだとは言い切れないし,患者は基本的には医師や看護師の管理下にあるのだから,火災が発生しても,避難が困難になるリスクは他の対象物に比べて少ないとも考えられる。
後輩
なるほど!実態に応じて,細かく消防用設備等の設置基準を変えたんですね。
先輩
そうだ。具体的に言うと,スプリンクラー設備と火災通報装置,自動火災報知設備(平成27年度から施行),消火器の設置基準が変わる。表にすると,ざっとこんな感じだ。

後輩
それじゃあ,病院や有床診療所となった場合は,全て,スプリンクラー設備の設置が義務になるんですね?
先輩
いやいや,病院を6項イ⑴と判定する前提として,「火災発生時の延焼を抑制するための消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるものを除く。」とあるんだ。
後輩
うーん・・・それは一体何ですか?
先輩
さっきも言ったとおり,病院と一口に言ってもいろいろで,少ない職員数で運営しているところもあれば,一定の職員数を確保しているところもあって,差が大きいんだ。だから,職員数を確保していると判断できる場合は,6項イ⑶で判定する場合がある。具体的には,消防法施行規則(以下,「規則」という。)第5条第3項にその基準が示されているぞ。
注意すべきところは,1と2の両方を満たす必要があるということ。あと,2では,宿直勤務(仮眠ができる勤務)がある職員は除くことになるというところだな。

後輩
少ない職員数で運営している病院については,消防用設備等の手助けが必要って訳ですね。
ところで,令別表第1の6項イ欄の⑴病院と⑵診療所のところをよく読むと,両方に「診療科名中に特定診療科名を有すること。」って書いてあるんですが,特定診療科名って何ですか?
先輩
診療科名っていうのは,医療における診療の専門分野区分のことで,その中で規則第5条第4項に指定されたものを「13診療科名」と言い,その科名以外の診療科名を「特定診療科名」って言うんだよ。

後輩
何だか違いが分かりにくいんですけど,どんな違いがあるんですか?
先輩
法令改正の検討会で,「13診療科名の診療を受けている患者は,病院職員による一定の支援があれば避難できると想定されたから。」とのことだ。
後輩
なるほど!でも,病院によっては,職員数やベット数も数えないといけないし,一般病床と療養病床だけならいいけど,ほかの種類もありそうだし…,何だか大変そうですね。
先輩
実は,そういった医療機関の情報は一般に公開されていて,我々も,いつでも確認できる方法があるんだよ。
後輩
区役所の窓口などに行かないとだめですか?
先輩
いやいや,インターネットで確認できるよ。医療機能情報提供システムといって,各都道府県知事に医療機関の開設者などが報告した医療機関情報の内容を公開しているんだ。京都府の場合は,「よろずネット」で検索すればすぐにわかるよ。
後輩
なるほど!そんな手があったんですね。
先輩
ちょっと複雑でややこしくなるけど,一つずつ確認していけば大丈夫!それにスプリンクラー設備に限っていえば,遡及期限は10年間(平成37年6月30日)もあるから,じっくりいこうぜ!
後輩
そうか!じゃあ,もしかしたらその頃には,先輩は定年退職を迎えているかもしれませんねぇ~。アッハッハ!
先輩
そうなんだ。だからこそ,一刻も早く,君に一人前になってほしいんだよ・・・。
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