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門川市長定例記者会見(2016年8月31日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2016年8月31日)

「日中韓文化大臣会合並びに東アジア文化都市会議」

 8月28日(日曜日)に韓国済州市で行われました,第8回日中韓文化大臣会合並びに東アジア文化都市会議について御報告いたします。

 「東アジア文化都市」は,日中韓文化大臣会合での合意に基づき,日本,中国,韓国の3箇国において,基礎自治体である文化都市の交流を深めていこうということで,平成26年から構想されました。今回,済州市で松野文部科学大臣,宮田文化庁長官も参加されて,済州宣言が採択されました。

 来年,京都市において,日中韓の文化大臣会合を開催するとともに,日中韓の15の文化都市の市長と,アセアン地域の4箇国4都市の文化都市の市長にも呼び掛けまして,現時点で19都市の市長が集まって,「東アジア文化都市サミット」を開催することが決定されました。

 来年2月から11月まで,京都で,市民ぐるみで,東アジア文化都市の事業を多彩に展開いたします。時あたかも,文化庁の京都への全面的移転方針が決定され,来年,先行実施として,京都に「地域文化創生本部」が設置される方針が示されました。ちょうど,うまく重なったと思います。

 東アジア地域の平和と発展のため,京都が文化庁とともに,大きな役割を果たせることを非常にありがたいと思っています。しっかりと取り組んでまいります。

 そうしたことを実施していくためにも,これから御説明申し上げます宿泊施設の拡充・誘致方針は欠かせないものであると考えています。

「京都市宿泊施設拡充・誘致方針(仮称)」素案について~観光立国・日本を牽引する質の高い宿泊観光を目指して~

 続きまして,京都市で初めて策定する「京都市宿泊施設拡充・誘致方針(仮称)」でございますが,その素案がまとまりましたので,御報告いたします。

 京都市では38年前(昭和53年)に,世界文化自由都市を宣言しています。「都市は,理想を必要とする。世界文化自由都市とは,全世界のひとびとが,人種,宗教,社会体制の相違を超えて,平和のうちに,ここに自由につどい,自由な文化交流を行う都市をいうのである。京都は,古い文化遺産と美しい自然景観を保持してきた千年の都であるが,今日においては,ただ過去の栄光のみを誇り,孤立して生きるべきではない。広く世界と文化的に交わることによって,優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市でなければならない。われわれは,京都を世界文化交流の中心にすえるべきである」。都市の理想として,高らかに宣言しています。

 私は,この自由な交流と旅の本質を追及する観光が,市民の幸せと豊かさ,さらに,世界の平和に貢献できる,これが京都の理想であると考えております。

 この理想を実現するために,本市の観光政策は,産業,文化・芸術,環境,交通,景観さらに,まちづくりのあらゆる分野を横断する総合政策と位置付けて,現在,「京都観光振興計画2020」に基づき,191の事業に,社寺,文化芸術団体,宿泊事業関係者等,多くの方々と取り組んでいます。

 そうした取組によりまして,昨年度の京都観光総合調査では,「外国人宿泊客数」は5年前倒しで目標の300万人を超過達成しました。「観光消費額」についても,1兆円を目標としていましたが,97%達成するところまできております。

 なお,この宿泊客数には,いわゆる違法な民泊に宿泊されている方は含まれておりません。昨年12月段階で,大手民泊仲介サイトにおいて約2,700のいわゆる民泊が確認されていましたが,現在は約3,500を超えています。そうした把握できない民泊に泊まられている方は,これらの民泊の稼働率を30%と想定しますと,その宿泊者は延べ100万人泊を超えています。

 外国人宿泊客の急増に伴い「泊まりたくても泊まれない」状況が深刻化してきております。特に日本人観光客やビジネス客に影響が出てきています。この状況が続くと,国際会議等の誘致にも支障が出るのではないかと考えられています。また,今夏,文化庁の移転に係る社会実験が行われましたが,祇園祭の期間中の一番多い時期ではありましたが,関係職員の方が泊まられたのは京都市域外でありました。

