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門川市長記者会見(2019年7月3日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2019年7月3日)

 本日は,私から,「平成30年京都観光総合調査」の結果について御報告いたします。20数年前,年間の観光客数が3千万人台後半で,長らく伸び悩むなど,京都観光は大変厳しい状況にありました。今の京都市基本構想は1999年に策定されましたが,停滞する産業・観光,空洞化する都心部,流出する大学,発信力が衰える文化,といった所から始まっています。その中で多くの方々の御理解・御支援によって,文化庁が京都に全面的に移転してくる。あるいは文化や大学,イノベーションで,京都が都市の総合力一位という評価を受ける。SDGs,持続可能なまちづくりでも,全国トップとなる。その中で,観光が果たした役割も大きいと考えています。

 特に地域経済,雇用創出については20年前に考えられました。桜と紅葉の時期に観光客がたくさん来られるが,閑散期は厳しい。そうしたことも含めて,観光事業者,寺院・神社,様々な方と議論を深め,平成12年度に,10年計画で観光客を5,000万人にしようという構想を発表しました。そして,市民ぐるみ,とりわけ観光事業者,寺院・神社,文化施設,大学等の皆様と心を一つにして取り組んでまいりました。

 私が市長に就任した平成20年に,5,000万人構想が実現しました。その時に,観光事業者の間では,次は6,000万人だという声が当然のように上がりました。しかし,観光客の人数を求めるのではなく,観光都市としての質を高めて,そして結果として量を確保する。平成22年,観光事業者等と議論し,そういう方針の大転換をしました。

 平成25年に,東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しました。2020年を視野に,新たな観光振興計画を策定して,現在取り組んでおります。京都は観光都市ではありません。今,観光面で高い評価を受けている寺院・神社,街並み,自然との共生,その背景にある宗教,あらゆる文化,食文化,これらは観光のために作られたものではありません。京都に伝わる日本の心,京都市民が暮らしの美学として,生き方の哲学として大事にしてきたことが観光の面から評価されています。

 したがって,暮らしの美学,生き方の哲学を大事にしていかなければなりません。同時に観光を大事にしてきたことも事実です。明治維新があり,都の地位を失った時に,様々な取組をされていますが,日本で初めて博覧会を開催,また都をどりも始まりました。戦後の荒廃の中から京都市市民憲章ができて,その実践目標である5項目の一つに「旅行者をあたたかくむかえましょう」とあるように,おもてなしを大事にしてきました。

 また,昭和5年に,全国に先駆けて観光課が作られ,京都の観光MICE推進室は,来年で90周年を迎えます。市民生活を大事にして,それを基に観光にも取り組んできました。したがって,京都の観光事業者,市民の中から,カジノを造って観光客を誘致しようというような声を,私は聞いたことがありません。あくまでも,市民生活との調和を最優先にしながら,京都の「ほんまもの」の価値を将来に引き継いでいく。市長就任以降,約1,500の事業者,寺院・神社,文化団体に会員として参画いただいている京都市観光協会等と連携し,取り組んでまいりました。その結果として,観光は,宿泊・飲食・小売業はもとより,製造業や農業など,非常に幅広い産業に経済効果をもたらすとともに,多くの雇用を生み出し,京都経済の活性化に大きく寄与しています。

 また,近年の違法民泊問題についても,「違法民泊は絶対に許さない」という強い覚悟のもと,全国で最も厳しいといわれる条例を制定,46人の専任体制を整備し,無許可営業疑いがあるとして市民から通報を受けた2,518施設について,徹底的な指導等を行うことにより,99%に当たる2,490施設が営業中止等に至るなど,成果を挙げてきております。引き続き,市民生活と観光の調和を最優先に,観光を地域経済の振興と活性化につなげる観点に立ちながら,住んでよし,訪ねてよし,学んでよし,持続可能で満足度の高い国際文化観光都市の実現に向けて,スピード感を持って着実に取組を進めてまいります。

 それでは,平成30年の調査結果の主な内容についてです。観光総合調査は,昭和33年から実施しており,現在では国内約4,000人,外国人約1,600人を対象に調査を行っております。これほどの調査を,継続的に実施している自治体は他にないのではないかと思います。先ほど「質を高めて,量を確保する」と申し上げましたが,そのためには,指標の設定が必要です。専門家や観光事業者と議論のうえ,特に重要としている指標が3つあります。

