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門川市長記者会見(2017年6月12日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2017年6月12日)

「和の『こころ』と『わざ』を世界に伝える京料理人」制度の創設について

「和の『こころ』と『わざ』を世界に伝える京料理人」制度の創設について御説明します。

 我が国が誇る食文化の粋・日本料理を京都から世界に向けて発信する制度の創設ですが,京都には,日本文化や暮らしの美学,生き方の哲学が千年を超えて脈々と受け継がれています。それを象徴する一つが食文化,世界の宝として認められた「京料理」だと私どもは思っています。

 この日本文化が凝縮された京料理というかけがえのない財産をしっかりと未来へと引き継いでいくことは,今を生きる私たちの責務であります。

 その思いを強く抱いている日本料理アカデミーの村田理事長から,もう7年も前のことですが,「我が国が誇る食文化の粋・京料理を,国際文化観光の中心的役割を担う京都から発信していこう。そのためには特区制度を活用した法規制の緩和が必要。」との御提案をいただきました。私も大いに共感し,様々な取組をしてまいりました。

 数年前まで,外国人が長期間日本に滞在し,京料理を学ぶ場合には,「文化活動」でなければ在留資格を取得できず,働きながら京料理を学ぶことはできませんでした。給料がもらえない,保険に入れない,作った料理をお客様に出すことができないという状況でありました。

 そこで,村田理事長と京都市が先頭に立って,平成22年7月に,国に特区制度を提案しました。非常に厳しい協議が続きまして,3年4ヶ月の期間を経て,ようやく,平成25年11月に,全国で唯一,「外国人の日本料理店での就労」という画期的な特例措置が認められました。多くの関係者の努力の結果であり,感無量でありました。

 これまでに,京都市内の老舗料理店において,京料理を学びたいという強い意思を持たれた7名が,菊乃井さんをはじめとする料理店で修行をされております。

 そのお一人であるフランス人のユウゴさんが,日本を代表する料亭・菊乃井本店での2年間の修行を終えられます。私は,ユウゴさんに国際的な京料理の普及活動を積極的に担っていただくために,「和の『こころ』と『わざ』を世界に伝える京料理人」制度を創設することとし,その第1号としてお願いしたいと考えております。

 この制度は,特区事業により,概ね2年以上就労した外国人の方に,京料理を国内外に広く発信しうる知識・経験を持つ料理人として,委嘱するものです。この特区制度は今まで在留期間が2年間でしたが,申請の結果,今回新たに5年間まで緩和することができました。

 委嘱された方に期待する役割としては,更なる自己研鑽を積まれ,日本料理店の料理人としての京料理を提供いただくとともに,京料理の調理技法のみならず,日本文化との関わりなどその奥深さについて,他の外国人の料理人の方にも教え,広めていただく,また,自分自身の活動を様々なメディアやSNSなどを通じて,幅広く発信していただきたいと考えています。ユウゴさんにも,京料理の「こころ」と「わざ」を,世界中に伝えていただき,大いなる活躍を祈念申し上げます。

 また,ユウゴさん以外にも,特区事業により就労されている2年目の方が2名おり,そのうち1名は,5年まで延長を希望されておられます。今年度は,さらに3名の方が新たに日本料理店で学んでおられ,要件を満たせば委嘱していきたいと思っています。今後とも,村田理事長が先頭に立つ日本料理アカデミーとしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 私から申し上げるまでもなく,和食が,観光,産業,文化,食育など,さまざまな観点で,重要な役割を果たしています。ユネスコの無形文化遺産に登録されて以降,益々世界から注目を浴び,国の調査によると,海外の日本食レストラン数は,平成  25年1月の約5万5千店から平成27年7月には約8万9千店と,2年半で約1.6倍に増えております。しかし,これが我々の概念の日本料理店であるかどうか中々難しいところであります。

 また,外国人が日本に来られるとき,「訪日前に期待していたこと」の1位が,3年連続で「日本食を食べること」となっており,和食人気は一層高まっています。世界中から注目されている京料理の「ほんものの魅力」を世界に伝えていきたいと思っています。