 本日発表する宿泊施設拡充・誘致方針は,本市が大切にしてきました,旅の本質を追及するという,ぶれない方針のもとに,京都観光の最大の課題である宿泊施設の不足に真正面から向き合う決意のもとに策定しました。

 「観光立国・日本を牽引する質の高い宿泊観光」を目指して,世界があこがれる観光都市の実現,市民の皆様にとって「住んでいてよかった」と実感でき,市民の皆様の豊かさにつながる宿泊観光を実現することが大事であります。そして,新たな正規の雇用を創出し,経済の活性化につながる上質な宿泊施設の拡充や誘致,並びに「民泊」に対する考え方など,総合的な考えを施策としてとりまとめました。

 それではお配りしております「京都市宿泊施設拡充・誘致方針(仮称)素案」の概要版を御覧ください。

 本冊は,23ページに及ぶ長文となりますので,概要版で御説明いたします。

 まず,「宿泊客及び宿泊環境の現状と課題」であります。泊まっていただいてこそ,京都の魅力を実感していただけると考えています。そして,京都市民の豊かさにつながるため,宿泊は極めて大切であります。

 昨年の宿泊客数は過去最高の1,362万人になりました。これは述べ宿泊数ではなく,実宿泊数であります。さらに,無許可の民泊施設に宿泊されている方が100万人泊を超えていると考えられますので,本市の宿泊施設の供給量は相当数不足しているのが現状です。

 この状況を受けまして,実態調査を行い,昨年12月に,「「民泊」対策プロジェクトチーム」を立ち上げ,無許可の宿泊施設に対しては,旅館業法等の関連法令に基づき,毅然とした指導を進めてまいりました。同時に,構造設備等の基準を満たし,許可取得ができるものについては手続を執るよう全庁を挙げて強力に指導を行ってきました。

 その結果,簡易宿所の許可件数が,昨年度は246軒,今年度も4月から7月の4箇月間で201軒を数えております。しっかりと許可を取って,周辺住民とも調和してやっていこうという方が急増しています。一方,ホテル,旅館の新規許可件数は一桁台に留まっています。また,無許可で営業する「民泊」が急増したことで,市民の皆様とのトラブル,不安感の増加が問題となっています。

 まず,概要版1枚目中段の,「宿泊客及び宿泊施設数の今後の見通し」についてであります。

 国は2020年の訪日外国人旅行者数目標を,2015年の2倍の4千万人に設定し,特定地域への集中を避けて,日本全体をインバウンドで活性化することとしています。これを受けて,本市への外国人宿泊客数は,約440万人から630万人と試算しています。国の見通しどおり地方への更なる誘客が成功した場合は,440万人となります。この440万人を受け入れるためには,2020年までに,現在本市が把握しています新設予定の宿泊施設4千室に加えて,約6千室分の宿泊施設が新たに必要になります。

 なお,国は,2030年の訪日外国人旅行者数を6千万人にするとの目標を掲げておられます。この6千万人という目標にどのように対応していくかについては,今後の状況を踏まえ,改めて検討を行ってまいります。 

 次に,一番下の「本市の宿泊政策における基本的な考え方」であります。

 基本方針として「宿泊の質を高め,観光の質を高めることで量の確保につなげます。そして,持続的な京都観光の発展を実現することで,観光立国・日本に貢献する」と掲げています。すなわち,宿泊施設が増えるのであれば,どのような施設でも受け入れるという考え方には立たず,京都観光の質を高める,そして,質の高い宿泊で満足度を高めていただく京都観光を実現し,観光立国・日本に貢献したいと考えています。

 具体的には,5つの方針で進めてまいります。

 1点目は,「地域や市民生活との調和を図る」ことであります。地域や市民生活との調和を前提に,宿泊客と市民の皆様との間に「心のふれあい」を醸成し,「最高のおもてなし」の実現につなげることです。

 2点目は,旅館業法をはじめとした関連法令の遵守を図り,「市民と観光客の安心・安全を確保する」ことであります。おもてなしの最重要な基本は,安心・安全の確保であります。

