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人権総合情報誌「きょう☆COLOR」Vol.6(平成29年5月号)(HTML版)

ページ番号217714

2017年4月17日

人権総合情報誌「きょう☆COLOR」Vol.6(平成29年5月号)

輝きピープル 水泳選手・近畿大学所属 一ノ瀬 メイさん

右腕が短いのは、障害でなく、私の特徴

 7歳のときから水泳でパラリンピック出場を目指してきた一ノ瀬選手。初出場のリオ大会では、リレーメンバーの一員として日本新記録での6位入賞に貢献しました。一ノ瀬選手に水泳に懸ける情熱や2020年東京パラリンピックへの思いなどをお聴きしました。

パラリンピックに憧れて

 私は、1997年に京都市左京区で生まれました。今年で20歳になりました。父はイギリス人、母は日本人です。私は生まれつき、右腕の肘から先がありません。実家の近くに京都市障害者スポーツセンターがあったので、1歳半くらいから両親と一緒に通って、水泳に親しむようになりました。
 7歳のときに同センターの職員で、パラリンピックの競泳日本代表監督だった猪飼聡さんと出会い、「同じ障害の山田拓朗という13歳の選手がアテネ・パラリンピックに出るよ。」と教えてもらいました。そのとき、初めてパラリンピックの存在を知り、子ども心に自分も出てみたいなと思うようになりました。
 私の右腕は短いですが、大抵のことは何でもできます。水泳はもちろん、勉強も自転車に乗ることも髪をきれいに整えることもできます。私はずっと、自分の短い右腕は「障害」ではなく、「特徴」なのだと考えてきました。
 小学校3年生のときでした。本格的に競泳がやりたくて、地元のスイミングスクールの一般コースに申し込んだのです。そうすると「障害者向けコースがあるのでそちらにしてほしい。」と断られたのです。私は健康や楽しみのためでなく、水泳選手を目指して泳ぎ込みたかったのですが、いくらお願いしても理解してもらえず、ショックでした。私はそのとき、初めて自分が障害者であるということを認識させられたのです。
 翌年、母がイギリスのリーズ大学大学院に留学しました。私のために障害に関する研究の先進国であるイギリスで「障害学」を学ぶためでした。それで私も母と一緒に一年間、父の実家のあるイングランド東部の町、スカンソープの小学校に短期留学したのです。
 現地のスイミングスクールは日本とは大違いで、私を大歓迎して受け入れてくれました。公立の小学校に通学しながら、私は週2回スイミングスクールに通い、バレエとタップダンスも習いました。英語も読み書きが苦手だったのですが、このときにマスターすることができました。

史上最年少で銀メダル獲得

 帰国後、京都市内のスイミングクラブで自分を受け入れてくれる所を何とか探して、本格的なスイマーとしての練習を始めました。中学1年から高校3年までの6年間、※フィンスイミングの選手としても有名だった谷川哲朗さんにコーチをしてもらったのはとても幸運でした。谷川コーチとの出会いのおかげで水泳選手として大きく成長することができたと思います。

※フィンスイミング…フィンと呼ばれる足ひれを装着して行なう水泳競技

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 転機は、中学2年の2010年にやって来ました。中国・広州で開かれた4年に一度のアジア地域最高峰の大会、アジアパラ競技大会に出場しました。私にとっては初めての国際大会で、当時はまだ実績もなく、メダル候補にも入っていませんでした。それが、50メートル自由形で自己ベストを約1・5秒も更新して、史上最年少で銀メダルを獲得することができたのです。
 ロンドンパラリンピックが2年後に迫っていました。ずっと続けてきたバレエをやめて、水泳一本に絞り出場を目指しました。当時の自己ベストは出場資格が得られる派遣標準記録まであと0・2秒。夢に向かって努力はしたのですが、残念ながら届きませんでした。
 いつもなら結果にこだわらず、すぐに気持ちを切り替えることができたのですが、さすがにこのときだけは、そうはいきませんでした。心の底から込み上げてくる悔しさを簡単に振り払うことができなかったのです。そして、脳裏に浮かんだのは「自分はなぜ水泳をしているのだろう。」という素朴な問い掛けでした。
 「泳ぐ理由」を改めて考え直しました。数日間じっくり考えて出たのが、「やっぱり泳ぐことが好きやし、一ノ瀬メイという人間を一番表現できるのが水泳なんや。」という答えでした。世界の舞台で勝負している選手たちが見ている光景をいつか自分も見てみたい。心の底からそう思いました。パラリンピックが夢から目標に変わった瞬間だったと思います。