 なお,先日,新しい文化行政,文化庁の機能強化の方向性を示した文化芸術振興基本法改正案が,衆議院で可決され,参議院でこれから議論されます。文化庁の京都への全面的な移転を目指した新たな制度であります。その法案の中に,生活文化の具体例として,現行法の茶道や書道に加え,「食文化」が明確に規定されるに至りました。これも京都の料理界の皆さんの大変な御尽力の賜物であります。村田理事長をはじめ皆さんに敬意を表したいと思います。

 それでは,村田理事長からも一言いただきたいと思います。

 

<村田理事長>

 今,市長にも言っていただきましたが,食を文化の枠の中に入れるために15年以上やってきました。山東昭子先生を筆頭に,林芳正元農水大臣と二之湯武史議員に幹事になっていただき,今まで働きかけた結果,やっと実現して本当にうれしいと思います。

 日本料理アカデミーは,日本料理を世界に広めるために今まで活動してきております。7年前に市長にお会いした時に,市長が「特区は得意なんだ」とちらっと言われたので,それならお願いしようかということになりました。今まで文化活動のビザで私の店にも外国人が何人もいましたが,やはり厨房にいると,湯を被ることもあれば,油で火傷したり,手を切ったりもします。それに対して労災もない状態はおかしいということで,外国人であっても人権は守るべきだと思い,何とか普通に働いてもらいたいと考えました。給料も払わずに長時間労働してくれることはありがたいと言えばそれまでですが,そんなことではダメだと思いますし,しっかりと給料を支払ったうえで労働してもらう必要があります。もともとは横で見ているだけで,労働はしてはいけない。お客さまに出すものには触らないでくれというような状態でした。それでは何の勉強にもならないし,実際に日本料理を世界の料理にしていくためには,日本でちゃんと育てた料理人を,点から線,そしてネットにする必要があり,その時に日本料理は正統に進化していくのだと思います。

 海外の日本料理店は9万店になりましたが,99.8%は日本人がいない状態であり,先日もロンドンに行った時,以前は「KOREAN」と書いてあったのが,次見た時には「KOREAN&SUSHI」となり,その次には「&JAPANESE」が加わっていました。どこも日本料理の方がお客さんが来てくれるということで,日本料理に変換していくので,国会の先生方は「けしからん。何とかしろ」と言われますが,私は日本料理と言ってくれるだけありがたい。それらを潰すのではなく,下草を刈って,添え木を加えて,水をやることで,いずれ大きな大木になるのを促しましょうと言っています。様々な情報を与えたり,様々なシステムを作って,今ある日本料理店をちゃんとした日本料理店にしていきたいと思っています。日本料理を日本人にしか作れない料理にしてしまっては世界の料理になりえませんので,それぞれのエリアで一番の日本料理人になるであろう彼らが,それぞれの国に帰って,様々な日本料理を通じての社会貢献を行うことにより,日本の第1次産業が露出していく機会が増えると思いますし,輸出を増やしていかないと食料自給率がどんどん下がっていきます。今から50年後の日本の子ども達はひょっとすれば飢えるかもしれない。1億2,600万人が8,000万人強になった時に,60歳以上が45%で,働き手となる前の子どもたちが30%ですから,25%が残りの75%を食べさせないといけない国になっています。その時にはアジアの経済発展は終わっていて,中国は内陸部までそれなりのものを食べるようになっており,日本は国際競争力も経済発展もなくなっていると考えられます。そうした時に,日本の子どもを飢えさせてはならないというのが日本料理アカデミーを設立した目的であり,各方面で粛々と様々なことをやっていきたいと思っています。

 市長のおかげでこういう制度ができましたが,いわば天岩戸が開き,少しの光が見えてきたので,これを大きく開けていきたいと思っています。京都で出来たことは他府県でも出来るはずです。日本料理アカデミーは日本中にあり,アカデミーが京都のようにその受け皿になりますので,是非全国でこうした取組をやっていただきたいと思います。

 

 

<市長からユウゴ氏に委嘱状,記念品を交付>

<村田理事長からユウゴ氏に認定証,バッジを授与>

 

<ユウゴ氏>

 門川さん,村田さん,記念品と認定証をありがとうございました。このビザを使って菊乃井に来られたことは自分にとってとても幸せです。日本料理,日本の文化,日本語をたくさん学んで,とても勉強になりました。今後は菊乃井で学んだ日本料理をいろいろな国の料理人に広められるよう頑張ります。よろしくお願いします。

 

<ユウゴ氏から料理の披露>

 

 

質疑応答

報告案件に関する質疑

記者 

 今回の料理はすべて自分で考えたオリジナルなのですか?どういうテーマで作られたのですか?