 3点目は,「多様で魅力ある宿泊施設を拡充する」ことであります。歴史と文化が感じられる旅館や京町家をはじめとして,京都の自然を体感できる農家民宿など,多様な宿泊施設の提供を行っていきます。

 4点目は,「宿泊施設の拡充・誘致を地域の活性化につなげる」ことであります。例えば,意外な事実と思われる方がたくさんおられますが,京都市内の75%は山間地域です。この地域には,千年続く多くの集落がありますが,それらの集落は過疎で悩んでおられます。例えば,三千院がある大原地域の観光客数はピーク時の半分にとどまっています。素晴らしい文化がありますが,観光客に認知されていない,こうした地域にも自然,歴史,文化に調和した宿泊施設の開業を促すことで,地域の活性化につなげてまいります。

 5点目は,「宿泊施設の拡充・誘致により,京都経済の発展,京都に伝わる日本の文化,日本の心を継承発展させる」ことも京都の重要な役割であります。新たな宿泊施設の整備で,新しい正規の雇用を創出するよう取り組んでまいります。安定的な雇用の創出が,京都経済の発展と伝統文化・伝統産業をはじめ日本の精神文化の拠点である京都,さらには,日本の振興に資すると考えています。

 次に,2枚目の「宿泊施設の拡充・誘致に対する取組」であります。

 まず,「旅館・ホテル等拡充・誘致総合窓口」を開設することで,質の高い施設の開業を支援していきます。さらに,旅館の事業継承の相談も受け付け,全庁的な体制で民間事業者とも連携し,その対応を検討してまいります。これだけ京都観光が賑わっていますが,後継者不足で,閉鎖される旅館がある現実もございますので,こうしたことにも的確に対応していきたいと考えています。

 次に,「市内全域での宿泊施設の拡充」を進めます。

 市内各地へのアクセスに便利な地域への宿泊施設の誘致を促進します。上京,中京,下京,東山区等に宿泊施設が集中している現状を,京都市域全体で受け入れることで地域の活性化につなげたいと考えています。そのために,京都駅をはじめとする重点的に促進を図るエリアについては,都市計画による更なる誘導方策や規制の緩和なども含めて検討します。

 さらに,「上質な宿泊施設の誘致」を進めます。現在,宿泊施設の立地が制限されている地域については,地域の歴史や文化,自然環境・景観との調和が図られるとともに,安定した雇用や,伝統産業・伝統文化の振興に資するなど,本市が定める要件を満たした上質な宿泊施設について,特例的に開業を認めることを検討してまいります。これは,宿泊施設を乱りに誘致するのではなく,宿泊施設のタイプに応じて「上質宿泊候補施設」を選定するもので,その条件に合った宿泊施設のみの開業を認める方針であります。

 また,京都の旅館の稼働率は70%を超えており,全国平均の2倍となっていますが,ホテルと比べますと,20%近い差があります。旅館の魅力をしっかりと外国人観光客に伝えることで,利用促進を行います。さらに,質の高い宿泊施設を認証し,表彰していきたいと考えています。

 担い手の確保が重要な課題になっていますが,観光事業者と観光分野の就職を希望する方の交流・マッチングの支援,担い手育成のため,地域の大学や専門学校等との幅広い連携・支援を行っていきます。大学,専門学校との連携の仕方については,新たに検討を進めていきたいと考えています。

 周辺自治体との連携については,例えば,亀岡市,宇治市,大津市など,鉄道等ですぐにアクセスできる自治体とも連携を強化していきたいと考えています。

 最後に,「「民泊」に係る取組と本市の考え方について」であります。

 私は,宿泊サービスの提供に当たっては,宿泊客と周辺住民の安心安全の確保,そして両者の調和が大前提であり,一番大切にしていきたいと考えています。旅館業の許可取得をはじめ,関連法令の遵守は当然なこととして,法令違反の施設に対しては,厳正に対処するべく取り組んでいるところであり,引き続き,取組を強化します。

