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門川市長記者懇談会(2020年11月17日)

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2023年4月12日

門川市長記者懇談会(2020年11月17日)

市長記者懇談会(2020年11月17日)

(11月補正予算について)

記者

11月補正予算の位置付けについてお伺いします。

 

市長

 新型コロナウイルス感染症が冬季に入り再拡大している厳しい状況になりつつありますが,初めに感染防止対策に対する支援についてです。特に飲食店等に対しては,今まで様々な取組を行ってきましたが,冬場を迎えて,換気など感染防止の取組に対する支援を行っていきます。

 もう1点は,雇用の確保です。京都市がいち早く,コロナで離職された方を再雇用された中小零細企業等に対する支援を行ってきましたが,非常に好評で,それを西脇知事とも相談のうえ,京都府域全体でやっていこうとなりました。9月補正予算でも増額しましたが,なお,需要が多いということで,今回も大幅な補正を行いました。厳しいコロナ禍のもとで,雇用を守っていく。そして福祉や中小零細企業など,今なお人を必要としているところに働く場を提供して,雇用の継続を進めていきたいと思います。

 それから,感染防止対策を徹底しながら,2月,3月の京都観光の一番の閑散期なども見通して,府市協調で促進させる。全国の方に,厳しい状況にある京都に宿泊いただき,土産物店等でお買い物をしていただく。そんな宿泊観光を通じた消費喚起の取組も多くの関係者の御要望を踏まえて実施します。

 正直に申し上げて,秋の修学旅行が昨年の約30パーセントになっております。そして,年間を通じて一番観光客が少ない2~3月を控えて,店を閉じなければならない事業者が出てくるのではないかと,多くの関係者の皆さんが非常に懸念されております。

 京都市で出来ることはわずかなことですが,国の事業も取り込んで,さらには府市協調で京都の魅力を再発見し,厳しい状況の中でも継続されてきた事業者の支援を行います。

 

(市税条例の改正について)

記者

 市税の減免措置廃止に係る条例改正について,継続審議になっていますが,改めて市長の受け止めをお願いします。

 

市長

 市長就任以来の大きな課題でした。3度にわたり外部有識者の審議会等から減免を継続することについての妥当性を検証して,廃止していくべきだという意見をいただいてきました。ただ,減免だけでなく,福祉施策等と関連することがあるので,慎重に慎重に取り組んできましたが,減免措置を行っているのが京都市だけになって,さらに御承知の通り,国において,森林環境税の徴収が令和6年度から実施される。そういう状況の中で,この制度を継続していくことが問題となっていた。

 京都独自の制度として維持,継続できなくなってきたということで,廃止せざるを得ない。そこで,議会でも議論いただいておりますけども,すでに減免措置を受けておられる方々に対する経過措置等について,行財政局長をトップに,財政担当局長,子ども若者はぐくみ局長,保健福祉局長を含め,きめ細かく検討しており,全庁挙げて取り組んでいくということを議会にも市民の皆さんにも説明していきたいです。

 

記者

 市税減免の関連ですが,33年ぶりの継続審議になったことについて,市長の受け止めをお願いします。

 

市長

 福祉施策等に非常に影響を与えることですので,議会において,継続して議論したいと思います。私どももなお,説明責任を果たしていかねばならないと思います。

 

記者

 市民は,70年以上続けてきたことをなぜ今廃止なのかという思いが一番あると思うのですが,市長として課題を認識してきた中で,廃止を行うという決断に至った経緯を教えてください。

 

市長

 70年前,我が国において,きめ細かな福祉政策というのが,国としても十分ではなかった。減免措置はその時に多くの地方自治体が取り組まれた制度のひとつであります。この間,様々な社会的課題を抱えた方,経済的に厳しい方に対する福祉政策は全国で大きく充実してきております。その中で,三度にわたってこの制度はもう実施していく意義は薄れている,なくなってきているのではないかという答申等を受けてきました。ただ,福祉施策等に連動する部分が多かったために,廃止の決断を先延ばししてきたというのが実態であります。

