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共同記者会見(2013年5月27日)

ページ番号150775

2023年4月12日

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015について

尾崎事務局長 開会宣言

・ 設立総会の開催と,組織委員会の発足について報告

・ 登壇者紹介

長谷会長 挨拶

 京都経済同友会は,経済を中心に考え,いろんなものを提唱・提言していく団体です。今では会員が600名近くまで増えており,そういった会員の方々を,これからどういうかたちで引っ張っていけばよいのかということを考えると,やはりもう提言だけでは不十分だという思いに至りました。ですから,何かアクションを起こしていくこと,実際に何か事業を起こして作っていくことが一番重要なのではないかということになりました。

 私は2011年から代表幹事を務めておりますが,2010年に,初めてヴェネツィア・ビエンナーレに行くことができました。これは建築のビエンナーレでしたが,そのときに受けた印象は,これほど素晴らしいソフトを,あれだけの観光都市で毎年毎年やっているというのは並大抵のことではない,ということでした。そういうことを京都でもできればいいな,と思ったのです。それから代表幹事に就任して,2013年頃にこういうことができれば面白い,などと言っておりました。それを記事にしていただいたのですが,記事になりますと,やっぱり言った以上はどうしてもやらなくてはならない,ということになります。

 それから色々と勉強させていただきましたけれども,勉強していくほど,これはそう簡単にはできるものではないということが段々分かってまいりました。府の皆様や市の皆様の多大なる協力を得て,そこから研究会というものを始めて,こういう結論に至ったという経過がございます。

 非常に大変なことかもしれませんけれども,これからの京都をもう一度活性化させて,それから今までの資産を食い潰していくのではなく,そこから新しいものを積み上げてくにはこの芸術祭のようなものをこれから継続的にやっていくということが本当に大切なのではないかと思っております。財政的な面も含め,非常に大変なことだとは思いますが,このように集まって設立総会で「やろう」と決めた以上,是非とも頑張って続けていきたいと思っております。それを決意表明として,挨拶に代えたいと思います。

山田知事 挨拶

 京都府は,経済同友会の長谷代表幹事から現代芸術祭の提案を受けて,門川市長と連携して取り組むことといたしました。と申しますのは,京都が目指すのは日本の文化首都であります。これまでから,文化首都として世界に発信していきたいという思いで文化行政を行ってまいりました。これが源氏物語千年紀であり,また,国民文化祭でありました。そうした施策を行い古典の日の制定まで漕ぎつけてまいりました。

 しかし,いずれもどちらかというとスポット的な事業,イベントであり,継続して京都を代表するような文化イベントにはなっておりません。現在でも,小さな事業であれば,美術工芸新鋭展などいろいろありますが,やっぱり国際的な現代芸術のイベントを行うことによって,世界と京都の文化を結びつけ,まさに文化首都に相応しい看板事業にしたいと考えています。

 第1回が行われるのは,琳派が誕生してちょうど400年の年になります。光悦以来の歴史を持つ琳派は,京都のありとあらゆる産業,芸術に大きな影響を与えており,現代も私たちの生活に深く息づいております。こうした時代の流れをしっかりと見つめ芸術祭を開催する。時代を超えて,世界に発信し,文化首都としての京都の看板事業になるように,これからこの芸術祭をしっかりとサポートしていきたいと考えているところであります。

門川市長 挨拶

 京都には,誇るべき都市の特性がたくさんあります。しかし,最も大事にしていきたいのは,文化芸術であります。そしてその文化芸術が,ものづくり,あらゆる商業,観光を含めて,きっちりと融合していく。更に,幅広い町衆,市民が支える,経済界が支えるこの文化芸術と,経済活動や市民生活が見事に融合し,豊かな市民の感性を育てる。世界に冠たる芸術家を輩出し,同時に,世界の平和に貢献してきた。これが京都の歴史だと思います。