 大切なのはよく知ること。人はみんなそれぞれ異なっていて、特別だということを理解すること。

不本意に終わったリオ大会

 大学進学ではどこの大学にしようか悩みました。関西の大学で世界ランキングの選手がいて、高いレベルで水泳を目一杯やれる所ということで、近畿大学を選び、体育会系の水上競技部に入部しました。アテネ五輪バタフライ銀メダリストの山本貴司監督からの「表彰台の真ん中を目指そう。」の指導の下、練習に励み、リオパラリンピックに初めて出場することができました。
 リオ大会では、100メートル自由形、200メートル個人メドレーなど個人6種目と400メートルリレーなど団体2種目に出場しました。団体の400メートルリレーでは、日本新記録で6位入賞の成績を収めることができました。でも、個人種目では一度も決勝に進むことができず、不本意な結果に終わりました。目標にしていた全種目自己ベスト更新、前年の世界選手権で8位入賞していた200メートル個人メドレーではより上の成績を目指していましたが、目標を達成できませんでした。この種目に懸けていた個人メドレーが13位に終わって、部屋に帰っても涙が止まりませんでした。
 全く知らない人たちにも応援してもらったことは今までになかったことで、本当にうれしかったけれど、周囲の期待に自分のペースが乱れてしまって、みんなの応援を力に変えられなかったのです。メダルへの期待が高まっていることも感じていましたが、イメージ先行というか、実際の自分の実力とは懸け離れていて、正直しんどい部分もありました。

「障害の社会モデル」という考え方

 今は東京パラリンピックに向けて、寮生活をしながら、近畿大学水上競技部の選手たちと一緒に泳いでいます。50メートルの屋内プールもあり、とても良い環境で練習に打ち込むことができています。日本スポーツ振興センター(JSC)の強化選手にも選ばれ、オーストラリアへの遠征などの機会も頂いています。これも両親や猪飼さん、谷川コーチ、山本監督やこれまで私を応援し、支えていただいた多くの方々のおかげだと心から感謝しています。
 私は今、とても恵まれた環境にいるので、小学校3年生のときに体験したような障害に対する偏見や差別を余り感じることが少なくなっているかもしれません。もちろん、町の中でじろじろ見られたり、最初から障害のせいでできないと決め付けられたりして、嫌でも障害者であることを感じることがないわけではありません。
 高校3年生のときに「障害って何?」というテーマで英語スピーチコンテストに出場して、全国大会で優勝したことがあります。そこで私が強調したのは、「障害の社会モデル」という考え方でした。耳慣れない言葉かもしれませんが、「障害を生むのは個人の機能的な問題ではなくて、社会がその障害を作り出している」というイギリスで生まれた障害に対する新しい考え方です。
 社会が障害を作り出すということは、どういうことなのでしょうか。例えば、外国に行ったときに言葉が通じず、不自由を感じたことはありませんか。そのとき、あなたはその社会で「障害を持つ」ことになります。また、眼鏡やコンタクトレンズを着けている人が、そうしたもののない社会で暮らせば、たちまち「障害を持つ」ことになるのです。
 私は、大抵のことは自分でできるので、私の右腕は短いけれども障害ではなく特徴だと考えています。車いすを使う人もそこに段差や階段がなければ、その社会で「障害を持つ」ことにはならないのです。
 私はこの社会モデルの考え方に同意します。社会とは人間です。だから、私たち自身がその障害を作り出しているかもしれないのです。そして、社会が障害者を作るのなら、その社会が障害者をなくすこともできるはずなのです。
 障害の問題を考えるとき、まず大切なのはその問題についてよく知ることです。障害者に対する偏見や差別は無知から生まれます。日本人は何でもひとくくりにしがちですが、障害者は顔や性格が違うように一人ひとりが異なった存在です。大切なことはよく知らないで判断しないこと。人はみんなそれぞれ異なっていて、特別だということを理解することです。

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東京大会を盛り上げたい

 リオパラリンピックはそういう意味で、大きな成功を収めた大会でした。障害のない人たちがパラリンピックの競技者のことをよく理解して大会の運営に関わったのです。そのおかげで、大会の全ての競技会場はどこも満席で大いに盛り上がり、メジャーなテレビチャンネルで放映されて視聴率も高かったのです。こうした障害への理解と運営上の工夫が、東京パラリンピックがリオ大会のような成功を収められるかどうかのとても大切な要素だと私は考えています。
 東京パラリンピックまであと3年です。選手としては、是非良い成績を出して大会を盛り上げたい。それまでに世界大会が2回、アジア大会が1回ありますので、着実に結果を残していきたいと思っています。