 そこに,ひとつの大きな要素として,日本の大切な森林を国民で等しく負担しあって守っていこうという森林環境税の制度が出来ました。その時にこの減免制度を続けていると,京都市の4万人ほどの方は,森林環境税までが減免されてしまいます。こういう制度はありえないと思います。従って,これは令和6年度をタイムリミットとして廃止せざるを得ない。福祉に関連して,既に減免を受けておられる方々に対する経過措置をどのようにしていくかという,非常に広範囲にわたり複雑な問題ではありますが,しっかりと検証し,議会にも説明したいと思います。

 

記者

 福祉施策に連動する部分が多かったために廃止の決断を先延ばしにしてきたとのことでしたが,先が見通せない現在のコロナ禍で決断された意味を教えてください。

 

市長

 国において,コロナ対策については,低所得者等向けにきちっと取り組まれており,これからも取り組んでいくとのことです。コロナの関係で,新たな経済的な課題が出る方に対し,我が国の様々なセーフティネットはしっかりしているので,我々も一人一人の経済状況や困りごとの状況を踏まえた施策を提供し,また相談に応じていくことが大事だと思います。

 

記者

 継続審議になったことについて,丁寧に説明をしていきたいとのことですが,今回継続審議になったことは色々なシミュレーションや,実際の影響が見通せないために継続になったということだと思いますが,市長自身の口から今回の減免廃止の条例改正について説明される機会というのは公の場ではなかったと思います。その点については,いかがでしょうか。

 

市長

 決算議会でしたので,議会の運営上,決算や補正予算等が主たる議題になり,私自身が説明する機会がなかったことについては,御指摘の通りです。今度の議会でしっかりと御説明申し上げたいと思います。

 

(宿泊観光の促進による需要喚起について)

記者

 本日午前中に府から,府市協調の施策として,平日の観光を推進するため,平日に宿泊された方に抽選で3,000円分のクーポン券を配るという話がありましたが。

 

市長

 府市協調で実施する部分と,京都市として実施するものがあります。限られた予算を最大限有効に生かしていくため,利用者に抽選でクーポン券が当たり,それで3,000円分の食事や,伝統産業製品等を購入していただきます。Go To EATに加えて,京都の魅力を発信し,厳しい状況にある伝統産業等の支援にもなる制度です。

 本音を申し上げると,修学旅行で大きなダメージを受けられて,そして春節もゼロということで,料理旅館さん等々が年度を越せるかどうかという状況です。感染拡大に注意しつつ,お客さんを迎えることも大事だと思います。


記者

 府市協調で,平日の宿泊客に対し,クーポン券を配ることについて,特に欲しいものはないがとりあえずクーポン券を使って何かを買う,そして消費喚起につなげるという考え方は,SDGsの趣旨に反しているように思います。本当に欲しいものを大事に使っていただくということが京都市や市長が大事にしてきたことであると思います。今回の消費喚起策は,ばら撒きのようにも思えてしまいますが,その辺りについてはどのようにお考えでしょうか。

 

市長 

 府市,観光事業者,伝統産業関係者と侃々諤々の議論をしました。その中で,厳しい状況にある飲食店や伝統産業界のためにも,需要喚起が大事であるとの結論に至りました。9月末まで実施していました,「地元応援!京都で食べよう,泊まろうキャンペーン」においては,抽選で1万円の商品が当たるということもあり,大好評でした。しかし,今回は,宿泊施設において,休日は回復しつつあるが,週をならせば客室稼働率は3割台であるといった厳しい状況も踏まえて,平日に特化した制度にしております。

 ぜひ,これを広めていただくことによって,たくさんの人に,伝統産業,飲食店を楽しんでいただきたいと思います。また,特定の商品を押し付けるわけではなく,選択していただくわけですから,無駄なものを貰っていただくということにはならないと思います。

