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京都市消防局

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平成28年4月号 警防計画課通信

ページ番号194631

2016年4月1日


 京都市消防局の職員でも,ほとんどの方にはなじみが薄いと思われます。今回は,警防計画課が事務局を務めている「名神高速道路消防協議会」について,「Web京都消防」の前身,機関誌「京都消防」で13年前に掲載した記事に,時点修正等を加えて,改めて御紹介します。


 まず,「名神高速道路」という呼び名は,実は「小牧~西宮」間の営業路線名(通称)です。正式名称を「中央自動車道西宮線」といい,日本で最初の「高速自動車国道」として,昭和38年(1963年)7月に「栗東~尼崎」間で開通しました。この建設工事は,昭和33年(1958年)10月に京都市山科区内で最初に着手されており,現在も「名神高速道路起工の地」として石碑が残っています。

 開通当初は,現在のような大型トラックの通行が少なく,観光目的の自家用車の利用が中心だったようで,「高価な観光道路だ。」という批判もあったようですが,昭和40年代後半以降は,特に阪神,中京間の貨物輸送の主軸として活躍し,また,沿線地域の急速な発展の引き金となったのです。


 ひとたび事故が発生すれば,大量の自動車が常に高速で通行するという危険な環境の下,交通への影響を最小限に,災害対応を迫られる消防の任務はとても重いものです。

 では,私たち消防は,これまで,どのように高速道路上の災害と向き合おうとしてきたのでしょうか? 

 実は,道路公団と消防機関の間で,高速道路の安全性について認識の相違がありました。当時の日本道路公団は,「名神高速道路は自動車の力学的特性のほか,運転する人間の生理的,心理的な面の感情特性にも配慮した『力学と人間工学の調和』を基調としていて,幾何構造上万全な設計である。」といった理由から,「名神高速道路は極めて安全で,万一,災害が発生しても,その頻度は非常に少ない。」としていました。これは,今も議論が分かれるところかもしれませんが,「交通事故の発生要因は人為的要素によるものがほとんどであるから,各種災害の発生危険は一般道路と変わらない。」とする消防の見解とは,大きく違っていたわけです。

 また,供用開始当時は,救急業務が法制化されたばかりの頃で,現在のように救急体制が確立されていたとは言えず,消防本部によって大きな格差がありました。現在,30隊ある京都市の救急隊が,まだ11隊しかなかった頃の話なのです。

 しかし,沿線の消防関係者は困難な状況の中にあっても,当初から,一貫して救急業務は市町村の消防が実施すべきであると意思を固めていました。

 一方,道路公団は,当初,全ての市町村に救急業務を委ねることは困難であるとして,救急業務と消防業務を切り離して考え,救急業務については警察と協力して独自で実施する計画を立案していたそうです。

 日本初の高速自動車国道の供用開始を前に「安全の確保」は,かみ合わない関係者の間で揺れていました。


 揺れ動く安全対策,迫る供用開始。安全確保に関する認識のズレは,「安全」に対する認識の違いからスタートしていましたが,さらに,各消防本部が個別に日本道路公団と協議していたため,協議内容に統一性を欠いていたことにも原因がありました。

 そこで,窓口の一本化と沿線消防本部の意思統一を図り,「消防の総意」として日本道路公団と協議するというカタチが生まれました。これが,沿線消防長による「防災対策会議」です。さらに,これは事務局の性格を持った「名神高速道路消防連絡室」の設置へ進展し,昭和47年(1972年)11月24日,意思決定権の付与を含めて組識化された「名神高速道路消防協議会」の設立へと至りました。それ以来43年間,当警防計画課は,この協議会の事務局を担っているのです。


 平成17年(2005年)には,日本道路公団が民営化されたことにより,東日本,中日本,西日本の3つの高速道路株式会社(NEXCO)として生まれ変わるなど,関係機関の紆余曲折も経ながらではありますが,この名神高速道路消防協議会では,高速道路災害をテーマにした研修会や,道路管理者,高速警察隊等との合同訓練を実施して災害対応力の向上を目指し,総会や事務担当者会議を通じて,様々な課題の抽出・検討・解決に取り組んでいます。


 そもそも,高速道路上での災害では,インターチェンジか非常開口部からしか進入できず,基本的に順行でしか現場に到着できないうえ,交通規制がなければ車両は高速で真横を通過します。場所によっては長大トンネルもありますし,路側帯の狭い区間もあります。そういったことから,一般道とは異なる活動が要求されます。中でも,消防と道路管理者や高速警察隊との連携活動は,二次災害を防ぐためにも特に重要です。「各機関との連携体制は,これでいいのか?」これは協議会の取組の中でも大きな柱となっています。昨年度の防災研修会においても,道路管制センターの見学や「高速道路上における安全管理について」をテーマに研修を行っていますが,道路管理者や高速警察隊との連携のあり方を根本的なところから追求しようとしています。


 京都市の周辺では,京滋バイパスや第二京阪道路,京都縦貫自動車道,新名神高速道路等々,自動車専用道路網がどんどん整備されており,今後,応援出動も含めた高速道路災害の対応は増えていくことが考えられます。

 高速道路上の更なる安全に向けて,今後も検討を重ねていきますので,名神高速道路に出動する可能性のある各隊の皆さんには,是非,協議会の事務局に御意見をいただくなど,御協力をお願いしたいと思います。

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お問い合わせ先

京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195