 まず,他都市に先駆けまして,実態調査を行い「民泊通報・相談窓口」を設置しました。地域住民の不安にいち早く対応し,適法に民泊を開業したい方のあらゆる相談に対応しています。

 次に,違法な宿泊施設への対策として,警察などの関係機関との連携のうえ,法令遵守をより一層強力に指導してまいります。インターネット上の「民泊」の仲介事業者に対して,掲載施設の所在地情報の提供や無許可施設の掲載削除などを引き続き要請していきます。

 さらに,宿泊サービスの提供に係る本市のルールを改めて明確化します。宿泊業務を行うためには,旅館業法,消防法,建築基準法等の関連法令に適合させることは当然であります。同時に,地域住民への配慮や宿泊客のマナー対策が欠けているため,トラブルにつながる事例があります。トラブルなどを未然に抑止するため,事業者には,開業に当たって周辺住民へ事前に周知すること,事業者の連絡先を町内会会長等に開示すること,宿泊客の迷惑行為を防止するための事前周知を宿泊客にしっかり行うこと,営業者が不明な場合に本市の調査に対する協力を促す文書を施設に貼付することなどのルールを指導要綱により明確に示し,事業者への指導を行っていきます。

 また,外国人宿泊客と地域住民との調和,ふれあい・交流を促進するため,必要に応じて,地域団体の取組への参加や,自治会・町内会等の単位での宿泊施設の運営に関する協定の締結について助言をしていきます。

 次に,国において検討が進められている「民泊」新法に対する本市の考え方であります。カラーA3でお配りしております参考資料1を御覧ください。

 本市の宿泊施設は,旅館業法等の法令遵守が大前提であります。違法な宿泊施設は適正化を図ることは当然のことであります。従わない場合は,厳正に対応しています。また,「民泊」に係る新たな法制度が制定された後は,この法律に基づき,運営することが大前提であります。そのうえで,本市の「民泊」については,京都における新しい宿泊観光コンテンツとして位置付け,「京都の暮らし」を体験できるような京都らしい良質な民泊を推進していきたいと考えています。

 このため,今年の6月に,地域の実状に応じた運用を認める法制度を求めて,国に要望書を提出したところであります。国おいても,地域の考えが反映できるような方策を考えておられると確信しています。引き続き,今後の国の法整備の方向性を注視し,新たな法制度の詳細が明らかになったあとに,本市における具体的な取組について検討を進めてまいります。その際は,質の重視,周辺住民との調和が前提となることは当然であります。

 本方針につきましては,広く市民の皆様や事業者の皆様から御意見をいただくため,パブリックコメントを行い,10月中に策定し,スピード感をもって実行してまいりたいと考えています。

 世界中の多くの方が京都に対して高い関心を持っておられます。喜びと同時に,大きな責任も感じます。そして,持続可能な京都観光,リピーターがどんどん現れる,そうした観光にしていかなければならないと考えています。「観光」の「観」という字は,「自然観」,「世界観」,「人生観」の「観」であります。そうしたことを感じられる京都観光に,そういう京都観光を体感していただける宿泊施設を拡充・誘致してまいります。市民の皆様と一緒にぶれずに,全力で方針案の実現に邁進してまいります。

質疑応答

報告案件に関する質疑

(今後確保が必要な宿泊施設数について)

記者

 今後確保が必要な宿泊施設は6,000室とあるが,2020年まで残り4年という状態で達成可能か。また,増やす施設ごとの割合は。

 

市長

 今お示した方針案について,パブリックコメントをして10月中に確定します。この事業を市民の皆様,事業者の皆様と京都市が一丸となって,覚悟を決めて実施すれば,2020年までに必ず達成できると確信しております。すでに4,000室の計画が上がってきており,着手されております。そして,まだ具体的な計画は不明確ですけれど,国内・国外の宿泊事業関係者が非常に京都に関心を持って下調べ等を行っておられますし,さらに京都の宿泊事業者からもこの機会に拡充していこうという熱意が感じられますので,6,000室というのは必ず実現できる数字であると思います。

