京都市児童相談所 一時保護所第三者評価の令和6年度受審結果
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2025年8月4日
京都市においては、平成28年度から、児童相談所の適切な運用の確保を図ること等を目的として、児童相談所職員が行った自己評価を、第三者である本市審議会(京都市はぐくみ推進審議会児童福祉分科会児童支援・里親部会(※))の委員が評価する制度を実施してきました。
令和4年度からは、児童相談所の業務の質をより高め、子どもの権利擁護を推進するとともに、より客観性が高い評価を実施するため、民間評価機関による第三者評価を受審しています。
この度、令和6年度における評価結果をお知らせします。
当該結果を踏まえて、引き続き、児童相談所の質の確保及び向上に向けて取り組んでいきます。
(※)令和4年度からは「児童支援部会」及び「里親部会」に分離のうえ再編評価概要
1 目的
京都市児童相談所一時保護所における支援内容及び同所の体制等について、児童相談所における一時保護業務を理解し適切な評価を実施することができる第三者機関からの評価・講評を受けることにより、子どもの権利擁護機関としての児童相談所が機能しているかを確認するとともに、改善点や今後必要な取組等を確認し、児童相談所の質の確保及び向上を図ることを目的として実施するものです。
2 評価機関
一般社団法人 日本児童相談業務評価機関
3 被評価機関
京都市児童相談所一時保護所
評価方法
児童及び関係機関並びに児童相談所職員等へのアンケート及び実地調査(2日間)等
令和6年度評価結果
1 概要
・ 職員全体で子どもの安全、安心を支え、「子どもと向き合うためには何を最も大切にすべきか」と常に考え、職員の共通認識として子どもに日々関わっている。
・ 観察会議においては、相談部門のスーパーバイザーや京都市児童福祉センター診療所の児童精神科医の参加により高い専門性が維持・確保されている。
・ 入所児の自発的なお手伝いに対するフィードバックなどの取組を通じて、子どもの有能感や自己肯定感の向上や自立心の育成が図れている。
・ 日々の生活は子どもの好みに応じて過ごし方を自由に選べるなど、一人ひとりの子どもの自己決定を促し、その個性が尊重されている。
・ 学習指導について子どもの特性に応じた支援が行われていた。今後はプリント学習から授業形態の学習への拡大、子どものニーズに応じた一定教科(国語、算数、数学など)以外の学習指導、ICT の活用、在籍校との密接な連携による通学支援など、子どもの教育権の更なる保障を期待する。
・ 定員を大幅に超過することにより、職員が子ども一人ひとりにゆとりをもって接することのできないもどかしさや、時間的な余裕が乏しいことによる専門性獲得への焦りを感じている様子が見られる。
・ 現行の「入所のしおり」などには細かくルールが示されているが、現在行われている「まず子ども第一に」の実践にあわせて「入所のしおり」などを早期に改訂し、子どもの権利保障の更なる充実に取り組むことを期待する。
・ 以上のような「子ども第一のケア」を一層推し進めるために、大幅な定員超過状態の解消や職員の一時保護所在勤期間の再評価などの課題がある。
2 評価結果
○ 一時保護所職員が1つのチームとなって、子どもの安全、安心を支えておられるのが印象的でした。それは「子どもが主体であるが、子ども主導ではない」という職員の発言にあるように、職員一人ひとりがケアの責務を意識されてきた証であると考えます。そして子どもへの支援については、「子どもと向き合うためには、何を最も大事にすべきか」ということを常に考え、職員の共通認識として日々関わっておられます。 ○ このように職員の皆さんが共通の理念をもって取り組まれているのは、男女(含む幼児)別の棟会議での自由な発言、夜間勤務時の職員同士の振り返り、観察会議での該当児童担当以外、例えば相談部門のスーパーバイザーの意見など、様々な対話を積み重ねてこられた結果と考えます。更には「プロジェクト・プレアデス」と銘打たれた「みんなで考える。そして一人ひとりが発言する」という目標に向けた実践の成果といえます。また、京都市児童福祉センター診療所の児童精神科医の観察会議の参加は高い専門性も維持・確保となっています。今後もこのような風通しの良さ、体制を継続してください。 ○ 実際の子どもへのかかわりを通して、有能感や自己肯定感の向上や、自立心の育成を図っておられます。次のようなかかわりは全国の一時保護所の参考となるものです。それらは、1 自発的なお手伝いなどに「ありがとう」との感謝のメッセージカードが掲示される「ふわふわの木」、2 子どもの思いや意見を個別的に丁寧に聞き取る「ぽかぽかタイム」、3 入所後1か月時に子どもの素敵なポイントを記したコメントカード(例えば、「優しい心をもっているのを知っているよ」)を贈る「いいねタイム」などの取組です。 ○ 日々の生活では子どもに一律の活動内容を課すことなく、子どもの好みに応じて過ごし方を自由に選べるようになっています。ある子どもは居室に漫画やDVD を自由に持ち込んで楽しんでいました。また自分の居室に好きなキャラクターの写真等を貼るなど、安心できる空間を作ることができるようになっています。このような普段の生活への取り組みは、一人ひとりの子ども自己決定を促し、その個性が尊重されている実践です。 ○ 学習指導については時間や場所に工夫がなされ、子どもの特性に応じた支援が行われています。まず学習時間については子どもが集中できる時間帯が考えられており、タイマーによって視覚的に時間経過が確認できる備品が用意されるなど、子どもが集中できた実感が得られるようにされていました。またパーテーションで区切られた学習室は周囲の刺激が気にならないよう工夫されています。今後は次のような学習指導の充実が望まれます。それらは学習の大部分を占めるプリント学習から授業形態の学習の拡大、子どものニーズに応じて一定教科(国語、算数、数学など)以外への学習指導、ICT の活用などです。そして、在籍校との密接な連携によって、通学支援などの子どもの教育権の更なる保障を期待します。 ○ 職員へのヒアリングで聴き取りした「(子どもを)ゆっくりみて、もっと丁寧に関わりたい」の言葉には、定員を大幅に超過している現状が表われていると感じました。この言葉の背景として、子どもと真剣に向き合いながらも、定員を大幅に超過する現員のために、一人ひとりにゆとりをもって接することのできないもどかしさや、時間的な余裕が乏しいために専門性獲得への焦りを感じている様子が見られます。 ○ このような状況であっても、子ども達をルールで管理するのではなく個別のニーズに合わせようと努力されています。しかし、以前から引き継がれた現行の「入所のしおり」「(約束事の)説明文書」には、細かくルールが示されており、ルールによる管理によって安全を守ろうとする姿勢があったことが見てとれます。現在行われている「まず子ども第一に」の実践にあわせた「入所のしおり」等の早期の改訂が必要です。それらの枠組みの整備が追いつくことによって、子どもの権利保障の更なる充実に取り組まれることを期待します。 ○ 以上のような「子ども第一のケア」を一層推し進めるために、次の課題があると考えます。 ・ 「これまで過酷な生活環境・状況にあった子どもに新たな負担を強いることになっている大幅な定員超過状態の解消」 子どもの生活権の保障、子どもと職員のより良い関係性の構築、また職員の働きやすさの観点からも、早急に解決する必要があります。新たな一時保護所の開設や、児童養護施設等や近府県市の児童相談所への協力要請など多面的な検討が望まれます。 ・ 「複雑困難な課題を抱える子どもには高い専門性や十分な経験に基づく支援を要することから、職員の一時保護所在勤期間の再評価」 子どもの最善の利益が図られるよう、⾧期的な展望や包括的な視点をもって、これらの課題を幅広く検討されることが望まれます。また発達障害や精神疾患、アレルギー疾患、不定愁訴など健康上の配慮が必要な子どもも多いため、日常的な健康管理や服薬管理等の医療的ケア、及びケア職員への看護に関すること等をより充実するためにも看護職の常勤配置も検討課題として挙げられます。 |
取組み主体 |
課題、取り組むべき事項、具体的な取組内容の提案 等 |
職員 |
○ 重要な一時保護業務である子どもの観察では、子ども個人の特性の把握だけではなく、子ども同士の関係性を踏まえて子どもを理解しようと努められています。ローテーション勤務の業務引き継ぎでは、それら両面の具体的なエピソードが伝えられ、一貫した関わりを保てています。 ○ 若手職員から中堅職員に話しかけて相談できる雰囲気があります。このように職員を孤立させずにお互いを支え合う人間関係が構築されています。これは対人援助の核であり、この関係性が途絶えることがないよう維持・向上に努めてください。そのためにも組織の要となる中堅職員同士がお互いを支え合い、意見交換等の機会をもつことも望まれます。 ○ 一時保護所職員の一人ひとりが児童相談所全体における一時保護業務の位置づけや役割などを理解するマクロ的な視点を持つことを期待します。そして子どもにとって最も身近な大人である強みを活かして、相談部門への意見や、児童相談所業務全体への提案などを積極的に行い、所としての一層の協働に取り組んでください。 ○ 令和6年4月1日施行の「一時保護施設の設備及び運営に関する基準」や、令和6年3月30日付け支虐第165 号「一時保護ガイドラインの全部改正について」に沿った、子どもたちへの支援を充実させるために、トラウマインフォームドケアや性教育プログラムなどの外部の専門的研修への参加や、先駆的な取り組みを行っている一時保護所の見学なども必要でしょう。 |
児童相談所 (一時保護所) |
