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共同記者会見(2020年7月29日)

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2023年4月12日

「『京都こども宅食プロジェクト』の本格実施に係る共同記者会見」

記者会見


会見の様子

1 日時

令和2年7月29日(水曜日)午後1時30分~午後2時 

2 場所

京都市役所 分庁舎 第3会議室

3 出席者 

 ・社会福祉法人あだち福祉会  畑山 博 理事長  

 ・一般社団法人こども宅食応援団  駒崎 弘樹 代表理事

 ・京都市  門川 大作 市長  

4 次第

 (1)出席者紹介

 (2)モデル実施の結果報告

  ・あだち福祉会 畑山理事長 挨拶・説明

  ・利用者インタビュー放映

 (3)今後の展開について説明

  ・あだち福祉会 畑山理事長より説明

  ・こども宅食応援団 駒崎代表理事 挨拶

  ・門川京都市長 挨拶

 (4)質疑応答

あだち福祉会 畑山理事長 挨拶・説明

 令和元年12月に,京都市,(福)あだち福祉会及び(一社)こども宅食応援団の三者で,京都にいる生活困窮家庭の子どもたちに宅食事業を行う,アウトリーチ型の取組をスタートさせました。子ども食堂では,家庭で十分に食事がとれない子どもたちに来ていただく形で運営されていますが,そういった場所にも来られない子ども,あるいは親が行ってほしくないという子どももおられます。そういった家庭に,人知れず,食べ物,玩具,あるいは体験を提供できないか,そのような取組を,駒崎氏のグループ(特定非営利活動法人フローレンス他)が文京区で先行して実施されており(=こども宅食プロジェクト),「こういったやり方がある」と教えていただき,取組の推進に向けて3者協定を締結しました。
 令和2年2月から6月までの間に,実際に計4回,食料品等の配送を行いました。そのうち最初の2回は,企業等に呼び掛けて調達した寄付等による物品を自分たちで箱詰めして,運送業者により配送いただきました。残りの2回は,新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から,自分たちで集まることが難しかったため,イオンリテール株式会社の協力を得て,食料品等の調達,梱包,配送まで取り組んでいただきました。
 第1回配送は93世帯,第2回は124世帯,第3回は133世帯,最終(第4回)は135世帯に配送し,「本当に嬉しかった」,「食べ物の配送だけでなく,ちゃんと見守ってくれていることが分かった」と,かなりの反響がありました。また,こういう活動をしていると,私たちに「どのように寄付すればいいか」という問合せが多く届き,大変驚いたところです。こんなにみんなが喜んでくれて,こんなにみんなが協力したいと言ってくれることに驚いたし,すごく良い取組であったと思います。

利用者インタビュー内容

<宅食を受け取った時の子どもの反応など>
利用者:いつもは基本的にお菓子は買わず,(食糧も)そんなに多く買わないので子どもから「誰が買ったん?誰がこんなに買ったん?」と言われた。お米は,一回の買い物でそんなに多く買えないので,めっちゃ助かる。トイレットペーパーやマスクも入っていたので,すごいなぁと思った。

<こども宅食に入っていてうれしい食材など>
利用者:お菓子や麺類。麺類はお昼とか(に食べるし)助かる。2回続けて乾燥麺が入っていて,「やるやん!」って思った。知らないママたちもたくさんいると思う。逆に変に聞けないし,こちら側から「(こども宅食が)あるで」というのも,「(こども宅食を)受けてる」というのも言いづらい。学校側からどんどん発信した方が助かるのではと思った。(子どもたちは)コロナで曇ってたからね,顔が。どこも行けないし,公園に行きたいと思っても近くの公園しか無理。仕事もずっと休みだったし,しんどかったかな。仕事がないのが辛かった,子守より仕事がないのがきつい。福祉で生活保護とかあるじゃないですか?それに頼るほどでもないかなと思うし,自分がまだ若いから働けるだけ働きたい。(生活保護は)条件ありという縛りがあるから嫌だ。困ったら,生活保護かなとは思うけど。

あだち福祉会 畑山理事長(今後の展開を説明)