 まずは,「観光消費額」です。人口減少,少子高齢化が加速する中,地域経済の活性化,市民生活の豊かさを実現していくことが何よりも重要です。中小企業や伝統産業をしっかりと支えていく。そのためにも,「観光消費額」を重要な指標として位置付けました。

 2つ目は,「宿泊客数」です。「泊まってこそ京都」。京都の本質は,京都の日常生活にこそ息づいており,暮らすように旅することで体感できることが多くあります。少しでも長く滞在いただき,京都観光をしっかり満足いただく。そのために日帰りを含む観光客数ではなく「宿泊客数」を重要な指標としました。

 3つ目が「満足度」です。「また来たい」「人にも勧めたい」と思っていただける京都であり続けることが,持続的な京都観光の発展につながるため,「満足度」を重要指標としました。まずは平成30年調査のポイントとして,大きく次の5点について御説明いたします。

 まず1点目は,「質の向上」の取組が実を結び,「観光消費額」や「宿泊客数」等が過去最高を記録しました。「観光消費額」は1兆3,082億円,これを147万人の京都市民の年間消費支出額として考えると,約52%の77万人分に相当し,「京都観光振興計画2020」策定時の平成25年と比較すると,実に86,8%,6,080億円も増加しております。

 昨年,「京都観光振興計画2020+1」をとりまとめた時点では,非常に高いハードルと認識していた目標額1兆3,000億円を,1年で達成し,3年連続で1兆円の大台を超えました。また,「宿泊客数(実人数)」は朝観光・夜観光など,宿泊観光推進の取組等により過去最高を更新し,計画策定時から20,9%,274万人増加の1,582万人となりました。京都に宿泊される方の比率も平成27年の24.0%から30.0%,平均宿泊日数も1,49泊から1,61泊と,この3年間で大きく増加しています。さらに,外国人宿泊客数(実人数)も,過去最高を更新し同計画策定時から約4倍となる450万人となりました。これは,我が国に訪れる外国人観光客全体3,119万人の約14,4%に当たります。外国人観光客のほとんどの方が京都に来ていると思われていますが,実際は14%。意外とインバウンドの宿泊率は少ないというのが,観光事業者等の数値を見られての声であります。

 一方,地元への経済効果の高いMICEも順調で,国際会議の開催件数は,JNTO基準で,前年から43件増加し,349件となり,5年連続で過去最高を記録しました。「京都」ブランドが世界で認知されていることを実感いたします。

 2点目は,「観光客数が,過去最高の平成27年から約400万人減少となる5,275万人」となったことです。観光客総数は落ち着きつつありますが,観光客の一部エリアへの集中が見られます。例えば,「清水・衹園」への日本人観光客の訪問率は,平成25年の35%から50%近くに増加したのに対して,「山科」は2,5%,「高雄」は1,4%となるなど,多くの地域で減少傾向を示し,外国人観光客の増加も相まって,一部観光地への集中が進んでいます。これら一部地域への混雑緩和を図るとともに,ゆっくり楽しんでいただけるエリア,もっと観光客の皆様にお越しいただきたいエリアへの誘客を引き続き進め,市域全体の活性化につなげてまいります。

 また,月別の観光客数は,その繁閑差が平成15年の3,6倍から平成30年は1,4倍まで縮小しました。平成15年に一番観光客が多かった月は11月の666万人,平成30年は3月の531万人。この15年間で繁忙月の観光客は20%減少しております。また,同月で比較すると,11月は666万人から471万人に減少,対して2月は186万人から403万人に増加するなど,どちらも400万人台になりました。

 これは,観光産業に働く人が,季節労働から通年労働,正規雇用に転換していけるということです。時期の集中は一層改善しつつあるといえます。それにも関わらず,「いつでもどこでも京都は混んでいる」というイメージが広まっており,危惧しています。そのイメージの払拭が必要と考えています。

 3点目は,「宿泊観光の推進」です。京都市内の宿泊施設は,平成28年の「宿泊施設拡充・誘致方針」策定時の約3万室から平成31年3月末には約4万6千室に増加しており,施設数としては満たされつつあります。これに伴い,全体の観光客数に占める宿泊客の比率や平均宿泊日数はともに増加しています。また,外国人観光客の「宿泊施設を手配できなかった」という回答も,平成27年の15,1%から9,4%に減少しました。京都の魅力は,泊まってこそ感じていただけます。

