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門川市長記者会見(2017年11月15日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2017年11月15日)

「東京・京都館」の新たな展開について

 本日11月15日は「きものの日」です。昭和41年,50年以上前,全日本きもの振興会が11月15日を「きものの日」とし,きもの文化の継承と普及を図っております。近年ようやく,経済産業省においても,「きものの日」を意識した取組を進めようとしていただいています。本日は,職員も着物姿で市長記者会見に出席しています。

 和装産業が非常に厳しい状況でありますけども,着物の素晴らしさ,さらに和装があらゆる文化の土台であると思います。先だっても,中村芝翫さん,あるいは獅童さんらが京都に相次いで来られましたが,歌舞伎においても,和装産業,伝統産業が衰退したら維持できないということを強調しておられました。今年はロームシアターで顔見せが行われますが,伝統産業ふれあい館と連携して,歌舞伎と京都の伝統産業の取組も進めていただきます。また,あらゆる宗教行事等々も含め,伝統産業,和装が基盤であります。さらには,京都を見ていると,最先端の産業も和装を含めた伝統産業が母体となっています。その意味においてもしっかりと節目節目で取り組んでまいりたいと思います。

 京都織物卸商業組合が主体となって,午後6時から,京都タワーを平安時代の十二単に代表される女性装束の色目「襲(かさね)色目」をイメージしたツートンカラーでライトアップするとともに,ホテルグランヴィアでは「倉木麻衣さんのきものの日PR大使」,任命式が行われます。また,京都タワーサンドでイベントも開催されますので,是非とも取材にお越しください。

 さて,本日は,「京都館」の2020年を見据えた新たな展開について御報告します。

 京都館及び東京事務所が入居しているヤンマービルが平成30年4月から,周辺地域一帯の再開発に合わせて建替えられる予定です。現在の京都館は,30年3月に一旦閉館しますが,これを新しい京都館につなげるため,「京都館プロジェクト2020」を立ち上げることにしました。

 このプロジェクトは,閉館後も隙間なく京都館事業を継承していくために,様々な取組を実験的,挑戦的に展開,新しい京都館の可能性を探るものです。そして,今年度中には,リーディング事業として2つの具体的な取組にも着手してまいります。

 現京都館は,平成18年10月から東京駅八重洲口で,京都関連情報の総合拠点施設として開設し,運営してきました。これまで,観光や移住などの京都情報の発信や京都の中小企業者向けのイベントスペースの貸し出しのほか,伝統工芸品・食品の展示,販売,文化・産業に触れる体験・講座などを実施し,政令指定都市唯一のアンテナショップとして年間25万4千人の方に御利用いただいております。

 平成26年9月には,放送作家の小山薫堂氏を館長に迎え,京都をテーマにしたテレビ番組の企画やラジオでの京都移住PR等,メディアを活用して京都の情報を発信していただくほか,東京におけるイベントの企画・演出等を担っていただくことで,首都圏における発信力を強めてまいりました。

 ここからは新しい京都館の目的や充実する機能を御説明します。まず,背景として踏まえなければならないのは,東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に,首都圏における情報発信の重要性がさらに高まっているということです。東京は,首都圏のみならずメディアなどを通して日本全国とつながっており,同時に,世界ともつながっております。そうした意味で,新しい京都館は世界を視野に入れたものにしなければなりません。

 また,平成33年までに,文化による地方創生を目指し,文化を基軸とした国づくりへと大きく転換する国家プロジェクトとして,文化庁が京都へ全面的に移転するため,「文化首都・京都」として,京都から文化で日本を元気にし,世界に発信していく。世界から文化で尊敬される国になっていく,こうした役割も京都に求められています。

 その責任を果たすため,新しい京都館は,「京都文化,日本文化の首都圏での発信」,「伝統産業の振興」,「観光,移住,企業誘致や京都企業との取引など,京都への投資の喚起」などの取組を通じて,京都の比類なきブランド力の向上を目指してまいります。

