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京都市消防局

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平成27年9月号 ザ☆消防

ページ番号186964

2015年9月1日


 消防人生も7年目に入りました。

 新任時代は,ただただ「いつか火災現場に一番に到着したら,自分が要救助者を救出するぞ。」と心の中で思いながら,実際の訓練では訓練の意図やイメージを思い描けず,何も理解できていませんでした。慌ててばかりで,上司から「一つの訓練を大事にすること。新しいことに進もうとするのではなく,やってきたことを確実に理解していくこと。」とよく言われながらも,変わらない自分がいました。

 消防隊1年目,臨時にC救助隊の隊員として勤務したときの夜です。指令センターから,「N区N通火災受信中。」の予告指令が入りました。場所は出張所から約500mのところ。出動してすぐ,広範囲に上昇する黒煙が目に飛び込んできました。私たちが現場に最先着した部隊でした。無我夢中でホースを延長。玄関がシャッターで閉鎖されており,玄関以外に進入口がないことから,放水準備ができた後,副隊長がエンジンカッターでシャッターを切断しました。内部を確認すると,1階は火炎が広がっていました。筒先を消防隊に交代し,聞き込み情報から2階に要救助者がいることが判明しました。はしごを使用し,2階へ到着。副隊長とA隊員は消防隊の援護注水を受け,検索活動を実施しました。すぐさま,「要救助者発見!」という声が濃煙の中から聞こえてきました。私は救出口への誘導と,周りの消防隊に要救助者が搬送されてくることを伝え,サポートをお願いしました。1階へ救出するため,はしごを使用して燃え盛る建物の横での過酷,かつ,1分1秒を争う救出活動でした。各隊との連携により,要救助者を1階へ救出し,救急隊へ引き継ぎました。訓練とは違い,救出されてきた要救助者に,「わかりますか? 頑張ってください。」と,救出活動に携わった全隊員が必死に声を掛け続けました。 それまで,普段の訓練で先輩から,「誰のために訓練しているのや?」,「要救助者は家族,身内と思え!」とよく指導されていました。このときは,一つの火災現場としか思いませんでしたが,普段から訓練していた「最先着の際の火災想定放水訓練,火災救出訓練を生かす」ことができた貴重な現場であり,また,今となっては,私が経験した災害の中で最も記憶に残る現場となりました。普段から慌ててばかりの私に,上司,先輩は冷静,かつ,的確に指示してくれました。また,何かきっかけを与えようとされたのか,私の防火靴にこっそり「平常心」とマジックで書かれているのを見付けたのはこの災害現場から帰ったときでした。字体からすぐ普段は厳しい先輩が書かれたのだとわかりました。感極まり,涙が流れそうになりました。

 この災害現場は,いろいろなことを知ることができた自分の「原点」だと今は思います。決して忘れることなく,自分の貴重な財産とし,日々の業務に努めたいと思います。そして,今まで多くの上司,仲間に恵まれ,指導していただいたからこそ,今の自分があります。育てていただいた感謝の思いと,これまでの経験を大切にしていきたいです。


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