Profile
一ノ瀬メイ さん
(いちのせ めい)
1997年、京都市生まれ。先天性の右前腕欠損。京都市立紫野高等学校出身、近畿大学水上競技部所属。2010年、アジアパラ史上最年少の競泳女子選手として初出場し、50メートル自由形で銀。2014年アジアパラ競技大会(仁川)では、200メートル個人メドレーと100メートル平泳ぎで銀、50メートル自由形、100メートル背泳ぎで銅を獲得。2015世界選手権(グラスゴー)では200メートル個人メドレーで8位入賞。初出場のリオ大会では個人・団体8種目に出場、400メートルリレー日本新で6位入賞。100メートル自由形で3年ぶりに自己ベストを更新。トビウオパラジャパンのホープ。2016年11月「京都市スポーツ栄誉賞」受賞。

プレゼント
サイン入り色紙を差し上げます!
一ノ瀬メイさんのサイン入り色紙を
3名様にプレゼントします。
どしどし御応募ください!

応募方法
ハガキに郵便番号・住所・氏名・年齢・電話番号・
「きょう☆COLOR」への御感想・御意見を
必ずお書きのうえ、以下の宛先へお送りください。

締切り
7月31日(月曜日)(当日消印有効)

宛先
〒604-8571(住所不要)京都市人権文化推進課
「きょう☆COLOR」Vol.6プレゼント係
★抽選結果の発表は発送をもって代えさせていただきます。

 

過労死の根絶をめざして~安心して働き続けられる職場づくり~

全国過労死を考える家族の会 代表世話人 寺西笑子さん

 私は、21年前(1996年)の2月に、夫(49歳)を過労自死で亡くしました。
夫は25歳で料理人を目指して調理師資格を取得し、飲食店へ就職して長時間労働に耐え懸命に働きました。その頑張りが認められて大型店の店長を任され、達成困難な売上げノルマを課せられました。自分に向かない飛び込み営業などの仕事も増え、夫の労働時間は年4000時間を超える過重労働になり、さらにパワーハラスメントを受け、うつ病を発症しました。会社へ睡眠障害と食欲不振など体調不良を訴えましたが、休めず、うつ病が悪化し飛び降り自殺を図りました。
 会社側は、土下座をして謝りましたが、数日後に態度が豹変し職場に緘口令が敷かれ、同情していた同僚や部下までが事実を話してくれなくなりました。
 当時は、過労自殺の認定基準がなかった時代で、相談に乗ってくれる弁護士にたどり着くまで1年以上掛かりました。退職者と支援者や専門医の協力を得られ、自死から5年後に労災認定が下りました。その後、反省しない会社を相手に安全配慮義務違反を問う裁判を起こし、京都地裁で4年の審理を経て勝訴しました。
 その後、大阪高裁において和解が成立しましたが、夫を亡くしてから、会社側が過失を認め謝辞するまで、実に10年以上掛かりました。
 もとより、夫は二度と生き返ってくることはありません。亡くなってからでは取り返しがつかないことを痛感し、どうすれば夫を救うことができたのか、考え行動することがライフワークになりました。
 私は20年前から過労死を考える家族の会で活動し、2008年から代表世話人として国への要請行動や遺族支援のほか講演活動などに奔走しています。
 2011年から本格的に始めた「過労死防止法制定運動」は、国民的な運動として発展し、2014年6月には国会において、過労死防止は国の責務であると明記した、過労死等防止対策推進法(過労死防止法)として、全会派一致で成立し、同年11月に施行されました。
 昨年10月に、「過労死防止法」に基づき、初めて「過労死等防止対策白書」が公表されました。国の調査機関で過労死ラインとされている残業月80時間を超えた社員のいる企業は2割を超えていることが明らかになり、この突出した働き方の改善が急がれます。
 人間は機械ではありません。企業は従業員の命と健康を何よりも重視すべきです。夫は、睡眠時間と家族と過ごす時間、自分の自由な時間を犠牲にして会社の利益のために尽くしてきました。その代償が過労死だったのです。
 命より大切な仕事はありません。過労死をした人の教訓を予防にいかしてほしいのです。過労死は真面目で責任感が強い人が被災する極めて理不尽な出来事、劣悪な環境に追い込まれると誰にでも起こり得ることで、他人事ではありません。
 これまで多くの命が奪われ、泣き寝入りをされた御遺族が多数いらっしゃいます。そうした思いを背負い、これからも過労死の根絶を目指して社会へ警鐘を鳴らしていきたいと思います。

2016年12月3日(土曜日)朝日新聞夕刊
寺西さんら遺族や弁護士たちが過労死問題について高校生に語る「出前授業」は、新聞にも取り上げられた。

全国過労死を考える家族の会

1991年結成、毎年、国へ労災の改善と過労死予防の要請行動を行うとともに会員同士悲しみを分かち合い励まし合って支え合う自助グループ。2013年に 国連・ジュネーブへ過労死問題を訴え、「過労死防止法」成立に貢献。以降「過労死等防止対策推進協議会」委員に会から4人が選任、啓発事業などに関わる。