 つまり,観光客の滞在時間を伸ばすことで,日本文化の神髄ともいえる伝統文化や伝統産業,食文化に触れ,感動いただく機会の創出につながります。そして,伝統産業や地場産業の振興,後継者の育成と活性化,ひいては市民の皆様の豊かさにつながってまいります。引き続き,旅館の経営支援や魅力発信などに取り組み,宿泊観光の推進に努めてまいります。

 4点目は,「観光客の満足度が引き続き高い」ことです。日本人の90,3%,外国人は97,6%の方が,京都観光に満足いただいております。これらは,京都観光に携わる,市民や事業者の皆様のおもてなしの心が評価されたことの表れです。

 5点目は,「観光客・市民双方に有益な環境整備が進展」してきたことです。例えば,外国人観光客に対する調査では,トイレ,Wi-Fi接続環境等に「大変満足」と回答された方が増加するとともに,クレジットカードの利用者も着実に増加しております。トイレの洋式化,これはお年寄りの方からも非常に喜ばれています。また,Wi-Fi環境の整備など受入環境の整備に努めるとともに,買物環境の向上を図るため,小売店や飲食店のキャッシュレス決済の導入に向けた支援等に取り組んできました。こうした地道な取組は,もちろん観光客の満足度を高めることにもつながりますが,同時に市民の皆様にとっても,快適で,利便性の高い生活環境の実現につながっていると考えております。

 続きまして,調査の詳細を御説明します。先ほど申し上げましたとおり,「観光消費額」が3年連続で1兆円の大台を突破し,過去最高となる1兆3,082億円となりました。京都市内の宿泊業,飲食業,運輸業,農林業など幅広い産業に9,958億円の直接的な需要,雇用にして15万8千人分の効果が生まれております。

 さらに,観光産業の従事者による消費なども含めた最終的な京都市内への経済波及効果は,1兆4,179億円となっております。その意味でも観光が京都の経済・雇用創出に大きく寄与していることは確かです。消費額単価につきましては,日本人観光客,外国人観光客ともに買物代,飲食費,宿泊代が増加したため,前年を上回りました。とりわけ,外国人観光客の買物代,飲食費が前年と比べ大幅な伸びとなっており,土産物屋,飲食店など中小企業の多い業種にも恩恵が広がっています。キャッシュレス対応の充実など,外国人観光客の受入環境整備の進展が大きな要因になっていると考えております。

 続いて,「修学旅行生数」を御覧ください。少子化に伴い,全国の修学旅行対象生徒数の減少傾向が続く中,昨年は,修学旅行シーズンに大阪北部地震や西日本豪雨等の災害が発生しました。それによって,5月に修学旅行を予定していた学校が,1月に延期されたということも考えられます。そういった影響は現在分析中ではありますが,京都を訪れる修学旅行生は,17万3千人減少し,95万3千人となりました。

 修学旅行生は,日本の未来を担う存在であり,日本の心や精神文化,歴史を京都で学ぶ機会を通じて,将来にわたって京都に愛着をもっていただける大切なお客様です。平安建都以来,1200年以上にわたる歴史の中で育まれてきた文化や伝統が息づく京都のまちの奥深い魅力を学んでいただくため,宿泊業者の皆様,観光業界の皆様と連携し,修学旅行生の一層の誘致に努めてまいります。

 続いて,4ページを御覧ください。日本人観光客数は,平成29年の4,619万人から,149万人減少し,4,470万人となりました。昨年は,1月から2月にかけての北陸・東北での記録的な豪雪,6月の大阪北部地震,7月の西日本豪雨等の災害の影響等により日本人全体の国内旅行者数が13,2%減少しているものの,京都市の減少幅は3,2%と限定的でした。なお,マイカーで入洛される日本人観光客の割合は,「歩くまち・京都」憲章制定時の平成21年の数値30%から,この9年間で8,6%になり,91,4%の方が公共交通機関を利用して入洛されるなど,「歩くまち京都」の理念が広く国内に浸透してきております。加えて,京都縦貫自動車道ができて,近隣の車で来られる方が京都府域等に広域化しています。同時に,京都は日帰り観光客が少し減って,宿泊観光が増えてきています。これらは良い傾向であると思っております。

