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京都市左京区

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サキョウ見聞録 その21 続・左京銭湯巡りの夜

ページ番号342704

2025年9月5日

 令和7年4月某日。

 季節は春。夜桜を鑑賞しながら左京区内をぶらぶら散歩していると、住宅街の中に銭湯を見つけました。本稿では「サキョウ見聞録 その12 左京銭湯巡りの夜」で紹介しきれなかった銭湯を巡ります。

鴨川の夜桜

春の銭湯

 春になると気温が上がり、飽和水蒸気量が大きくなります。お風呂といえばもくもく湯気が立っているイメージがあるかもしれませんが、気温が高くなると水分が空気に溶けるため、白い湯気はほとんど見えず視界良好に。こんな日は銭湯内の景色を思う存分楽しむことができます。銭湯ごとに違うタイルの色・柄、完璧に磨かれた水垢のない鏡、高い高い天窓…。入浴を楽しみながら、すみずみまで観察してみませんか?

銭湯の入り方

・靴を脱いで靴箱に入れる。

・番台さんに料金を支払う。

・脱衣所で服を脱ぎ、服と荷物を脱衣かごに入れる。

・脱衣かごをロッカーに入れる。

・タオルとせっけんを持って浴場へ。

・入り口付近に置いてある洗面器と椅子を取ってシャワーブースへ。

・よく体を洗う。

・荷物置き場がある場合は、自分の持ち物(タオルなど)を荷物置き場に置く。

・入浴。

栄盛湯(えいせいゆ)

栄盛湯(引きの画像)
栄盛湯(正面の画像)

 見てくださいこの外観!荘厳な門構え。立派な松の木と、鯉の泳ぐ池が出迎えてくれます。

 ここは下鴨膳部町(しもがもかしわべちょう)の栄盛湯。番台が女湯と男湯を隔てるスタイルのため、入り口が男女で異なります。のれんをくぐり引き戸をあけると、まず土間があり、一段上がったところに歴史のある脱衣所が現れます。木目が心地よい脱衣所には、自由に読める雑誌や本が並んでいたほか、ボンタンアメの販売もあり、とても賑やか。浴室への扉は珍しい押戸タイプで、2mほどもある大きな一枚のガラスでできていました。お風呂は、淡い緑色のタイルの円形風呂と濃い青色のジェット風呂があり、そのコントラストがとても美しいです。

 私が行ったときはお客さんが出たり入ったりの大盛況。特に若い人が多いように思いました。脱衣所がこじんまりとしているので、5人で同時に利用していると体や荷物がぶつかりそう。「ごめんなさい」の応酬でしたが、尻がぶつかり合うも他生の縁。運命の相手に出会えるかもしれません。

鴨川湯(かもがわゆ)

鴨川湯のゆるいイラストの看板
鴨川湯のネオン
鴨川湯

 足元にはゆるーい看板。頭上にはネオン。

 ここは下鴨上川原町の鴨川湯。入ってすぐの待合室は、トレンディなグッズや広告がずらり。しかし、柱や天井は歴史が刻まれた深い茶色で、新旧が調和している不思議な空間です。

 お風呂には、シャンプー&リンスとボディーソープが備え付け。クレンジングや化粧水、ヘアゴムまであります。550円しか払っていないのに?!至れり尽くせり。湯船につかると、壁面に「かもがわ湯だより」が貼ってありました。スタッフさんの手書き文字で個人の体験談などが書かれています。「鴨川湯の好きなところ」というコーナーには「女トイレの窓」と一言。どんな窓なんだろう。

 お風呂を上がると、番台にいたはずのスタッフさんが姿を消していました。しばらくして戻ってこられましたが、薪をくべに行っていたとのこと。薪でお湯を沸かしているため、30分に一回薪を追加しないといけないそうです。頻繁な薪くべのおかげで温かいお風呂に入れているなんて。感謝です。

店前に薪が積んである

店前に薪が積んである

 個人的に学びを得たのは鴨川湯さんの災害対策。お風呂に入っている間に地震が起きたらどう行動しますか?鴨川湯さんでは定期的に避難訓練を実施されているほか、サッと着て外に出られる避難着などの防災グッズを用意されています。

番外編(京都市立浴場)

 京都市立浴場は、京都市の委託により指定管理者が管理運営する浴場です。現在7か所の市立浴場があります。今回訪れたのは、左京区内にある錦林浴場と養正浴場。民間の銭湯と、利用料金やサービスは同じです。

京都市立錦林浴場

錦林浴場(正面の画像)

 きれい!広い!明るい!シャワーヘッド大きい!手すりがたくさんあって安心!

