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門川市長記者会見(2013年1月29日)

ページ番号135418

2013年2月14日

軽油と同等の高品質な燃料を動植物性の廃油から製造する世界初の『「バイオ軽油」実用化プロジェクト』の実施

 この度,環境モデル都市・京都がリードしてきたバイオディーゼル燃料の一層の普及,拡大を図るため,軽油と同等の高品質の燃料を動植物性の廃油から製造する,世界初の『「バイオ軽油」実用化プロジェクト』を実施するので,御説明します。

 「バイオ軽油」という名称は,京都市で付けたものです。

 京都市では,京都議定書が誕生した平成9年から全国に先駆けまして,市民ぐるみで環境問題に取り組んでおりますが,その象徴的な事業として,家庭での使用済てんぷら油などの廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造しています。現在,ごみ収集車137台に100%のバイオディーゼル燃料である「B100」を,また,市バス93台に軽油に20%混合する「B20」を利用し,年間約130万リットルを利用しております。

 なお,法律上,軽油に混合して使う場合は5%までとなっていますが,京都市のバイオ燃料が高品質であるということで,国によって特別に20%の混合も認められております。そして,家庭からの使用済てんぷら油の回収拠点は,今日時点で1,654箇所と年々広まってきております。このことが,あらゆる環境問題の取組の原点の一つになっているというように考えています。

 しかし,この取組には,現在のバイオディーゼル燃料は,「B100」で利用する場合に,車両の特別なメンテナンスが必要であり,また,窒素酸化物の濃度が10%ほど高いという問題があります。さらに,原料が植物油に限定されるという技術的な課題がございました。

 こうした状況の中,この度,京都市のプロジェクトとして,車両への適合性の飛躍的な向上と,排ガスのクリーン化を図る高品質な燃料であります「バイオ軽油」を開発することができました。また,動植物性の廃油から製造する技術の研究開発に世界で初めて成功したので,実用化を目指します。

 燃料化技術について御説明します。まず,原料については,現在,市民の皆さんに回収いただいている使用済てんぷら油などの廃油に,触媒と高温の熱を加えて反応させ,「分解油」を製造します。さらに,世界初の試みとして,この「分解油」に水素を添加し,軽油と同等の高品質な燃料である「バイオ軽油」を製造するものです。当然,環境への負荷等については,圧倒的にこちらの方が優れています。さらに,「バイオ軽油」が実用化されますと,「B100」でも通常の軽油と同様に特別な管理を行わずに車両に利用することができます。また,現在は,原料として利用できるのは,使用済てんぷら油などの植物性の廃油だけでしたけれども,今回の実験の成功によりまして,牛,豚の脂,あるいは魚肉類の残さに含まれる油脂などの動物性の廃油を幅広く活用することできます。これを普及拡大していけば,CO2の削減効果等も非常に高くなるということであります。

 今後のスケジュールです。本年度から実施しております日量50リットルの燃料製造装置を用いた基礎研究により「バイオ軽油」を製造できることが確認されましたので,平成26年度までの3箇年に日量500リットルの燃料製造実験プラントを建設し,車両走行実験などを行いまして,その後,本格的なプラントの建設,実用化を進めていきたいと考えております。

 今回の研究の総事業費は,3箇年で約4億2千万円であり,全額環境省の資金を活用することができました。

 また,バイオマスの更なる活用を目指しまして,「バイオ軽油」を製造する際に使用します「電気」,「熱」,更には「水素」,これらにつきましても,原油や天然ガスなどの化石資源からではなく,家庭の生ごみなどの有機物を発酵させて製造するバイオガスを活用して供給し,トータルとしてのバイオマス活用も進めていきたい。このように考えております。

 京都市では,来年度から設計等に着手する横大路の南部クリーンセンター第二工場に,本格的なバイオガス化プラントの併設を計画しております。また,例えば中央卸売市場や民間施設等の生ごみを大規模に排出する事業所に設置するコンパクトなバイオガス化技術の実用化に向けた調査,研究も進めております。様々な形でバイオガス化を推進してきておりますが,こうしたバイオガス化技術と「バイオ軽油」の製造装置をしっかりと組み合わせていきたいと考えております。そして,化石資源に依存しない,地産地消のエネルギー供給を進めていきたいと考えております。

