スマートフォン表示用の情報をスキップ

現在位置:

共同記者会見(2013年12月24日)

ページ番号161776

2013年12月24日

外国人が日本料理を働きながら学ぶことを可能とする特例措置に係る共同記者会見ついて

総合企画局政策企画室政策企画担当(電話222-3035)

門川市長

今月,「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。村田理事長が先導する日本料理アカデミーが提案し,オール京都で取り組んでまいりましたので,大変喜ばしく思っております。

日本料理アカデミーは,発足以来,幅広い取組を進めており,食育も重視されています。私が教育長の時代には,学校教育を通じた食育の推進の観点から,平成19年に,国の支援の下に北海道礼文島で開催された「昆布サミット」に共に参加しました。市長就任後も,平成20年に,京都出身の池田菊苗さんによるうま味発見100周年を記念し,「うま味サミット」を京都で共同開催するなど,日本料理アカデミーと協力して様々な取組を行ってきました。

このような地道な取組から,世界を視野に入れた取組へと,大きく深まったことについて,本当に敬意を表します。

さて,先月29日に,全国で唯一,京都市内に限った特例措置として,外国人の日本料理店での就労が認められました。その受入事業者の第1号として,日本料理アカデミーの村田吉弘理事長が主人を務める菊の井を指定するとともに,外国人料理人の受入れを開始することになりましたので,御報告いたします。

世界では,大変な和食ブームであり,日本食レストランが海外に5万5千軒あると言われています。しかし,その9割以上が日本人以外の経営と言われており,日本食「風」レストランが多く,中には似て非なるものも日本食として提供する店も見られます。こうした中においては,外国人に日本の料理店で日本料理の知識や技能を習得していただくことが非常に大事であると認識しております。

一方,これまでは,外国人料理人が長期間日本に滞在し,日本料理を学ぶ場合「文化活動」でなければ,在留資格を取得できず,報酬が得られない,社会保険に加入できないなど,不安定な環境に置かれていました。また,お客様に提供する料理づくりには関われないため,モチベーションを維持することが難しいという状況でした。

そうした中で,平成22年5月に日本料理アカデミー村田理事長から,「我が国が誇る食文化の粋・日本料理を,国際文化観光の中心的役割を担う京都から発信していこう。そのためには法規制の緩和が必要」と,二時間にもわたって熱弁を振るって,御提案いただき,私も大いに共感しました。そこで,構造改革特区として,国に入国管理法の緩和を求めましたが,当時の制度では一切認められませんでした。

その後,平成23年に総合特区制度が創設されたことを受け,直ちに,京都市地域活性化総合特区の重要な取組の一つとして位置付けた上で,国との協議を積極的に進めました。要望活動では,京都市観光協会の副会長でもある瓢亭の高橋英一さんとも一緒に粘り強く国に理解を求めました。このような粘り強い働きかけや,これまで日本料理アカデミーが実施してきた様々な取組が高く評価され,全国で唯一,京都市内に限った特例措置を講じるという国の英断に至ったものです。

この特例措置では,一定の調理技術を持つ外国人料理人が来日し,京都市内の日本料理店等と雇用契約を締結して,最大2年間働きながら,ほんまもんの日本料理を習得することが可能になります。

京都市は,外国人に対して適切に実習を行える事業者を指定し,実施状況についてもしっかりと把握し,監査・指導を行う。また,日本料理アカデミーは実習プログラム策定への協力などの役割を果たします。

そして,今回,外国人を受け入れる第1号の事業者として,菊の井を指定することといたしました。菊の井では,実習を行うフランス人料理人を来年1月から2月には受け入れる予定であります。これまでに実施してきた「文化活動」での受入れのノウハウがしっかりと活かされるものと確信しております。

日本料理を学ぼうという熱意のある外国人料理人には,悠久の歴史を誇るこの京都で,日本料理と共に,洗練された美意識やおもてなしの心を体得していただき,帰国後に,ほんまもんの日本料理を伝えていただきたいと思います。この特例制度が積極的に活用され,京都仕込みの心と技を持った料理人が,世界中の多くの店で活躍する。そういったことにつながるよう,引き続き,村田理事長をはじめ,日本料理アカデミーの方々と協力して取り組んでいきたいと思います。

村田理事長

門川市長に最初に提案した時には,二時間あまりにわたって,けんか腰でしゃべっていたかもしれません。その時には,このような日が来るとは想像もしませんでした。この特例措置が認められ,天岩戸が少し開いたような気がしています。

提案の際には,門川市長から,「特区制度の活用を検討したい」と言っていただき,京都市と地域に密着した食育活動や世界の料理人との交流などを,先陣を切って取り組んでいる日本料理アカデミーとが一緒になって,進めなければとの話で盛り上がりました。

今,日本料理は,世界で非常に注目を集めており,日本食レストランが,数年の間に3万軒から5万5千軒になったとのことです。一方,この間,菊の井には,「文化活動」ビザなどにより,多くの料理人が学びに来ていました。一週間程度の短期間から,数年間にわたるものまでありました。長期間修業を積んだのは,韓国人とアメリカ人でして,一人前の,日本人に負けないような腕を持つまでになりました。今回の特例措置により,このような取組が,より一層進んでいくと期待しています。

日本料理アカデミーは,「日本料理フェローシップ」事業を行っており,今では,世界中の多くのトップシェフが京都での研修を経験しています。今後,有望な料理人に来てもらうことや帰国後に日本での修業の成果をしっかり活かしてもらうことが,重要になってくると考えています。それには,これまでの取組で培われた世界の料理人ネットワークを活用していきたい。