 平成25年からの2年間で訪日外国人は90%増えました。また,京都の外国人宿泊客数は180%増えました。したがってどの数字で目標を設定するのかは非常に難しいところですが,国においても特定地域への集中を避けようという方針を示しておられます。特定地域への集中を避ける前提の440万人という数字は,決して大きなものではありません。様々な数字が想定される中での必要な数字であって,決して過剰な数字ではありません。このことを明確にして,上質な宿泊施設の拡充・新設を皆様と一緒に,積極的に重大な決意のもとに取り組んでいけば必ず実現できると考えております。

 また,内訳など部分的なところについては,まだ精査しておりません。良質な京町家を改修した簡易宿所も急増しており,大工さんや左官屋さんの仕事が増えてきているという現実もあります。京町家や長屋は,毎日の生活や現代の生活には,なかなか合いにくい面がありますが,宿泊施設としては非常に日本の心が感じられます。

 今,京都には10万戸を超える空き家があります。そのうち一戸建て・長屋建てが4万から5万軒と推定されております。そうしたものをしっかりと活かしていくことが,京都の景観や匠の技の保全にもつながると考えております。

 

(民泊新法への対応について)

記者

 民泊に関して,新法では国に重点的にどう改善を求めていくか。また,制定された際は,市としての具体的な対応はどのように考えるか。

 

市長

 一番のポイントとして,住居専用地域にある集合住宅に宿泊施設を設置することは,私は不適切だと思っております。これから議会の議論や市民の皆さんの御意見も承っていきますが,突然アパートやマンションの一室が民泊になり,隣の部屋で夜中も宿泊客が出入りされるというのは,基本的には認めないという方針です。しかし,現在ネットに挙がっている民泊の多くはそうしたものです。例えば住居専用地域であっても一戸建てで空き家になっているものを活かすという良質な民泊については,周辺住民の方にもきちっと説明すれば,いい宿泊施設になると思います。また,マンションの一室であっても,そこにホストがおられ,短期留学生等をお世話しながら宿泊していただくことは,大学のまち・学生のまち京都にとって非常によいことだと思います。そうしたことを総合的に考えて,市民の皆様や研究者,学生の皆様にも喜んでいただけるように両立することが可能だと思っています。

 

(都市計画による具体的な方策について)

記者

 市内全域での宿泊施設の拡充のところで,都市計画による誘導方策や規制緩和の検討とあるが,具体的なお考えは。

 

市長

 住居専用地域や工業地域は宿泊施設ができないことになっております。これを上質な宿泊施設,ラグジュアリータイプやMICEタイプ等として,条件に合うものについては特例許可を行っていきます。東山区のフォーシーズンズホテルや北区のアマンリゾーツが特例許可の事例としてすでにありますが,そうしたものを積極的に推進してまいりたいと思っております。もう一つは市街化調整区域の宿泊施設であります。ここで都市計画の手法として,しっかりとした地区計画を作成し,自然景観・歴史景観を大事にして,その場所にふさわしい,例えば地域の材木やあらゆる埋もれた資源を活かした宿泊施設をつくっていきたいと思います。これは大原だけに限らず,京都市の周辺部には,過疎地域がたくさんございますので,そうしたところでしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 

記者 

 具体的に特例的に認める場所や数字の目標はあるか。

 

市長

 パブリックコメントをして,議会にも議論いただいて,この方針が決まってから定めていきます。「京都創生・お宝バンク」を創設し,地方創生を自分たちごと,みんなごととして考えて提案する取組を進めておりますが,様々なところから,良質な宿泊施設を作りたいとの声があがっております。また,世界中の名だたる設計士が,京都の様々な地域を見ておられるという動きもございます。地域の皆様が主体となって,景観や歴史,文化を守り,同時に地域を活性化していく取組を大事にしていきたいと思っています。

 

(宿泊施設の現状について)

記者

 日本人の宿泊客が泊まる場所がないということについて,市長が印象に残っている切実な事例は。

 

市長

 毎年,京都市では国内・海外の観光客に対して大規模なアンケートを取っております。外国人の方の満足度は高止まりでありますが,日本人の満足度において,宿泊施設での不満が1%台ですが増加しております。極めて微妙な変化をしっかりと受け止めて大事にしていかないといけないと思っております。