 この研究開発は,財団法人京都高度技術研究所(アステム)と共に,トヨタ自動車株式会社,島津テクノリサーチなどの産業界の協力を得ております。また,京都大学などの学識経験者のアドバイスもいただくための検討会も設置し,京都ならではの産学公の連携により実施してまいります。

 なお,この実験プラントは伏見区下鳥羽に設置いたします。

 「指定都市自然エネルギー協議会」,「全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会」の会長都市である京都で先進的な取組を進め,全国に発信していきたいと思っています。

 東日本大震災を経て,エネルギー政策の大規模な転換が進められております。あらゆる知恵を使って,また,京都の産学公の力を使って,取り組んでまいりたいと思っています。紙ごみや生ごみから99.5%の高濃度のエタノールを製造する「都市油田」についても,順調に実験が進んでおります。こうした取組を力強く進めていきたいと思っています。

質疑応答(要旨)

<報告案件に関する質疑>

(実用化について)

記者

 平成30年度の実用化を目指すとのことだが,平成30年度には市バスをバイオ軽油で走らせるのか。

市長

 その可能性も十分あると思いますが,実験を繰り返していきます。

(特許の取得について)

記者

 特許の取得,特許使用料収入は考えているのか。

市長

 企業の協力を得ていますので,これからの問題ですが,私自身としては,特許を取るより,広く活用していただくことが大事だと思っています。

 例えば,産業技術研究所では,エレベーターや自動車のボンネットにも使える漆や,洋ナシ風味の香りがするおいしいお酒の酵母菌を開発しておりますが,あえて特許を取っておりません。誰でも使うことができることで,技術が普及すれば,それが社会貢献になります。また,京都の企業の活性化にもつながります。

 一方,5年間にわたって,桂イノベーションパークで行ったSⅰC(炭化ケイ素)半導体を用いた「環境ナノクラスター」では,画期的な成果が出ました。京都大学,京都市,ロームなどと共同で研究してきた成功事例であり,既に売上げが60億円になっています。これらはきっちりと特許を取得して,収入を得ようという取組です。それぞれに応じた取組をしていきたいと思います。

(「バイオ軽油」のメリットとコストについて)

記者

 「バイオ軽油」にはどういったメリットがあるのか。また,従来のバイオディーゼル燃料と比べて,コスト的にはどうか。

市長

 車に対する負荷が掛からないことに加え,環境にも良いなど,CO2削減効果や計算できない社会貢献があります。

 現在のバイオディーゼル燃料は1リットルあたり145円,軽油は128円ぐらいです。新しい「バイオ軽油」を約150万リットル製造すると,1リットルあたり130円から200円くらいの幅になると思われますので,最も安価な場合は,軽油と競争できます。ただし,これは原料の価格によります。現在市民の皆様から回収している使用済てんぷら油の量は1年間で約20万リットルですが,実際に市民の皆さんが消費されている使用済てんぷら油は約150万リットルと推定されます。廃油を水に流したり,ごみに出すと処理にお金がかかったり,環境を汚染したりします。廃油をきっちりと回収して,コストの安い原料が安定的に入れば,画期的な燃料になると思います。

(「バイオ軽油」の用途について)

記者

 バスやごみ収集車以外での用途を考えているか。

市長

 軽油と同じ用途に使えます。民間の観光バスや,トラックにも使えます。現在のバイオディーゼル燃料は,使うのに車両のメンテナンスが必要ですので,なかなか普及していませんが,高品質なバイオ軽油ができれば,軽油と同じように使えます。

(使用済てんぷら油の回収について)

記者

 実用化までの間にも,市民から使用済てんぷら油を回収するのか。

市長

 今,使用済てんぷら油の回収拠点は1654箇所あり,年間約20万リットルが回収されています。定点での回収は,相当の成果が上がっています。しかし,京都市内で消費されていると推定されるてんぷら油のうち,回収できている使用済てんぷら油は約13%です。これまでは,市民のボランティアによる拠点回収を中心にやってきました。これは地域に根差した取組であり,非常に意義のあることですが,使用済てんぷら油をペットボトルに入れて持ってきていただいて,スーパーなどで回収するといったさらに手軽に回収できる仕組みを検討しています。「バイオ軽油」の製造技術がの開発とともに,もっと回収量を増やしていく必要があります。