 

記者

 一方で,京都市財政においては,コロナという想定外もあり,様々な見通しを下方修正しなくてはならない状況の中で,今回の施策はそれでも必要な施策ということなのでしょうか。少し,観光に特化しすぎているという指摘もあるかと思いますが。

 

市長

 率直に申し上げて,経済が回れば,大きく税収にも跳ね返ってきます。したがって,国等の色んな補助制度もあったわけですが,やはりお客さんに来ていただくことが,従業員のモチベーションの向上になり,そして経済を回していくことになります。さらには,雇用が確保され,そして税収にも跳ね返ってくる。非常に効果的な取組になると確信しております。

 

記者

 前回の「地元応援!京都で食べよう,泊まろうキャンペーン」は,マイクロツーリズムの施策でしたが,今回は全国一律を対象とされております。事業者からは,お客さんが来てほしいとの声もあるとのことですが,市長としても,ぜひ京都に来てほしいお考えでしょうか?

 

市長

 前回実施時は,都道府県を越える人の移動を制限しておりました。国民的にも都道府県を超えてはあまり動かないでおこうという風潮がある時に,京都市民が京都の魅力を再発見,厳しい時に京都のお店を支えましょうという趣旨で実施しました。今は,そういう事態ではありません。観光客が地域住民に感染を広げている,うつしているという事例はほどんど確認されておりません。観光客の中でうつっているという事例はありますが。特に京都において,そういう事態はないわけですから,京都にお越しいただけるとありがたいです。先ほど申しましたが,修学旅行については,京都の全ての市立小・中・高等学校で,旅行日程等を工夫する等,感染防止対策を徹底した上で実施します。

 細心の注意を払ったうえで,既に中学校では2校以外は修学旅行に行きました。小学校も半分は既に行き,残りの半分も行く予定をしております。中止した方が先生は安心ですが,やはり子ども,保護者からすると,一生の想い出であるということもあります。現在は,感染拡大しておりませんし,京都に来られた方から感染しているという状況もございません。ただし,緊急事態に備えた取組はしています。

 例えば,出発してから家族が濃厚接触者になったため,その人を隔離するといった事例も1,2件ありましたが,事なきを得ております。万全の体制をとりながら,経済を回していかなければならないと思っております。

 

(ポケモンGOのイベント開催について)

記者

 ポケモンGOの京都開催イベントについてお伺いします。開催はあくまで民間事業者の判断であるとは思いますが,プレスリリース内のコメントでは,市長が歓迎する意向を示されています。市民からは,3連休中という最も混む時期に,大規模なイベントを歓迎するのは,コロナ対策上いかがなものかという声もありますが,どのようにお考えでしょうか。

 

市長
 主催者において,コロナ感染拡大防止対策は徹底されると聞いています。私どもも,それは強く要請しています。今,室内の換気の悪いところが大きな感染リスクに繋がる例が多いですが,今回は屋外のイベントです。ただ,屋外であっても,距離を取り,マスク着用を徹底していただく。また,個人での対策だけでなく,周囲の環境という面でも対策を徹底していただく必要があります。

 

記者

 全国的な規模で集客するようなイベントでは,前提として,参加者の把握をする必要があるという問題があります。ポケモンGOのイベント参加者の動向把握という点について,事業者にはどのように求めておられますか。

 

市長

 その点についても,事業者において,最大の取組をしていただけるように要請をしております。

 

記者

 感染症対策をしながらも,一方で社会経済を回す。そうした中で,今回のようなイベントの開催は難しい判断であると思います。今回のイベントの実施に賛同されたのは,どういう点からでしょうか。

 

