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京都市消防局

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平成28年3月号 調査マンからのメッセージ

ページ番号194196

2016年3月1日



 総務省消防庁が毎年発行している「消防白書」によると,ローソクやランプ類などの「灯火による火災」は,平成26年中に日本全国で発生した全火災43,741件のうち455件(約1%)であり,件数的には多くありません。しかし,建物火災だけで見ると,全建物火災23,641件のうち444件(約1.9%)となっており,また,灯火により発生した火災で25名(23件)の方が亡くなられています。

 このように,灯火による火災の件数は多くありませんが,毎年,ほぼ一定数,発生しています。灯火による火災の多くは仏壇や神棚で日常的に使用されているローソクによるものですが,近年では,灯りや香りを楽しむための「アロマキャンドル」による火災も少なからず発生しています。

 今回,数ある火災原因の中で,ローソクが原因の火災(以下「ローソク火災」といいます。)についてまとめたので,紹介します。



 過去5年間の数字を見ると,毎年10件前後,その年の全火災件数の3~4%を占めています。

 ローソク火災44件のうち,98%(43件)が建物火災で発生し,そのうちの91%(39件)が住宅(一般住宅,共同住宅及び併用住宅)で発生しています。


 月別の状況を見ると,最も多いのが1月と12月の7件で,次いで4月と9月の6件となっています。この4箇月で計26件,全体の6割近くを占めており,6月と11月は発生していません。


時間別では,6~10時と,13時,18時の3回,発生のピークが表れています。

 死傷者

  ローソク火災により4名の方が亡くなり,20名の方が負傷しています。これは,ローソク火災11件につき1名の方が亡くなり,2.2件につき1名の方が負傷していることになります。


 出火責任者が判明している43件のローソク火災における出火責任者の年齢別の状況は,60歳代が11件で最も多く,次いで70歳代の10件,80歳代の6件と高齢者の方が多くを占めていますが,20歳代や30歳代といった比較的若い年代も出火責任者となっています。


 出火に至った経過では,何らかの原因でローソクが転倒して出火したものが,全ローソク火災の約半数を占めており,次いで,ローソクの火が近くの可燃物に接炎したもの,お札等の可燃物が倒れるなどによりローソクに接触して出火したものの順となっています。


 ローソクの使い道は様々ですが,大別すると次のように区分されます。

 ・ 灯明:仏壇や神棚及び祭壇等の灯明として使用する。

 ・ 照明:照明の代わりに使用されたり,室内の雰囲気作り等で使用する。

 ・ アロマキャンドル:リラクゼーションの一つとして,色々な香り成分を含んだローソク(キャンドル)に火を灯し,その香りによってリラックス効果を得るために使用するもので,京都市内でも平成8年に初めてアロマキャンドルによる火災が発生してから,毎年,数件が発生しています。

 ・ その他:国内の様々な風習や文化により使用されるほか,日本以外でもクリスマスツリーにキャンドル(ローソク)を使用する習慣等があります。

○ 次に,過去に発生したローソク火災の事例について紹介します。


 居住者が,何となく,洗面台に設置の石けん受け皿にアロマキャンドルを置いたもので,アロマキャンドルの炎の高さ,洗面台の材質(合成樹脂製の可燃物)等との関係など,危険性の認識が足りなかった事案です。

 居住者が,以前に一度使用したローソクを再度使用し,その場を離れた間にローソクが転倒して打敷に着火し,出火した事案ですが,一度使用したローソクの底部が弱くなっていた可能性やローソク立てにしっかりと挿されていなかった可能性が考えられます。また,ローソクとローソク立ての大きさは適正でしたが,この住宅では室内で動物を飼っており,出火室に出入りすることもあったことから,動物がローソクを転倒させた可能性も考えられます。


 ローソクに近付く場合は,一旦,ローソクの火を消してから行うこと,袖や裾が広がっている衣服は火を扱う際には着用しないようにすること,燃えにくい処理をした防炎製品の衣類を着用することなどで,着衣への着火は防ぐことができます。


 居住者が,夜間の照明のために使用していたローソクの火が樹脂製の小物入れに着火し,出火した事案ですが,ローソクを立てる容器を,ローソクが燃え尽きたときでも火が付かない陶磁器にすること,ローソクが転倒しないように安定させて立てること,周囲に燃えやすい物を置かないように注意することなどで,火災を防ぐことができます。

 正月用の鏡餅及び雑煮を神棚に供えていたため,神棚内のローソクと榊(造花)は普段より近接した状態になっており,そこでローソクを点火したため出火した事案です。

 実際に近接した状態で出火に至るかを確認するため,再現実験を実施しました。榊やローソクまでの間隔等を忠実に再現して実験した結果,初めにローソクに一番近い榊の葉が溶融しましたが接炎せず,その後,枝が溶融し下方に垂れ下がったため,葉がローソクの炎に接し,出火しました。

 正月のため,ローソクと造花の榊が近接した状態になっているという,普段とは違う配置になっていたことが出火につながりましたが,火災を防ぐためには,ローソク付近には燃えやすい物を置かないことが重要です。



 この事案は,大阪府の枚方寝屋川消防組合消防本部の管内で発生した火災ですが,住宅内の整理タンス上でローソクを使用中,タンスから離れた障子戸の一部が,居住者の目前でいきなり燃え上がったものです。

 状況としては,ローソクの転倒はなく,障子戸が燃え始めたのはローソクの火が届かない場所であり,ローソク立ては前日に洗っていました。また,ローソクを使用している間,居住者は室内におり,居住者が火災に気付いたときにはローソクの火が消えていました。

 そこで,前日にローソク立てを洗っていた状況から,洗っていないローソク立て(水分がない状態)と,洗ったローソク立て(水分がある状態)を使用し,実験が行われています。実験の結果,水分がない状態のローソク立てでは,異常な燃焼は認められませんでしたが,水分がある状態のローソク立てでは,一定の条件がそろうと,燃焼が終了すると同時に火の付いたローソクがローソク立てから飛び上がり,落下する現象がみられました。

 このような実験結果から,ローソク立ての受け皿に水分が残っている状態で使用していたことにより,ローソクの成分と水分が反応し,火の付いたローソクの芯がローソク立てから飛び上がり,火災に至ったものであることが推測できました。

 極めてまれな事例ですが,このような火災を防止するためには,ローソク立てを水で洗った場合は必ず水分を拭き取り,洗ってすぐの使用は控え,十分に乾いてから使用するようにすることです。


 ローソク火災は,冒頭にも書きましたが,まだまだ多く発生しています。ローソク火災を防ぐためには,

 1.ローソクを使用しているときは,その場を離れないようにすること。もし,その場を離れる場合は,ローソクの火を確実に消すこと。

 2.周囲には燃えやすい物を置かないようにすること。

 3.ローソク立ては火が付かない陶磁器等を使用し,確実に安定させること。

 4.万一に備え,消火器や水の入ったバケツなど,消火の準備をしておくこと。

 5.経机等の敷物は防炎製品を使用すること。

などが重要ですが,ローソクのような小さな火でも油断すると大きな火災に直結します。訪問防火指導時には,出火事例と併せてローソク火災防止のポイントを市民の皆さんに伝えていただき,火災が1件でも減少するよう,お願いします。

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お問い合わせ先

京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195