サキョウ見聞録 その12 左京銭湯巡りの夜
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2025年2月28日
令和6年11月某日。
秋風が心地よい住宅街の小道。民家の窓から漏れる光と満月が、ほんのり足元を照らしていました。何気なく角を曲がると、目に飛び込んでくる明るい光。そして赤色の「ゆ」の文字。
よく見るとそれは、ひらがなの「ゆ」ではなく銭湯のロゴでした。

銭湯の入り方
・靴を脱いで靴箱に入れる。
・番台さんに料金を支払う。
・脱衣所で服を脱ぎ、服と荷物を脱衣かごに入れる。
・脱衣かごをロッカーに入れる。
・タオルとせっけんを持って浴場へ。
・体を洗ってから入浴。
雲母湯(きららゆ)

上り坂。自転車のペダルを踏み込み踏み込み上っていくと、風に乗ってにぎやかな話声が聞こえてきます。
ここは一乗寺西浦畑町の雲母湯。入り口前のベンチに腰掛けた大人たちが「髪切った?」「今日は暖かいほうやな」などと話をしています。たわいもないけど、ずっと聞いていたいような心地よい会話。
中はお年寄りから子どもまで多くの人でにぎわっていました。私の選んだロッカーは、すこし開閉に工夫がいるものだったよう。一人の女性に「そこはコツがいんねん。難しいからこっちにしい」とおすすめのロッカーを教えてもらいました。
深湯は結構温度が高め?ポカポカになったので、帰りの下り坂は爽快でした。
大黒湯(だいこくゆ)


叡山電車「修学院」駅から線路伝いに南に下がると、大きなのれんが目に入ります。つい先ほど電車が通り過ぎていったのか、のれんはふわふわとはためいて、さながらお客を手招きしているよう。
ここは山端柳ヶ坪町の大黒湯。広めの待合室があり、家族で来るときは室内で待ち合わせできるから快適です。
浴室にはなんと!サウナが2種類!銭湯にサウナ室が並ぶ光景はとても珍しいのではないでしょうか。サウナーでなくてもちょっと入ってみたくなるような、そんなお風呂でした。
鈴成湯(すずなりゆ)

一乗寺のラーメン屋さんが並ぶ通りから少し住宅街に入ったところに、明るく光る建物。外壁のきれいな白タイルがさらに明るさを増しているようでした。
ここは一乗寺西杉ノ宮町の鈴成湯。待合室を抜けたら、温かみのある脱衣所が迎えてくれます。温かみを生み出しているのは、おそらくビニール畳の床と、木目の壁だろうと思います。緑色の畳と焦げ茶色の壁。筆者が育った家とよく似ていたために、幼少期の記憶が呼び覚まされます。
長風呂で喉が渇いたので、待合室にてオレンジジュース。ちゃぶ台を囲む座椅子の一つに座り、テレビを見ながら飲み干しました。
今回は食べませんでしたが、ラーメン後のお風呂もきっと気持ちいいでしょうね。
東雲湯(しののめゆ)


叡山電車「元田中」駅から徒歩数分。大通りに面したモダンな建物。のれんがなかったら通り過ぎてしまったかもしれません。
ここは田中里ノ前町の東雲湯。コの字形の湯船のへこんだ部分に、小さい湯船がくっついている独特な形の浴槽が目に楽しい。一番のお気に入りポイントは、この浴槽の深さです。本当にちょうど良い深さ。底に腰を下ろすと、水面から肩が出ないのに、顎もつからないベストの距離。これをお読みいただいているみなさまも、「深さ」という観点で銭湯を楽しんでみては。
帰りも叡山電車を利用。風呂上がりのジュースを握りしめながら、無人駅で電車を待つ時間も一興です。
東山湯温泉(ひがしやまゆおんせん)


多くの若者が行き交う夜の百万遍交差点。盛況な飲食店の隣に、これまた盛況なお風呂屋さん。
ここは田中中門前町の東山湯温泉。可愛いイラストののれんが目を惹きます。お店の方の趣味で、室内のいたるところにビートルズのイラストなどが貼られています。BGMもビートルズ!東山湯温泉オリジナルグッズもビートルズ!愛がひしひしと伝わります。
浴槽は、縁に深い青色のタイルが使われていて美しい。中はライトがピカピカ光って楽しい。東山湯温泉初心者でしたが、要素が満点で飽きることなく楽しめました。
銀水湯(ぎんすいゆ)