<その他の質疑>

(上下水道料金の改定について)

記者

 水道料金の値上げについて,理由は「老朽管の更新」と必要性は誰もが認めるところであるが,その原資として値上げに頼らざるを得ないということについて,どう考えているか。

市長

 厳しい社会経済状況のもとで,市民の皆さんに御負担をかけることを申し訳なく思います。何卒,市民生活や命にかかわる,また都市インフラの最大の要である上下水道をしっかりと未来につないでいくため,御理解をお願いしたいと思っております。この間,ピーク時と比べ,水道使用量が20%減少しています。下水道使用量も16%ほど減少しています。今後もこの傾向が続いていくと考えております。

 先人たちが琵琶湖疏水を作り,早くから多額の経費をつぎ込んだその遺産の上に,今の私たちの生活が成り立っています。これをしっかりと未来につないでいくのも,私たち今を生きる人間の役割であり,私ども行政の責任だと感じております。相対的に安くて安全・安心な水を安定的に供給し続けることは非常に大事ですが,水道管の更新率が年0.5%では,200年に1回しか更新できません。更新率を1.2%まで上げることが重要と考えております。同時に,京都市全体,とりわけ上下水道局において,徹底的な行財政改革や,人件費のカット,民間委託化を進め,市民の皆さんの御負担を最小限にするため,あらゆる努力をしてきました。また,審議委員会を設置し,幅広い議論をいただいたうえで,基本水量まで使われない方が非常に多いことから,基本水量を下げました。幅広い市民の皆さんの御意見もお聞きしながら,最終的に平均3.7%の値上げをお願いするわけですが,その中で下水道使用料については思い切って値下げするという結論を出しました。市会でも十分な御議論をいただきたいですが,何卒市民の皆さんの御理解をお願いしたいと思います。

記者

 電気代,消費税も値上げされる話が出ている中で,どう市民の理解を求めていくのか。

市長

 人件費の削減など,これからもあらゆる努力をしていくことははっきりとお示ししております。そして,事業そのものとしては,水道と下水道は違うわけですが,この機会に下水道使用料については,最大限の値下げを行います。昨年は老朽管による事故が多発しました。また,東日本大震災を受けて,やはり命の水をしっかりと未来につないでいかなければなりません。水道管の更新率をより高めるべきであるという御意見や,値上げされると生活が大変だという御意見もたくさんあります。私たちは,現在と同時に未来に責任を負わなければなりませんので,「今が良かったらいい」,「安かったらいい」と問題を先送りすることは許されません。値上げ幅は最小限に絞り込み,下水道使用料については,大幅に値下げするという判断を下しましたので,市民の皆さんに説明責任を果たしていくことで,御理解いただけるものと確信しています。

(退職手当の減額に伴う公務員の駆込み退職について)

記者

他の自治体で退職金手当の減額を理由に駆込み退職が多発しているが,市長のお考えは。

市長

 国が取った措置ですが,年度途中で制度を急に変えることについては,周知期間が必要であったと思います。駆込み退職が起こっていることは非常に残念でありますが,年度単位で人事や組織の運営が行われますので,制度をつくるときに,年度途中での駆込み退職が起こらない手立てが必要であると思います。直接行政を担う地方自治体と,国とのギャップがあり,このような問題が起こっているのではないかと感じています。

 職員それぞれが大切な仕事をされてきたにもかかわらず,退職金のために年度途中で退職を選ばれるということは,私自身,残念な判断であると思います。

記者

 京都市では,退職手当の減額が4月から行われるが,市長のお考えは。

市長

 退職金制度は,年度,年度で制度改革をしていくものだと思っています。国から,3月1日に絶対しなさいという指示はありません。

 したがって,年度で区切り,周知期間をきちんと置いて実施していくことが大事であると思います。今回,妥当な判断をして制度を新たにつくり,議会に提案させていただきたいと思っています。

