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京都市消防局

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平成27年6月号 ザ☆消防

ページ番号182592

2015年6月1日


 昔の話をするほど自分はまだ老け込んでいないと思っていましたが,気が付けば消防生活30年近くになろうとしています。

 災害現場活動というのは受け身であって,自分から営業して探しに行くものではありません。したがって,長年,災害現場活動に従事していても,人によっては経験値に多少差があると思います。私は,先輩から聞いた現場の話や過去の事案の話をとても大切にしています。しかし,やはり自分が経験した現場ほど役に立ち,失敗したことほど記憶に残り,次に生かせるのではないかと思います。


 私がK区で勤務していたとき,木造2階建ての民家の2階が焼失した火災現場がありました。

 現場に到着したとき,私の部隊は建物背面から進入しました。木造2階建てとの情報でしたが,3階部分に窓があるのを確認したため,3階建ての間違いではないかと思いました。建物内部に入るとやはり2階建てです。確認のため出火室にいた先着消防隊員に聞いてみると,やはり「2階建てだ。」と答えます。どうしても気になったので,2階ベランダから小屋裏付近に窓があるか,地上の消防隊員に確認したところ,やはり「ある」と答えます。

 反対側の外壁を見たら,なんと換気扇が溶融しているのが確認できました。再び2階の出火室へ行き,真っ黒に焼けた天井をよく観察すると,四角の形をしたものを発見しました。これは「天井収納庫のハッチ」でした。

 天井収納庫内にまだ残火の可能性があるため,慎重に開放し,内部を確認後,残火確認と再燃防止のため,収容物を外に出して事なきを得ました。

 この火災から数箇月後に,同じK区内において木造2階建てから火災が発生しました。この現場は少し特異で,2軒の家を1軒にし,1階が店舗で2階が住居部分になっていました。現場到着したとき,救助隊が2階から要救助者を救出しているところであったため,私の部隊は要救助者の救出支援を実施しました。

 その後,放水活動の交替部隊として待機していました。ところが,1階は鎮火状態で,2階はあまり燃えていないにもかかわらず,小屋裏からみるみる黒煙が噴出してきました。私の部隊が筒先進入し,2階へ進入した際に「もしかして…」と思い,くまなく天井を確認したところ,四角の形をしたものを発見しました。それからは言うまでもなく,天井収納庫のハッチを慎重に開放し,放水したところ,無事に鎮火させることができました。

 何でもないようなことかもしれませんが,少しの疑問と経験から,次に生かすことができた例を皆さんに御紹介しました。


 最近,今まであまり経験したことがないことがありました。

 それは,炎上火災が,3箇月連続で私の部隊の調査担当区域で発生し,全て最先着部隊であったということです。

 私は,今までに何度となく最先着部隊で活動した経験はありますが,これほど,毎月連続で活動したことは記憶にありません。

 職場の後輩たちに,消防隊が火災現場で一番真価が問われるときは,部隊が最先着したときにどれだけのことができるかに尽きると話をしています。

 日頃の訓練の成果はもちろんですが,経験からくる冷静な状況判断,的確な情報伝達等は非常に重要であり,その現場全体の活動を左右すると言っても過言ではないと思います。さすがに,3箇月連続で最先着すると,1回目より2回目,3回目と反省点を確実に修正し,部隊としての活動は確実に向上してきたと思います。

 どれだけ,体力,技術があっても経験だけはどうしようもないことです。そして,経験は生かされなければ意味がないのです。それが,消防活動において自信となり,財産となって,今後に生きてくるものと思います。


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