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門川市長記者会見(2009年2月17日)

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2023年4月12日

平成21年2月17日門川市長記者会見

市長当選1年を迎えて

 今朝久々に雪が降っておりました。昨年の2月,私の14日間の選挙戦は,雪を見ない日がございませんでした。昨年の厳しい選挙戦を振り返りながら,心新たにしているところです。本日17日は,選挙の日からちょうど1年。そして間もなく25日に市長就任1年を迎えます。
 厳しい選挙戦でありましたが,熱意あふれるご支援をいただく市民の方々に出会いました。同時に生まれ育った大好きな京都のために,命を賭けて戦わしていただける,そんな機会をいただきました。その時の感動を忘れずに,さらに気を引き締めて,引き続き全力投球していきたいと思っております。

1年間の概括的な感想

 就任以来,毎日のように第一線の現場を訪ね,さらに市民の方々が,いきいきと活動される市民活動の場を訪ねました。現地現場主義を徹底しようと,数えれば約900になりました。気が付けば,1日も休むことなく,おかげさまで市民の方々から元気をいただき,働かせていただいております。そしてうれしいことに,区役所の窓口,まち美化事務所等々,第1戦の現場が大きく変わってきているな。そのことを実感いたします。また,年末年始,いろんなところで市民の皆さんにお会いしましたけれど,「笑顔・親切・ていねい・テキパキ,と市長言うたはるけど,現場に浸透してきたよ。久々に区役所行ったら,本当に気持ちよかった。」そんな声を聞きます。
 気を緩めることなく,現場の意識改革を図っていく,さらに職員一人ひとりが,誇りと使命感を持って、市民のために奉仕する。市民感覚が,職場の隅々まで浸透するように全力投球していきたい。そのように思っております。
 「市長ちょっと動きすぎやないか。身体大丈夫か」こういうご意見も聞きます。こんなことを答えています。「激動の時代であります。こまは回り続けて安定します。大地にしっかりと軸足をつけて,回り続けるから,こまは安定している。」激動の時にしっかりと安定して,市政を前進させていくためには,トップが動く,身体を動かす。同時に心を砕く。同時に知恵を働かす。こういうことが大事ではないかと。そのために引き続き,私を先頭に幹部職員が身体を動かし,心を砕き,知恵を働かす。そして,職員一丸となって,市政改革に邁進してまいりたいと考えております。
 もっとも自転車は動き続けなければ,走り続けなければ倒れてしまう。京都市の財政も自転車操業みたいなところもありますので,走っている間に,かっちりと土台を固めて,安定させていきたいと考えています。
 さて,私がこの1年間何に重点を置いてきたかということを5点ほど申し上げます。
 その一つは,今申し上げました,職員の意識改革,さらに市民の皆さんと共に汗をかいて,市民感覚を市役所の隅々にまで浸透させたい。これが1点であります。
 2点目は,同和行政に対する市民の不信感の払拭であります。あらゆるタブーをなくすということを申し上げてきました。プロジェクトチームを作り,強い決意で同和行政の改革に取り組んでまいりました。「京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会」の委員の皆様には,徹底的にオープンな場で,透明感を高めて,闊達な議論をしていただき,今日までに13回にも及びました。委員の皆様に,また多くのご意見を寄せていただいた市民の皆様に御礼を申し上げたいと思います。京都市の同和行政に対する市民の不信感を払拭する取組が大きく前進したと感じています。
 委員会での中間報告に基づきまして,自立促進援助金制度はきっぱりと廃止しました。これから奨学金等の返還にも,しっかりと取り組んでまいります。また次の市会におきまして,コミュニティーセンター廃止に関する条例案を提案させていただくなど,全ての施策を市民の共感と理解が得られるものに見直していきたいと決意いたしております。