○ 現在の一時保護業務における「子ども第一」のマインドや、優れたケアの実践が所全体に定着し、専門的知識やスキルの継承が可能となるような職員体制が望まれます。そのためには一時保護所勤務が5,6 年目となる中堅職員が増え、更なる経験を積むことによって、指導教育担当職員が育成される人材育成プランの策定も必要でしょう。 〇 子どもの意見表明支援などの取組には男子棟と女子棟で差違があります。例えば、男子棟のみで実施されている子ども会議などの取組は、男女別の棟にかかわらず早期に開催すべき重要な支援です。 〇 以前には男子棟の定員超過があり、今年度は女子棟入所率が200%であるなど、慢性的な定員超過状態であり、緊急一時保護の受入に支障が生じると考えます。また、このような状態で次々と緊急保護を受け入れることは、入所している全ての子どもたちの安全・安心な環境を提供できなくなる危惧があります。一時保護解除後の施設入所等の困難さが全国的に指摘されていますが、現状の定員超過や入所期間の⾧期化の解消に向けた検討に着手してください。その際には近畿ブロックや全国所⾧会等での情報交換や協力要請を行うことや、一時保護を決定する相談部門と、受け入れる一時保護部門との連携の在り方についての再考も必要と考えます。 ○ 一時保護所に入所する子どもは健康上の特別な配慮を要する場合も少なくありません。このような子どもに対しては、日々の健康管理や煩雑な服薬管理が重要な業務となります。また学習面で困難を抱えている子どもが多く、個別的学習指導が必要です。このようなことから、看護師の専任配置や学習指導員の更なる増員を含めた個別的な学習環境を充実する取り組みが望まれます。 |
設置自治体 |
○ 一時保護所には運営課⾧以下34名の正規職員が在籍し、平均経験年数は2年6か月です。そのうち経験年数の内訳は2年以下の職員が15人(そのうち1年以下8人)と全体の半数近くを占めています。このように一時保護業務経験が短い職員が多いのにもかかわらず、職員が1つのチームとして結束でき、子どもの安全、安心を支える努力ができています。しかしながら、在勤期間が概ね3年程度であることは、組織全体の経験の積み重ねを阻害する要因となり、子どもへのケアの質の維持が危ぶまれます。一時保護される子どもが持つ複雑さや困難さが今後益々深刻化することを踏まえて、一時保護所職員の異動タイミングや在勤期間については再検討すべき時期であると思われます。 ○ 保育士へのヒアリングにおいて、「一時保護所の仕事を経験すると、保育所に戻ったときに役立つ」という意見がありました。これは保育所を中心とした地域の子育て支援にとって、効果的な人事の体制であるといえます。しかし、保育所業務と一時保護業務には、その対象児童の年齢、ニーズや背景等が大きく異なることから、一時保護所に特化したスペシャリストの育成が必要と考えます。改正された設備運営基準では、指導教育担当職員については一時保護施設における業務又は児童相談所での相談支援業務に5年以上従事した者との規程があります。貴所には一時保護所での業務に5年以上従事した職員、または5年を迎えようとしている職員が複数います。この規程の趣旨を踏まえた人事配置を検討してください。 ○ 慢性的定員超過の状況を解消するためには、また今後も入所を要する児童の増加が見込まれることより、第二児童相談所への一時保護施設の付設検討や、一時保護の委託先としての里親や児童養護施設等との一層の協力体制の確保など、広い視点での様々な取組についての検討が必要と考えます。このような取組を「京都市はぐくみプラン(京都市子ども・若者総合計画)」の後継プランや、「京都市社会的養育推進計画」などの諸計画に位置づけて推進することも考えてください。 |
国 |
○ 児童養護施設等における一時保護児童の受入のために専用ユニットなどの予算措置がなされています。しかしながら、児童相談所一時保護所の定員超過や保護期間の⾧期化といった深刻な現状は変わらないので、これらの早急な解消のためにも児童養護施設等への委託一時保護が円滑に実施できるよう一層の人事、財政的な支援拡充が必要と考えます。 〇 令和6年4月1日施行の設備運営基準や、令和6年3月30日の一時保護ガイドラインの改正に合せて、一時保護所で使用される「子ども向けのしおり等の説明資料」も改訂が必要です。国的には様々な地域特性を踏まえた改訂への取組がなされています。しかしながら、未着手の児童相談所もあるようです。全国の工夫・知見を共有し、子どもの最善の利益を擁護するためにも、「子ども向けしおり」についての全国調査の実施を希望します。 |
報道発表資料
発表日
令和7年8月4日
担当課
子ども若者はぐくみ局子ども若者未来部子ども家庭支援課 (電話:075-222-3939)
報道発表資料
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お問い合わせ先
京都市 子ども若者はぐくみ局子ども若者未来部子ども家庭支援課
電話:(代表)075-222-3939、(発達支援担当)075-222-3937
ファックス:075-251-1133