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門川市長記者会見(2009年11月16日)

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2023年4月12日

平成21年11月16日門川市長記者会見

民間活力を導入した広告付きバス停留所の整備

 この度,京都市では,市バスの利用環境の向上と更なる増客を図るために新たな取組といたしまして,民間活力を導入した広告付きのバス停留所の整備を行います。
 これは,民間事業者に広告パネル付きのバス停留所を設置していただき,その広告料収入をもって,事業者自ら維持管理をしていただく。そういう仕組みであります。京都市の費用負担が発生せずに停留所の整備促進を図ることができます。
 これまでから,バス停留所につきましては,多くの御要望をいただいてまいりました。限られた予算の中ではありますけれども,整備を進めてきたところであります。
 京都市の市バス事業は,この10年間,随分経営健全化に努力し,かつて50億円というような単年度赤字を抱えていましたが,この6年間,京都市からの補助金はあるものの単年度黒字を維持しております。しかし,さらに経営効率を改革していく必要があります。
 経営健全化団体になることが確定し,更なる改革が求められているところであります。この改革を至上命題として,経費節減を図り,市民の皆様の期待にお応えして,乗客サービスを向上していく。今回の事業につきましては,本市のバス事業にとって非常に有効な手法であると考えております。
 さらに地下鉄を含めた公共交通を大切にした「歩いて楽しいまちづくり」。これが,京都議定書誕生の地,環境モデル都市としても非常に重要な京都市の取組であり,市民ぐるみの取組であろうかと思います。この取組を推進して参ります。
 設置する停留所は,屋根とベンチを一体的に整備しまして,外観を京町家の千本格子等をイメージしたデザインにするなど,高齢者や体の不自由な方にやさしく,かつ,まちの景観にも合ったものといたしております。
 また,照明設備を備え付けており,周辺の安心・安全にも配慮されたものとなっております。本年8月に事業者の募集を行いました。そして,応募のあった企画提案書を審査した結果,広告付きバス停留所の整備では全国的に豊富な実績を有しておられますエムシードゥコー株式会社に委託することになりました。
 親会社のフランスの広告会社は,パリ市で貸自転車事業「Velib(ベリブ)」を手掛けたことで非常に有名な会社であります。
 整備につきましては,現在1,564のバス停留所がございます。その中には,地理的な,物理的な問題で屋根を付けられないという場所も多くありますが,当面,乗り継ぎの拠点や利用客数,発着回数の多い主要停留所から開始し,順次,市内一円に展開していきたいと思っております。
 今年度は,1日1万2千人の乗り降りのある四条烏丸をはじめ10箇所の整備を行い,当面400箇所の整備を目指していきたいと思っております。
 市内公共交通機関の要として,安心・安全で快適な市バス・地下鉄を御利用いただく,その環境を整えていきたい。バス停でバスを待っていることがステイタスになるようなそんな京都のまちをつくっていきたい。「人が主役の魅力あるまちづくり」を力強く進めてまいりたいと思います。
私からは以上であります。

質疑応答(要旨)

(交通事業の増収・増客と地下鉄運賃の値上げについて)