 今年度中に最終報告をいただく予定でありますが,引き続きぶれることなく,断固たる決意で改革に取り組み,市民の皆様の不信感を一掃してまいりたいと考えております。 このことが,同和問題をはじめ,あらゆる差別をなくす取組の前進に繋がると確信しております。
 3点目は,環境共生のまちづくりの推進であります。京都議定書誕生の地としての誇りと使命感を持って取り組んでいく。同時に,日本の文化,日本人の生き方というのは,伝統的に環境共生型のものであった。それが息づいているのが,この京都である。そうしたことも踏まえて,3つのプロジェクトを立ち上げて,取り組んでまいりました。人が主役のまちづくり「歩くまち京都」,これが一つであります。もう一つは,「木の文化を大切にするまち・京都」,三つ目は,「ライフスタイルの転換」,さらに技術革新によるイノベーションを産学公連携で起こしていこう。そんな取組を力強く進めてまいりました。
 一昨年の四条通のトランジットモール。これはわが国の100万都市では初めて,世界でも100万都市では極めて珍しい取組が,モデルとして行われました。いよいよ来年度,詳細設計に踏み込んでいきます。さらには東大路通,市民の皆様からの声として,そうした取組をしていこう。こんな声もあがっております。この1年で大きく市民の意識が変わってきたなと実感しておりますので,市民ぐるみで取り組んでまいりたいと思っています。
 4点目は,この1年間でのあまりにも厳しい社会経済状況への変化であります。そのなかでセーフティーネットをきっちりと強化していく。このことが重要であります。同時に未来への展望を切り拓く取組をこうした厳しい時代だからこそしっかりと推進してまいります。
 セーフティーネットの面では,中小企業融資制度。私が就任した時には,(新規融資枠は)800億円でしたけれど,1500億円にまで拡大します。さらに,緊急経済・雇用・生活対策本部を設置するなど,様々な取組を強力に進めております。
 同時に未来を展望する取組として,産業政策,これは昨年7月に知的クラスター創成事業として「京都環境ナノクラスター」が国の採択を受けて,国からの支援のもとに今進んでおります。
 また,「和装産業活性化戦略プラン」,あるいは「京都市コンテンツビジネス研究会」の立ち上げ等々の取組が進んでおります。
  さらに未来への展望として,福祉,教育,詳しい説明は避けますが,そうしたことにも,予算面でも,また具体的な取組でも,重点をおいて取組を進めてきました。
 5点目は財政基盤の確立であります。極めて厳しい財政状況であります。そんななかで,未来を展望する施策を力強く推進していく。市民生活を守っていく。そのために,かつて2万人を超えていた市職員を既に1万6千人まで減らしております,私は1,000人の人員削減をマニフェストでお約束いたしましたけれど,それをさらに1,300人にまで拡大する。
 そして私の20%カットを先頭に全職員の給与カット,これは苦渋の選択でありましたが,来年度だけでも5%の人件費を削減する。こうしたことで,未来への投資に向けていく。さらには,事務事業の見直しや公営企業の経営努力,そのことによって繰出金の削減等々,徹底した改革を行ってまいりました。また,市税徴収率の向上等にも取り組んでまいりましたし,引き続き努力してまいりたい。そうした財政基盤の確立に大きなエネルギーを注ぎ込んでまいりました。
 結果的には臨時財政対策債,これは国の都合で発行されて,国が返済に責任を持たれるものであります。それを除きますと来年度予算では,275億円もの市債残高,借金残高を減少させることができました。臨財債を含めましても昨年肉付補正予算で,現行の財務会計制度となって以来初めて,93億円の市債残高を減額いたしましたけれど,来年度予算でも88億円,厳しい状況の下でも減らすことができた。政策は推進しつつ借金を増やさない。そうしたことに,重きを置いてきました。

