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京都市消防局

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平成27年11月号 ザ☆救急

ページ番号189642

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2015年11月2日


 救急隊員として勤務するようになって,今年で9年目になりました。周りの方々に助けていただきながら,たくさんのことを学ぶ日々を過ごし,どの現場活動も強く印象に残っていますが,その中でも,特に私が忘れられない現場活動について,今回は書かせていただこうと思います。

 救急隊員になったばかりの頃の話です。20代女性の呼吸苦症状とのことで出動しました。現場に到着すると,その方はバス停の椅子に座り,家族の方が付き添っておられました。

 「くるちぃ! くるちぃ!!」

 苦しいという表現であると思われましたが,女性は赤ちゃん言葉のように言っていました。詳しいことを聞こうとしても,女性は同じ言葉を繰り返すばかりで,私の問い掛けには答えてくれません。付き添っていた家族の方も,突然苦しみ出したことと精神疾患で通院中であること以外はわからないとのことでした。

 血圧などを測定しようとしても,不穏状態で器具を外そうとされ,きちんと数値を測定するのが困難でした。やっとのことで測定した血中の酸素飽和度がとても低かったため,酸素投与を実施しました。酸素投与をしても状況は変わりません。「くるちぃ!」と女性は言い続け,酸素マスクを外そうとするのを私は制止し,現場近くの救急病院へ搬送しました。

 救急処置をしながら,私は心の中で,「本当にこの女性は何かの疾患で苦しんでいるのだろうか?」という気持ちをほんの少し持っていました。年齢や精神疾患で通院中であること,「くるちぃ!」という赤ちゃん言葉での訴えなどから,傷病者の女性の訴えを完全に信じることができずにいました。そして,その気持ちが拭えぬまま,病院に到着しました。

 病院のベッドに移乗直後,女性は突然苦しむのを止め,顔からは血の気が引き,目を閉じ,気を失ってしまいました。「えっ,ついさっきまで意識があったのに…。」あまりの一瞬の出来事に,私はとても驚き,言葉が出ませんでした。傷病者の女性の苦しみを100%信じることができなかった自分をとても恥じました。

 「この傷病者は,どうして救急要請をしたのか。」

 先の現場での経験以降,私はいつもこのことを念頭において活動しています。傷病者の方,その家族の方々が何に苦しんでいるのか,何が気になっているのかをできる限り知りたいと思うからです。傷病者の方の苦しみを理解し,それを軽減させられるよう全力で活動する。どんなに高度な処置ができるようになっても,どんなに便利な器具が使えるようになっても,私は傷病者の方やその家族の方々の心に寄り添う気持ちを持ち続け,今後もこの仕事をしていきたいと思います。


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