 同時に京都市は,1978年に世界文化自由都市宣言を行い,世界の方々が,国籍や民族,宗教,あらゆる国家体制の違いを超えて京都に集い,京都から新たな文化芸術を創造していこうということを,京都市の理想としております。山田知事の話にもありましたが,今,世界交流都市,宣言として,取り組んでいるのも機を一にするものであります。そんなときに,経済界から,長谷代表幹事に提唱していただき,もう一度,京都の強みを活かすとともに世界の芸術家に京都に集まっていただき,異なる文化が相互に刺激をし合って,新たな芸術を創造していく。これは非常に大事なことであります。

 明治維新の後に日本に最初の芸術大学を京都御所に作ったのも,京都であります。京都市立芸術大学は,133年の歴史を誇ります。また,京都市美術館も,昭和天皇の御大典を記念して,京都の経済界を中心に,市民の方々が寄付を集められて創設されたという歴史を持ちます。また,2015年は琳派400年という時期にも重なります。一昨日,京都市では,錦市場で,伊藤若冲のモニュメントの除幕式がありました。3年後に,伊藤若冲が生誕300年。これとも繋がると思います。錦市場の八百屋さんの息子として伊藤若冲は生まれた。そして,錦市場が,京都の経済界が伊藤若冲を育てた。伊藤若冲が錦市場の危機を救った。こういう歴史も,京都にはございます。京都の経済界が一丸となって,市民ぐるみで文化芸術を振興している。それと同時に,文化,芸術,宗教,京都のあらゆる強みを活かして,京都を元気にし,世界に貢献していこう。こうした取り組みに,京都市も,山田知事と一緒に全力を挙げていきたい。そしてこの「PARASOPHIA」という言葉が,市民はもとより,日本,全国,世界に,定着するように,取り組んでいきたいと思います。

〈登壇者による写真撮影の実施〉

尾崎事務局長 アーティスティックディレクター発表

 京都国際現代芸術祭2015のアーティスティックディレクターをここで発表したいと存じます。

 改めて,アーティスティックディレクターの役割について少し説明します。アーティスティックディレクターとは,芸術監督として,テーマや参加作家,作品を選択して,展示会場に好ましい効果を上げるように作品を設置していったり,またカタログを編集していただいたりと,様々な点においてこの京都国際現代芸術祭の芸術的側面を監督し,統括していただく立場です。

 それでは,PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015のアーティスティックディレクターに就任いたしました元・京都国立近代美術館学芸課長の河本信治から事業の概要について,ご説明とご挨拶を申し上げます。

河本アーティスティックディレクター 事業説明

 先ほどの総会で芸術監督,アーティスティックディレクターの指名を受けました河本です。この国際展はゼロからのスタートであり,今はまだ,作家の名前を挙げて発表する段階ではありません。この場ではどのような方向を目指すかについて,少しお話しします。

 私がこのお仕事を引き受ける決断をした理由は二つあります。一つは,これが民間の発想で始まり,それを行政側が支援するという,構造的に極めてユニークな国際展であることです。これをとても大事にしていきたいと思います。それからもう一つ,現代芸術に関して京都は,1970年頃から美術史の上でも非常に重要な展覧会を積み上げてきています。例えば,1970年に,故・中原佑介さんが組織した東京ビエンナーレの京都展を,京都市美術館全館を使って開催しています。これは日本の美術史に残る大きな出来事でした。それから,70年代には京都ビエンナーレ,京都アンデパンダン展を連続して開催しています。日本の映画史の研究では京都文化博物館が非常に優れた研究を積み上げておられます。また京都芸術センターでも,2003年に京都ビエンナーレという,規模はやや小さいながらも専門家が高く評価した国際展を開催されています。私はこういった過去の業績の積み上げがあったからこそ,いま大規模な国際展を京都できちんと開催しようという空気になった,これを非常に重要視しております。