 具体策について,新しい京都館では,5つの機能を新たに付加したいと考えております。

 1点目は,「本物の京都文化の更なる発信,日本文化の発信」であります。京都から文化で日本を元気にし,世界に発信していく役割が求められております。

 このため,京都館においても,首都圏の京都の情報発信拠点として,本物の文化を発信し,改めて京都の奥深い文化,日本の文化に対する理解を深めていただき,それを更に広めていくことが重要であると考えております。

 2点目は,「京都ファンが集い,学び合える場」であります。首都圏には熱心な京都ファンの方が多くおられます。ここ10年,20年で大きく増えたと感じています。そして,京都にはそうした京都ファンを飽きさせない奥深い魅力が数多くございます。こうした方々に,京都について一緒に学び合える場を提供し,東京で学び京都にお越しいただく。そのように更に深い京都の知識を得ていただくことで,よりコアなファンの拡大につながると考えております。

 3点目は,「京都に憧れる方々と京都市民とのネットワーク化」であります。京都のまちは,人と人のつながりを大切にしてきました。そして,そのつながりの中からコミュニティが形成され,祭事が生まれてきました。同時に私は,人と人とのつながりから,京都市民の京都のまちへの愛着も育まれてきたと実感しております。

 このため,京都に魅了された首都圏の京都ファンと京都市民を,互いにつなげ,コミュニティ化することで,単に京都に観光に来ていただくだけではなく,京都の魅力発信に自らが取り組む,あるいは京都に投資する,あるいは移住するなど,京都により愛着を持ち,主体的に関わりを持とうとする。こうした流れを作っていきます。そして,そうした方々と京都の企業や市民の方々が,「京都」を通じてつながるネットワークを作り上げていきます。

 4点目は,「民間施設との共同,連携・連動」であります。京都に関しては,観光や物販をはじめ多くの民間事業者が京都のブランド力を活かして様々な情報発信をされております。このため,新しい京都館でも,こうした民間事業者の取組を最大限活用し,現在は京都館が独立して色々な事業を行っている形になっておりますが,共同,連携,連動することで,より効果的なシティセールスが図れると考えております。

 最後に「京都産品の需要拡大」であります。京都には74の伝統産業品がありますが,いずれも厳しいものであります。しかし,あらゆる可能性があります。そうしたものをしっかりと発信して行きたいと考えております。また,こうした京都の伝統工芸品等は,京都だけで作られているものではございません。日本各地から材料,原料がもたらされているものが数多くあります。

 1200年の歴史に培われた伝統の技の素晴らしさ,技術の高さに改めて目を向けていただき,これまでのように商品を売るだけでなく,新たに商材を売ることも含めた展開を実施し,需要拡大につなげる。また,文化庁が全面的に移転してくることを契機に,京都に留まらず,日本の伝統,匠の技を継承,発展させることに繋がると確信しております。本市のブランド力を最大限活かすことで,京都が元気になる,そして,これが全国のまちの産業の振興や課題解決にもつながっていく,そして世界に広がっていく,そういう新しい取組にチャレンジする。それがこの「京都館プロジェクト2020」です。

 オリンピック,パラリンピックの開催を控え,都内の不動産賃料の高止まりや,物件そのものの供給が減っている状況を考えると,これまでの京都館の取組を総括して,新しい京都館のあり方をしっかり検証する絶好の機会だと考えております。様々な創造的な取組にチャレンジしながら,あらゆる可能性を探ってまいります。

 「京都館プロジェクト2020」,これは現京都館と新京都館を繋ぐ取組であると考えております。具体策として,4つのプロジェクトに取り組みます。

 プロジェクト1が「コラボ京都館」,プロジェクト2が「サロン京都館」,プロジェクト3が「京都館『のれん分け』」,プロジェクト4が「バーチャル京都館」です。

 まず,プロジェクト1の「コラボ京都館」であります。この取組は,都内にある既存の集客力の高い施設やブランド力がある施設,さらには若者に人気の施設,メディアで取り上げられている話題の施設などと,京都館が連携事業を実施するものです。現行の京都館は単独で展開しておりました。今回のプロジェクトでは,民間施設とコラボすることによって,これまで以上の,より大きな効果が得られると確信しております。同時に,民間側も,「京都館」あるいは「京都」とコラボすることによって,大きなメリットがもたらされるということを実感してくだされば,新しい京都館の立地場所や設置形態を考えるうえで,様々な可能性が広がるものと考えています。

