門川市長記者会見(2017年7月5日)
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2023年4月12日
市長記者会見(2017年7月5日)
歴史的景観の保全に関する具体的施策(素案)について
本日は,私から世界に誇る京都の景観を更に向上させ,将来に渡って守り,発展させていくための具体策である「歴史的景観の保全に関する具体的施策(素案)」について御報告いたします。
京都市内には,思わずため息が出るほど美しい自然景観,伝統的な町並みや庭園,歴史や文化が継承されてきた寺社など,唯一無二の優れた歴史的景観が数多くあります。京都市では,そうした景観を保全するために,昭和5年に人が住んでいる場所では初めてとなる風致地区を定めました。昭和47年には全国に先駆けて美観地区等を活用した市街地景観条例を制定するなど,様々な制度を駆使して,景観の保全・再生に努めてまいりました。
平成19年からは「新景観政策」として,6つの条例を施行し,日本中が規制緩和の大合唱のなか,建築物の高さ規制を31mから15mに引き下げる等,規制の強化に取り組みました。全市的なデザイン規制として,市街地を43の地域に分け,それぞれにきめ細かなデザイン基準を定める,さらには,全国初となる眺望景観や借景の保全,屋外広告物の規制強化などの取組を,市民の皆様,事業者の皆様の御理解と御協力のもと,進めてまいりました。屋外広告物の規制は,3万の建物に及びました。
また,これらの取組は,景観白書の発行や景観市民会議の開催を通し,絶えず検証を行っているところでもあります。私は,京都市の景観政策について,これまで何度も海外の方にお話しする機会がありました。その度に,「なぜ京都ではそんな大胆な取組が出来るのか」と驚嘆されます。その問いに,私はいつもこうお答えしています。「100年後のみならず,1000年後も京都が魅力あふれるまちであり続けるために,今,自分達にできることをしようという,市民の皆様,事業者の皆様の高い志があるからです」と。
世界中から愛される景観が京都に息づいているのは,それらを懸命に守り続けてきた市民や事業者,寺社などの歴史的資産の所有者の皆様の御理解と御尽力の賜物であります。改めて敬意を表し,感謝申し上げます
こうした皆様の御尽力により,京都の優れた景観が,世界を含め,市の内外から高い評価を得たことが,都市格の向上や観光立国にも貢献できていると思います。またこれからも貢献していかなければなりません。
一方で,近年,市内の歴史的景観を構成する重要な場所において,景観保全のあり方を問い直す議論が起き,市会からも,歴史的景観の保全に係る懸念に対して,少しでも早い対応を求められてきたところです。
そこで,平成26年度に,学識経験者だけでなく,宗教関係者・経済界,さらには市民も含めた「歴史的景観の保全に関する検討会」を設置し,多様な観点からの御意見を頂戴しながら,世界遺産をはじめとする寺社等とその周辺の景観に関する総点検を行い,本市とともに,3年間にわたって緻密な調査や検討を積み上げてまいりました。
寺社等の歴史的資産と地域の文化が一体となって形づくってきた歴史的景観を未来へ継承するために,京都がこれまでに先駆けて進めてきた取組を,さらに進化させる第一歩として,「歴史的景観の保全に関する具体的施策(素案)」を取りまとめました。
この施策によって,今後も「日本に京都があってよかった」,また,市民の皆様にとって「住んでいてよかった」と実感でき,市民の豊かさにつながる景観づくり・まちづくりを実現してまいります。
それでは,具体的な御説明に入ります。最初に,本取組の景観施策全体における位置付けを御紹介いたします。「新景観政策」は,5つの柱と支援制度で構成しており,それらの枠組みはしっかりと維持してまいります。同時に,「新景観政策」では,社会情勢の変化等を勘案しながら,絶えず進化することが制度当初からの内在的なルールとして定めております。
今年度は「新景観政策」の施行から10年であります。この10年間で,京都の景観は大きく前進し,各方面から高い評価を得ております。同時に,その意義を再認識し,さらに前進させていくこと,すなわち,生き生きとした市民生活,活力ある経済活動,ものづくり,研究開発,安心・安全のまち,大学のまちなど,京都の都市の特性を継承し,発展させることも大切であります。
このため,「新景観政策」10周年を機に,有識者や市民の代表の方々にお集まりいただき,シンポジウムを開催するなど,これまでの取組や実績等を振り返りながら,これからの景観政策についても,しっかりと考えていきたいと思っております。