2年目に向けての抱負と決意

さて次に,2年目に向けての抱負と決意であります。予算発表等で縷縷申し上げておりますので,重なりを避けまして,3点に絞って申し上げます。
 一つは,職員の意欲と可能性を引き出し,総力を結集する人事管理制度の構築であります。人こそ財産であります。職員がモチベーションを高めて,市民のために徹底して仕事ができる,そんな市役所づくりをしていく。市民感覚,市民の目線に立った市政を創造するために,今「全庁“きょうかん”実践運動」を推進しておりますが,それに重ねまして先程「京都市の新たな人事管理システムの検討に関する懇談会」からいただいた提言,非常にすばらしい提言をいただきました。それを徹底して実施していきたい。そして,職員の意欲をかき立て,喜びをもって仕事に取り組める組織文化を確立したい。
 オープンフェアな人事制度を構築することで,やる気のある,情熱と誇りをもって働ける職員が自立的に行動する組織風土をつくりあげ,市民のための市役所改革を進めてまいりたい。これが1点であります。
 2点目は,「行政主導」から「市民主導」へ仕事の仕方を変えていく。地域主権時代,私はこのことを常々申し上げておりますが,そうしたことに具体的に取り組んでまいります。言い過ぎかもしれませんけれども,行政主導で進めた事業というのはなかなかうまくいっておりません。教育委員会在職時に関った学校統合を例にあげると,京都は地域の皆様の努力によりつくられた学校が多く,それらの学校統合は困難が予想されました。しかし現在では,京都で最もうまく学校統合が進み,地域ぐるみの教育が実践される素晴らしい学校ができ,公教育再生のモデルとまで言われている。これも市民が主体的に,子どものために何が必要かを考え,市民が学校統合という答えを出されて,そして行政と一緒に学校づくりをされてきた結果であります。そして学校ができてからも,どんどん保護者,市民の方が学校に参画していただける仕組ができてきています。
 「未来まちづくり100人委員会」,私も今回まで5回中4回出さしていただきましたが,非常に熱心な議論をしていただいている。具体的な行動に移ろうという取組も出てきました。各種の市民会議を立ち上げてきましたのも,市民主導の行政運営を目指したものであります。土壌ができ,今種が蒔かれている。そんな状況ではないか。いや,芽が出つつある。そういうことも感じます。この芽をしっかりと育て,市民の皆さんと一緒に育て,新しい地域主権時代が出てくるような京都にしたい。
 一昨日,醍醐でコミュニティバスの5周年がありました。市民の皆さんが,地下鉄ができた後,市バスがなくなり,そして皆でコミュニティバスをつくろうと,主体的に運営されて,200万人が乗車されている。これほど大規模にコミュニティバスが運行されているのは,醍醐だけであります。そういうことができる京都の地域力があります。そうしたことを学びながら,様々な取組が今進んでおります。力強く推進し,京都から地域主権時代を構築していきたいと思っております。
 もう一つは,環境にやさしいライフスタイルを確立する,京都ならではの「KYOTOスタイル」の確立であります。
 1月23日に,「環境モデル都市」に認定されました。全国1800の自治体の中から13であります。東京に行って,何度も議論してきましたけれど,専門家からは京都の取組が一番素晴らしいと言っていただいております。ある都市は,例えば一つ二つの事業に絞られていると,しかし京都の事業は本当に市民ぐるみで,あらゆる取組を環境というキーワードの下に融合していこう,そして市民と行政が共に汗をかいて実現していこうという取組であります。新たなスタートが切れたと思っております。この14日,15日,16日も幅広い市民の方々が,京都議定書発効4周年ということで,様々な取組を展開していただきました。来年度新たに筆頭局として「環境政策局」を設けます。さらに,全庁一丸となって取り組む体制を確立していきたいと思っております。京都議定書の誕生の地にふさわしい環境共生のまち,そして地道に取り組んできました美化活動,あるいは,かけがえのない景観を守る取組,山紫水明の豊かな自然を保全していく。
 こうした取組を「DO YOU KYOTO?」を合言葉に,「KYOTOスタイル」をつくっていく。暮らし方から,道路の在り方から,家の在り方からすべて「KYOTOスタイル」,そういうふうなものを構築していきたいと思っています。

最後に

 結びになりますが,厳しい状況であります。しかし,度々申しておりますが,ピンチがチャンスであります。昨今,マスコミ等みていましても,人々の会話を聞いていましても,本当に暗いニュースが多々ございます。そんな時こそ,行政が力を出して,ピンチをチャンスにして,京都を前進させていく。同時に京都市民は,過去幾多の困難の中で,ピンチをチャンスにしてきました。明治維新のときもそうであります。第二次世界大戦で敗戦した後もそうでした。さらには,今100年に一度の金融危機と言われていますけど,80年前も京都市が何をしたか,より市民に近い行政区をつくろうということで,中京区をつくり,東山区をつくり,左京区をつくった。昭和5年に京都市に観光課をつくった。また,京都駅に観光案内所をつくり,そのころに北山,東山,鴨川周辺を初めて風致地区に指定している。銀行がばたばたと倒産していくあの昭和恐慌の時に,今に繋がる景観行政の土台をつくり,観光行政のスタートを切っている。こういう京都市政であり,京都市民であります。ピンチをチャンスに,全力でがんばっていきたいと思います。
 それだけの「地域力」「人間力」「歴史力」がある京都だと改めて感じております。
 私からこの件については,以上であります。