 具体的には,来月に丸の内へ移転する東京事務所のネットワークを活用し,銀座,青山,日本橋等,都内各所の文化施設,百貨店,商業施設などで,物販や情報発信,体験,文化発信などに取り組みたいと考えています。

 次に,プロジェクト2「サロン京都館」であります。このサロン京都館は,東京で,京都をテーマに,人と人のつながりをつくり,意見交換し,場合によっては議論を交わし,京都を通じたコミュニティを形成する取組です。幸い東京にもこうしたつながりや集いを大切にする民間ネットワークが生まれてきており,連携していきます。

 サロンでは,テーマを「新しい京都館への期待,要望」,「京都の魅力向上に向けた提案」,「京都の課題解決」とし,若い世代,社会的に影響力のある層などのネットワークを形成し,具体的な行動に結び付けてまいります。

 サロンとして,次の2つの取組を考えております。1つ目は,民間事業者等と文化,産業等をテーマに対話・検討を行うサロンです。これまでも,伝統文化や老舗料亭等の若い担い手と一緒に京都館のあるべき姿について対話をしてきましたが,これを継続発展させていくものです。これは小山館長に大きな役割を果たしていただきます。

 2つ目は,京都の魅力向上課題解決プロジェクトです。これについては,東京の参加型企画チーム「オレンジ・ブレイナリー」とのタイアップ企画です。「オレンジ・ブレイナリー」は,公募で集まった様々な技能,知識を持った方々が,テーマに基づいて,社会を魅力的に変えるアイデアを創出して,実行に取り組むチームです。これまで自治体とタイアップして商品の支援や商品開発に取り組んできた実績があります。京都でもそのような取組に学んでまいりたいと思います。

 次に,プロジェクト3「京都館『のれん分け』」であります。首都圏における京都情報の発信は,これまで以上に促進する必要があると考えています。

 本市では,世界の宝,日本の貴重な財産である歴史都市・京都を国を挙げて再生し,活用する「京都創生」のPR等を目的に,平成22年度から「京あるきin東京」を2月に実施し,昨年は111の事業を219の京都にゆかりのある団体の協力を得て実施しております。ここで培ったネットワークを活用し,京都情報の発信をお手伝いしていただける京都ゆかりのお店を約10店舗程度選定して,「京都館」をのれん分けします。

 のれん分けした店舗は,観光PR,移住促進,イベント告知などを担っていただく,いわば京都市公認の「民間・京都館」に位置付けてまいります。

 最後に,プロジェクト4「バーチャル京都館」であります。来年3月の現京都館閉館後も継続して京都情報を発信する情報受発信拠点として,WEB上に双方向型のホームページ「バーチャル京都館」を設置します。サイトに掲載するコンテンツの例として2つ例示をしております。

 1つ目は,京都において,「ほんまもん」をつくる伝統産業の担い手やグループが取り組むプロジェクトです。

 2つ目は,東京において京都の魅力向上や課題解決に取り組むプロジェクトです。こうした取組を発信することで,プロジェクトに京都ファンや民間事業者を巻き込みつつ,京都ファンと京都を結び付けるプラットフォームを形成してまいります。

 また,新しい取組にチャレンジする京都市の伝統産業の担い手の活動を応援するために,クラウドファンディングを運営する企業等とも連携してまいります。

 今年度は2つのリーディング事業を実施します。1つ目は,歌舞伎座ギャラリーにおける松竹株式会社とのコラボです。松竹株式会社は京都発祥の会社。大谷兄弟が明治28年に京都の新京極阪井座で興行主となったのが会社の起源です。歌舞伎は京都で出雲の阿国が歌舞伎踊りを演じたことを発祥としております。