市長

 感染拡大防止,市民の皆様の命と健康を守ることは極めて大事であります。同時に運動不足やコミュニケーション不足,孤立をいかに防いでいくかなど,課題も出てきています。今回のポケモンGOのように,地下鉄等で行けるところに足を運び,また,アプリ上で多くの人とも繋がる,こうした新しいモデルの事業を通じて,感染拡大防止と社会経済活動の両立に資するものであると考えております。
 しかし,現在,感染が拡大しています。対策を徹底していただくことを,事業者には重ねて注意喚起したいと思っています。

 

(財源不足について)

記者

 来年度予算で500億の財源不足が見込まれている点について伺います。持続可能な行財政審議会では,財政課の目標として,2033年に償還基金を一年分は残したいという計画がありました。しかし,この計画では,これまで掲げてきた「特別の財源対策からの脱却」には不十分ではないか思われますが,市長はどうお考えですか。

 

市長

 極めて脆弱な財政状況です。市長就任後,リーマンショックで過去最高の税収減となりましたが,10年掛けて税収をアップさせてきました。全国トップ水準の医療,福祉,子育て支援,教育,安心・安全については更に向上させながらも,国の施策等とも連携して,必要な先行投資も行い,将来の担税力の向上に努めています。5年間で人口は横ばいで,高齢化が進んでいますが,個人市民税納税義務者は5%増え,市民税も過去最高を更新しました。また,宿泊税収入は42億円。こうした好循環が出てきました。しかし,税収が増えてきた一方で,地方交付税が大幅に削減され,この2~3年間は自然災害にも見舞われて,公債償還基金を,昨年は50億円取り崩さなければならないような事態もありました。さらには,新型コロナウイルス感染症という予想外の事態にも直面しました。

 当面は,一定の行政水準を維持していくためにも,あらゆる改革を進めてまいりますが,公債償還基金を活用して,ソフトランディングしていくことはやむを得ないと考えています。持続可能な行財政審議会で御説明したのは,「少なくとも公債償還基金1年分は残さなければならない」という決意のようなものでした。しかし,1年分でいいという意味ではありません。いかにして公債償還基金の取り崩しを少なくしていくか。あらゆる施策の見直し,均衡をとらなければなりません。経験のないコロナ禍によって,雇用の状況がどうなるのか。今後の税収がどうなるのか。いろんなケースをお示ししながら,開かれた場で様々な議論をしております。

 中長期の目標として,特別の財源対策から脱却するのは当然であります。しかし,市民の皆様へ丁寧に説明しながら,様々な施策を実行する必要があります。コロナ禍のもとで,相対的に全国水準から高い施策を全部なくしてしまうこと,これは直ちにできることではありません。一方で,財政再生団体になれば,財政に自主権がなくなる。市民の皆様に大変な御迷惑をかけることになります。だから,そのバランスが非常に難しい。

 また,京都の都市の魅力は大きく向上しました。全国一の都市力,都市格です。しかし,それらが京都経済の活性化に十分に生かされてない。景観政策も,保全・再生・創造のバランスが重要と言われた2年でした。しかし,まだ保全に重点を置いており,京都のポテンシャルが活かされてないという指摘もあります。景観政策から10年以上が経過しました。景観と経済のバランスを取るため,市民的な議論が増えてきたわけです。中長期にわたって,都市の魅力を最大限に活かして,市民の皆様の豊かさにつなげ,担税力の向上に結びつける。これは,必ずできると思います。

 京都のまちというのは,危機を乗り越えて発展してきたまちです。しかし,発展には時間も掛かります。直ちに税収が増えるということではありません。また,国の地方交付税等の増額については,強く要請してきましたが,不確定要素が極めて多い。コロナ禍は,国においても経験のない事態ですので,不確定要素がたくさんある。そんな中で,我々はギリギリのところで決断,選択し,実行していかなければならないと考えております。

 

記者

 財政問題について,コロナの影響は確かにあると思いますが,コロナの影響を除いても,ここ数年は300億円前後の恒常的な財源不足の中で予算を組まれています。その大きな要因についてはどのように分析されていますか。

 