一方で,近年,御所の隣でのマンション建設など,想定しなかった事態が生じており,私自身大きなショックを受けました。関係者の努力により,当初の予定では4階建てであったのが,2階建てとなり,なんとか景観は保全されました。こうした寺社を中心とする歴史的景観の保全につきましては,特に危機感をもって取り組むべき喫緊の課題であります。そうした課題を解消するべく,京都の優れた歴史的景観を未来に継承するための施策として,今回の「具体的施策(素案)」を取りまとめたところです。
次に,その構成について御説明いたします。3つの柱を掲げております。柱1は景観規制の充実,柱2は支援策の充実,柱3は景観づくりの推進でございます。
地域の歴史や風土,文化等,その地域で大切に守っていくべきものを市民や事業者,歴史的資産の所有者の皆様と共有しながら,3つの柱を一体的に進めていきます。
次に1つ目の柱である,景観規制の充実について御説明いたします。京都市では,平成19年に全国初となる「眺め」に関する総合的な仕組みとして「眺望景観創生条例」を制定し,優れた眺めを守るべき場所を「視点場」として定めました。また,視点場の周囲を「近景デザイン保全区域」に指定し,新しい建物を建てる際の色やデザインの基準を設けています。平成19年には,境内からの眺めなど,8種類の眺めを定め,合計で38箇所の視点場を指定しました。今回,境内からの眺めを10箇所,「しるし」への眺めを1箇所追加し,視点場を49箇所に増やします。境内の眺めにつきましては,平成19年に,上賀茂神社や京都御苑など,世界遺産や離宮の境内17箇所を視点場として指定しました。そして今回,大徳寺や北野天満宮など,優れた歴史的景観の核となる10箇所の寺社を追加し,合計27箇所といたします。
また,五山の送り火のように,目印となる「しるし」と周辺の町並みとが一体となった景観を守るため,現在,7箇所の視点場を指定していますが,今回は「八坂通から八坂の塔を見る眺め」を追加し,合計8箇所といたします。さらに,境内の眺めを定める27箇所の寺社等のうち,23箇所については,視点場を拡充します。従来は境内だけでありましたが,寺社周辺の参道や門前などの通りも視点場に指定し,沿道の建物等にも,デザインの基準を定めることで,寺社等とその周辺の一体的な歴史的景観の保全・形成を図ってまいります。
さらに「景観デザインレビュー制度」の創設であります。これは,景観への影響が大きい計画等に対し,寺社周辺の景観特性,歴史・文化等の地域特性に応じた良好な景観へと誘導するため,事業者・京都市・専門家が,計画の早い段階で協議を行うための仕組みを整えるものでございます。本市が,あらかじめ,計画地周辺の景観特性,歴史,文化,まちの成り立ちのなどの情報を提供し,建築主に景観に配慮した計画を検討していただきます。これまでは,十分に練った計画を提出いただいたのちに,再検討をお願いするケースもございました。そうした無駄を省き,景観にとっても,建築主にとってもメリットのある制度になると考えております。この図のオレンジ色で塗りつぶしているところが,今回新たに追加する視点場の近景デザイン保全区域を示しております。
続きまして,柱2の支援策の充実でございます。規制や手続の強化だけではなく,支援策もしっかりと充実させます。歴史的景観の核となる寺社やその周辺の伝統的な建物の維持・保全を図るために,所有者のお困りごとに応じた専門家を派遣するとともに,地域における景観上重要な建物の指定を積極的に行い,外観の修繕に対する補助等の支援を行います。また,歴史的な景観を保全する上では,建物と一体となった樹木や緑地等を保全することも重要です。そのため,景観上重要な樹木の指定を積極的に進め,適正な樹木の維持や管理に関する支援も行います。
さらに,先ほど御説明しました「景観デザインレビュー制度」の対象となる27箇所の寺社等の周辺については,歴史的資産の価値や重要性,地域の歴史・文化・成り立ちなど,新たに建物を計画する場合に参考となる情報を分かりやすく取りまとめ,広く公開することで,より良い計画へと誘導してまいります。
続きまして,柱3の景観づくりの推進でございます。趣のある京町家や,由緒ある寺社など,全市域に存在する歴史的資産の情報について,インターネット上の地図にわかりやすく紹介し,市民や事業者,寺社等の皆様と,歴史的資産の価値を共有できる新たなシステムの構築を検討します。また,市民の皆様が広く景観について学べる機会を提供し,地域ごとの学習会・見学会等への支援を充実することで,市民ぐるみで京都の景観を守るという機運の醸成に努めてまいります。
境内だけでなく,参道や門前などを含めた具体的なデザイン基準を整えながら,専門家との協議を実施する景観規制の充実,また,有効な支援策,さらには,景観づくりの推進の3つの柱を総合的にかつ,27箇所もの寺社周辺において取り組もうとするのは,全国にも例のない京都市の新たな挑戦であります。