 来月には岡崎のロームシアター京都で顔見世をするにあたり,京都伝統産業ふれあい館等,岡崎地域一帯で松竹株式会社と京都市がコラボします。今回のリーディング事業は,こうした松竹株式会社との連携を東京・歌舞伎座でも実施しようとする取組です。具体的には,東京歌舞伎座ギャラリーで,京都発祥の歌舞伎の魅力や,伝統・文化の継承とイノベーションについて歌舞伎俳優,小山館長等によるトークショーを開催します。

 2つ目は,サロン京都館の取組です。「オレンジ・ブレイナリー」と連携した取組は,平成30年度から本格実施しますが,まずは年度内にも首都圏の方を中心とした40名程度の方に集まっていただき,京都や新京都館のイメージについて議論していただき,民間主体のプロジェクトをスタートさせます。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え,情報発信の重要性は高まっております。そのため,小山薫堂館長の創造的な発想を活かしながら,首都圏におけるもう一つの情報発信拠点である東京事務所と一体となって「京都館プロジェクト2020」に挑戦し,新京都館の礎を作っていきます。

 そして,こうした取組は,京都のみならず,日本の文化・伝統を改めて見直すことにつながり,それが日本を元気にし,更には世界に日本の素晴らしい文化を伝えていくことにつながると確信しております。

質疑応答

報告案件に関する質疑

記者

 京都館プロジェクトについて,市長が考えるキーワードもしくは重視したい取組はどのようなものでしょうか。

 

市長

 京都ファンが京都館に集まってネットワークを作り,そして京都の人間も参画し,さらに京都ファンの層を広げて核となる人がどんどん育つ。そうした取組によって,首都圏と京都との距離が縮まります。同時に,全国,世界に京都のほんまものの魅力が発信されていく。そういった情報発信や催しにより,人々が活き活きと活動し,京都ファンが増え,層が広くなっていくような京都館にしたいと思っています。

 

記者

 新たな京都館について,いつ頃までに決めるという目標はありますか。

 

市長

 これからです。例えば,新しいビルが開発され,そのビルから京都館に入ってほしいという展開もあると思います。また京都館によって,その建物の価値が高まるということもあり得ると思います。

 かつての京都館は物販中心のアンテナショップ的な機能でしたが,今は,情報発信拠点になりつつあります。人が集い,意見交換し,ほんまものの京都の魅力に気付き,かつ創造し,同時に発信するというようなものにしていきたいと思っています。そのためには,東京駅や青山のような若い人が集まるのが良いのか等々を検討する必要があります。また,京都市が建てるというものではありませんので,できるだけ速やかにというのではなく,どのような物件が良いのかをこの2~3年を貴重な時間として,大いに議論し,多彩な事業を展開して答えを見つけていきたいと考えています。

 

記者

 東京五輪に向けて各自治体が銀座等にアンテナショップを集中して出店していて,ここ2~3年が大事という話がある中で,この期間に京都館を設置しないのは機会損失だと思いますが,なぜ場所を設けられなかったのでしょうか?

 

市長

 候補となる場所はいっぱいありますが,一か所ではなく,多彩な場所で多様な取組をし,そしてどこが一番良かったかを検証していこうということです。

 前の京都館の場所は赤坂であり,お客さんは少なかったですが,時々高いものが売れるような場所でした。今の京都館の場所は,年間25万人も来られる場所ですが,京都の伝統産業製品など,高額なものが売れるところではなく,観光情報拠点的な場所になっています。モノを買うのも,観光情報を取得するのも今はネットでできる時代になってきました。そういう時代に,やはりどういう拠点が必要かということを侃々諤々の議論をし,実証を重ねて,もう一度考えていこうということです。

 

記者

 探したがなかなか見つからなかったということではないのでしょうか?