 この取組は食料品を配るだけではありません。もちろん食料品がないことは避けたいが,それだけではなく,宅食を届ける家庭がどのような状況にあるか,何に困っているか,どうしてほしいのかを知りたい,その解決方法の一つが「行政とのパイプ」だと思います。どのように行政につなぐのかが難しい,信頼関係がないと家庭で本当に困っている事情まで赤の他人に話すことはないので,この宅食の取組を続けていきたいです。伏見区の一部学区で実施した,このノウハウをもって,次は中京区で,学区単位ではなく,「区」単位で実施したいと考えています。中京区は,私たちの病院・保育所もあり,地元でもあるので,地元のためにも働いてみたい。行政と相談し,伏見区でも取組を続けながら,中京区でも実施できればと考えています。
  日本人は,あまり寄付をしない風潮があるかと思います。欧米人は人生で成功すればいろいろな所に寄付をしていると聞くが,日本人はそれに比べて寄付をしていないと思っていました。しかし,この宅食の取組では,名前も知らない方からも寄付を申し出ていただけるし,毎月,寄付をしてくれる方もおられます。京都ハンナリーズは,コロナ禍が終了すれば,チケットを提供して「体験」を届けることができるとおっしゃっていただいています。清水寺も,すごく良い取組だと,協力の意思を示してくれています。森永乳業株式会社やマールブランシュ,ネスレ日本株式会社,日東薬品工業株式会社,日本ケロッグ(合)などは食料品を提供いただき,またレゴジャパン株式会社はレゴブロックを提供いただき,子どもたちにとても好評でした。
  産婦人科医院が何故このようなことをしているのかという話ですが,私たちは,子どもが生まれて,その子が幸せに育つところまで見ていきたい。障害のある子が生まれることもある,お母さんがその子を産んだこと,あるいはその子が生まれたことで自分たちが不幸だと思ってほしくない。そういった子どもたち,家庭を助けたい。「うちの親は食べ物やお金に困っていたな。でも一生懸命に育ててくれた。楽しかった。行政もしっかり見守りをしてくれた。自分も将来,京都で育って,京都で家庭をもって,京都で働いて,京都で子育てをしよう。」と思ってもらえたら,今の京都の少子化は,もしかするとこういった取組で20年後に救われるかもしれません。「寄付」ではなく「投資」,こんなにいい「投資」はありません。20年後,30年後,40年後,少子化で働く世代が少なくなった場合の京都で,自分たちの老後を見てくれて,働いてくれて,税金を納めてくれるのは,この子たちかもしれません。皆さんもぜひ「投資」していただければと思います。

こども宅食応援団 駒崎代表理事 挨拶

 東京からオンラインで失礼します。私からは,こども宅食が全国で広がっていく中で,子どもたちがどういう状況なのか,アンケート資料をもとに解説させていただきます。そして京都がデータとしてどのように表れているのか,というのもお話しできたらと思います。
 まず,こども宅食の利用世帯,1,000世帯近くにアンケート調査を行いました。京都,長崎,熊本,宮崎ということで,全国に渡る調査となっています。そこで分かったことがありました。
  年収300万円未満の世帯が85%を占めている状況でした。そして,コロナ禍において生活はどのようになっているかといいますと,約8割の家庭で生活はより苦しくなっていることが分かりました。収入の減少よりも支出の増加が多く,また疲労や精神的な不安,家事,育児のストレスの影響も大きくなっており,より経済的にも心理的にも苦しくなっているということが分かります。そして,それが子どもに対してぶつけられる状況になっています。子どもに対して怒ったり叱ったりする行動が増えてしまっている,というデータが出ています。「子どもに怒ったり,叱ったりすることが増えた」という問いに対して「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた割合は,全体平均で49%のところ,京都では61%となっており,10%近く多いという状況です。更には,「子どもに手をあげることが増えた」という問いに対して,全体が8.8%のところ,京都は10%ということで,これも平均より多いという状況です。また,京都においては,「相談できる人や手助けしてもらえる人が明確にいない」と回答した方が51.4%となっており,コロナ禍で経済的に,心理的に困っているけど相談できる人がいない方が約半数にも及んでいる,これは特徴的なのではないかと思っています。全体では36%となっており,京都においてこの数値が非常に大きいことに関しては,課題なのではないかと思っています。
 このこども宅食は,政令指定都市で初めて,京都市で取組が広がりました。その他の地域でも,徐々に広がりつつあります。取り組む団体数も増えています。こうした全国での取組が広がることに呼応して,実は,国でも2次補正予算の中に関連予算を組んでいただき,こども宅食を立ち上げやすい状況になってきています。京都市のように,行政と連携して,協定を結んで,一生懸命やっていこうという動きが,全国でそこかしこに広がっていくように,我々も支援させていただきたい,支援し続けていきたいと思っています。