我ら,企業市民

株式会社minitts(佰食屋)の場合

「売切れ御免」でワーク・ライフ・バランスを実現

「夫の作るおいしいステーキ丼をみんなに食べてもらいたい。」。佰食屋は同店を運営する「株式会社minitts 」社長、中村朱美さんのそんな思いからスタートしました。店名のとおり、一日百食が売り切れたらお店は閉店。そのおいしさが評判を呼び、連日ランチ時にほぼ完売状態です。商売繁盛の好循環の中で、社員も中村さん自身も仕事とプライベートが充実したワーク・ライフ・バランスの取れた経営スタイルを実践しています。

木調の清潔な店内
人気メニューのステーキ丼

株式会社minitts 代表取締役 中村朱美さん

楽しく働いて、プライベートも充実の経営スタイル

 亀岡市出身の中村さんは、大学を卒業後、専門学校の広報担当として忙しい毎日を過ごしていました。全国を飛び回る激務のため、しばしばプライベートを犠牲にしなければならない中で、明確な将来像が描けませんでした。ささやかな楽しみは、夫の剛之さんが夕食に作ってくれるおいしいステーキ丼。二人は「いつかステーキ丼のお店が持てたらいいね。」と夢を温めていました。
 不動産会社に勤めていた剛之さんは、退職したらと考えていましたが、中村さんは「そんなこと言ってたら、いつになるか分からない。今すぐやろうよ。」と思い切って提案。共働きで貯めた資金を元手に、平成24(2012)年9月、株式会社minitts (本社・京都市下京区)を設立。「いい肉の日」の同年11月29日に京都市右京区西院にステーキ丼専門店「佰食屋」を創業しました。
 資金調達から食材の仕入れ、店の運営まで、会社経営の経験がない中村さんにとって、開店当初は全てが手探り。取引実績も紹介者もない若い女性経営者というハンディに苦しみました。思ったように客足も伸びず、開店翌月の12月に入っても、客は一日に10人から20人と目標を大きく割り込んでいました。そんなときでも中村さんは、佰食屋の店名にこめた思いを胸に決意を新たにして頑張りました。
 中村さんの佰食屋のコンセプトは明快でした。会社を設立するときに自身に問い掛けたのが、「自分はこの会社で働きたいか。」ということでした。その結果、出た答えが、「長時間労働はたとえ給料が良くても嫌。」「晩御飯を家族と一緒に食べられること。」、「保育所や幼稚園に子どもを送り迎えできること。」でした。
  事業目的は、何よりも従業員が楽しく働いて、充実したプライベートの時間を確保できる会社を作ることです。「百」に「人(にんべん)」の付いた「佰」の字には「人(従業員)を大切にする店」という中村さんの強い思いがこめられていました。

短時間勤務やフレックスタイム制など次々充実

 平成25(2013)年の新年が明けると、急速に客足が伸び始めました。顧客の書いたブログが大手プロバイダーのニュースサイトのトップページに載り、テレビや新聞などのメディアにも採り上げられました。顧客がフェィスブックなどのSNSで情報発信して、それがまた客を呼ぶ好循環が生まれました。今ではランチタイムまでに目標としていた百食をほぼ完売。平成27(2015)年3月には河原町に「佰食屋すき焼き専科」を開店、今年3月には錦市場に低温調理した牛肉を寿司ネタにした「佰食屋肉寿司」をオープンして着実に業容を拡大してきました。
 三店舗の従業員24人のうち女性は18人、その中の9人に育ち盛りの子どもを持つ親がいます。そうした従業員の要望に応える形で、育児のための短時間勤務や子どもの保育所などへの送迎のためのフレックスタイム制、出産後の早期職場復帰を促す制度などを創設。これらの制度を支え、残業ゼロ実現のための余裕ある人員確保も進めています。
 中村さん自身も平成26(2014)年と28(2016)年に一女一男を出産。モデルケースとして出産後約1箇月で職場復帰を果たし、現在も保育園に預けている子どもたちをほぼ毎日、送り迎えしています。平成27(2015)年12月には、こうした活動が評価され、京都市の「真のワーク・ライフ・バランス」推進企業特別賞を受賞しました。