外国人を受け入れた料理店は,もちろん,適切な給与を支払わなければなりませんが,これは,料理店にとって負担になります。料理店は,将来的に帰国してしまう外国人より,新卒の方を雇いたいと考える場合も多いでしょう。また,規模の大きい料理店ばかりではありません。例えば,5~6名で営む料理店に,フランス語しか話さない方が来られ,最初の頃は,そのお店にとっては役に立たないことも考えられます。

こういったことを踏まえ,日本料理アカデミーでは,料理店への支援・補助を行っていきたいと考えています。そして,年間で,受入人数を最大10人くらいまで増やしていきたい。更に,その後は,京都を中心に,各都市にも,このような取組が広がっていけばと考えています。

現時点でも,菊の井には,世界のトップシェフが一週間程度の研修に頻繁に来ています。また,若い時に日本で修業した料理人は,帰国し,10~20年経てば,その地域である程度のシェフになり,そういった料理人は,自分の弟子を京都に修業に行かせるという話になるでしょう。皆様が考えておられる以上に,料理人の交流は広がっており,今後,更に広がっていくでしょう。

世界の様々な国へ行きましたが,日本の農林水産物は,世界で一番優れています。こんなに美味しいフルーツや野菜,多種にわたる魚など,このような国は,世界中にありません。フランスで修行した日本人シェフは,「日本産にもいいものはあるが,フォアグラはフランス産でなければ」と言います。同様に,日本で修業した料理人は,日本の農林水産物の海外での販売にとっても,貴重な人材になってくれると思います。

今回の外国人の受入れはまだ始まりで,和食のユネスコ無形文化遺産登録も実現しましたので,今後,様々なことが起こってくることと思います。日本料理の鎖国がやっと解かれたと感じています。明治維新の時,京都で様々なことが起こったように,日本料理について,京都から発信していけて,非常に嬉しいと思っています。

質疑応答

記者 今回の特例を勝ち取るに当たって,不法就労などの懸念のため,規制当局との協議は難しかったと思うが,振り返って,どういう点が一番大変だったのか。

門川市長 御指摘のとおり,サービス業の入国管理は非常に厳しい。特例措置の実現のポイントは,2点あると思います。1点は,日本料理アカデミーが,非常に社会的信用力を高めたことです。もう1点は,京都市が,管理・監督等を実施するなど,行政として責任を持って,この事業に取り組むとしたことです。実現までには,3年半かかりました。

村田理事長 実習内容の説明に苦労しました。どういうプログラムを組んで教えるかや,教える担当者を決め,どのように教えるかといった内容を,何度も書類を修正し,説明しました。よほど熱意がないとできないのではと思います。

しかし,しっかりと取り組めば国も少し門を開けてくれることがわかりました。この開いた門の前で,誰かが踊ればもっと大きく門が開くかもしれません。ただ,国の懸念もよくわかりますので,料理人の人選には,細心の注意が必要と考えています。

 

記者 菊の井で受入れが決まったとのことだが,どのような思いか。

村田理事長 来日するジュリアンは,フランスのミシュラン一つ星のレストランのシェフの息子です。彼は,20歳ですが,フランスでは,14歳くらいから厨房で修業を始めますので,若くても相当できます。また,日本で2年間修業する覚悟で来ますので,この制度に適していると考えています。現在,「文化活動」ビザによるレバノン人が,また,国籍は日本ですが,フィンランドからも,菊の井に研修に来ています。今後,更に,ワールドワイドに日本料理が広がって行くのが見えるような気がしています。

記者 今後の受入れの見込みはどうか。

村田理事長 日本料理アカデミーのホームページに載せた場合,多くの応募が想定されます。今まででも,人づてに聞いて,菊の井に研修を申し込まれることが,月に2,3件ありましたが,全員を受け入れる余裕はなく,断っている状況です。そうしたことからすると,たくさんの希望者の中から,将来しっかりとした料理人になってくれる人を選ぶ作業のほうが大変になってくると思います。

門川市長 受け入れるお店の体制も課題となります。急速に拡大していくというより,しっかりと実績を積んでいくという事が大事かと思います。同時に,世界から期待されているということであれば,日本料理アカデミーとしっかりと協議しながら,また,お互いに方策を提案しながら,進めて行きたい。

記者 これまで菊の井で受け入れた外国人料理人は何人くらいか。

村田理事長 三日間や一週間といった短期間も含めると,かなりの数になります。30~40人になるのではないか。例えば,デンマークのノマも,イギリスのヘストン・ブルメンタールも,「世界のベスト・レストラン50」の上位に入っているところはほとんど,京都で何日間か修業しています。それによって彼らは,うま味とは何か,出汁とはどういうものかを理解した訳です。ノマのレネ・レゼッピなんかは,乾燥させたトナカイの足やデンマークの海藻から出汁を取っています。また,焼いた魚のソース替わりに味噌を使ったり。もちろん彼らは日本料理を作っているという意識ではないのですが,世界中で高く評価されて,予約が取れないような状態がずっと続いている。

 

記者 行政に積極的に働きかけて取組を進めていることについて,どのように考えているのか。

村田理事長 図々しいかもしれませんが,私は門川市長であれ誰であれ,思ったことずかずかと申し上げます。「一緒に取組を進めましょう」と提案すると,「では,一度やってみましょう」と言っていただけます。

京都は,小さいからこそいろいろできる,ということが多くあります。何かあると,市長に「話を聞いてほしい」と言うことができます。こういうことは,本当にありがたい。一方で,世界では,日本と言うと東京と京都しか知らない人も多い。そういったことからも,京都発でやっていけるということは非常に大きいと思います。

このページに対してご意見をお聞かせください

このページは役に立ちましたか?
このページは見つけやすかったですか?

お寄せいただいたご意見は、今後のホームページ運営の参考とします。

お問い合わせ先

京都市 総合企画局市長公室広報担当

電話:075-222-3094

ファックス:075-213-0286

フッターナビゲーション