ユウゴ氏

 そうです。菊乃井で2年間学んだことと,フランスで学んだ自分の料理のベースを合わせたものです。菊乃井の先輩に言われたとおり,季節の食材を活かして作りました。

記者

 これからどのように日本料理を広めていきたいですか?

ユウゴ氏

 日本料理をさらに勉強して,次に働くところで,日本料理の切り方や日本料理の代表である出汁の取り方等を伝えていきたい。

記者

 日本料理の魅力はなんですか?

ユウゴ氏

 日本料理の器はとても美しく,料理に人の気持ちがすごく入っている。フランス料理はシェフのパフォーマンスだけで季節はあまり感じませんが,日本料理は季節や食材を大事にしており,そういうところが魅力だと思います。

 

 

記者

 ユウゴさんはフランスに帰国するということですが,どういうお店で働くのですか?

ユウゴ氏

 母国の知り合いと連絡を取って探しています。菊乃井で働いている2年間は家族と離れて暮らしていたので,少し家族とゆっくりすごしつつ,決めていきたい。

 

記者

 どうして日本で料理の修業をしたいと思ったのですか?

ユウゴ氏

 妻と結婚し,日本に来た時に,初めて懐石料理をいただいて,いつか日本料理を勉強したいと思っていました。そうした中,ビザを取れるチャンスが出てきて,2年間菊乃井にお世話になることになり,本当に感謝しています。

 

記者

 フランスのパリに戻られるのですか?パリの日本料理店で働くのですか?

ユウゴ氏

 出身はパリより南の方ですが,仕事はパリでしたいと思っています。日本料理店かどうかはまだ決めていません。

 

記者

 フランスでは日本料理がブームになっているのですか?

ユウゴ氏

 パリには寿司屋が結構あり,ミシュラン一つ星の寿司屋もあります。菊乃井のような懐石料理を出す日本料理店はありません。

 

記者

 今回こういった形で料理人に認定されたことについて,どういったお気持ちかお聞かせください。

ユウゴ氏

 試験は仕事とは違って緊張しましたが,合格できてとてもうれしいです。やったという感じです。

 

記者

 今回のユウゴさんのシルバー認定が初めての認定ですか?

村田理事長

 日本料理アカデミーとしての認定は今回が初めてです。これは農水省が作った制度で,認定団体には日本料理アカデミーや全日本・食学会などがなっており,我々は日本人の料理人でも受かるのは難しいくらいのテストを行って認定しています。

農水省の外国人料理人を招聘する制度では,毎年15人受け入れ,最初の2か月間は日本語学校と日本料理の学校で基礎を学び,半年間は各店で研修するというのをやっています。その15人のうち,3,4人は脱落しましたが,半数ぐらいがシルバーの認定を受けました。

京都の特区制度の料理人も認定対象にしようということで,私の店にいる2人も試験を受けたところシルバーの認定を受けることができました。

 

記者

 村田理事長から見てユウゴさんはどのような料理人だと評価されていますか?

村田理事長

 日本人の料理人は,外国人だからどうせ何もできないだろうと,自分たちの方が手先が器用で,粘り強く努力をするだろうと思ったりしますが,全然そのようなことはなくて,奥さんと子供を連れて日本に来て,実際に2年間厨房で働くというのは相当な覚悟が要ります。その覚悟がありますから,すごく前向きに様々な研鑽をしますし,店の新人の子にも刺激になっています。最近入ってきた新人におかずや賄いの指導もしています。

 また,ハモの骨切りができる料理人はそうそういません。外国人では数人いる程度だと思いますが,それが立派に出来ていますし,出汁も取れるし,旨味も理解できていますし,技術的にはだいたい全部出来ると思います。

 

報告案件以外に関する質疑

(双京構想について)

記者

 天皇陛下の退位の特例法案が可決しました。双京構想を提案している京都市として,御大礼を含めて京都の果たすべき役割を検証されていくということですが,このタイミングでのお考えはいかがですか?