 ここは鹿ケ谷高岸町の錦林浴場。初めて市立浴場に行きました。民間のお風呂のような個性はないかもしれませんが、設備が整っていて日常的に利用するお風呂としては何の問題もありません。むしろ十分すぎるくらい。ドライヤーが無料で使えるのも嬉しいところです。

 浴室に入ると、左右と奥の3辺にカランがあり、中央に湯船があります。湯船の真ん中は段差がつけられていて、半分が浅い子ども風呂、半分が深い大人風呂になっています。お湯は指先がジンジンするほど熱い!熱いのが苦手な方には、別で設けられている温度低めのジェット風呂もございます。

アヒル風呂の広告

 帰り際にアヒル風呂の広告を発見しました。この記事を投稿する頃にはアヒル風呂は過去のものになっているかもしれませんが(遅筆の極み)、他にも様々なお楽しみ企画をやっているそうなのでぜひ覗いてみてください。営業時間は午後10時30分まで。民間の銭湯と比べて早く閉まるので注意してください。

京都市立養正浴場

養正浴場
養正市営住宅の桜

養正市営住宅の桜

 桜の花が満開の閑静な養正市営住宅。一つだけ、賑わっている一角がありました。

 ここは田中馬場町の養正浴場。子どもからお年寄りまで様々な人が来ています。浴室のカランは30個弱はあるかと思われましたが、「ベビーバスご利用の方優先」「お年寄りの方優先」と書かれたカランがあり、常に幅広い年齢の方が利用していることがうかがえました。

 浴室の中央に一つ湯船があり、トの字に区画が分かれています。入口から見て奥は深い大人風呂、左は浅い子ども風呂、右は浅いジェット風呂。それぞれの区画の合わさるところには噴水があり、優雅さを演出します。

 営業時間は午後10時まで。午後9時45分にはのれんが下りるとのことですので、それまでに来場してください。

おわりに

 私が初めて銭湯に行ったのは、ランニング大会のあと、友人と汗を流しに訪れた時でした。スーパー銭湯しか見たことのなかった私には、民家の如き銭湯の外観はとても心許なく思えました。しかし、のれんをくぐると意外や意外。自分が小さくなったのかと錯覚するほど、想像を超える広い空間が待ち受けていたのです。広いけれどもだだっぴろいわけではなく。木製のロッカーやレトロなタイルに囲まれているおかげか、祖父母宅に来たような安心感もあり、ランニングの疲れも手伝って、脱力状態でぷかぷか入浴していました。

 そんな感動的な第一印象が心の中で活き続け、気づけば銭湯に通うようになっていました。

 では、どんなタイミングで銭湯に行くのか。私は、「何も成し遂げられなかった日」に行くことが多いかもしれません。休日に家でゴロゴロ、掃除や洗濯をせず、料理も作らず、読みたいと思っていた本も読まず、ただただスマホと昼寝を繰り返して日が暮れてしまった、そんな日です。銭湯に行くと不思議と「何かした感」が得られるのです。家から出てちょっと歩くことが仕事をしたような気にさせるのかもしれません。汗を垂らしながら考え事をして真理を得た気になるのかもしれません。

 何はともあれ、楽しみ方は人それぞれ。日常使いか、特別感か。風呂なのか、サウナなのか。友人と話すのか、一人で考えるのか。体を洗うという目的の他に、楽しむ余地がいろいろあるのが良いんです。

 

この記事を書いた人

藤本 里咲(左京区役所 地域力推進室区民協働推進担当)

左京区役所2年目。温かい風呂と水風呂に交互に入る「交互浴」の世界に足を踏み入れました。サウナは勉強中。


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