市長

 一つは,国等の基準を大きく超えた京都市の福祉,子育て支援施策。これが結果として,歳入と歳出の不均衡につながっており,審議会でも厳しく指摘されています。

 もう一つは,やはり地方交付税がピーク時から550億円削減されていること。全国平均を大きく上回って削減されている。これが財政が悪化した大きな要因であると思います。

 なお,この2,3年で大きく税収等が増えてきた。そして,他の政令指定都市との格差も縮まってきた。様々な経済政策等の成果ではありますが,厳しい期間が長かったもので,まだ京都市全体の財政を好転させるに至っていません。この数年の改善は,宿泊税や雇用増加など,観光に関わるものが多かった。まさに,この部分が,コロナ禍で大打撃を受けているところです。

 

(京都市の産業について)

記者

 今後の京都市の産業の柱について伺います。今回のコロナ禍で分かるように,京都の産業の柱の一つである観光業は,非常に不安定な側面がある業種です。今後,基幹産業を別の分野に設けるなど,将来を見据えたお考えはありますか。

 

市長

 私は,「京都は観光都市ではない」ということを一貫して申し上げてきました。同時に,観光を大事にしてきた都市でもあります。観光が,ものづくり,伝統産業,伝統文化の継承・発展に寄与していることも重要です。京都の最大の都市特性は「ものづくり都市」。今も,全国トップ水準であります。同時に,「大学のまち」であり,産学連携した取組はこれまでから力を入れてきました。ただ,残念なことに,京都で企業をスタートされたり,経営が順調であっても,土地利用や景観政策の関係で,新たに投資するのは京都市域外ばかり,という課題があります。

 本社を京都に置いていただけるのは非常にありがたいですが,景観と活力ある京都,これを両立させていくことが,先だっての選挙での私の訴えです。また,私の訴えだけでなく,今までの景観政策の成果と課題,持続可能なまちづくり,都市政策のために審議を重ねてきました。しっかりと議論を行い,京都で働く場を創出する取組に重点を置いてまいります。若い世代も京都に居住される。こういう好循環を生み出していきたいと思います。

 

(高さ規制の特例許可制度について)

記者

 先日の委員会で,高さ規制の特例許可制度の対象の追加ついて議論がなされましたが,市長として,まちづくりにどのような効果を期していますか。

 

市長

 15年前,国に制定を求め,景観法ができました。京都市では,それから2年間で6つの条例を制定しました。地域のビジョンによって,高さ制限は緩和もできる制度になっていますが,それが適用できた例はほとんどないという状況でした。時間とコストが掛かることから,ほとんどの民間企業の方々がそれを使われませんでした。しかし,全部の高さが低かったらいいというわけではない。地域ごとに未来のビジョンを作り,持続可能なまちづくりや住環境,危機管理も含めて,皆で議論する中で,必要に応じて,高さ,容積を見直していく。少し高くても,空間が開くようにして対応する。そうした特例制度をより適用しやすくしました。決して,景観政策の理念が変わったわけではありません。元々の景観政策の理念を,より活かすための取組だということを,丁寧に説明していきたいと思います。

 

記者

 今,高さ規制の特例許可制度について,「まちづくりに貢献する建築物」というのは,具体的にどのような建物を市としては考えているのでしょうか。例えば,マンションやオフィスビル,商業施設などでしょうか。

 

市長

 それは,私が言うことではなく,地域住民の皆様が考えられることです。今までであれば,京大病院,府立医大病院が認められました。規則をしっかりと適用した場合,みやこめっせも美術館も低くしなければならない。しかし,そんなことはありえません。一斉に高さ制限を15mにしたうえで,特例を認めましょうという制度設計になっています。

 これからは,地域住民や施工主もみんなで考えて,こういうものであれば地域の将来ビジョンとあっているから認めましょうという取組になります。私がこれは認める,認めないと決めるものではありません。

 