記者

交通事業は苦しい経営が続いているが,増収・増客に向けた意気込みを聞かせていただきたい。また,地下鉄運賃値上げについての現在の見通しは。

市長

 市バス・地下鉄は,市民の大切な足であるとともに,国内外から年間5,000万人以上の方がお越しになる観光都市・京都にとって非常に重要なインフラです。公営交通の経営は全国的に厳しい状況ですが,とりわけ京都市の地下鉄は,東西線の建設時期がバブル期であったことなどから,とても深刻な状態です。市バスも画期的な改革を実現してはいますが,累積債務があり,経営健全化団体に指定されることが確実となっています。私は,市バスと地下鉄を別々に考えるのではなく,民間の鉄道,バスも含めた「歩くまち・京都」を強力に推進していきたいと考えており,そのためには,まずバス待ち環境を改善し,市バスの増収・増客に繋げていくことが大事ではないかと思っています。
 次に,地下鉄運賃の値上げについてですが,5年に1回,5パーセントずつの値上げが,平成16年に国の認証を受けた経営健全化計画に明記されています。非常に厳しい現在の社会経済状況の中で,5年毎に5パーセントという値上げが市民の皆様の理解を得られるのかどうか私自身疑問に思っています。地下鉄は,1日4,000万円,年間で150億円という赤字を出しており,まずは,この経営状況を抜本的に改革していく必要があると思います。そのためには,交通局はもとより市役所が全庁挙げて知恵を絞ると同時に,幅広く市民の皆様からの御意見を賜る必要があります。そこで,有識者会議を立ち上げ,鉄道経営の経験者や京都の民間企業の方々,大学の先生,交通問題の専門家の皆様による専門的な議論を公開の場でしていただき,次のような提言をいただきました。
 一つ目は,地下鉄の活用についてであります。京都市の努力は勿論のこと,民間企業を含め,市民の皆様に地下鉄をもっと活用していただけるようなまちづくりを進める必要があります。
 二つ目は,我が国における地下鉄経営の枠組みそのものの問題についてであります。そもそも150万都市で地下鉄が健全に経営していけるような仕組みになっていないという抜本的な問題に目を向けていく必要があります。例えば,一般的なトンネルの減価償却期間が75年となっているにも関わらず,地下鉄は60年です。これについては,国に改革を迫っていく必要があります。
 また,現在,一般会計から地下鉄事業に予算を持ち出す際の起債を認めていただいていますが,これもあと5年で終わってしまいます。この措置はどうしても継続していただかなければなりません。更に,金利についても,5パーセント以上のものは,この3年間で借り換えが認められたことによって見通しが立ちましたが,3パーセント以上のものについても借り換えの制度を作っていただく必要があります。京都で地下鉄が経営できないということになれば,これは我が国全体の問題として,断固たる決意で国に要請していきます。
 これらの見通しが立たなければ,値上げもやむを得ないということになる訳ですが,ただ値上げすれば解決できるということではありません。国に制度改革を迫るとともに,京都市が先頭に立って市民ぐるみで地下鉄を利用していく必要があります。利用者の皆様の負担増は,これらに加えた形でお願いしなければならないと思っています。また,5年に1回,5パーセントという値上げを画一的に進めるのは,市民の皆様からの御理解を得にくいということも含めて国に計画の再考を要請していきたいと考えています。いつまでも値上げしないということにはならないと思いますが,現在の厳しい経済状況のもとでは厳しいというのが私の本音であります。

(府知事選について)

記者

各種団体から山田知事へ3期目出馬の要請があるが,2期目の山田府政への評価をお聞きしたい。また,山田知事が立候補したら,応援するのか。

市長

 既に10月14日に,私も参加している京都府市長会で,山田知事の7年半の業績を評価し,再出馬要請をしたところであります。現在,山田知事は,各方面から再出馬の要請を受けておられ,そうした府民の要請に出来るだけ早く応え,再出馬の御決断をいただければと思います。
 「府民発」,「府民参画」,「府民協働」という知事の掲げておられるテーマは,「共汗と融合」,「地域主権時代のモデルとなる京都をつくっていこう」という私の想いと共通するものであります。二重行政を打破するべく,私のマニフェストに掲げました府市行政協働パネルについても,就任後早々に実現し,現在も多くの場で府市が様々なテーマについて議論しながら進めているところであり,今後も引き続き山田府政と協調しながら,京都ならではの地域主権時代を作っていきたいと考えています。
 全国知事会において,国と地方の協議の場の法制化に向けたプロジェクトチームのリーダーをされるなど,様々な場面で地域主権について発信しておられる山田知事を,私は京都市政の責任者としても,また個人としても尊敬し,評価しています。

(バス停留所に設置する広告について)

記者

業種や内容により広告を制限することはあるのか。また,広告が入らない場合に,京都市が広告を出すことはあるのか。

市長

 広告の制限については,世界遺産など歴史的建造物の周辺には広告のない停留所を設置して欲しいと事業者に要請するなど,景観に配慮した形で進めていきたいと考えています。この事業者の親会社は,世界規模で事業を展開されています。去年,姉妹都市50周年記念事業でパリに行った際,その社長ともお会いしましたが,京都はまちの景観を最も大事に考えており,京都のまちにふさわしい広告事業を展開していただきたいということを厳しく申し上げております。先方からも,京都でやる限りは京都の美意識,ブランドは傷つけないということを繰り返しおっしゃっていただきました。
 次に,京都市が広告を出すのかという点についてですが,この事業を京都市が財政的に助けるために広告を出すということはしません。ただし,京都市の関わっている民間の事業が広告を出すことにまで否定するものではありません。
 停留所の整備は,四条烏丸等から始めていきますが,当面400箇所を目標に,幅広く京都のまちの隅々で整備を行っていただきたいと考えています。広告業界全体が非常に厳しい状況の中,「世界の京都で事業をやりたい」「京都でなら成功する」との自信を持って,今回の取組に名乗りを挙げていただきました。まさに京都のブランド力が可能にしたものです。これを契機に,京都のまちを一層世界に発信できればと思います。