京都市 門川市長 挨拶

 まずは,畑山博理事長を先頭とされるあだち福祉会の皆さん,駒崎弘樹代表理事を先頭とされるこども宅食応援団の皆さん,また多くの皆さんに,表で,または陰で,大変なご支援をいただき,この「京都こども宅食プロジェクト」が進んでまいりました。子どもたち,子育て世代の中に,貧困格差,孤立など様々な課題があることを,改めて実感しました。そして,その課題が,このコロナ禍のもとで,深刻になっていることも現実のものであります。
 私どもも,これまで様々な取組を進めてまいりました。子ども食堂など,地域の中でも様々な取組を行っていただき,私どもも,子育て支援のための講座やイベントを実施してきました。しかし,その対象は「来られる方」であります。「来られない方」にどういう手立てがあるのか,新たな展開ができないものか,最も困っている方に最も適切な手立てをと思い悩んでいるところに,今回のお話があり,令和元年12月に協定を締結させていただき,4回の配送ができました。アンケートに基づく実態の報告もいただきましたが,京都において,最も困っている,支援を必要とされている方のところに,届いた結果でもあるかと思います。伏見区の一部学区への配送,地域はプライバシーの面も踏まえて公表しておりませんが,こうした取組を継続すると同時に,中京区で初めて行政区を単位として実施しようというところです。畑山理事長からは,「行政区を単位として実施すれば,それは全市展開の足掛かりになるのではないか」とお話をいただきました。SDGs,誰一人取り残さない,そういう取組を市民ぐるみで行っていただき,それを行政も関わって役割を果たす,まさに「みんなで見守っていく」,「気づく」,そして「つなぐ」,「つながり」,これを行政がバックアップさせていただく,このような取組が大事だと思っています。
 本市も,7月補正で,こども宅食や子ども食堂を応援していく予算を措置させていただきました。畑山理事長から話もありましたが,多くの方々が,善意で様々なご寄付をいだいていることに感動しています。物品が送られてくる喜びも,必要な方に届ける喜びも大事ですが,やはり「つながり」が大事であり,より強固につながった,子育て環境の整ったまちづくりを,皆さんのご支援のもとに,取り組んでまいります。こうした取組が,子育て支援,更には少子化対策にもつながっていく。我々もしっかりと取り組んでまいります。

質疑応答

(記者)

行政が関わっていくこともあり,行政区にかかわらずサービスを受けることが理想かと思うが,今回,中京区で実施されるということで,全市的に実施するにあたって,どのような課題があるのか,またいつ頃までに全市展開したいという展望はあるか。

 

(畑山理事長)

全市展開したい思いはありますが,まずはノウハウの蓄積が必要です。最初に実施した伏見区を選んだのは,同区で生活困窮世帯への学習支援や子ども食堂の取組が進んでいたからで,それにつなげるということで実施しました。その結果を踏まえ,中京区でも実施できると判断したところです。

 最終的には全市展開したいのですが,そのためには,予算も人員も必要です。100~  150世帯であれば,自分たちで調達,梱包まで行えるが,300,500,1,000世帯となると,自分たちでは実施できません。私たちとしては,同じように宅食に取り組む仲間のグループをいくつか作りたいです。そのグループを作って,各地域で実施する形が一番良いのではないかと思っています。そのためにも,一緒にやりたいという仲間を募集したいのと同時に,市民の皆さんにもぜひご寄付をお願いしたい。予算と人員さえあればノウハウは蓄積しますし,やればやるだけ反響があります。寄付については,何に使われるか分からない,見えないと寄付されないし,使われる目的があり,その結果が出て,自分にも戻ってくるとなれば寄付をいただけると思うので,そういう仕組みをゆっくりと確実に作っていきたいと思っています。

 

(記者)

他の利用者の声は。困りごとの相談はどのようなものがあるか。

 

(畑山理事長)

 利用者の声は,LINEアプリを通じてあだち福祉会まで届きますが,まだ困りごとの相談が届くまでには至っていません。ただし,「素敵なものばかりでした」,「おもちゃをいただいて子どもたちがすごく喜びました」,「福袋を買ったかのようなワクワク感があります」「こんなに人に優しくしてもらえることにびっくりしました」「コロナで家にいることが多くなったので,たくさんの食料品をいただいて助かりました」など,喜びの声は多く届いています。

 このように,誰にも言えなかったけど,ちゃんと誰かが見てくれていて,助けてくれるんだと,心に届いたと思います。次は,「こういうことに困っているんだけどどうしたらいいか」という相談がもらえたらというところまで,取組を続けていきたいと思っています。

 

(記者)

コロナ禍において,今回のような取組の意義は重要かと思うが,駒崎氏のアンケート結果の報告でもあったように,支援がどういったものがあるのか分からないという意見が多数かと思われる。4回の配送を行った際に,LINEのやり取り等の中で,市の施策や支援体制についても発信したことはあったのか。

 

(畑山理事長)