 また,満足度は引き続き高い水準を維持しておりますが,とりわけ,外国人観光客の「街の清潔さ」「治安」については,これまでから極めて高い評価をいただいております。平成30年は,「大変満足」の回答が,それぞれ59,4%から62,6%,57,3%から61,0%へ更に向上しております。このことは,「世界一美しいまち・京都」の推進,「誰もが安心安全に,笑顔で楽しく暮らし,観光できる,やさしさあふれるおもてなしのまちづくり」を市民ぐるみで取り組んできた成果の表れです。非常に心強く感じております。ある人は「ごみが少ないことを自慢するのは観光施策ではない」とおっしゃる方がおられますが,私は掃除という暮らしの美学,美意識というのは素晴らしいと思っています。

 さらに,京都の奥深い魅力,すなわち伝統文化や伝統芸能,歴史に関する魅力の発信に注力してきた結果,日本人観光客の文化体験をされた方の割合が増加しております。また,日本酒や着物・帯等,外国人観光客の伝統産業品の購買割合も上昇しております。京都の歴史や伝統文化への関心や評価が高まり,京都の魅力が着実に浸透していると手応えを感じています。

 ただいま申し上げてきたとおり,観光は京都の経済,地域の活性化に大きく貢献しております。その一方で,外国人観光客の急増などに伴い発生している,一部の観光地や市バスの混雑,生活環境の違いによるマナー問題などについては,徹底的に取り組んでいかなくてはなりません。こうした課題や今回の調査結果を踏まえ,今後の方向性を3つに絞って御説明します。1つ目は,「市民生活と観光の調和」に向けた取組です。「市民生活と観光の調和」を最優先に,時間の分散化等による観光地の混雑緩和や市バスの混雑対策の強化に取り組んでいく必要があります。平成12年度の規制緩和対策で700円から500円にした「バス一日券」については,平成30年3月に価格の適正化を行い,当面の間600円としました。合わせて,「地下鉄・バス一日券」についても,1200円の一日券と,京阪バスの一部が利用できる1300円の山科・醍醐拡大版を一本化し,900円へと大幅な値下げを実施しました。

 その結果,市バスのみの御利用から,地下鉄も合わせた御利用が増加しており,一定の効果が表れています。引き続き,前乗り後降り方式や大型荷物対応車両の導入,市民と観光客の乗り場の分離などの取組を行うとともに,民間事業者とも連携し,手ぶら観光を推進するなどにより,市バスの混雑対策に全力をあげて取り組んでまいります。

 マナー対策については,参考資料をお付けしております。本市では,観光客の増加により顕在化するマナー問題に対し,市内における啓発リーフレットの配布やポスター掲示等に加え,航空機内誌のマナー記事掲載や,関空と京都をつなぐリムジンバス・特急はるか車内におけるマナー情報掲示など,京都への入洛前の啓発にも力を入れてまいりました。

 また,昨年には地域が主体となって観光課題の解決を図る取組を支援する新たな補助制度も創設し,それぞれの地域の課題に応じて,混雑時の警備員配置・誘導員の配置やマナー啓発などに活用されています。これは,昨年10月から徴収している宿泊税を財源にしています。観光客のマナーに係る課題は地域によって多様であり,それぞれの状況にあったきめ細かい対応を進めているケースもあります。例えば,祇園町南側地区では,地域や京都府警とも連携のうえ,遵守すべきルールや罰則の効果的な発信,巡視員による巡回など,これまでの啓発から,より踏み込んだ具体的な対策を検討しています。

 先月11日には,地域団体や東山警察署,関係機関,学識経験者等をメンバーに,効果的なマナー啓発の方法等について検討する会議を立ち上げました。また,伏見稲荷周辺においても,昨年度から地域団体や伏見稲荷大社,京都府警察と協力し,ゴミ問題等について対策を検討する会議を立ち上げ,取組を進めているところです。今後も,地域住民と連携を図りながら,地域の実情に応じた実効性あるマナー向上の取組に努めてまいります。

 宿泊施設については,京都駅周辺や市内中心部に集中するなど地域的な偏在が課題となっております。さらに,「北部山間地域の魅力を活かした農家民宿」など,地域固有の歴史・文化・自然の魅力を活かした,地域に望まれる宿泊施設は必ずしも十分ではなく,質の面での課題もあります。私が考える質が高い宿泊施設とは,必ずしもラグジュアリーとイコールではなく,地域と調和し,京都の文化の継承につながる,あるいは,安定した雇用を提供するということが重要であると考えております。今後は,地域コミュニティに貢献する施設を増やすなど,宿泊施設の質の向上に向けた,地域の特性に応じた施策の展開を図ってまいります。同時に,宿泊観光の推進による宿泊税の増収と,観光客,市民の皆様双方の満足度を高める宿泊税の活用も重要です。