本素案につきましては,広く市民や事業者,歴史的資産の所有者の皆様から御意見を頂戴するため,パブリックコメントを行い,各種審議会での意見聴取等を踏まえたうえで,平成30年2月市会に条例改正の議案を提案し,議会で御議論をいただきたいと考えております。また,スピード感を持って,取り組んでいきたいと思います。
50年後,100年後,さらに1000年後の京都の景観は,現在の私たちの行動の積み重ねによって形成されるものであり,長い歴史の中で培われてきた京都の優れた景観を守り,発展させながら未来の世代に継承することは,現代に生きる私たち一人一人の責務でもあります。市民の皆様が生き生きと暮らしていける,そして都市格を向上し,産業や大学,あらゆる研究機関等も生き生きとしていく,そのような調和のとれた取組をしていくことが重要であります。
そのため,規制の充実だけでなく,歴史的資産への必要な支援や,地域ぐるみで景観を守っていく機運づくりを一体的に推進してまいります。また,市民の皆様,事業者の皆様一人一人に,主体的に考えていただき,取り組んでいく。そして,その取組をしっかり支援する京都市でありたいと思います。10年前に6つの条例が提案され,侃々諤々の議論がありましたが,最終的に議会満場一致で条例が制定されて,市民の皆様と一緒に実行してきた10年であります。国からも,高い評価をいただいております。
京都市の景観政策が,この10年間の取組で,全国のモデルとなり,新たに景観づくりに挑戦する都市が増えてきております。文化庁の移転を契機として,さらに,国土交通省や文化庁,文部科学省とより連携を深めながら,文化首都として全国の景観づくりにしっかりと貢献してまいります。
質疑応答
報告案件に関する質疑
(歴史的景観の保全に関する具体的施策(素案)について)
記者
新たに創設される景観デザインレビュー制度について,審議会みたいな形を想定して定例的に議論していかれるのですか。
市長
そういうものではありません。例えば,歴史的な建造物があり,その近くにお店を出す,あるいは,住宅,宿泊施設を建てる。そういうときに京都市の条例規則に基づくガイドラインがありますので,現在はそれに基づいて計画がされます。
しかし,一生懸命考えて頂いた計画だとしても,どうも違和感があるということがあります。制度上は,高さ規制も色彩もどうもない。しかし,地域の意見を聞かずに建てた場合,しっくりこないという事例があります。
そうした時に,計画段階から専門家も交えながら協議することで,事業者の皆様にとっても,地域の住民の皆様の意向に沿ってその土地にふさわしいと思われるような建物,施設ができていくことが大事だということで,このような制度を作っていきたいということであります。
必ずしも,建物の高さやデザインいうことだけでなく,この場所にはマンションではなく,「このような施設にして欲しい。」などの地域住民の思いもありますので,それも含めて議論ができればいいと思います。
記者
「新景観政策」から10年が経ち,屋外広告物に関しては,四条通のビフォーアフター写真が示されていて分かりやすいのですが,それ以外の柱である「高さ」や「デザイン規制」に関しては,分かりやすいものとして,どういう変化がありますか。
市長
私も正直,四条通の写真を見て驚きました。あれは京都の人が指摘したわけではありません。観光客の方が来て驚いていました。あれは,7年間の取組の成果であります。しかし,屋外広告物は少しずつ減っていったので,市民はあまり気づいていませんでした。そこで,努力した成果を写真にし,見える化をしたら,「わあ,きれいになったのですね」とおっしゃっていただけました。非常に厳しい意見をおっしゃる事業者の方もおられました。看板を撤去するのに,「一千万円の費用がかかった。」と顔を見るたびにお叱りを受けました。それがこの間お会いしたら,「他の大都市に行ってきたが,あんな派手な看板見ていて耐えられなかった。」とおっしゃっていました。このように,当初は批判していた人が京都の取組を評価していただけるということがありました。成果を共有するということは非常に大事であります。私もまちなかに住んでいますが,かつて,私の近所では31メートルまでマンション等が建っていたのが,15メートルしか建たなくなりました。ずっと見ていると,気づくものであります。
また,「新景観政策」ではありませんが,その前に実施しました世界遺産のバッファゾーンの規制ですが,二条城の前の国際ホテルは塔屋を含めて,40メートルを超えていました。今度出来る,三井のホテルは15メートルであります。デザインを見せてもらうと,実に二条城と調和している。そして二条城から見える景色が,ほぼ400年前と一緒になる。こういうことを分かりやすく,お示ししていくことが大事だと思います。この屋外広告物については,7年間の猶予期間を設けて取り組みました。