記者

 市の教職員については,今後,駆込み退職希望者が出る可能性があるが,その場合の対応は。

市長

 市の教職員については,任命権者が異なり,教育委員会が独自に採用,退職,人事異動を行います。また,学校教職員の勤務条件については,京都府の条例によるものであり,教育委員会において適切に判断して対応されるものと確信しています。

(地方公務員の給与削減について) 

記者

 地方交付税を減額するという国の予算決定に対する市長のお考えは。また,京都市において,給与引下げは行うのか。

市長

 率直に申しまして,地方交付税の減額は大変遺憾であります。

 京都市におきましては,この間,徹底的に人員削減,行財政改革を断行してきました。人件費は,平成11年のピーク時から319億円(22%)減額されております。特に,平成20年度からの4年間では,139億円(11%)の人件費を削減してきました。

 全国トップ水準の人件費削減を実施して,大幅な赤字から脱却しました。国が実施されない給与カットも,この間2度にわたって実施してきました。また,京都市では,4年間で2,000人近い人員削減も実施しました。そうした地方の努力を評価せずに,全国一律に地方交付税をカットするのは,地方交付税制度とは相容れないものだと思います。

 京都市では,私のマニフェストに掲げた100億円の人件費カットに向け,人員削減計画を実行している最中であります。地方の努力を評価せずに,国と同じようにしなさいというのは極めて遺憾であります。

 なお,地方財政対策のポイントは発表されましたが,どれだけ京都市に影響があるのか全く数字が出ていませんし,国に問い合わせても分からないということであります。したがいまして,的確な状況把握に努めているところであります。

(体罰問題について) 

記者

 いじめや体罰などの問題について,地方の首長がどの程度まで関与するべきなのか,市長のお考えは。

市長

 体罰は個人の尊厳を傷つける行為であり,許されないものであることについて,議論の余地はありません。

 教育というのは,徹底して現地・現場主義,かつ安定性と継続性,政治的中立性が求められます。同時に,それぞれの自治体にとって,教育というのは市民の関心も高く,最も重要な仕事の一つであります。市長が責任を持って,議会の同意を得て教育委員を選び,教育委員会が教育に関わることについて責任を負う。市長は予算等について責任を負う。このような関係が大事であり,こうした仕組みを最大限に機能させ,市長と議会も含めて,しっかりと目標を共有していくことが重要ではないかと思っています。

 今,教育現場における様々な課題が発生するごとに教育行政のあり方が問われています。しかし,より大事なのは,一つ一つの学校運営のあり方,学校がどのような教育理念を掲げて,親や地域の参画を得て,協働の営みとして,子どもの学びを保障していくのか。どんな子どもを育てていくのか。これが一番大事であります。

 京都市では全国で初めて,学校運営協議会をつくりました。現在では,小学校の9割近く,中学校においても半数近くが学校運営協議会を立ち上げ,保護者の代表,地域の代表が,校長をはじめ教職員と一緒に教育目標を作り,学校の教育を評価し,人事にも参画し,様々な教育実践を一緒に汗をかき,協働の取組として進めていく。こんな取組が着実に進んでいます。こうした取組によって,一つ一つの学校が良くなっていく。保護者が教育に参画していける仕組みがもっともっと注目されて,より一層深まる機会にできればと思っています。

 先日,PTAの全国大会が京都で行われ,PTAの代表が挨拶に来られたときの話ですが,ある中学校で人事異動等により新しい先生が必要となった場合,その中学校が先生を募集し,応募された先生に対して,校長と教頭,学校運営協議会の代表が面接して,ぜひこの人に来てほしいと思ったら,校長が教育委員会に内申する。そこで,他の学校等との整合性が取れれば発令をする。このようなことを京都では始めていると説明をすると,「外国の話を聞いているようですね。」とおっしゃっていました。

 教育行政の基が良くなればすべての学校の教育が良くなる。京都市内には300近い学校があります。その学校一つ一つが常日頃から,保護者,地域と共に,教育目標から教育実践まで実行していく,このような仕組みが,あらゆる教育課題の解決に一番効果があると思っています。