(広告付きバス停留所の経済効果について)

記者

広告付きバス停留所の経済効果は。

市長

設置・維持管理の費用を含めて,400箇所で約5億6,000万円です。

(広告付きバス停留所の契約期間等について)

記者

契約期間は何年か。もしも事業者が撤退した場合の対応は。

市長

 当面5年程度で400箇所の設置を目標としておりますが,これから細部にわたる契約内容を詰めてまいります。
 それと,契約期間が終わって事業者が撤退したとしても,バス停は京都市の財産として,停留所そのものは残るものと考えております。

(保育園連盟の事案における市職員の処分について)

記者

 保育園連盟の事案における職員の処分についてだが,数週間前に市の幹部の方が車を蹴ったとして減給の懲戒処分を受けていることを考えると,今回の事案は,6億円を超える資金の流用であり,先の処分と比べても(処分の軽重について)整合性がとれないのではないか。

市長

 私は,(整合性は)とれていると思います。全く事例が違います。保育園連盟においては,長年,京都の保育の向上のために努力されてきた団体であり,現在も保育のため頑張っていただいています。そして,今回処分を行ったそれぞれの担当職員についても,京都の保育の充実のために,誠心誠意頑張ってきたと確信しています。
 今回の処分は,扶助費の性格上の問題もあるとはいえ,保育園連盟において扶助費を柔軟に使うという慣行を40年にわたって作り上げ,また保育園連盟に対する指導監督が十分になされてこなかったことについて責任を問うたもので,個人的な不祥事とは全く違います。6億円という資金についても,その多くは保育の質の向上に使われていた訳ですし,当然それ以外のものについては返還を請求します。たとえ時効になっていても,自主的な返還を求めていきます。

(山田府政への評価について)

記者

山田府政について,もう少し前進させたい取組や京都市からみた府政の課題は。

市長

 例えば,放置自転車の撤去作業について,鴨川と河川敷は京都府で,道路は京都市で行うなど,これまで別々にしてきたことを府市一緒にやろうということが実現しました。また,市バスを効果的に走らすために,京都府警の協力をより一層得ていくなど,これまで懸案であったものが非常に前進しました。さらには,インフルエンザ対策やオール京都の力を集めた知恵博,雇用問題など,大きな前進がありました。そして,京都市と京都市域外との間で,かつては差等補助と言って,補助金に差がありましたが,山田知事はこれについても,一歩,一歩着実に改善してこられ,解消への見通しが立ってきました。
 今新しい国の形が創られようとしているなか,国政においても基礎自治体を徹底的に重視すると言われています。それについては,山田知事も全く異論が無いとのことでしたので,政策立案段階から府市が一緒に議論していくという取組をより一層深めたいと思っております。

記者

府市が共に政策を進める上での最重要分野は。

市長

 例えば,既に始めていますが,この100年に1度といわれている金融経済危機こそ,中小企業や零細企業に人材が入るチャンスということで,府市,京都大学,大学コンソーシアム京都,商工会議所の産学公が連携したオール京都体制で人材を募集して,88人の方を大卒初任給程度で雇用し,大学や中小企業のなかで育成するという取組を,政策立案段階から府市が議論に議論を重ねた結果,実現することができました。このように,経済や雇用などの分野において,更に広めていきたいと思っています。
 地方発,京都発で東京に提言し,こうした取組に国が財政支援するというような地域主権時代のモデルを山田知事と一緒に作っていきたいと思っています。

(「事業仕分け」について)