建物については,2000件の既存不適格の建物があり,ホテル,マンション,オフィスビルなどの建物を建て替える時に下げていただく。その都度,景観白書のようなものを作り,お示ししているのですが,なかなか劇的に違いが見えるというのは難しい面があります。しかし,そういうことも含めて努力していきます。9月からは何回かに分けて,新しい景観政策,10年の成果,町家の保存等を含めた課題,それらについてのシンポジウムを開催します。
また,この間,地域の住民の皆様が,景観を守る取組をしておられて,それを京都市が認証するという制度も,段々と広がってきています。祇園新橋の界隈でも,そういった取組が広がっています。市民の皆様が主体的に自分たちのまちづくりということで取り組んでいただく,またそういった取組を幅広く共有し,多くの人に知っていただく,そういったことをより深めていきたいと思っております。
記者
50年後も100年後も京都であるためにということで新景観政策を導入されたと思いますが,新景観政策から10年が経っていますが,市長御自身,100年後の京都のまちの姿を想像されて,今はどの段階にあると思われますか?
市長
先程も申し上げましたように,昭和の初めから景観について先人たちが努力をされてきました。ただ戦後の日本全体のまちづくりの指針というのは,日本中で開発主導型になってきました。少し極端な言い方ですけれども,個人の権利は最大限に尊重しなければならない,それは,公共の福祉に反しない限りは制限できない。こうゆうことでありました。そして,50年前に衝撃的なことに,双ヶ岡を削って建物が建ちました。同じようなことが鎌倉でも起きました。このときにそれではだめだということで,京都市も市民も立ち上がって,古都保存法ができました。そのおかげで嵯峨大覚寺のあたりから広沢の池あたり,また五山送り火が行われる周辺の景観が保存されました。これが一つの取組でありました。しかしそれは一部分であります。
世界遺産を申請するときに,今まで文化財は点で保護してきたのを面のバッファゾーンでしっかりと守っていくということで,先程言いました二条城のまわりには15メートル規制をかけました。本願寺の周りもそうであります。それでもまだ一部分です。その次に10年前に6つの条例をつくり,新たな景観政策をスタートしました。そして,一つ一つの建物,場所ではなく,事例のない眺望景観という概念を作りだしました。五山の送り火や圓通寺から比叡山への眺望の間には何もなく,圓通寺から比叡山の美しさはまちなかから見える比叡山とは違い,神々しいです。そこにちょっとでも新興的なものが見えたらアウトだと思います。こういう状態を1000年後も続ける。
したがって,「新景観政策」のどこの段階にいっているのかというのは申し上げにくいです。町家の間に31メートルのマンションが建っていますが,建て替えの時には15メートル,20メートルになります。そしてこの景観にふさわしいデザインになる。こういうところから言えば,まだまだこれからです。しかし,眺望景観を守るという部分については,かなり凍結的とも言える取組ができました。それをさらに拡充しようということですので,新たに発展する段階に来たと言えると思います。
記者
町並みの保存と開発について,京都市としても観光の調子も良くホテルの拡充をされていますが,ホテルが多く建つことで町並みが崩れてきているという話を聞きますが,それらについてはどのように考えておられますか。
市長
ホテルの場合は比較的景観に合っています。例えば,フォーシーズンズホテルができましたが見事に景観に合っています。景観の規制はすべて守られていますし,さらに,建物の中も,景観というのはハードだけでないと思います。その中にどのような調度品があるか,伝統産業,伝統文化が活かされているのか。京町家でもハードとしての公共町家だけでなく,そこにどういう文化があるかということも含めてだと思います。ホテルよりマンションが非常に課題になっていると言えるのではないかと思います。
ホテルの事業者の場合は,京都の景観的な価値も大事にしなければ,観光事業はやっていけないと思います。マンションは売ってしまったらおしまいということで,そこに人が住もうが住むまいが,売って利益を出す。こういうことなので,物理的な景観は全部,景観条例に違反するマンションではないですが,そのコンセプトに,地域の絆,文化,コミュニティの活性化ということにつながらないマンションについては危機感を持っています。
記者
町家について一歩踏み込んでいくとか,あるいは町家を買い取るなどの財源的な措置をして,景観政策を進めていくという,そういうお考えはないのでしょうか
市長