世の中のお母さんをハッピーにするのが使命

 佰食屋のワーク・ライフ・バランスを実現しているのが、主力商品を店ごとに絞り込み、一日百食限りとすることで、仕事量を減らして就労時間を従業員の要望に応じて調整する経営スタイルです。余分な食材を手元に持たないので、経営効率が高く、廃棄する食材もなく、店には冷凍庫がありません。
飲食業は長時間労働、低賃金、不安定な雇用形態の所が少なくありませんが、佰食屋はその逆方向を目指しています。24人の従業員のうちアルバイトなどを除く12人が正社員。高い商品力を維持するため原価率は50%と高くなっていますが、人件費に25~30%を割き、手元に残る利益は1~3%と極僅かです。中村さんは「従業員が働いて上げた利益は従業員に還元すべきもので、経営者だけが良い目をしようとか、会社に残そうとは考えていません。」と話します。
 佰食屋の次の目標は、四条烏丸界隈にサラリーマン向けのランチを提供する店をオープンすることです。出店先も目途が立ち、700円台ランチの商品企画もほぼ固まってきています。この店では、子どものいる30代・40代の優秀で労働意欲の高い女性を積極的に採用する方針です。中村さんは、「飲食店で働いてみたいと考えている女性は多いのですが、待遇面などで二の足を踏んでいるのが実態。世の中のお母さんをハッピーにするのが私の使命です。」ときっぱり。
 中村さんは社長の仕事を「集客と店舗展開」だと考えています。積極的にマスコミにも登場して店の名前をみんなに知ってもらうことで、お客さんにたくさん来てもらえれば、従業員の日々の仕事が早く終わります。また、中心市街地に店舗拡大して、四条烏丸でも新たな出店計画を進めるのは、給与のベースアップを実施するためと、目的は極めてシンプルです。中村さんは「社員を大切にすれば、店もサービスも良くなる。良いことずくめなんです。」と笑顔で語りました。

自分に合った勤務時間で働く従業員たち
京都市の「真のワーク・ライフ・バランス」推進企業特別賞を受賞

見て・知って人権 京の学生が行く

このコーナーでは、京都で学ばれている学生の皆さんに、取材や誌面作りに参加いただき、毎号、京都市の人権関連施設を

1箇所ずつ紹介していきます。

第6回
京都市子育て支援総合センター

龍谷大学1回生 五十嵐 由紀さん

京都女子大学4回生 岡本 和音さん

龍谷大学3回生 植松 裕太さん

  こどもみらい館はどのような施設ですか?施設の概要や役割などについて教えてください。

 乳幼児期の子育て支援の中核施設として、平成11年12月に旧竹間小学校跡地に建設されました。少子化や核家族化、地域コミュニティーの希薄化など、子どもたちを取り巻く環境が大きく変化する中で、子育てに不安や悩みを持つ保護者を支援し、安心して子どもを産み、育てることのできる環境を整備することを目的とした施設です。
 相談、研究、研修、情報発信、子育て支援ネットワーク構築の5つの機能があり、市民ボランティアとの協働により運営されています。1階には大型遊具や木のおもちゃがある「こども元気ランド」、2階と4階には相談室や研修室・会議室、3階には2万冊を超える絵本や紙芝居、育児書などを所蔵する「子育て図書館」などが設置されています。

 利用状況について教えてください。

 開館から27年度までの延べ来館者数は657万950人、1日平均1320人にお越しいただいています。開館以来毎年約40万人の御利用があり、このペースでいけば、平成29年4月中には700万人に手が届きそうです。
 利用者の大半は0歳から就学前の子どもと保護者ですが、貸しスペースを有料で提供していますので一般の方の利用もあります。「子育て図書館」は年間平均22万5千人の利用があり、親子で絵本を読むために借りていかれるケースが多いのではないかと思います。こどもみらい館は毎週火曜日と年末年始が休みですが、土・日・祝日も開館しているため、「こども元気ランド」は、最近では他都市からの旅行者や外国人の利用も多く、しばらくお待ちいただくほどにぎわうときもあります。

  こどもみらい館の特徴的な取組について教えてください。

 まず一つ目は、保育園(所)・幼稚園・認定こども園(※)の先生方に向けての研究、研修です。市内にある250の保育園(所)と116の幼稚園、19の認定こども園が一体となって全国初の「共同機構」を組織し、取り組んでいます。保育内容や子育て支援をテーマに様々な研修を実施し、平成28年度は238園(所)から1424人の参加がありました。また、保育の質の向上と子育て支援をテーマとした研究にも取り組んでいます。
 二つ目は相談事業です。臨床心理士等による子育て相談と医師等による健康相談、電話ボランティアによる電話相談があります。また、子どもを遊ばせながら気軽に問い合せできる「こども元気ランド」での相談もあります。また、「子育ての楽しさ再発見」「子育ての不安の解消」「親同士の仲間づくり」を目的として、情報発信事業を展開しています。子育てパワーアップ講座、子育てセミナー等親子向けの講座等のほか、保護者と子どもが自由に参加し、子育てなどについて気軽に話し合える子育ての井戸端会議も好評です。
 三つ目はボランティアとの協働です。子育て支援ボランティアは4ヵ月の研修を経て、「こども元気ランド」、「子育て図書館」、「総合案内」など様々な部署で、活躍していただいています。また、電話相談ボランティアは専門的な対応が求められるため、1年半の養成期間を経て活動いただいています。
(※)教育・保育を一体的に行う施設で、幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持つ施設