記者

 山科区花山中学校で起こった体罰問題について,市長のお考えは。

市長

 極めて残念です。許されないことだと思います。花山中学校においては,校長のもと,PTAや地域が協力して,熱意あふれる多くの先生が素晴らしい教育実践を積み重ねられ,昨年50周年を迎えられましたが,その記念式典の際には,地域の代表,あるいはPTAの代表が感動的な挨拶をされていました。それだけに,残念に思います。学校として,今回のことはしっかりと反省し,子どもはもとより,保護者,地域の信頼回復のため,頑張っていただけるものと確信しておりますし,教育委員会においても,事実確認のうえ,適切な措置がなされるものと確信しております。

記者

 教育委員会への報告の遅れについてはどうお考えか。

市長

 事細かく市長として見解を述べることは避けたいと思いますが,教育委員会において,あらゆる事実関係等をしっかりと調査して,適切に判断されるものと思います。

記者会見資料(平成25年1月29日)

軽油と同等の高品質な燃料を動植物性の廃油から製造する世界初の『「バイオ軽油」実用化プロジェクト』の実施について

~産学公の連携による「第二世代バイオディーゼル燃料化技術」の研究開発~

 この度,環境モデル都市・京都がリードしてきたバイオディーゼル燃料を一層普及拡大させ,より進化させて次の世代に引き継いでいくため,軽油と同等の品質の燃料を,動植物性の廃油から製造する世界初の『「バイオ軽油」実用化プロジェクト』を実施します。

1 これまでの取組と課題

(1)取組

 京都市では,京都議定書が誕生した平成9年から全国に先駆けて,家庭からの使用済てんぷら油などの廃食用油から,バイオディーゼル燃料を製造し,現在,ごみ収集車や市バスの燃料に年間約130万リットル利用しています。

 また,本市は,市長が全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会の会長に就任し,燃料規格の策定や,国等に対してバイオディーゼル燃料を利用した車両の開発などの政策提言を積極的に行うなど,全国をリードする取組を展開してきました。

バイオディーゼル燃料の利用状況

車両

使用しているバイオディーゼル燃料

ごみ収集車(137台)

B100(100%の濃度のバイオディーゼル燃料)

市バス(93台)

B20※(軽油に20%のバイオディーゼル燃料を混合)

  • 軽油と混合して利用する場合,揮発油等の品質の確保等に関する法律(以下,「品確法」という。)により,混合上限が5%までに制限されています。本市では,良質な燃料を製造していることが認められ,市バスにおいて,法定上限を超えるB20を利用しています(品確法に規定されている軽油試験研究制度に基づく経済産業大臣の認定を受けている。)。

(2)課題

 現在のバイオディーゼル燃料は,B100で利用する場合の「車両への適合性」(ごみ収集車については,現在もB100で利用していますが,一部の装置の改造や,高頻度のメンテナンスなど,車両の特別な管理が必要です)と「排ガスのクリーン化」,「原料が植物油に限定される」といった技術的な課題があります。

2 プロジェクトの内容

(1)概要

 本プロジェクトは,車両への適合性の飛躍的な向上と,排ガスのクリーン化を図ることができる高品質な燃料である「バイオ軽油」を,動植物性の廃油から製造する技術(「第二世代バイオディーゼル燃料化技術」)の研究開発を世界で初めて実施し,実用化を目指すものです。

(2)燃料化技術

  • 原料となる動植物由来の廃油に,触媒と高温の熱を加えて反応させ,「分解油」を製造します。
  • 更に,世界初の試みとして,この「分解油」に水素を添加し,軽油と同等の高品質な燃料である「バイオ軽油」を製造します。

(3)「バイオ軽油」のメリットとCO2削減効果

ア メリット

  • B100でも通常の軽油と同様に特別な管理を行わずに車両に利用することができます。
  • また,従来から原料としてきた使用済てんぷら油などの植物性の油だけでなく,ラードや牛脂,魚肉類の残さに含まれる油脂などの動物性の廃油を利用できます。

イ CO2削減効果

  • 全国で年間約64万キロリットルの動植物性の廃油が発生していると推定されており,これを原料に「バイオ軽油」を製造した場合,約40万キロリットルの燃料が製造できます。これにより,国内で年間約3,300万キロリットル販売されている軽油の約1%を代替することができ,約100万トンのCO2削減効果があります(国内の総排出量の約0.1%)。