「京都市名誉親善大使」の新規設置及びフランス人芸術家3名への委嘱

 次に1点御報告申し上げたいと思います。「京都市名誉親善大使」の新規設置とフランス人芸術家3名への委嘱についてであります。
 京都の多彩な魅力を世界に伝えていく,このことは必要であります。「京都市名誉親善大使」を新たに設置し,国際的に活躍されている,また京都の大ファンであられるフランス人芸術家3名に今月の19日付けで委嘱することとしています。
 一人はミュリエル・バルベリさんです。「優雅なハリネズミ」,以前パリへ訪問する時にもご説明しましたが,日本人が事実上の主人公になっている小説であります。3年前に書かれました。現在36箇国語に翻訳されて,250万部売れております。大変なミリオンセラーになっているのですが,これを読めば,日本が,京都が好きになる。私も読ませていただいて感動しました。「侘」というものをきちっと訳してある。この方が,昨年から京都に住んでおられます。ご主人も写真家であります。世界中回って,京都が一番すばらしいということで,ご主人と一緒に大文字山が見えるところに住まわれています。私もお会いしましたが,素晴らしい方々であります。このお二人と,歌手のクレモンティーヌさんの3人に親善大使になっていただきたいと思っております。
 これは,昨年12月に策定しました「京都市国際化推進プラン」にも,人を介した情報発信ということで,「大使」の創設を掲げている。その第1弾でございます。
 本年度は,パリと京都が姉妹都市50周年ということで,フランス人の方に第1号ということで「大使」をお願いしますが,これからまた京都の,日本の魅力の発信元として,友好親善の貴重な人材として,こうした取組を進めてまいりたい。また,留学生等にもお願いしていきたいと考えております。
 私からは,以上でございます。

質疑応答(要旨)

(この1年でうれしかったこと,残念だったこと)

記者

市長がこの1年でうれしかったことと,悔しかった,悲しかった,驚いたなどマイナスのこと,具体的事例を一つずつ挙げていただきたい。

市長

 現場をまわっていると,現場が変わってきていることを実感できる。一番感動しているのが,ハートミーティングです。職員が,特に若手の職員が,いきいきと仕事をして,いかに市民の方々に喜んでいただける仕事ができるかということを,それぞれのチームが議論し,改革に取り組んでいる。うれしかったのは,この現場の変化であります。
残念だったことは,就任直後に不祥事が続発したことです。「本当に厳しい現実だな」と感じました。しかし今思えば,あのとき発覚してよかったと,まさにピンチはチャンスだと思う。当時は辛かったですが,だから大胆な改革ができたと考えています。

(経済状況の変化)

記者

市長が就任されて以降,経済状況が大きく変化したが,それについての所感と,2年目に向けてのお考えは。

市長

 例えば雇用で申しますと,私が立候補の表明するとき,売り手市場でした。いかに企業が早く人材を確保するか,という時代でした。選挙のときにまわりました企業の経営者が「採用枠一杯まで集まらない。京都の大学,高校を卒業した人は京都で就職して欲しい。」と仰っておられた。その会社が今,人員整理をしておられる。これぐらい厳しく変わりました。
 そして緊急保証の認定も,(京都市中小企業支援緊急)対策本部設置以降で5,000件を超え,昨年度1年間の6倍にもなっているという状況です。もっともこれは,不況業種の指定を大幅に拡大した効果でもあるわけですが。
 こうした時にこそ,行政の役割が大事です。素晴らしいものづくりをしておられる,良いサービスを提供しておられる,にもかかわらずお金が続かないということのないように,金融事情だけでその会社がつぶれることのないように,徹底したセーフティーネットで融資,保証等を行っていく。府とも協調しながら,全国一の取組ができていると思っています。これは緊急の,目の前の取組です。
 しかし,それだけでは未来への展望は開けませんので,例えば,企業応援のプロジェクトを来年度予算でお願いしております。今頑張っておられるが厳しい状況にある企業へ,待っているのではなしに,京都市がチームを組んで専門家と一緒に訪ねていき,様々な支援をしていくことを進めていきたい。更には,中小企業支援センターとアステムを統合していく。中小企業の支援は,融資の支援,経営改善の支援だけではなく,新たな技術革新,イノベーションを起こすような支援を融合して行っていく。また,産業技術研究所を(京都リサーチパークの)大阪ガス跡地に移転します。
 これらにより,商工会議所では知恵産業と仰っていますけれども,そうした知恵産業を誘導していくための抜本的な取組を進めていかなければならない。明治維新の後,京都が産業を興してきたことが,島津製作所など京都企業の発展につながっている。それを今,強力に推進するときだと思っています。