 アンケート結果等を見ると,行政サービスは半数程度の方しか利用していないように思います。利用するサービスがないと答える方もいます。つまり,自分たちは誰の目にも留まらないと,そのような心持ちかと思います。こども宅食により,そうではないと実感してもらえたかと思います。私たちも,行政もアプリを運用したり,相談を受けたりしていますが,使ったことがないという方も多かったので,今後はその点をアピールしていきたいと思います。今は,信頼関係を構築している段階だと認識しています。8月には第5回の配送を予定していますし,次はもう少し上のステップに上がりたいと思っています。

 

(記者)

 行政側で把握しづらい部分を埋める取組というのが,今回のプロジェクトでの利用者とのやり取りかと思うが,コロナ禍で大変な状況の中,今後の取組で期待することは。

 

(市長)

 行政の施策はこの間充実してきていると思いますが,最も困っている方にその施策が届いていない,つながっていないことが大きな課題であります。これは子育て支援や8050問題でもそうだが,「何か事件が起きた後に,行政に相談すればこういう手立てがあったのに」という状況が全国で見られます。そこに,我々も寄り添い型の支援ができる,京都の場合はおかげさまで民生児童委員がほぼ100%揃っていたり,本市独自の高齢者の見守り隊がある状況ですが,子育て世代が,貧困,孤立の問題がありながら行政につながっていないところを,つなげていただく役割を,今回のプロジェクトは果たしていただいています。先ほど申しました子ども食堂等に「来られない方」への手立てにもなります。

 また,市民の皆さんが,子どもを育てるということが最も尊いことであるという京都の伝統をもう一度蘇らせようということで取り組んでいただいていると思います。お米の寄付などの寄付の輪が広がってくる,これは単に行政が予算措置をすることより何倍もの価値があります。信頼関係のもとに,「気づき」,「つなぎ」,そしてみんなで「支える」,それを行政も「こういったところに支援が必要な方がおられる」という情報も,信頼関係をもとに提供する。このような取組に協力するのはもちろん我々の責務ですが,同時に,このように市民運動的に実施していただくことに熱いものを感じますし,それが伝わっているから,宅食を受けた家庭や子どもたちも喜んでいるのだと思います。

 

(記者)

 この取組は,一般の方の金銭・物品の寄付を頼っておられるかと思う。寄付だけでは継続的に貧困家庭への支援を行うことが厳しいかと思われるが,行政の予算化の状況,国会の状況など把握されているか。また,この取組を全市展開される際は,市民が納得する京都市予算の活用ができるのか。

 

(駒崎代表理事)

 コロナ禍において,子ども食堂等がセーフティネットとして機能を果たしづらい状況の中,こども宅食は注目されているところでして,2次補正予算でも関連予算が措置されたところです。そして,その予算を活用して,全国の自治体でも,同様の取組を実施しようという動きが出てきています。我々に対する問合せも非常に増えています。寄付だけだと取組を継続していくにあたり難しい面があります。立ち上げ,運営にあたって地域の寄付を活用することは大変尊いことですが,やはり取組を継続するには,行政の補助を基盤とする必要があるかと思います。

 今週,こども宅食議連というものが,与党を中心に発足しまして,制度化の後押しの動きが見られます。我々も非常に嬉しいです。願わくば,国の動きに呼応して,地方自治体でも,国の支援を活用して,積極的にこども宅食に取り組んでいただく流れが広がってほしいと,心から思っております。

 

(市長)

 全国の熱意あふれる方々が,子どもたちのために自ら寄付を集めて,あるいは寄付をして取組を実践される,そうした中で,国に対しても予算措置を求められる,これに呼応して,国でもコロナ対策の2次補正予算で関連予算の措置をされました。

 私どもも,全市で展開されている子ども食堂,そして今回のこども宅食などを,地域ぐるみで子どもたちをはぐくむ,見守り活動と位置付けて,7月補正で8,000万円の予算を計上したところです。これについては,子ども食堂やこども宅食等の見守り強化の仕組みづくりに活用いただきたいというもので,食事代等は,善意の寄付でまかなっていただきたいと思いますが,進展していく中で互いに知恵を出し合っていけたらと思っています。皆さんが善意の寄付で,自らの手で取り組んでいただいていることが,この取組の素晴らしさだと思います。これをどう下支えするかということで,それは生活保護制度や就学援助制度の拡充など,行政制度の拡充ではないと思っており,市民ぐるみで困っている人を支え合っていこうという取組を主体にして,行政が応援していく,その基本形を維持しながら,行政の役割を果たすために予算措置をさせていただきました。行政の果たすべき役割の深化も求められているかと思います。

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