 今回の国際展はゼロからのスタートであるからこそ,準備期間にあたる二年間のプロセスも非常に大事だと考えています。この二年は作家調査だけではなくて,より望ましい環境で2015年の本番に臨むために,事務局として幾つかの活動を積極的にやりたいなと思います。オープンリサーチプログラム——これは一種のスタディーセミナーというか,レクチャーシリーズなんですけど——まずはこれを継続的に開催します。今とても注目されている内外の芸術家,その関係者のレクチャーを開催し,我々事務局のスタッフと京都の幅広い方々とが一緒に学びながら2015年の本番に備えていく,そういうプロセスになります。また2014年2月にはウィリアム・ケントリッジの大規模映像インスタレーション作品《時間への抵抗》(2012)をプレイベントとして展示する計画を立てました。これは昨年のカッセル・ドクメンタに出品されて,非常に世界中から注目されている作品で,アジアでの初めての展示になります。アジア・プレミアと銘打とうと思うんですけど,この展示をやることによって,準備に関わる人たち——この部分については京都の大学の関係者に広く協力を求めておりますけども,そういう方々と一緒に準備のプロセスを経験する。そして2015年の本番のときに,京都の関係者だけで大規模な国際展が運用できるような,そういうスタッフに育って頂きたいと思います。私が考える準備のプロセスにおいてオープンリサーチプログラムとプレイベントは,広報的な意味以上に,極めて重要です。

 2015年の本番については,先ほど言いましたように,今は具体的に説明できませんが,イメージとして説明します。京都の町屋を想像してみて下さい。町屋を二つくっつけて間口を広くする。玄関先を少し新しく改装して,間口を拡大して入り口の敷居も低くする。でも中は,吹き抜けのような大改造はせず,京都の町屋の構造をそのまま残していく。深い奥行きがあって,「あっ,いつまでも奥がある」というような感じで,そして中の坪庭も倍になりますから途中にゆったりとした空間がある。そして,時間と心に余裕のある人は二階に案内される。二階も投影面積とほぼ同じでかなり広い,ただ天井が低いし,気を付けないと頭をぶつけるかもしれない。――というふうな,色々な層が重なった,深いレベルで読み込みができるような,そういう国際展にしていきたいと考えております。お祭りのような一過性のものではなくて,作家や入場者は京都という都市で少し立ち止まって考えて,その表現や考え方が少し変わっていく,かつ京都に新たな蓄積を残していって,これが京都の街の力を更に強めていくような国際展,理想としてはこのような展覧会を考えています。

質疑応答

記者

 なぜPARASOPHIAという名称にしたのかご説明ください。

河本アーティスティックディレクター

 「PARASOPHIA」という名前についてですけれども,プレスキットに書きましたように,京都国際現代芸術祭2015の呼称としてもう少し覚えやすい,楽な名前はないだろうかと考え,覚えやすくて,かつ,ちょっと不思議な感じのする「PARASOPHIA」という名前に辿り着きました。一種のニックネームのように考えていただければと思います。PARASOPHIAの意味を説明していけばいくほど,なかなか複雑な内容になってきてしまいましたが,基本的に,いつも馴染んでいる,自分たちがよく知っているような知性,知識とはちょっと違うもの,向かい側にいるけれども人を介してコミュニケーションは可能なのかもしれない,そういう才能・表現・人材に京都に集っていただいて,同質な者だけで考えるのとは少し違う,新しいインスピレーションと創造の場に京都がなればいいな,という思いでこの名前を付けました。

記者

 河本さんに内容について伺います。正式名称が京都国際現代芸術祭になっていますけれども,現代アート,美術以外のパフォーミングアーツは含まれるのでしょうか。

河本アーティスティックディレクター

 当然,「美術」だけに絞り込んで現代の芸術表現を考えることは不可能ですので,パフォーミングアーツ,それから音楽,そしてシネマ等々,できるだけメディアに囚われずに考えたい,可能な限り幅広く対応していきたいと思います。もちろん限界はありますけれども,この部分についてはできるだけ柔軟に,本当に興味深い,para位置にあるような表現や知性というものに注目していきたいと思っています。