 最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

 子どもたちの人権という視点から見ると、こどもみらい館が実施している様々な事業に参加していただくことにより、子育てに悩みや不安を持つ保護者に、子育てに対する自信を持ち、子どもへの想いを高めていただき、安心して帰っていただくことが、児童虐待防止にもつながっています。
 平成29年4月から、こどもみらい館は、子育て支援施策の一層の推進を図るために新設される「子ども若者はぐくみ局」に移管され、新しいステージを迎えました。これまで、親子を対象とする事業、保育士や幼稚園教諭等の専門職や保育者を目指す学生を対象とする事業、子育て支援ボランティアを養成する事業等を展開してきましたが、今年度からは、新たに、地域において子育て支援をされている方を対象にした事業も開始します。また、「子育ての井戸端会議」については、妊娠中の方も参加できることとし、子育て中の先輩から様々なアドバイスをしてもらえる場といたしました。これからも是非多くの方にこどもみらい館を利用していただきたいと願っています。

お話を伺った方
京都市子育て支援総合センターこどもみらい館事業課長 山﨑晶子 さん(平成29年3月末現在在籍)

子育て図書館
 絵本や紙芝居のほか、子育て、保育・幼児教育に関する約2万8千点の図書、ビデオ、DVDなどがあり、閲覧・貸出しを行っています。毎日2回、絵本や紙芝居を使った「おはなし会」を開催。パネルシアターや大型絵本の読み聞かせなどの「おたのしみ会」や「赤ちゃんと絵本のふれあい会」を毎月開催しています。

 「おたのしみ会」では、子どもたちが目を輝かせてお話を聴いていますよ。また、平日の夜は8時半まで開いているので、学校帰りやお勤め帰りにも利用できるのはいいですね。

こども元気ランド
 滑り台などを組み合わせた大型総合遊具や直径3センチほどの木製ボールを砂代わりにした木の砂場、木馬、「ごっこハウス」など楽しい遊具がいっぱい。親子で一緒に遊びながら、子育て世代の交流や情報交換もできます。1日3回、ストリートオルガンを演奏しています。また、相談員が子育ての相談にも応じています。

 ボランティアとして4年間、主に「こども元気ランド」でお手伝いしていますが、楽しいおもちゃがたくさんあって子どもたちは本当にうれしそう。こちらまで笑顔になります。

和室(第3研修室)
 21畳の和室は広々としていて「子育ての井戸端会議」や保護者が子育ての悩みを話し合う「ほっこり子育てひろば」など親子が集う場に利用されています。参加した親子が畳の上でゆったりくつろぎながら交流できる空間です。

 和室は畳敷きですから、赤ちゃんや小さな子どもたちが寝転んだりできるので、親子ともどもリラックスできると思います。私も将来、子どもが出来たら、是非家族で一緒に来てみたいですね。

施設情報

■所在地 〒604-0883 京都市中京区間之町通竹屋町下る楠町601番地の1
■問合せ先 TEL:075-254-5001(代)
■ホームページ http://www.kodomomirai.or.jp外部サイトへリンクします
■開館時間 午前9時~午後9時(日・祝日は午前9時~午後5時)
■利用時間 こども元気ランド(1階) 
平日・土:午前9時~午後6時 日・祝日:午前9時~午後5時
子育て図書館(3階) 
平日:午前9時30分~午後8時30分 
土・日・祝日:午前9時30分~午後5時
■休館日 火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月28日~1月4日)
■入館料 無料
■交通案内 地下鉄「丸太町」下車で徒歩3分、「烏丸御池」下車で徒歩7分
市バス「烏丸丸太町」下車で徒歩3分

部落差別解消推進法が施行されました!