記者

行政刷新会議で「事業仕分け」が行われているが,地方交付税の抜本的見直しが打ち出されていることなど,これらについてのお考えをお聞きしたい。

市長

 私は,税金の使い方を国民に公開された場で議論をされ,より効率的,効果的な使い方を模索していくことは,基本的に有意義であると思います。
 また,国民が税金の使い方に大いに関心を持っていただき,更にそれぞれの国民の理解と協力を得て,痛みも一緒に共有しながら,新たなものを創造していくように発展していけば良いと思っています。
 一方で,率直に申しまして,1事業に1時間という短い時間で,どちらかといえば首都圏中心の方々で議論されている。
 もちろん地域代表の方や京都の方も参加しておられますけれども,多くは首都圏の方であります。地方に配慮されつつも東京の価値観で議論し,東京中心の発信にならないように十分な配慮をしていただきたいと思います。
 更に,幅広い国民が議論に参加することは大事ですが,具体的に決定する際には,やはりそれぞれ専門性のある事業ですので,専門家の参画という点においても配慮をお願いしたいと思っています。
 地方交付税につきましては,客観的でわかりやすい制度に改善するということについては,その通りだと思います。しかし,1300億円を越えていた京都市への地方交付税が,三位一体改革という名のもとに,どうして5年間で500億円も削られたのか。その「ものさし」は国民にあまりオープンでない場で決まっていたように思いますので,オープンな場で,本当に困っている地方に手だてを講じるような地方交付税に改革していただきたい。
 ただし,わかりやすいということは,物事を単純化することと誤解される場合があります。そうではないと思います。地方の実情にきめ細かく配慮し,勝ち組と負け組をつくらないような制度設計をしなければならない。わかりやすいということを単純化するということと結びつけるのは,非常に危険です。道理に基づく地方交付税改革により地域間格差を是正する。そして,国と地方の役割分担においては,地方交付税の総額を増額する。つまり,7割の税金が国に入っていくような形で無い改革を強く求めていきたいです。総額の増額について,大いに議論していただきたいと思っています。

記者

既に廃止あるいは見直しが決まっている事業が京都市に及ぼす影響は。

市長

もちろん「仕分け作業」で決められたとおりに予算措置されるのではなく,改めてより深い議論がなされたうえで決定されると思います。まだ詳しい情報が入ってきておりません。産学官連携事業について見直しの議論がされていますが,産学官連携事業は非常に重要ですし,結果がすぐ見えないものです。例えば,桂イノベーションパークでナノテクノロジーを中心に環境問題に寄与するイノベーションを起していこうと研究していただいています。これはすぐに結果が出るものではございません。すぐに結果が出るものでしたら,民間企業がやります。産学官で連携しながら公のお金を投入しなければならないということは,すぐに結果が出ないが大事だということです。そのあたりが項目だけ見ていたら,どこをどう見直そうとされているのか分かりにくい部分があります。こうした点については注目し,必要な要望もしていきたいと思っています。
 また小学校英語に関して,教材が要らないという議論があります。小学校英語がいかに重要かということを,10年をかけて京都市を先頭に各自治体でモデルとなる取組をしてきました。いよいよ学習指導要領も改定され,そのために必要な教材をつくるというときに,現在の日本の義務教育における英語教育のどこに課題があるか,どういう実践をすれば効果が出てくるか,こうした積み重ねを何年もかけてやってきているときに,教材は要らないということになると,これはどうかという面もあります。
 中身もまだ出てきていませんので,こうした点については,これからも注目し,必要な要望をしていきたいと思っています。

(政府への予算要望活動について)

記者

予算編成の陳情窓口の一元化を民主党が打ち出されているが,京都市の予算要望活動は。

市長

もちろん与党をはじめ各党に対しての予算要望活動を着実に行い,あらゆるチャンネルを有効に活用し,国へ地方の声をしっかりと届けていきたいと思っています。

(保育園連盟の事案における職員の処分について)

記者

保育園連盟の補助金流用問題で,先日行った処分について,懲戒処分でなかった理由をお聞きしたい。

市長

 保育園連盟の問題については,事実が発覚して以降,直ちに第三者機関であります監査委員に市長として監査要求し,第三者の立場で厳格な監査をしていただき,その報告に基づき京都市として徹底した再調査と不正,不適切な支出についての返還を求めました。厳格にできたと思っておりますし,二度とこのようなことが起きないよう,より一層努力して参りたいと思っています。そのために,コンプライアンス推進指針を策定するなど,既に取組を進めているところでございます。
 なお,永年にわたる慣行として行われていたことについて,適切な時期に是正ができなかったことは非常に残念であり,関係者の処分はその事実に基づいて厳正に行ったものであり,私自身,適正な処分ができたと思っています。これを一人ひとりが反省し,より一層京都の保育の質の向上のために頑張ってくれるものと思っています。

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