 外国人の観光客は宿泊施設を一般的に早くに予約されますが,日本人は京都の紅葉や桜,食事を楽しみたいと,いい意味で思いつかれて旅を楽しまれますので,その時には宿泊施設が取れず,日帰りにしなければならないということが多いようです。

 

記者 

 そのことに対しての危機感はあるか。

 

市長

 外国人宿泊客がこの1年間で130万人を超えて増え,そして日本人宿泊客が100万人減りました。そして宿泊が取れないという不満が起こっております。私は外国人宿泊客の増加は,観光立国のために,また京都の伝統産業,伝統文化の振興,世界の平和のために大事だと思っております。しかし,日本人が古くからのお客様を大事にし,修学旅行で来られた京都にもう一度行きたいというお客様を大事にすることも極めて大事であります。外国人と日本人は分けられませんので,宿泊施設全体の拡充が何より大事だと思っております。

 

(拡充・誘致する宿泊施設について)

記者

 上質な宿泊施設を増やす一方で,大多数の人は上質な宿泊施設を利用する余裕がないと思うが,どう考えるか。

 

市長

 「上質=高額」という言い方をしているわけではありません。決して,広くて,ラグジュアリーなものではないのですが,日本の古い旅館・ホテルを改装し,和風の天井や畳のコーナーを作られ,日本のこころを感じられるようにしたところ,若い女性に喜ばれているという話を聞きました。ここでは決して高い値段を設定されているわけではありません。一部のホテルでシーズンによっては,通常の2倍,3倍の値段に設定されているところもありますが,古くからの旅館・ホテルはそのような対応をされていません。こうしたことが大事だと思います。

 

(民泊への対応について)

記者

 2月の市長選や記者会見でも,民泊についての「京都方式」を出したいとあったが,国の動きを見ながら別途出すということか。

 

市長

 方針の基本的な考えとして「京都方式」を提案しております。住居専用地域のマンション・アパートの一室での民泊は好ましくないと明確に言っております。日本の心が御理解いただける上質な民泊を推進したいという考えのもと,国に対する提案も6月に行っております。現時点で国においてまとめられたものについても,地方の声をしっかりと活かせる法制度にするということは明記されておりますので,幅のある方針が出されるものと思います。その際に,京都市では,例えば住居専用地域において,マンションの一室を民泊にすることは認めないという方針を明確にできますので,それを今から言う必要はありません。今は旅館業法等に基づく取組を徹底してやっていけば,新たな法制度の下の民泊に対応できるということであります。

 現行法において,ホテル,旅館,簡易宿所のうち,民泊は簡易宿所に当たりますが,これをきちっと徹底すればかなりの問題が解決できると考えております。解決しない事例というのがマンションの1室の問題で,例えば全棟を民泊にするとか,管理組合がきちっと調整されて,ワンフロアごと民泊にするとかであれば別ですけれども,こういうことについては今から議論するのではなく,法令に基づき,簡易宿所として許可できるものは許可し,周辺住民の合意を得るというのが「京都方式」であります。民泊新法ができても,その方針をぶれずに徹底していけると考えております。

 

(民泊新法への対応について)

記者

 国が民泊新法を作るに当たって,住居専用地域での許可の他に,日数と,民泊業者を許可制か登録制にするのかというのが議論になっていますが,京都市としてはどのように考えるか。

 

市長

 私どもで調べていますと,他都市で6泊以上というのを特区制度でやっておられますが,6泊以上宿泊される方は約1%であります。率直に申しまして,実態に合わない基準を作って対応されていることは不適切だと考え,京都市ではそうした条例を作りませんでした。したがって,泊数を議論するのも将来の課題としてすればよいと思いますが,基本的にマンションの1室で,2泊だったらよいということではないと思っています。これらについては,じっくりと議論していただきたいと思っています。

