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京都市消防局

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平成27年12月号 ザ☆救助

ページ番号190706

2015年12月1日


 私は平成22年4月に採用され,早や5年が経ちました。そして,平成27年10月から念願の救助隊に配置されました。まだ救助隊員になって経験が浅く,右も左もわからない状態ですが,私なりの「ザ・救助」として,救助隊を志望する原点となった拝命2年目の火災現場での経験を紹介したいと思います。

 私は消防士になってから救助隊を志望していました。それは,ひとえに災害等で被災した人々を助けたいと思ったからです。そんな気持ちを抱いていた1年目の出来事でした。

 「○○管内,火災受信中!!」夜の事務所の静寂を突き破るような猛々しい声の無線が流れました。階段を駆け下り,車両に飛び乗って無線を聞くと,「2階建ての民家が燃焼中。南を除く三方に延焼危険あり。逃げ遅れにあっては不明。指令センターからの望見状況は黒煙上昇中。」との状況が入ってきました。

 現場到着すると,真っ暗な夜の空でもはっきりとわかるほどの黒煙が立ち昇っていました。夜の狭く暗い路地を必死にホースを延長し,建物前まで行くと,隊長から「南西側の燃えている家に入るぞ!!早くホースを延ばせ!!」との下命を受けました。南西側の家の敷地内はさらに狭く,暗く,鉢植え等の物で溢れていました。その中をホース延長し,塀を乗り越え,屋外から放水しました。火勢は弱まり,その後,屋内に進入して放水を続けました。どれくらい放水していたのかわかりませんが,徐々に火勢も収まり,放水を止めて,各部屋の残火確認のため,ある部屋に入ったときです。その部屋は,中学生か高校生ぐらいの子どもの部屋で,部屋の中には仲睦まじい家族写真や幼い頃に書いたであろう似顔絵,学生服や教科書,部活動の用具などが無残にも焼けてしまっていました。火災は何もかもを一瞬に灰に変えて奪っていくんだな…と心の中で思い,やりきれない気持ちになったことを今でも鮮明に覚えています。

 残火確認が終わったときでした。「みんな,家の外に来てくれ!」との隊長の声が家の外から聞こえてきました。家の外に出てみると,隊長と先輩隊員,そして,何かがシートにくるまれていました。私はそのときはまだ,そのシートにくるまれているのが何なのか,理解できていませんでしたが,隊長から「この方を今から『お運び』する。器材を当てて痛い思いをさせたらあかんぞ。丁寧に『お運び』しよう。」との言葉と,シートの隙間から見えた体の一部分などから,徐々にそのシートにくるまれているのが人であるということを理解しました。

 この瞬間のことは,今でも忘れることができません。家族写真,思い出が詰まった家,家族…。全て火災が奪ってしまったんだなと感じ,市民の皆さんには,二度とこんな苦い思いをさせたくない,自分自身も二度とあんな思いをしたくないと心に誓った瞬間でした。

 あの災害から早くも4年が経ち,今,私は志望していた救助隊員となりました。4年前のあの火災現場の経験から,私は技術・経験をこの4年間に積み重ねてきたつもりです。しかし,これからも今まで以上に強い信念を持ち,一つ一つの経験を大切に,日々,自己研鑽に励み,より一層の努力をすることが,今後,4年前と同様の災害に出くわしたとき,立ち向かう力になる,4年前に奪われてしまった命や財産を,次は守り,助けることができると信じています。この思いが,私の「ザ・救助」です。


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