 

市長

 もちろん,あらゆる不動産市況を見てもらうとわかりますが,極めて高止まりしています。そして,どの経済紙を見ても2~3年後には供給過多になるのではないかと言われていますので,その時を狙おうということです。

 不便な所,魅力のない所に決めないと同時に,その期間をチャンスに,宝にし,どこが良いのか,あらゆる所でどういった層の方が来られるのか,どういう催しをした方が良いのかなどの検証を重ねるということであります。

 そして,今高止まりである価格が,2~3年後には落ち着き,相当の供給が出てくることをチャンスにし,多彩な取組をして行こうというものです。

 

 

記者

 不動産賃料の高まりなどがある中で,このまま拠点を作らないという選択肢はあるのでしょうか。

 

市長

 すでに2年間議論をしてきましたが,人が集まる,京都ファンが集まる,また京都の人間が東京に行き,ネットワークの核になる,そういう拠点が必要であるということについては多くの人が一致した意見です。限られた中で何をするのが一番か,場所も事業も最も重要なものに集約していくような2年ないし3年にしていきたいです。

 

 

記者

 京都館という定点的に施設を持っていることへのメリットは当然あると思いますが,定点的な施設を持ちつつ事業を進めることも可能であると思われる中で,2~3年間そういった施設がない時期があることに対するデメリットは。

 

市長

 プラスにできると確信しています。大切な税金でする事業でありますので,費用対効果を考えなければなりません。この特定の場所を借りるという維持費をもって,様々な民間と共同して事業展開が可能であるし,スタッフもその費用で投入できるということもあります。

 同時にこの機会に改めて実感しましたが,8年間,「京あるきin東京」という事業をしてきましたが,京都館のあり方,場所の課題もある中で,多くの京都に御縁のある企業,あるいは,「京あるきin東京」に関わっていただいた企業が一斉にやりましょうという展開になってくると,この限られた東京の場所でスタッフを置いてやるよりも,より効果的な展開ができると思います。そして,2,3年後にそれらのネットワークを集約し,活かしながら拠点ができた時,大きく京都館は飛躍すると思います。アンテナショップとして一定の役割を果たしているのは事実ですが,それを踏まえつつ,文化,人のつながりなど,さらなる京都らしいものにしてまいりたい。

 

報告案件以外に関する質疑

(民泊,宿泊税について)

記者

 これから議論を進めることになるかと思いますが,民泊に関する条例案で,一部地域に一定の期間,制限を設けるということはかなり高いハードルを課すことになり,事業者からの反発なども考えられますが,民泊に対する京都市としての考え方は。

 

市長

 まず,観光というもので大事にしなければならないのは,一つは宿泊者と地域住民の安心・安全の確保です。もう一つは心のふれあいです。京都市は60年前に市民憲章を制定し,旅行者を温かく迎えようと高々と掲げ,実行してきました。これが今の京都観光発展の原点であると思います。

 今,違法民泊等で周辺住民から悲鳴のような声が聞こえてきます。マンションでは,オートロックにしているにも関わらず夜中に人が出入りしており,間違えてインターホンが鳴る,また,共働きの人からは,子供だけ家に残しているのが心配という声も出てきています。この2~3年で,法治国家であった日本はどうなったのだろうと,今の状態に危機感を持っています。

 観光客も周辺住民も安心・安全で,かつ,「京都を訪ねて良かった」,「京都に住んでいて良かった」と両者が思っていただけるような持続可能な,満足度の高い観光都市にしなければならないですし,ビジットジャパンでなければならないと思います。

 そうした時に,住宅宿泊事業法の制定までに,それぞれの地域が大事にしてきた理念がありますので,この理念をしっかりと活かした独自の規制ができるように,国に対して,具体的には厚生労働大臣,国土交通大臣,観光庁の長官等々に要請してまいりました。

 これまで,法律で条例にもっと委任して欲しいと申し上げてきましたが,条例での委任事項が限定され,極めて厳しい状況に陥っているといっても過言ではありません。法律の専門家の英知を集め,議会での議論,市民の皆様の御意見を踏まえ,最大限の住民の安心・安全,静かな生活と,そして,宿泊事業,観光客の安全が両立する制度にしていくため,近く,京都市の条例案を作り,パブリックコメントを実施し,議会に諮っていきたいと思っています。

 宿泊税について,京都市は,観光都市としての魅力を向上させるために,多くの市民の税金も使い,取組を進めてきました。京都は何もしなくても,多くの方が来られると言われますが,決してそうではありません。