 部落差別解消推進法(部落差別の解消の推進に関する法律)が、昨年12月16日に公布・施行されました。
この法律の目的は、第1条で、「現在もなお部落差別は存在する」こと、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じている」ことを踏まえ、「部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題」であるとして、部落差別の解消を推進し、部落差別のない社会を実現することであるとしています。
また、第2条では、基本理念として、「部落差別の解消に関する施策は、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるよう努めることにより、部落差別のない社会を実現することを旨として行わなければならない。」としています。

 そして、この基本理念にのっとり、第3条では国及び地方公共団体の責務を定め、第4条以下では具体的な施策として、「相談体制の充実」、「教育及び啓発の実施」及び「実態調査の実施又は協力」を挙げています。

第3条

国 ・‌部落差別の解消に関する施策の実施 ・‌地方公共団体が部落差別の解消に関する施策を推進するために必要な情報の提供、指導及び助言

地方公共団体  「国との適切な役割分担」を踏まえ、「国及び他の地方公共団体との連携」を図り、「地域の実情」に応じ、 部落差別の解消に関する施策の実施に努める。


第4条 

国 部落差別に関する相談に的確に応じるための体制の充実

 地方公共団体 「国との適切な役割分担」を踏まえ、「地域の実情」に応じ、 部落差別に関する相談に的確に応じるための体制の充実に努める。


第5条 

国 部落差別を解消するために必要な教育・啓発の実施  

地方公共団体 「国との適切な役割分担」を踏まえ、「地域の実情」に応じ、部落差別を解消するために必要な教育・啓発の実施に努める。

第6条

国 地方公共団体の協力の下、部落差別の実態に係る調査の実施

地方公共団体 国が行う部落差別の実態に係る調査への協力

偏見や差別は、間違った認識の下に起こり得ます。国民は、全て等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されます。法律の施行を契機として、今一度、部落差別解消の必要性についての理解を深めていただければと思います。
そして、「ひとがつながり みんなでつくる やさしさあふれる 人権文化の息づくまち・京都」を目指しましょう!

人権相談ダイヤル
~人権擁護委員は、あなたの街の相談パートナー~

いじめ、差別、虐待、セクハラ、配偶者やパートナーからの暴力など、人権に関することでお困りのことはありませんか? そんなときは、一人で悩まずに「人権相談ダイヤル」にお電話ください。

(無料、秘密厳守)
0570-003-110
ゼロゼロみんなのひゃくとおばん

こんな場合はどうすれば…?~事前登録型本人通知制度について~

質問 戸籍謄本等が身元調査目的で不正取得されるとの事件がありましたが、自分と家族の戸籍謄本が不正に取得されているのではないか心配なのですが?
お答え 京都市には、事前登録型本人通知制度(以下「制度」といいます。)があり、市内に住所や本籍のある方はどなたでも、無料で利用することができます。

質問 制度の内容は、どのようなものですか?
お答え この制度は、住民票の写しや戸籍謄本等を本人の代理人や第三者に交付した場合に、事前に登録された方に対して、交付した事実を通知するものです。 住民票の写し等の不正請求及び不正取得による個人の権利・利益の侵害の防止を図るとともに、住民票の写し等が第三者に交付された事実を知る権利を保障することを目的としています。    
[注意!] この制度は第三者からの請求を拒否したり、交付の可否を登録した人に確認する制度ではありません。


質問 第三者が、私の住民票の写し等の交付を請求することができるのですか?
お答え 住民基本台帳法及び戸籍法では、相続手続、訴訟手続など、「権利の行使」、「義務の履行」及び「行政機関に提出する必要がある場合」など正当な理由がある場合は、本人以外の第三者が請求できることとされています。
 また、特定事務受任者(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士)についても、受任している事務の遂行上必要な場合は請求することができます。
 なお、第三者からの請求があった場合は、請求者の本人確認や、請求理由を確認する資料の提示を求めるなど、厳格な審査を行い、適正な交付事務を行っています。
 
質問 第三者請求があったときは、どのような内容を通知してもらえるのですか?
お答え 原則として、証明書を第三者に交付した日から30日を経過する日以降に登録者本人宛てに、以下の内容を郵送で通知します。
○交付年月日
○交付した証明書の種別
○交付通数
○請求種別(代理人請求、代理人以外の第三者請求(個人、法人、特定事務受任者))
※請求者の氏名や住所等の情報は記載されません。

質問 登録の手続は?

お答え 区役所、支所、出張所でお渡ししている申請書に必要事項を記入して、住民票については住所地、戸籍については本籍地の区役所、支所、出張所に提出してください(郵送による申請も可能です)。申請書は京都市のホームページからもダウンロードできます(アドレス: https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000167204.html)。
 詳しくは、下記又は最寄りの区役所、支所市民窓口課、又は出張所にお問い合わせください。

【問い合わせ先】京都市文化市民局地域自治推進室(電話222-3085)

《お知らせ》

講座開催の御案内
京都市主催 平成29年度  企業向け人権啓発講座
参加費 無料
※ 対象は、京都市内に事業所を持つ企業等の経営者層、総務・人事責任者、人権研修推進者等です。

