平成27年12月号 研究課レポート
ページ番号190711
2015年12月1日

前回の天ぷら鍋の発火時間に関する実験に続き,今回は,IHクッキングヒーター(電磁調理器)を使用した場合の天ぷらなべ火災について実験を行いましたので,紹介します。
天ぷらなべ火災と言えばガスこんろの火災を思い浮かべますが,火を使わずに電気の力で加熱するIHクッキングヒーターでも,使い方によっては天ぷらなべ火災が発生します。今回は,市内で発生したIHクッキングヒーター使用時の天ぷらなべ火災の再現実験を行いました。
この火災では,IH対応鍋に約200mlのサラダ油を入れ,「加熱モード」で使用していたほか,トッププレート上に汚れ防止マット ※1(以下「マット」という。)が敷かれていました。
※1 汚れ防止マットとは…IHクッキングヒーターのトッププレートを,吹きこぼれや油汚れ,焦げ付きによる汚れから守るために敷くマット。


市販されているIHクッキングヒーター用の,マットの主な材質は,シリコーン,ガラス繊維,マイカ(雲母)及び結晶化ガラスの4種類で,これらのマットを敷いた状態での天ぷら鍋の加熱実験が,独立行政法人 国民生活センターで行われています。その結果によると,材質がマイカのマットを敷き,加熱モードで加熱した際に発火していますが,その他の材質のマットについては発火に至っていません。(参考:独立行政法人 国民生活センターHP「IHクッキングヒーターに用いる汚れ防止マットの使用に注意」)
今回の火災で使用されていたマットは,厚さ2mmのガラス繊維製のものであり,このガラス繊維製のマットを使った独立行政法人 国民生活センターの実験のケースでは,発火に至っていません。そこで,「このガラス繊維製マットを使用したときには,異常温度上昇防止機能 ※2が作動し,発火に至ることはないのか? マット自体が汚損している場合でも作動するのか?」について検証するため,天ぷら鍋の加熱実験を行いました。
※2 異常温度上昇防止機能(温度過昇防止)とは…空焚きなどで,鍋が異常に高温になったときに自動的に加熱を停止する機能で,鍋底の温度が一定温度を超えると,自動的に通電を制御するようにコントロールし,温度が下がると自動的に通電(加熱)し始める。

最大出力1,400Wの卓上型IHクッキングヒーター(1口)を使用し,IH対応鍋に200mlのサラダ油を入れ,加熱モードに設定します。
次の3種類の設定で実験を行い,異常温度上昇防止機能の作動状況と,油の温度変化及び時間経過を測定しました。
設定1.マット(ガラス繊維製)を敷かずにそのまま加熱する。
設定2.新品のマット(ガラス繊維製)を敷いて加熱する。
設定3.汚れや油の付着したマット(ガラス繊維製)(以下「汚れたマット」という。)を敷いて加熱する。


実験結果は,以下のとおりでした。

設定1のマットを敷かない場合は,異常温度上昇防止機能が作動し,天ぷら油が発火する前に通電が停止(自動OFF)されました。
設定2の新品のマットを敷いた場合は,マットを敷かない場合と比べ,油温の上昇が緩やかになりましたが,設定1と同様に天ぷら油が発火する前に通電が停止されました。
設定3の汚れたマットを敷いた場合は,設定1及び2で異常温度上昇防止機能が作動した温度になっても通電は停止され,天ぷら油は発火温度まで上昇し,発火に至りました。

今回の実験から,汚れたマットを使用すると,IHクッキングヒーターに取り付けてある異常温度上昇防止機能が作動せず,発火に至ることが確認できました。
これは,マットの変形や付着した油などの汚れにより,IHクッキングヒーターのセンサーが,鍋底の温度を正しく検知できなかったことによるものと考えられ,他の材質のマットについても,同様のことが起こり得ると考えられます。
マットの取扱説明書には,「揚げ物調理の際には使用しないでください。」と記載されており,また,IHクッキングヒーターの取扱説明書には「鍋の下に汚れ防止シートや紙などを敷かないでください。」と注意喚起しているものもあります。
揚げ物を調理する際,IHクッキングヒーターに揚げ物専用のモードがある場合はそのモードを使用していただき,IHクッキングヒーターに限らず,火を使う際は絶対にそばを離れないでください。
お問い合わせ先
京都市 消防局消防学校教育管理課
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