 京都市は昭和5年に観光課を作っています。そして戦後も,ここ10年,15年もあらゆる観光施策を展開してきました。現在191の事業を展開し,多くの税金を投入しております。それは,ほとんどが市民の税金であります。これだけ観光が元気ですが,この10年,京都市は,税収が約150億減っているという事情があります。

 もっとも,観光の振興によって雇用の創出や,京都の経済の活性化には大きく寄与しているのは事実ですが,しかし,それらの税金は直接京都市には跳ね返らず,税制上の問題ですが,東京,政府にいきます。

 急増するインバウンド等々を含めて,混雑回避など,市民生活の平安を目指していくと同時に,観光客の満足度を高めるためにもするべきことがあります。観光客用のトイレ整備や案内標識の改善等,毎年毎年,億単位のお金を投入していますが,まだまだです。そういう意味で,観光客の方にも行政の施策の主役者になっていただいているわけですので,その一部を負担していただこうという趣旨で,先だっての議会で圧倒的多数で議決されました。またその時にも,議論がありましたのが,使われ方の問題があります。使途をしっかりと明確にし,市民,観光客,また宿泊事業者にとっても,宿泊税を導入してよかったと感じていただける取組に全力を挙げていきたいと思っています。

 

記者

 先日可決しました宿泊税条例について,違法民泊に対する徴収の具体的な対策というのは。

 

市長

 これまで,専任のチーム20人,さらには区役所,防火の点から消防など,全庁挙げて市民の皆様の苦情に対応し,実態を把握し,厳しい指導もしてきました。この間1年で3000件を超える現地調査を実施し,かなり違法民泊の実態は把握できてきました。それらへの宿泊者に対してしっかりと徴収していきます。

 同時に,来年3月に届け出が始まり,6月からは完全施行になります。国においても,違法民泊を掲載しているネットは絶対に認めないと言っていますが,認めることがあっては絶対なりません。違法民泊のほとんどがネットから予約しますので,違法民泊はほとんどが消えることになると思います。我々はそのことをしっかりと国に要望してまいります。また,大手のネット業者からはすでに,宿泊税の代理徴収について誠実にしていきたいという申し出も受けておりますし,宿泊料金を振り込まれる際に宿泊税も同時に代理徴収するということを仰っておられます。 

世界では,そうした例がきわめて多いので,そうしたことも活かしていきたいと思っています。

 国だけに頼ることなく,住民の皆様と協力し,全力で違法民泊を根絶していくと同時に,営業して宿泊しているという事実がある限り,税金は掛けていくということに取り組んでいきます。

 

 

(宿泊税及び京町家保全について)

記者

 宿泊税の使途について3つの柱を挙げておられますが,町家保全をこの1つの柱に位置付けた理由は。

 

市長

 京都には国宝や重要文化財,世界遺産がたくさんあります。今後,京都が京都であり続けるためには,街並みも含めた景観が大事であるとともに,その町家,京都に伝わる日本人が大切にしてきた暮らしの美学,生き方の哲学というものが観光振興の点から非常に大事でありますし,日本ならではの文化の振興という面からも大事です。

 ドイツの大統領が京都へお越しになった際に,「世界の国はこの100年で近代化をし,近代化が実現した時には,ほとんど個性がなくなり,世界中が同じ家,服装,同じものを食べるようになる」と仰っていました。しかし,「近代化が成功した日本の京都には素晴らしい個性が残っている,継承されている,それが最高の魅力である」とも仰っていただきました。これは観光,文化の上からも大事にしないといけないと思います。

 そうした象徴の一つが町家であります。この8年間で,4万7千軒を超えていた町家の数が4万軒となり,危機感を覚えています。これは,町家が消滅していくというだけでなく,そこに伝わる日本の心が消滅していくということです。したがって,今回,侃々諤々の議論をしていただき,非常に踏み込んだ条例を作らせていただきました。