(人事制度改革へ向けた決意)

記者

2年目の重点項目の一つに,オープンな人事制度,やる気のある職員を引き出すということを挙げられている。公務員の人事制度は,地方公務員法という壁や,また,一般企業と比べて非常に強い労働組合もあり,今後難航が予想されると思う。人事制度改革へ向けた決意のほどをお伺いしたい。

市長

 今までもそうでしたが,難航が予想される問題ほど,断固たる決意で実行したときに成果が上がります。もちろん,丁寧な手続きも必要ですけれど。例えば,私が教育長時代に全国で初めて京都から行いましたFA制度は,教員のモチベーションを高めるのに大きな役割を果たしています。
 物事を実行するときには,いろいろな軋轢等もありますが,私は現場をまわらしていただいて,個々の職員は非常に柔軟であると感じます。先ほど申しましたが,一人一人の意識を変えると同時に,新たな課題に挑戦していくことが尊ばれるような組織文化を構築したい。
 これ以上,職員を減らすのか,給料を減らすのかという議論があります。そんなときにこそ,職員のモチベーションを高めていく。そのためには,仕組みづくり,きっかけづくりが必要である。
公務員制度は,ややもすればがんじがらめになっております。そうした制度の限界に挑戦するような取組を京都から始めたい,そう思っています。

(職員不祥事の根絶と同和行政への不信感の払拭)

記者

選挙を思い出すと,1年でやりきると仰っていたことが2つ,職員不祥事の根絶と同和行政への不信感の払拭であった。改めて,この1年の対応をお伺いしたい。

市長

 その2つと同時に,1年以内に全職場を訪問すると約束しました。市民活動の場も含めて900箇所を訪ねました。全職場の90数%は訪ねたのではないかと思います。市役所の職場だけを回るのではなく,例えば民間の福祉施設,老人福祉施設,障害者の施設等々も回ってきました。引き続き,現場を回っていきたいと思います。
 不祥事の根絶につきましては,大きな土壌づくりができたと思っています。処分件数は,一昨年52件,昨年度76件,今年度17件です。私は不祥事を徹底的になくす,1年以内になくすと言い続けてきました。選挙のときにも,「日本中見渡しても,不祥事がゼロの自治体,民間企業はないのやから,市長,根絶という言葉は使わない方がいいですよ。」と仰る経営者の方もおられました。しかし,私は敢えて根絶と言ってきましたし,それは不祥事が起こらないような土壌作りではないかと思っています。
 一方,前向きに仕事をしていく上でいろいろな問題が起こるが,失敗を恐れずに仕事をせよということも職員に言っております。モチベーションを高めて,市民の奉仕者として熱意あふれる仕事をしていくことが大事です。
 職場は大きく変わったが,同時に,温度差があることも私自身,まだ実感しております。それについては,なお一層の努力をしていく。ただ,今までは不祥事根絶に焦点が当たりすぎていたのではないか。不祥事の防止ということでいえば,京都市は全国の自治体の中でも先進的な組織になってきたと思っています。来年度の組織改正で,政令市で最もスリムな局の構成にします。更に人員も減らします。その中で,これからはポジティブに,職員一人一人がモチベーションを高め,その能力を十分に発揮する方向への転換を図っていきたい。
  同和行政に対する市民の不信感の払拭については,大きく前進したと思っています。もちろん,先人たちの大変な取組の結果でもあるわけですが,マスコミにも一般市民にもオープンな場で,あらゆるタブーをなくして,侃侃諤諤の議論をしていただいている。中間答申をいただき,またその都度とりまとめていただきながら,最終答申を待つことなく,やれることはやっていく。そのことも選挙戦の中で申し上げました。
 全国的な大きな流れの中で,その時々の社会的なニーズに基づいて取り組んできたこと,京都市だけが特別なことをしてきたのではないこともあります。しかしこの機会に,市民の代表の意見,専門家の意見を聴いて,抜本的な改革をしていこう。このことが新しい時代をつくっていくのだと,断固たる決意でやってきました。そして大きく前進しました。あらゆる場で,フランクにこの問題が議論できる状況になってきている。私は,そのことが同和問題の解決,あらゆる差別をなくしていく取組につながっていくと確信しております。
 今後,市会の議論もありますけれども,引き続き,この決意・信念を貫いていきたいと思っています。

