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京都市消防局

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優秀賞 ◆ エアポケットゼロのまちづくり ◆

ページ番号192980

2016年2月1日


 自分の家の隣にどんな人が住んでいるか,あなたは知っていますか。

 阪神・淡路大震災を契機に,地域防災の重要性が再認識され,消防団や自主防災組織の整備が積極的に進められてきました。以来20年,京都市消防局でも,行政機能がマヒするような大規模災害を想定し,住民同士の力で災害を乗り越える体制づくりに力を注いできました。町内単位での小さな取組から始まり,今年度には学区単位でのより広域的な防災行動マニュアルを策定するまでに至りました。

 しかし20年が経過した今でも,地域防災に隙間,いわゆるエアポケットを感じるときがあります。それは,訪問防火指導をしているときです。家族と離れて独りで暮らしており,付き合いのある人が皆先立ってしまった。周りは新しく越してきた人ばかりで,挨拶もしたことがない。このような話をよく聞くようになりました。京都市では平成23年以降,人口の減少と併せて転入超過が続いており,住民の入れ替わりが進んでいます。近隣関係が変化することで,これまで培ってきた地域でのつながりを失った世帯がエアポケットとして孤立している。こうした現状を感じます。実際,身寄りのない高齢者の屋内急病事案や死後数日経ってから発見される孤独死の現場も増えています。隣近所にどんな人が住んでいるのかもわからないのに,いざというとき互いに助け合うことができるでしょうか。

 このエアポケットを解消する糸口を,私は訪問防火指導の中に見出しました。火の用心や防災情報を戸別に伝えていくことはもちろんですが,日々の活動事例を交えながら災害時における近隣関係の重要性を訴え,自治会や地域行事への参加を繰り返し呼び掛けていく。そうすることで,孤立世帯が新たにつながりを作っていく後押しができます。まずは挨拶からでも,顔の見える関係は作っていけます。「こんにちは」,「今日も寒いねえ」こんなたわいもない挨拶だけでもしていてよかったと,東日本大震災のときにも多くの人が実感しました。訪問防火指導を通してまちの変化を機敏に察知している消防だからこそ,孤立世帯をいち早く把握し,支援していくことができると思います。

 また,各種団体との合同訪問も有効な手段です。現在実施している福祉団体との合同訪問では,これまで会えていなかった方に,協力してアプローチすることで面談に成功したという事例もあります。これをさらに広げ,行政機関だけではなく民生委員や自主防災組織など地域の方とも声を掛け合って合同訪問を実施していけば,消防だけでは見落としていたかも知れない孤立世帯に対応できるうえに,平時から災害時要援護者を地域で把握してもらうことにもなり,消防がいなくても互いに助け合える関係を地域で広げてもらうことができます。

 京都市では,今年から「まち・ひと・しごと・こころ京都創生」総合戦略の中で,市内への移住定住と安心安全なまちづくりを進めていますが,移住と地域防災とを同時に進めていくためには,住民の入れ替わりとともに絶えず生まれるエアポケットを,1つ1つ丁寧に解消し続けることが必要になってきます。

 訪問防火指導を通して,このように住民同士のつながりを支えていくことで,来たるべき災害に備えたエアポケットゼロのまちづくりを私は実践していきます。

 自分の家の隣にどんな人が住んでいるか,あなたはきっと知るはずです。

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京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195