 なお,例えば住居専用地域でお年寄りが一戸建ての大きな屋敷に住んでおられて,その離れや2階を,簡易宿所にはできないけれど上質な民泊にするというのは将来的には認めていけばよいと思います。こういうことを一つ一つ丁寧にやっていきたいと考えており,民泊新法を否定しているものではありません。

 

(簡易宿所の具体的な取組について)

記者 

 簡易宿所については白紙に近い状態だが,具体的な取組については何か新たに方針をつくるのか。

 

市長

 そのようには考えておりません。旅館と簡易宿所の差は部屋数くらいですので,簡易宿所についても上質なものは認めていくということを明記しております。

 

(宿泊施設の拡充について)

記者

 2020年までに6,000室の不足を解消することについて,周辺自治体の宿泊施設も考慮しているのか。

 

市長

 基本的に市内の宿泊施設だけで考えております。

 

報告案件以外に関する質疑

(文化庁の移転先及び費用負担について)

記者

 先日の国で行われた中間報告には,移転先や費用負担について具体的な言及がなかったことについてどう考えるか。

 

市長

 国にとって移転先の決定は重要なことですので,吟味されることはいいことだと思います。引き続き,京都市,京都府,経済界等オール京都で協力してまいります。また,費用負担については,今後国からお話があると思いますので,そのときに考えたいと思います。

 昨日,文化庁に行きましたが,文化庁の庁舎に芸術家が出入りし,文化を語っているかというとそうではありません。私としては,文化庁の場所も大事ですが,京都のまち全体を文化庁のサテライトにすることがより大事だと思っています。

 京都には,二条城や寺社などの文化財や昔ながらの商店街があり,そこには,日本人が大事にしてきた地域社会や伝統,日本のこころがあります。そういったことを感じながら文化行政に活かしていきたいと思います。また,京都の芸術大学や総合大学では,多くの方が芸術を学んでおられますし,様々な国籍の留学生もおられます。そういった方々も巻き込んで,京都のまち全体で新たな文化を創造し,日本を元気にしていくことが大事だと思います。

 

記者

 国の方針が出るまで要望などを行う予定はないのか。

 

市長

 すでに候補地の提案をしておりますので,改めて提案を求められれば議論していきたいと思います。

 

(文化庁移転の進捗について)

記者

 進捗が遅いと感じるか。

 

市長

 150年ぶりの政府機関の移転ですので,しっかり議論して決定するという国の方針は正しいと思いますし,拙速に決めるべきではありませんし,無駄な時間ではないと思います。有意義な一年だと思います。

 今回の方針決定については,先日行われた東京での協議会において,「絶滅危惧種,保護行政からの脱却を文化庁自身が高らかに宣言された」と申し上げました。絶滅危惧種を延命するための文化財保護行政になっていないか,文化で地域を活性化し,日本を元気にする新しい文化行政に転換していかなければならないと思います。

 衣食住などの生活文化や地域社会,伝統,観光,大学などと文化を結び付け,文化を基軸に,国の政策全体に横軸を刺していくことが大事であるとオール京都で申し上げ,移転方針にも盛り込まれました。また,国の2次補正予算では,フランスやイギリスの文化行政について調査することとされています。

 文化庁をそのまま京都に移すのではなく,文化庁の機能強化をしたうえで移すということが移転方針に明記されました。これをどれだけ実現できるかが重要であると思います。そういう意味において,今回,新たな文化行政のスタートとなる方針が明確になったということは画期的なことだと思っています。

 

記者

 希望では2020年までに移転するとのことだが実現できるのか。

 

市長

 2020年まで4年ありますので,全員が覚悟を決めて取り組めば必ず実現すると思います。

 

記者

 移転までの間,京都市として取り組むことは。

 

市長

 まずは来年に実施する先行移転を成功させることが大事だと思っています。

また,文化庁の機能強化に関する具体策を提言するとともに,「京都市のあらゆる政策に文化で横串を刺す。そのモデルを作ることで,日本中が元気になる。」というメッセージを送りながら具体的な政策を展開してまいります。東アジア文化都市会議も一つのきっかけにしたいと思います。

 

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