閑静な住宅街。地図を見つつお風呂屋さんを探します。ここかな?違う。ここかな?と通りすがる道々に会釈をするように進んでいくと、ある一つの小道で白い提灯に出迎えられます。
ここは浄土寺下南田町の銀水湯。浴場を見てみると、よく目にする白いタイルではなく、濃いブラウンのタイルが敷き詰められています。シックで美しい設え。お風呂に入っている自分まで垢抜けたように感じます。(実際に垢は落とせているから間違いではないのかも。)
銀水湯は完全軟水が特徴。番台さんに聞いたところによると、アトピーに悩むお客さんが「他のお風呂は入れないけど、ここなら入れる」と絶賛されたそうです。
乾燥肌にも効果があるとか。これは通うしかありません。
平安湯(へいあんゆ)


岡崎通と神楽坂通の坂道を下り、雰囲気の良いお店が並ぶ吉田東通りに出たところで発見。モダンな外観を有した銭湯が現れます。
ここは吉田下大路町の平安湯。靴箱の木製鍵は、雲形やレンコン形など様々な形があり、どこに入れようか悩みます。
浴室に入るとびっくり。男風呂と女風呂を隔てる壁一面に、鮮やかな絵。京都市のおまつりや寺社仏閣が描かれています。さらにラミネートされた解説書まで装備されています!文字数はけっこうボリューミー。そんな壁の絵と解説書を見ながら超音波泡風呂を堪能。心地よい揺らめきで体も心もほぐれます。
銀座湯(ぎんざゆ)

車通りの多い東大路通りから少し脇道にそれると、それまでのにぎやかさが嘘のように、閑静な住宅街に変わります。家と家の間に建つ銭湯。眼鏡モチーフの可愛らしいのれんに迎えられました。
ここは吉田近衛町の銀座湯。きれいな番台を抜けるとシンプルで整えられた脱衣所と浴場。中央に鎮座する浴槽は、皆が集まる憩いのスペースです。
入浴後、脱衣所でふと気になったポスター。めがね洗浄サービス…?実は、お店の方が元眼鏡屋さんだそうで、入浴した人は眼鏡クリーニングサービスを受けられるそうです。この時ばかりは眼鏡を持っていないことを嘆きました。
孫橋湯(まごばしゆ)


地下鉄「三条京阪」駅すぐ。繁華街が近く、観光客も含めた多くの人が行き交う通りから数分のところにあります。レトロなネオンが懐かしくも新しい雰囲気を醸し出す銭湯。
ここは新麩屋町通孫橋南入ル法林寺門前町の孫橋湯。白で統一されたモダンな浴場。コンパクトな区画に隙間なく整列しているお風呂たち。A型の筆者にとってはとても気持ちの良い光景です。
なんとここ、シャンプーとボディーソープが備え付け!旅行中にふらっと立ち寄ってみたいとき、山登りの後にさっと入ってみたいとき、何も持ってなくても大丈夫。手ぶらで楽しめます。
おわりに
実は左京区の銭湯、これだけではありません。栄盛湯(えいせいゆ)、鴨川湯(かもがわゆ)も左京区。左京区役所から歩いて行ける距離にあるので、近いうちに行こうと思います。
お読みいただいている皆様お気づきかと思いますが、この記事、写真が少ないです。脱衣所や浴場は、スマホなどの撮影できる機器が使用禁止のため、ご想像におゆだねする部分が多くなってしまいました。
でも、それが銭湯のいいところ。気づけばスマホで情報収集し、素晴らしい景色を見ても写真撮影に必死、片腕がスマホなのではというくらい常に携帯している私にとって、銭湯は強制デジタルデトックス場です。
ただ湯につかるだけ。ただぼーっとするだけの時間。何もできないし、何もしなくていい時間です。
忙しい毎日をお過ごしでしたら、ぜひ一度、銭湯に足を運んでください。スマホやパソコンはロッカーに閉じ込めて、頭を空っぽにしてお湯につかってください。体を温めると血の巡りが良くなり、肩こりや腰痛にも効きますよ。