 今年度の宿泊税では,「市民生活と観光の調和」や「混雑対策」,「観光客の受入環境整備」,「京都の魅力向上」の取組に,全体の8割を越える約34,7億円を充当しております。引き続き,宿泊者からいただく貴重な財源を観光に関する課題解決に活かしてまいります。

 2つ目は「市民生活の豊かさの向上」に向けた取組です。観光は,幅広い産業に経済効果と雇用創出をもたらします。人口減少社会を迎える中,地域の活性化のためには,観光による交流人口の拡大が不可欠であります。まずは,市内周辺部など観光客を望んでいる地域へ観光客にお越しいただき,地域の活性化を後押しするため,地域の皆様や民間事業者と連携した取組を推進してまいります。特に,昨年度スタートした京都観光の新たな魅力を紹介する「とっておきの京都~定番のその先へ~」プロジェクトを一層展開してまいります。昨年11月には,伏見,大原,高雄,西京,京北,山科の6エリアの魅力を発信する特設サイトを開設しました。

 プロジェクトの開始以降,例えば伏見エリアでは,十石舟のインバウンド客の大幅な増加や,周辺店舗の来店者数が増加するなど,観光による地域活性化の兆しが見られます。今年度は,各地域のマーケティングや観光コンテンツを開発する観光事業者を支援するなど,それぞれの地域において継続的な誘客を図るとともに,活性化につながる体制を構築してまいります。外国人観光客の消費は,年々力強く増加していますが,こうした旺盛なインバウンドの需要を獲得し,地域企業や伝統産業の振興に繋げるため,キャッシュレス対応などの買物環境の整備や伝統産業品の販売促進などに一層力を入れてまいります。

 また,本年9月のICOM(世界博物館会議)京都大会開催,来年3月の京都市京セラ美術館のリニューアルオープンなどを契機に美術館・博物館観光を推進し,観光客の皆様に京都の新たな楽しみ方を提案するとともに,国内外からお越しいただく観光客に,京都が誇る芸術や文化の魅力をしっかりとお伝えしてまいります。さらに,地域への高い経済効果が見込まれるMICEも開催件数が過去最高の349件を記録し,順調です。これまでの誘致活動が実を結び,ただいま申し上げたICOM京都大会のほか,12月に国連世界観光機関と国連教育科学文化機関(ユネスコ)主催による「第4回観光と文化をテーマにした国際会議」,来年には,京都コングレス「国連犯罪防止・刑事司法会議」など,多数の大型国際会議が京都で開催されます。なお,同会議は,5年に一回,犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議であり,2回開催する都市は,ジュネーブと京都だけです。東京オリンピック・パラリンピックが開催される年の4月ということもあり,観光事業者の中には遠慮しようという声もありましたが,法務大臣,事務次官,あるいは国連等から,「ぜひ京都で」とおっしゃっていただき,覚悟を決めて,引き受けることとなりました。犯罪防止,再犯防止,こういった会議を開くのに,京都が最も相応しいと思っていただけたことは,ありがたいことです。引き続き,MICE誘致を強化するとともに,京都の認知度及び都市のブランド価値を向上させるため,富裕層観光客の誘致にも取り組んでまいります。

 3点目は,「京都観光を推進する体制の強化と担い手育成,広域連携の推進」です。観光地経営の中核的役割を果たす京都市観光協会の更なる機能強化を支援してまいります。「市民生活と観光との調和」,「市民生活の豊かさの向上」といった京都が抱える観光課題に,京都市と協会が一体となって取り組みます。また,近年,観光業界は担い手不足に悩まされております。「京都での担い手確保」や事業者の生産性向上など「受入事業者の環境改善・採用活動支援」を柱とした観光関連産業での担い手育成事業にも,今後取り組んでまいります。さらに,通訳ガイドの育成や共同での誘客プロモーション等,府域はもとより,周辺自治体をはじめとした広域連携を一層推進してまいります。

