平成27年8月号 研究課レポート
ページ番号186172
2015年8月3日

京都市の過去20年間の火災を年ごとに火災原因別で見ると,常に1番多いのが「放火(疑いを含む)」,2番目は「たばこ」となっています。では,3番目はというと,年により若干の入れ替わりはありますが,「天ぷらなべ」が多く占めています。昨年も天ぷらなべが原因の火災は,12件と3番目に多く発生しました。
今回は,火災原因3位の天ぷらなべによる火災の実験を行いました。



天ぷら油過熱防止装置の付いていないガスこんろのバーナー部に片手鍋を置き,約900mlのサラダ油を入れて,
1.弱火で加熱し続ける
2.強火で加熱し続ける
の2通りの実験を行い,このときの発煙時間と発火時間,油の温度を測定しました。

1と2の実験結果は,以下のとおりとなりました。


発煙や発火に至る時間は異なりますが,どちらも200℃を超えた辺りからわずかな発煙があり,280℃を超えた辺りで激しく白煙が上昇し,その後,どちらも360℃前後で発火しました。
また,発火直後は鍋の中で燃えている状態ですが,3分後には約60cmの高さまで火柱が立ち上がり,さらに数分後には,火柱が1m以上にもなることが今回の実験写真でわかると思います。


火を見るとどうしても水を掛けてしまいたくなりますが,天ぷらなべ火災のときは水を掛けるのは厳禁です。油の温度は360℃を超えているので,そこに水を掛けると,一瞬にして水が蒸発し,鍋の中の油を吹き上げてしまうからです。
そこで今回は,水で濡らしたタオルで鍋を覆う方法を実践しました。物が燃えるためには酸素が必要ですから,濡れたタオルを鍋にかぶせることによって酸素を遮断し,消火できます。
なお,このとき,ガスこんろのスイッチを切って加熱を止める必要があります。

ここで注意が必要なのは,火が消えても安心しないことです。油の高温状態は10分以上続きます。実験では,15分が経過した後でも,タオルを取り除くと再び発火しました。

今回の実験から,天ぷらなべ火災は加熱時間に関係なく,油の温度によって発火することが再確認できました。鍋の形状や油の量,ガスこんろの火力の違いによっては,今回の実験よりもさらに早く発火する可能性があるので注意が必要です。
「火を使っているときはその場から離れない。離れるときは火を消す」のが原則ですが,失念してしまうこともありますので,台所には住宅用火災警報器を必ず設置しましょう。もしものとき,天ぷらなべ火災の早期発見に役立ちます。
お問い合わせ先
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