 町家をやむなく解体しなければいけない際に,1年前に届け出を出していただかなくてはなりません。町家の指定については,所有者,管理者の了解を不要としました。今,日本の国宝も重要文化財も全部,所有者の同意を得て指定をしていますが,同意後であると,その間に町家はどんどん解体されていくというような状況です。したがって,同意なしに指定をさせていただきます。もし指定したものが届け出無しに解体されたら,所有者に罰則を掛け,さらに,解体業者についてもペナルティーを掛けるという,現在の日本の中では最も厳しい条例を設けました。

 それは町家というものがいかに価値があるか,それを再認識しようというものです。そして所有者,管理者,市民も行政もみんながその価値を認識し,努力をしようという趣旨でもあります。

 したがって,今も耐震補強など,様々な面で町家についての支援制度やアドバイザー制度を作っており,さらなる充実をさせなければならないと思っています。

 農業をする限り相続税は猶予され,それを売ってマンションにする場合は遡って税を掛けるという制度があるわけですが,町家についても,町家のまま継承する場合は相続税を猶予するといったことも含めて国に制度改革を要望していきたいと思います。

 そうしたこともあり,総合的な取組の一つとして,宿泊税の使途の一つに町家保存のための支援というのを考えております。

 

記者

 新たな支援策や充実という面に宿泊税の財源を充てていくということですか。

 

市長

 町家の保存について大切な宿泊税の一部を活かさせていただきたいと思っています。

 

 

(自動運転,ロードプライシングについて)

記者

 京都市が国土交通省の観光交通イノベーション地域に指定されていますが,現時点でロードプライシングについてはどのように考えていますか。

 

市長 

 ロードプライシングを検討した時期もありましたが,一般道を通るのに税金を払うというのは,現行の我が国の法制度では無理だと思います。しかも,膨大なコストがかかります。したがって,秋の観光の時期に嵐山の特定の道路に交通規制をかけるという対策に取り組んでおります。

 今後,ビックデータを活かして車の流れをコントロールできないか,様々なことをこれから前提条件なしに検討していこうと考えています。例えば,自動運転までが想定される時代に,自動車がそこを走ったことがしっかりと記録され,それに課金できるというようなICTの進歩,仕組みができれば,多くの課題が解決します。

 しかし,今回は,高速道路が無人で課金され,料金が払われるのと同じような方式を,京都のまちに入った時にやっていこうという研究ではありません。

 

記者

 税金を課す前提ではなく,渋滞対策をするために何ができるのかという研究ですか。

  

市長

 4年前に未来交通イノベーション機構を京都市独自で立ち上げ,民間の錚々たるICT関連企業,経済産業省,国土交通省,宇宙開発事業団に入っていただき議論を始めています。

 4年前の会議で挨拶をした際,20年後の京都に無人運転電気バスが縦横に走り,人は高齢者と障害者のサポートだけをするというような時代が来る,あるいは,タクシーは全てスマートフォンで呼び,空のタクシーは一切走っていない。そうすることでタクシー運転手の労働時間の45%減ると話をしました。さらに,駐車場は全部スマート料金制度になる。周辺部の駐車場は非常に安く,都心部に入るほど高くすることで,周辺部で車を止めて,都心部には公共交通,無人電気バスで入ってくというようなことが想定されます。そういうことも含めた研究を始めております。

 4年前は,無人運転が新聞に載ることはありませんでしたが,今ではほとんど毎日,テレビや新聞で見ます。そういったところも含めて,あらゆる可能性を研究しようというものです。

 

 

(オープン化事業について)

記者

 国民健康保険や住民基本台帳を管理するシステムについて,東京の業者との契約を解除されたとのことですが,この業者が京都市を提訴したという報道があります。これに対する京都市の対応はいかがでしょうか。

 

市長

 これにつきましては,日本を代表するコンピューターの有識者などに委員をお願いして委員会を立ち上げていただき,契約のあり方,事業の遂行能力,経緯,そうしたものを検証し,委託事業者の遂行能力等に原因があったという報告をいただきました。我々はそれを持って話し合いをした結果,契約を解除通告しました。 

 そして,既に払った費用については,返還の訴訟を起こしたいと思っています。相手側が裁判を起こされましたが,もってのほかです。裁判でしっかりと明らかになれば解決すると思っています。

 

記者会見資料

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