 最後に,「市民生活と調和した持続可能な観光都市」推進プロジェクトチームについてです。これまでから違法民泊の根絶や,市バスの混雑対策,マナー啓発,時期・時間・場所の分散化による混雑緩和や地域活性化に全力を挙げて取り組んでまいりました。5月22日,これまでの取組の成果や課題を改めて検証し,今後の施策の検討・実施につなげていくため,本プロジェクトチームを立ち上げました。データの収集や分析を行うとともに,有識者や事業者等のヒアリングを開始し,地域ごとの特性や現状の的確な把握と課題の抽出に加え,これまでの到達点の確認と施策の深堀りを行っております。私からは,プロジェクトチームに対して,3点の指示を出しています。

 まずは緊急の対応が必要な4つの項目について,スピード感を持って,全力を挙げて取組を強化することです。4つの項目とは,1違法・不適正な民泊への対策と宿泊施設の質の向上,2祇園町南側地区や伏見稲荷周辺地域などで周辺住民に影響を与えている観光客のマナー問題への対策,3市民や観光客の皆様に御不便をおかけしている市バスの車内やバス停での混雑への対策,4一部の地域に集中する観光地の混雑への対策,でございます。

 例えば民泊対策・宿泊施設の質の向上については,引き続き徹底的に違法・不適正な民泊の根絶に取り組むとともに,宿泊施設の地域との調和や地域コミュニティへの貢献を促進する制度の創設を指示しました。

 次に,中長期にわたる取組については,客観的・専門的なデータを把握し,有識者や事業者,市民の皆様の御意見を聞いた上で,秋ごろを目処に中間的な方向性を取りまとめるように指示しています。これらの課題への対応については,本市で対応可能なものと,国の制度改正を必要とするものがございます。本市で対応が可能なものについては,事業者や地域の皆様と連携しながら全力をあげて取り組んでまいりますが,その一方で,法改正など,国の制度改正が必要なものについては,しっかりと国に対して要望するようメンバーに伝えており,私も直接国へ強く働きかけてまいります。

 住宅宿泊事業法が施行されて,1年が経ちました。法律制定以前から集合住宅はあくまで住宅であり,その一部に宿泊施設を設けることは不適切です。条例によって規制できるような,地方の権限を留保した法律にしてほしいということを厳しく申し入れましたが,実現できませんでした。また,届出ではなく,許可制にすべきです。地方の5人しか泊まれない農家民宿であっても許可です。マンションの一室を届出だけで宿泊施設に出来るというのはおかしいということも申し入れしてきましたが,これも実現できませんでした。しかし,法律は見直されていくものです。見直し時期をしっかりと抑え,要望してまいりたいと思います。同時に,来年3月には,経過措置を受けている簡易宿所においても,施設内又は800m以内に管理者が常駐しなければならないという基準適用の施行期日が迫っております。しっかりと適用して,適正な宿泊施設の管理を強化してまいりたいと思います。

「平成30年 京都観光総合調査」について

質疑応答

報告案件に関する質疑

(「平成30年 京都観光総合調査」について)

記者

 観光消費額が1兆3000億円超えと非常に高い数字ですが,その要因として,やはり外国人宿泊客が増加したからでしょうか。

 

市長

 観光客数は減っていますが,外国人に限らず,日本人宿泊者も含めて,買い物や飲食などで消費額が増えています。また,日帰りから宿泊に移っていることも非常に大きいと思います。

 例えば,富裕層向けの宿泊施設ができた周辺で清水焼をしておられるお店や高級な美術品等を販売されているお店から,「この20,30年ほとんど売れなかった品が最近は売れるようになった」,「今までは東京に行って展示会をすれば売れていたものが,京都でも売れるようになってきている」というようなお声も聞いています。引き続き,そうした声も含めて参考にしていきたいと思います。

 

記者

 今後の対策として,宿泊施設の地域との調和や地域コミュニティへの貢献を促進する制度を創設すると仰っていましたが,具体的にどのようなものでしょうか。

 

市長

 すでにある宿泊施設がいかに地域社会に貢献できるのか,京都の歴史,伝統,地域の人々の暮らし,安心・安全に貢献するにはどういった方法があるのか,宿泊事業者の意見も聞きながら議論を深めています。

 昨年度は,地域が推薦される京都ならではの宿泊施設の方を表彰してきました。そうした施設を増やし,それをモデルとして,地域文化の継承,コミュニティ活性化等につながるような取組をしていきたいです。例えば,マンションができるとコミュニティがだめになるということがありますが,逆にマンションと地域コミュニティが非常にうまくいき,コミュニティの活性化につながっている例もあります。もちろん,地域との繋がりが希薄なマンションもあります。観光というものが,京都,日本において,大きな産業になっていきますので,色々な知恵を絞って制度を作っていきたいと思っています。

 

 

記者

 「市民生活と調和した持続可能な観光都市」推進プロジェクトチームの中長期的な取組として,規制をしていくことも含めて考えていくのでしょうか?