(4)平成24年度の取組成果と今後のスケジュール・展開

ア 平成24年度の取組成果

 平成24年度から実施している日量50リットルの燃料製造装置を用いた基礎研究により,「バイオ軽油」を製造できることを確認できました。

イ 今後のスケジュール・展開

 今後は,引き続き基礎研究を行うとともに,来年度から平成26年度まで,日量500リットルの原料投入が可能な燃料製造プラントの設計・建設,車両走行実験を実施した後,本格的なプラントの建設に向けた検討を行い,平成30年度からの実用化を目指します。

研究開発のスケジュール
研究開発のスケジュール

※1 京都市廃食用油燃料化施設(日量5,000リットル)の10分の1の原料投入規模

※2 環境省の資金を受けて実施

(5)バイオマスの更なる活用

  • 「バイオ軽油」を製造する際に使用する「電気」,「熱」,更には「水素」についても,原油や天然ガスなどの化石資源からではなく,家庭の生ごみなどの有機物を発酵して発生させるバイオガス※を活用して供給する技術も検討します。
  • バイオガス化技術と「バイオ軽油」の製造技術を組み合わせることができれば,化石資源に依存しない,すべて地産地消のバイオマス由来の燃料を製造することができます。 

※ バイオガスについて
 本市では,平成11年度からバイオガス化技術実証研究を実施するとともに,「京都市循環型社会推進基本計画(2009-2020)」に,平成31年度に稼働予定の南部クリーンセンター第二工場(ごみ焼却工場)への本格的なバイオガス化プラントの併設計画を位置付けているほか,生ごみを大規模に排出する事業所に設置するコンパクトなバイオガス化技術の実用化に向けた調査を実施するなど,様々な形でバイオガス化を推進している。

3 実施体制

 本研究開発は,環境省の委託事業(地球温暖化対策技術開発・実証研究事業)として,財団法人京都高度技術研究所とともに,トヨタ自動車株式会社,島津テクノリサーチなどの産業界や,京都大学などの学識経験者の協力も得て,産学公の連携により実施します。

実施体制

団体名

主な実施内容

京都市・
財団法人京都高度技術研究所(研究開発代表者)

実験プラント設置用地の提供,原料油の提供,車両走行試験,事業総括,燃料製造・利用システムの開発

トヨタ自動車株式会社
日野自動車株式会社

燃料の車両への適合性の評価・検証

株式会社三洋化成
株式会社タクマ

燃料製造技術の開発・評価・検証

株式会社島津テクノリサーチ

燃料の分析・評価

一般社団法人日本有機資源協会※
株式会社三菱総合研究所

燃料利用の普及拡大システムの検討

※ 有機性資源の総合的な有効利用の促進を図り,持続可能な循環型社会の構築と環境保全の推進に寄与することを目的に平成14年3月に設立。京都市長が会長を務める「全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会*」の事務局

* バイオディーゼル燃料の適切かつ安全な利用に向けた独自の品質規格やガイドラインの作成,技術的解決に向けた検討及び関係者間の意見交換等を通じ,バイオディーゼル燃料の円滑な普及・拡大に努め,持続可能な資源循環型社会の構築及び地球温暖化の防止等に資することを目的に,平成19年3月に設立

 

 なお,本研究開発では,平成24年8月に「第二世代バイオディーゼル燃料化技術検討会」を設置し,以下の学識経験者から助言をいただきながら進めています。

第二世代バイオディーゼル燃料化技術検討会

氏名

職名

専門分野

池上  詢

京都大学名誉教授

自動車工学

大城 芳樹

大阪大学名誉教授

油脂化学

酒井 伸一

京都大学環境科学センター長

廃棄物,資源循環

塩路 昌宏

京都大学大学院エネルギー科学研究科教授

自動車工学

藤元  薫

北九州市立大学特任教授(東京大学名誉教授)

エネルギー化学

      (敬称略。五十音順)

4 実験プラント設置予定地

  伏見区下鳥羽広長町212番地

お問い合わせ先

京都市 総合企画局市長公室広報担当

電話:075-222-3094

ファックス:075-213-0286

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