記者

 2013年から2015年までの三ヶ年の事業予算として4億5000万円の計上をご予定されているようですが,これは,例えば府と市のご負担など,どのような内訳なのでしょうか。

尾崎事務局長

 収入は,京都経済同友会をはじめとして,企業の協賛金,寄付金等と,京都府,京都市からの支出金,民間の助成財団等の助成金。それと,展覧会の入場料,カタログ等の物販等の事業収入で構成されます。構成比率はまだ申し上げられないところもございますが,三ヶ年で4億5000万を見込んでおります。
 一方支出は今年度,平成25年度にプレイベントとして,ウィリアム・ケントリッジの展覧会,レクチャーシリーズ等の事業がございますので,それらにも必要な費用を按分し,三ヶ年合計ではそれくらいになると,今のところ想定しています。

記者

 会場として京都市美術館と文化博物館等が挙がっておりますが,これは京都市内だけで開かれるのでしょうか?それとも京都府内でもどこか会場を設けて開催される事業なのでしょうか?

河本アーティスティックディレクター

 現段階で,京都市美術館が全館の8000平米の協力を約束していただいておりますし,それから文化博物館も,作家の求めに応じて柔軟に会場として協力する約束をいただいております。特に,文博の場合でしたら,映画研究の蓄積,この分野での内外の高い評価があります。ですから,特に映像表現を得意とする美術家が展示を希望することもあり得ると思います。それから京都芸術センター,そしてマンガミュージアムなど,作家の希望に従ってお願いするつもりです。一応,予算と相談の上でこの辺が現実的な展開であろうかなと思います。可能性としてゼロではないのは,例えばアーティストが衛星通信などを使って京都の北の海辺で何かやりたいとか,そういうプロジェクトであれば,会場を京都市内に限定はしません。今申し上げましたような会場と,プラス,あるいは町屋とか,特別な「この場所」,例えば京都府の旧庁舎とか,歴史的な文脈がある特定の場所をアーティストが選んだ場合,できるだけ希望に沿うように努力していきたいと思います。現実的には,京都市内ということがやはり限界ではないかなという気はします。

記者

 先ほどの話をよくお伺いしますと,ヴェネツィア・ビエンナーレのように,先行き長い事業にされるご予定があるように思うのですが,例えば,ビエンナーレ形式でされているのか,トリエンナーレ形式でされているのか,そういうことについて将来はどういうふうにお考えなのでしょうか。

長谷会長

 スターティングスモールで,あまり最初から限定せずに,我々にできる範囲内でやっていこうというのが本音でございます。お役所と我々と事業収入,それぞれ1/3ずつ分けあっていければいい。ただ,さっき言いました「トリエンナーレ」とか「ビエンナーレ」という名称を付けますと,二年ごとに必ずやるか,三年ごとに必ずやるかを明確にすることになりますが,「必ず」ということはまだ分かりません。ただカッセルのドクメンタなどは五年に一回というかたちでやっています。そういうかたちで,私どもはある程度次のためのステップのひとつというところで,アーティスティックディレクターや事務局,そういったものをどこまで作れるか。それから支出金,お金の問題ですね。これが,どこまでやるか。こういうことも考え合わせながら,市と府と合わせながら次の開催を決めていただく,そういう思いをしております。ですから,今のところは,二年に一度とか,二年後とか三年後とかいうことは私どもは発表することはできませんけれども,必ずや次の開催も視野に入れて,今回は市が非常に大きなウエイトを占めるとなれば,次は府の方でやるというようなことも色々組み合わせながら拾っていきたいなというふうに思っています。

尾崎事務局長 閉会宣言

・ 懇親会の案内とその場での取材案内

・ 広報担当者(多胡)の紹介

共同記者会見資料

PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015 開催決定およびアーティスティックディレクター発表

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