 

市長

 日本の法律の下で,地方自治体がどこまでできるのか。例えば,神戸市で,高層のタワーマンション建設を規制する方針を出されて,そのことについて京都でもどうですかというお声もいただきますが,京都ではそもそもタワーマンションは認めていません。住民の合意に基づき地区計画を作ってそれぞれで規制していますし,住居専用地域の住宅宿泊事業法に基づく民泊も,1月15日から3月15日までしか認めない。東京ではそのような規制はありえないと言われるような規制もしてきました。

 その上で,私の想いだけでなく,どういったことができるのか,専門家による研究も含めて,テーマの洗い出しなどを秋頃までにしていきたいと思います。必要に応じて条例を制定することも,議会とも審議しながら,条例でできること,実効性のあることを詳細に検討していかなければならないと思います。

 

 

記者

 地域の分散化についてこれまでも取組をされてきたと思いますが,どういった課題があり,それに対する具体的な対策について,何か市長のお考えはありますか。

 

市長

 地域の人が主体的に情報発信し,行政や関係事業者と一緒になって受け入れ体制を充実させていくということに尽きると思います。

 例えば,まじめにやってこられた伏見の十石船が本当に閑散としていました。また,大原も観光客数がピーク時と比べると3分の1です。しかし,最近はだんだん増えてきました。地域の人が一緒になり,京都市,観光協会も含めて,多言語対応やキャッシュレス化等,踏み込んだ過去の延長でない取組等をしていくことで,もともとある魅力を活かしていくことにつながります。

 10年前,祭りの時以外は伏見のお稲荷さんは空いていましたが,今ではあのように観光客で混雑するといった現象が起こるわけです。嵐山の地域だけでも,大覚寺や奥嵯峨では非常に静かですが,京都はどこも混雑していると思われています。

 今朝も京の夏の旅のセレモニーで仁和寺に行きましたが,実に静かでした。373年ぶりに観音堂が開かれ,373年前に書かれた絵が,真っ暗の状態で保存されていましたので,非常にきれいでした。そうしたことをしっかりと発信していくとともに多言語対応の支援をしていきたいと思います。

 

 

記者

 今回の調査結果の中でも,観光消費額,宿泊客数が伸びてきていますが,トータルの観光客数は3年連続で減少しているという傾向があります。これが,いい規模に落ち着いてきたという捉え方なのか,伸び悩んでいると考えているのか,どのように評価されていますか。

 

市長

 日帰りから宿泊に転換している。非常におもしろい数字があるのですが,延べ滞在観光客数ということで,日帰りの人は1人,一泊した人は2人という計算をすると,この4年間はほぼトータルとして横ばいです。京都に車で来て,お昼に着き,夕方に帰る人が,1泊,2泊すると消費額が増え,車の渋滞も減っていきます。全体としていい傾向だと思っています。何よりも満足度が高いということが非常にありがたいです。市民の皆様,関係事業者の皆様のおかげだと思います。

 京都はフィレンツェとよく比べられますが,都市の規模が違います。京都は極めて広い都市です。その京都には静かで空いている所がたくさんあります。そうした場所に観光客があまり行っていただけていないというのは大きな克服すべき課題です。

 例えば,山科経済同友会が大変熱心で,山科にもっと観光客が来てほしいと,我々が東京で説明会をした際に,その会場の外で経済同友会がチラシ配布していました。しかし,5000万人以上の観光客が京都に来られる中で,山科の訪問率は2.5%です。

 そんな中,一つの良い傾向として,JR西日本さんが,京都駅や大阪駅から山科までポイント割引で電車に乗っていただき,それから地下鉄で京都のまちなかに行っていただけるようにすることで,京都駅界隈が混雑しないような取組を4月から5月にかけて実施していただきましたが,このような取組を,今後も継続して実施していただければと考えております。

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