第1回 講演 ブラック企業にならないために ~実態を踏まえたブラックバイト対策について~
●日時 平成29年6月7日(水曜日)午後2時30分~午後4時30分
●場所 キャンパスプラザ京都 ホール
(下京区西洞院通塩小路下る東塩小路町939)
●パネルトーク 京都市わかもの就職支援センターチーフコーディネーター、京都労働局担当官、京都CSR推進協議会会長
●制度紹介 「就労・奨学金返済一体型支援事業」
●定員 80名(先着順)
●申込期間 平成29年4月17日(月曜日)~平成29年5月31日(水曜日)

第2回 講演 セクシュアルマイノリティとして生きること ~当事者がカミングアウトしなくていい社会づくり~
●日時 平成29年6月15日(木曜日)午後2時~午後4時
●場所 京都市男女共同参画センター ウィングス京都 セミナー室
(中京区東洞院通六角下る御射山町262)
●講演1 小林 和香(神戸IDAHO 代表)
●講演2 内藤 れん(れいんぼー神戸)
●定員 80名(先着順)
●申込期間 平成29年4月17日(月曜日)~平成29年6月8日(木曜日)

第3回 講演 同和問題の現状と啓発・研修の課題
●日時 平成29年7月13日(木曜日)午後2時~午後4時
●場所 京都市男女共同参画センター ウィングス京都 セミナー室
(中京区東洞院通六角下る御射山町262)
●講演 石元 清英(関西大学社会学部教授)
●定員 80名(先着順)
●申込期間 平成29年4月17日(月曜日)~平成29年7月6日(木曜日)

第4回 講演 インターネット社会と人権 ~守ろう人権、守ろう職場~
●日時 平成29年9月4日(月曜日)午後2時~午後4時
●場所 京都市男女共同参画センター ウィングス京都 セミナー室
(中京区東洞院通六角下る御射山町262)
●講演 佐藤 佳弘(株式会社情報文化総合研究所 代表取締役)
●定員 80名(先着順)
●申込期間 平成29年4月17日(月曜日)~平成29年8月28日(月曜日)

第5回 講演及びロールプレイ ハラスメントを防ぐには? ~今、企業に求められる防止策~
●日時 平成29年10月2日(月曜日)午後2時~午後4時
●場所 京都市男女共同参画センター ウィングス京都 セミナー室
(中京区東洞院通六角下る御射山町262)
●講演 三木 啓子(アトリエエム株式会社 代表取締役)
●定員 80名(先着順)
●申込期間 平成29年4月17日(月曜日)~平成29年9月25日(月曜日)

申込方法
ホームページ「京都市:トップページ(https://www.city.kyoto.lg.jp/」から
画面上部「暮らしの情報」→画面右下部「人権」→「企業啓発」→ 「企業向け人権啓発講座」
を御覧ください。
申込書(開催案内の一部)に必要事項を記入のうえ、
FAX(075-366-0139)でお送りいただくか、
電子メール([email protected])に必要事項を記載して送信してください。
また、手話通訳・要約筆記(事前申込みが必要です。)など、詳細については、各講座の開催案内を御覧ください。

『人権啓発サポート制度』
 市民の皆さんや会社などのグループで、人権に関する研修を行われる際に、講師の派遣や紹介、ビデオ(DVD)の貸出し、資料の提供などを行っています。
 お気軽に御相談ください。

ホームページ「京都市:トップページ(https://www.city.kyoto.lg.jp/
から画面上部「暮らしの情報」→画面右下部「人権」→「企業啓発」
            「人権啓発サポート制度」を御覧ください。


編集後記
 熊本地震が発生して1年が経過しました。全国から多くのボランティアが駆け付け、また、生活物資が送られるなど、支援の輪が広がりました。地震発生後しばらくは、テレビや新聞でもこうした光景はよく目にしますが、人々の関心は徐々に薄れていきます。災害をテーマとした、とある講演会での講師の話。「被災者にとって、『忘れられること』が最も残酷なこと」、「『忘れない』という支援こそが大事」、「『関心を寄せる』『見続ける』『忘れない』これが支援の基本」であると。一人一人が意識することで、更に大きな支援の輪を築いていければと思います。

人権総合情報誌 きょう☆COLOR vol.6 (発行 平成29年4月)
発行:京都市 文化市民局 くらし安全推進部 人権文化推進課 
☎ 075-366-0322 FAX 075-366-0139   
〒604-8091
京都市中京区寺町通御池下る下本能寺前町500番地の1 中信御池ビル6階
URL https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/soshiki/6-2-3-0-0.html
この冊子はホームページでも御覧いただけます。また、区役所・支所、市役所案内所ほかで
配布しています。

お問い合わせ先

京都市 文化市民局共生社会推進室人権文化推進担当

電話:075-222-3096

ファックス:075-366-0139

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