記者

 現在の枠組みでは8件しか認められてこなかったものを,今回は新たな基準を設けて増やしていくという制度かと思いますが,逆に特例を増やすというのは,御都合主義という批判もあると思います。その辺りはどのようにお考えでしょうか。

 

市長

 私は京都市民の地域力,文化力を信じております。審議会委員の方々も,御都合主義ではやりません。全ての建物を低くしたらまちが綺麗になるのか,低くすることだけが京都の未来像ではないのではないか。こういうことをみんなで議論し,そして都市空間をつくる。若者が住める家や働く場をつくろう。あるいは,京都は大学のまちで,もっと研究施設が必要ではないか。色んな要素があると思います。

 これをみんなで議論して,未来像を共有しながら,画一的な基準を弾力的に運用していこうというものであります。

 

記者

 例えば,特例で高さはどれだけ認められるのか。地域住民との協議を重視されているが,その地域住民はどこまでを指しているのか。そのような,分かりにくい点や曖昧な点が指摘されていますが,その辺りはどのようにお考えでしょうか。

 

市長

 大原則として,京都市では,全国で初めて,世界でもあまり例のない,眺望景観の条例を制定しております。そして,平成29年には,さらに強化しております。例えば,二条城や御所,醍醐寺の中からの眺望だけを対象とせず,醍醐寺の参道からも含めて眺望景観としました。したがって,国際会議場は,あれ以上絶対に高くは出来ません。圓通寺から比叡山を眺めた時には,人工的な建物が見えないようにしていくガイドラインを作っています。そういう京都が大事にしてきたガイドラインをしっかり守った上でのことであります。同時に,その建物が意匠的にも優れているなど,様々な要素を加味して取り組んでいきます。

 したがって,私は個性あふれる地域になっていくと考えております。京都を1つのまちとして捉えるのではありません。1200年の歴史があり,地域ごとに多様性があります。その多様性を活かしながら,市民の皆様と専門家,施工主がより良いまちづくりをしていく。そこで,その地域の特色ができた時に,それを御都合主義だということにはならないと思います。みんなで英知を集めて,より良いまちを作っていきたいと思います。

 

記者

 どのようなマンションやオフィスが建つのかということは,地域住民が決めていくことであると思いますが,それが結果できたとして,税収等の面で市に与えるメリットはどのようなものがあるとお考えでしょうか。 

 

市長

 京都の景観政策においては,6つの条例がありますが,根本は「盆地型景観を守る。」というものです。京都の宝のような山裾の景観を守る,町家を守る,屋外広告物を規制するなど,5つの理念からなっております。景観と都市の活力,創造力を両立させるというのは元からの理念です。

 しかし,運用していく中で色んな手続きがあり,また,時間との戦いで一斉に下げたことで,保存に重点がおかれております。例えば,京セラさんのようなビルがその近辺にもどんどんと建っていく予定でしたが,しかし,それは建っていません。保存の部分では成功したと思います。

 また,保存で言えば,御所の隣にある梨木神社に4階建てのマンションが建つという想定外のことが起こったので,それも規制しました。規制については,先ほどの醍醐寺の眺望景観のことも含め,どんどんと強めてきました。保存と創造という日本初の京都ならではの制度ですが,ほとんど特例というものが使われていません。この部分をしっかりと景観政策に活かしていこうということです。京都企業が新たに工場を建てようとするも市域外になる,新たにオフィスを建てようとするも市域外になる。あるいは,若い人の住みやすいマンションがどんどんと市域外に建っている。

 京都市圏で見たら,人口もどんどん増えているという見方もあるわけですが,やはり職住近接の都市として,京都のまちが活力あるまちでなければ景観にもなりません。観る景観から感じる景観。そこで人が生き生きと働き,学び,また文化芸術を楽しんでいる。これも大きな景観の要素であります。京都のまちの魅力を持続させていくためにも大事だと思っております。そのことが結果として市民の皆様の豊かさにつながり,税収の増加,そして好循環になっていくと考えております。


 

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