私どもの説明が不十分だったのかもしれませんが,町家の保存については,審議会を立ち上げ,どのように町家を保存継承していくのか,また,答申もいただき,パブリックコメントもかけております。それが私たちの今の考え方であります。すなわち,日本初ですが,町家については所有者に保存する努力義務をかけ,同時に,指定した大型町家,あるいは,比較的面で残っているたたずまいの中の町家,これについては所有者の同意なしに京都市が指定する。これは国において国宝重要文化財も所有者の同意なしに指定された事例はございません。我々はこの町家の保存の大事さ,また昨今の町家が失われていく状況を鑑みて,同意なしに指定して行こうと思っています。同時に,その町家をもし解体するという場合には,1年前に届ける義務があり,その義務を果たさなかった場合は罰則規定を設ける。そして,もしそれを解体しようとする業者,また手続きを経ずに解体しようとした持ち主の両者についても何らかのペナルティーを掛ける方策はないかと考えています。町家を守るため,そういう義務を強化するなど踏み込んだ政策を実施していきます。
京都市,国の財政状況も御存じだと思いますが,4万件ある町家を京都市がどんどん買い取っていくような財源がないわけですから,その町家を活かそうとする人が,それを危機感と価値観を共有して,保存するために購入される。それに適切な支援をする。そうした枠組みを京都市独自で作ると同時に,国に対して,町家を町家のまま相続する制度設計を要望したいと思います。
例えば,相続の時に解体されることが多いですが,町家を町家のまま相続される場合は,相続税の猶予・制度を作ってもらいたい。京都の町家を保存するための新たな制度設計を国に対して要望していきたいと考えております。
報告案件以外に関する質疑
(多選批判について)
記者
兵庫県知事選について,選挙戦の中で多選批判が問題となっていましたが,市長のお考えは?
市長
難しい話ですね。兵庫県民の選択であろうと思います。それも含めて選択されて,知事が圧勝されたと考えています。これはそれぞれのケースではないでしょうか。
(京都市大型汎用コンピューターオープン化について)
記者
コンピューターのオープン化について,技術的なところは素人ではなかなか判断がつかない部分もありますが,コミュニケーション不足が指摘されていまして,発注者側は発注段階で相手側へどういうレベルでどういうものを求めるかということをもう少し詰めておく必要があったのではないかと思うのですが,それについての市長のお考えは
市長
それぞれの各界の日本の第一人者の方がお忙しい中集まっていただき,それぞれの専門家が主体的に考え,調査していただきました。京都にも素晴らしい人がいますが,京都市の委員をしているなど色々な利害関係があるため,そのような人は選ばず,答申いただきました。
私の考えは答申の中身に尽きると思いますので,個人的な考えは避けさせていただきたいと思います。ただ,汎用的なシステムを使うことによって将来的なコストダウン,あるいは,どんどん新たな需要が出てくることに対して適切に対応できる。なによりも京都の中小企業が参画でき,災害等で危機の時にも京都の事業者が主体的に復旧に臨めるという意味では,オープン化事業というのは大事な事業です。できるだけ速やかに当初の目的が達成できるように努力してまいりたいと思っています。
(双京構想について)
記者
明日,京都の未来を考える懇話会があると思いますが,改めて,国へ要望したいことなどについて市長のお考えを。
市長
先だっての公開の場で4人の方から御意見を賜りました。それぞれ「なるほど。」と,貴重な御意見だったと思います。改めて議論を深めておくべきだと思いました。大きく2点あると思います。
今上天皇が御退位されて一切の御公務から離れられます。感謝の気持ちでいっぱいであります。退位後の両陛下の御心が一番大事であり,また国民の感謝の気持ちが大事でありまして,それを踏まえて,季節のいい時に,京都へお越しになりたいと思われた時,静かに京都へお越しになられて,そして,文化など様々なことを感じていただく。こういうことに相応しい京都御所。あのままでいいのか,国の方で考えていただきたいと思います。
もう1点は,御大典がどうあるべきか。千年を超えて京都は皇位継承の地でありました。天皇陛下が東京へ行かれてからも,御大典は大正,昭和と京都で行われました。今上天皇の御大典が東京で行われた時は,あまり国民的な議論が無く,またそのような雰囲気ではなかったと思います。
今回は退位ですので,そういう議論をしていくことも大事だと思います。同時に,90年前と社会状況,物理的な状況も大きく違うので,何が可能であるかを国の方で検討していただけたらと考えています。
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