 

市長

 憲法にも定められているとおり,天皇陛下並びに皇室は,国民の総意に基づくということですので,国会において法律が成立するまで慎重に発言するべきだと考えておりました。そして,法律が通りましたので,近々に,山田知事や立石会頭等の双京構想のメンバーが再度集まって,京都としてどのような考えをまとめ,国に要望していくのかということを決めていきたいと思います。

 双京構想については,皇室の弥栄のために東京と京都が,都として双方で役割を果たしていく。皇室のどなたかにお住まいいただく。同時に,すでに明治維新以降,休止になっている宮中行事等を京都の御所等で復活していただく。そういうことができないか等について,研究や要望をしてきましたが,今後は,より加速的に取り組んでいきたいと考えています。

 

記者

 メンバーが集まってから,一定議論を集約されて,国に要望していく形になると思いますが,スケジュールはどのようになりますか?

 

市長

 非常に大事な話で,タイミングも重要だと思います。時間をかけて議論をするということもありますが,これまでから進めてきたことでもありますので,まずは短期間でまとめて,出来るだけ早く国に要望していくことが大事だと思っています。錚々たる人に集まっていただきますので,日程の都合もありますが,最優先の課題として取り組んでいきたいと思っています。

 

 

記者

 上皇に京都へ来ていただくということや,大嘗祭を京都でやっていただきたいという考えはお持ちですか?

 

市長

 なによりも上皇になられる天皇陛下,皇后陛下の御心に沿うことが重要です。そのうえで,両陛下にはできるだけ京都に長く御滞在いただけることを念願していることはその通りであります。多くの市民の方と願いは共通していると思います。そのことについて,具体的にどういう可能性があるのかを議論しようということであります。京都で御大典をということは,かねてから多くの方々の願いでもありました。明治維新で,天皇,皇后両陛下が東京へ行かれても,大正も昭和も京都において御大典が行われております。即位の礼と大嘗祭,この二つに分かれるわけですけど,それぞれがどういう体制で,どういう場所が必要なのか,一番最近行われたことでも,100年近く経っているわけですから,今の京都御所の中で具体的にどういうことができるのかについても現実をしっかりと調査して,専門家の意見も聞いて,そして国に意見を申し上げるべきだと思っています。しっかりと議論するためにも,客観的な状況を調査することが大事だと思います。

 

記者

 市長個人としてのお考えはいかがか?

 

市長

 個人と言うよりは,多くの市民の方がそういう気持ちをお持ちだというのは事実だと思います。それを具体化するために,何が必要なのか。そして,京都市民だけではなく,日本中の方がどのような思いを持って,どう気持ちを共有できるのか。そういうことをしっかりと調べることが必要です。我々が国へ要望するのはパフォーマンスではないので,現実的に何が可能なのかをしっかりと調べて,みんなで議論を深めて国へ要望していくことが大事だと思います。

 

 

(民泊新法について)

記者

 民泊対策について,新法が成立していますが,違法な民泊の排除に向けて,市長として今後何をしていこうとお考えですか?

 

市長

 政令等で本制度が実効力のあるものになるかどうかが一番の争点であります。違法民泊に対して調査を行い,違法なものには命令を出していくといったことをしっかりやっていかなければならない。こうした制度設計が可能な政省令になるよう,引き続き国に対して必要な要望を行ってまいります。地方の条例で出来るという枠組みになったのは,全国の政令指定都市や市長会,関西広域連合で可能な限りの要望を行ってきた成果でありますが,勝負はこれからだと思っています。同時に,現にある違法な状態の「民泊」に対して,引き続き毅然とした対応をしながら,国において示されるであろうモデルとなるような条例案を,京都の実情にあったものにし,市民の静かで安全な生活を確保するとともに観光客の安心安全や満足度を高めることが極めて大事であります。そうしたことをしっかりと京都市として議論し,必要な課題については,他の志を同じくする都市とも連携していきたいと思っています。私は,集合住宅での民泊は基本的に好ましくないと考えており,そうしたことをどう徹底できるかどうかが勝負だと思っています。もちろんちゃんとしたホストがいて,海外からの短期留学生を受け入れるとか,管理組合がしっかりしていてワンフロアー全体を合意の下に民泊にするといったことを否定するわけではないですが,原則集合住宅では好ましくないと考えています。

 

記者

 条例化の時期についてはいかがお考えですか?

 

市長

 旅館やホテルなど,関係業界の方々の意見をしっかり聞くとともに,議会とも相談して,提案時期についてはこれから詰めていきたいと思っています。

 

 

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