(職員間の温度差)

記者

まだ温度差があるとのことだが,具体的に温度が低いと感じたのは,どういう職場か。

市長

 市民の方々から,「変わってきたよ。環境局の職員にしろ,区役所の職員にしろ,本当に気持ちの良い対応に変わってきた。」と褒めていただいています。
 また,市バスの利用者から,「バスの運転手の対応が変わってきた。非常に気持ち良い。」という声も聞きます。
 しかし,1万6千人近い職員がいますから一人一人の間に温度差があるということを申し上げているわけです。

(保育園連盟の不正流用)

記者

就任半年目のときに,市民感覚の全庁浸透というテーマが掲げられていた。本日の2年目の決意の中でも,市民感覚の浸透という言葉が出てきた。 

先日,保育園連盟の公金管理について出てきた事実を見ると,公金管理の在り方は市民感覚を逸脱しているように見えるが,どうお考えか。

市長

 保育園連盟の公金管理の問題については,私も12日の夜に知り,驚いたというのが率直なところであります。徹底的に調査をする。そして,市民にきっちりと説明していく必要があると思います。
 結論から先に申しますと,地方自治法第199条に基づく特別監査を監査委員にお願いしたいと思っています。法的には,監査を要求することになります。第三者によって監査していただくことが大事であると考えています。
 保育という今一番大事な分野でこうした問題が起こったことは,非常に残念に思っています。ご承知のとおり,京都市の保育園連盟は,非常に自主的・自立的な組織で,例えば,全国で例のないプール制など,200園を超える民間保育園の水準を高めるため,活動していただいています。国の基準に基づき,国と京都市が半額ずつ負担して運営費を出す。保育園連盟がそれをプールして,保育士などの給料へ再配分することで,民間保育園の保育士の水準を向上させていく取組を40年にわたって行ってきている。これほど自立的な組織であります。
 自主性は大事ですが,今回の問題については,きちっとした指導,監査が十分ではなかったと思います。私もまだ詳細を把握しておりませんが,行政主導で調べるよりも,第三者によって監査していただくことが大事ではと考えており,近々に監査委員に特別監査を要求する手続きを取りたいと思っています。

(他の補助金の調査)

記者

他の補助金は大丈夫なのか。

市長

 それは大丈夫です。基本的にあまり使途を限定しない「扶助費」という極めて特異な制度がもたらした問題ではないか。扶助費には市の監査が入らないのです。今回のことは極めて特異なケースです。

(市OBへの指導等)

記者

問題の中心となったのは,市のOBの方である。今回のケースを契機に,市OBへの指導,天下りそのものへの見直しなどを考えているか。

市長

 まず,今回の問題については,監査委員において監査していただいて,その結果に基づいて判断していきたいと思っています。
 専門性の高い人間が役割を果たすということは大事であると思います。ただ,非常に重要な人だからという理由で,保育園連盟に長くおられる事例だった。非常に信頼厚く仕事をされてきたということを聞いています。いずれにしましても,監査委員によって監査していただき,その結果に基づいて判断してまいりたい,そのように思っています。

(就任2年目の政策の進め方について)

記者

就任1年目はスピード重視で,いろいろな審議会や市民会議を立ち上げられたと思うが,就任2年目である今年は,夏頃にも「歩くまち・京都」総合交通戦略(仮称)がまとまるし,ライフスタイルを考える市民会議についても年内位には報告書がまとまり,それに沿った具体的な施策に取り組んでいくと思う。例えば,都心部への車の流入抑制や,「環境にやさしいライフスタイルを考える市民会議」で議論されているコンビニの深夜営業自粛など,個々の意見が多く出されるテーマなので,その実現が非常に困難だと予想されるが,具体的にどのように進めていくのか。

市長

 市民会議を運営していく中で,より幅広い市民の議論を巻き起こしていく。市民会議におけるコンセンサス作りはなかなか難しいと思うのですが,行政主導でない市民会議の役割は,多くの市民意見を集約していただく,あるいは意識改革をしていただくことであって,それが大事だと思っています。市民会議にすべてを任すのではなく,行政もシンポジウムをやる,様々な意見を聴く機会を探す,あるいは説明責任を果たす。そうした答申までの作業の重要性,これが大事だと思います。
 同時に答申が出れば,その実現に向けて,今度は市民と一緒に行政が,私を先頭に決断して実行していく,これが大事だと思います。例えば,四条通のトランジットモールについては,一昨年の社会実験以降,大変な問題点が出てきました。一部には,行政はもうあきらめるだろうと,あの京都のど真ん中の一番主要な幹線で無理だと,こういう声もありました。しかし,交通政策監,都市計画局,建設局,あらゆる京都市職員がきめ細かく地域に入り,また地域の団体の方々も本当に議論を重ねていただいて,実施設計の予算が提案できるまでに至りました。私自身,この2年間の意識の変化の大きさに正直驚いています。そうした取組が大事だな,先程も言いましたけど,その次にあの狭い東大路通,あそこを4車線から2車線にしたらどうなるだろうと,昨日も走りながら感じましたが,そのように意識が変わってくる。だから市民の意識が変わってくる作業を進めながら,行政が一緒にやっていく,こういうことが一番大事ではないかと思っています。そのために市役所の職員を先頭に大粒の汗をかいていく,そういうことであります。

(保育園連盟以外への調査)

記者

保育園連盟の関連で,先程市長は,今回のケースは極めて特異なケースだと仰った。補助金を支出している行政の事業は,これ以外にも多々あると思うが,例えば,特別監査に至らなくても,きちんと適正に執行されているか,余剰金がプールされているような例はないのか,保育園連盟以外の他の補助金について調査をされるというおつもりはないか。

市長

 補助金を支給している事業については,すべてを調査しています。今回の事案は,補助金ではないところが問題なのです。補助金は基本的に年度が変われば,余ったらすべて返してもらう必要があります。今回の例は,扶助費という性格のお金だから,そういうことがないのです。そこに制度の矛盾のようなものがあったと。扶助費の場合は,翌年度以降に持ち越してもいいという性質のものです。補助金の場合は監査委員の監査も入る。そういうことから,特異なケースだと言いました。監査委員の監査によって明らかにしていただきますが,そういう意味です。

(監査のポイントについて)

記者

制度として,余っても良くかつある程度は返さなくてもいいということであれば,今回の監査のポイントは何になるのか。

市長

 公金の具体的な流れを明らかにしていただくこともあります。同時に扶助費が補助金的な役割を果たしていたのか,そういうことが制度的にいいのかどうか,そういうことも含めて監査していただきたいと思っています。

(特別監査の意義について)

記者

市長は,今回の扶助費については返還させ,次年度以降はその都度支出するということを方針として示している訳で,仮に法的に問題があるという結果が出ても,その方向性に変わりはないと思うのだが,改めて監査を行う理由はどこにあるのか。

市長

 まず一から,前提をつけずに第三者の目で,調べていただきたいと思っています。その意見に基づいて行政として判断したいと考えています。

(扶助費として支給している事業の調査について)

記者

他にも扶助費として支給しているものは多々あると思うが,こういうものについての調査はされるのか。

市長

 例えば,生活保護費は扶助費ですけど個人支給ですね。ほとんどの扶助費は個人支給です。例えば,修学援助費,教育委員会で支出しておりますけど,これもすべて個人支給です。組織として一旦受け止めてそこから出すというのは,全部を点検しきってはいないが,余りないと思います。もしあればその分については調べます。

(特別監査の対象について)

記者

先程,特別監査ということだが,対象はどこになるか。保健福祉局保育課か。

市長

保育課が対象ですが,市が関与した範囲については,保育園連盟に対しても調査していただきます。

(保育連盟に係る事案の端緒は)

記者

報道内容を見ると,税務調査の結果,今回の件が明らかになったというのが,取材や報道で明らかになっているが,その際に不正流用があった,または目的外の使用があったということについて,市長には入ってなかったということか。

市長

私は,12日に初めて聞きました。

記者

それは,組織の体制としてはどうなのか。

市長

疑問ですね。その事案そのものについては,私の就任以前のことですし。

記者

内部の情報伝達のあり方に,この件に関して言えば不備があったということか。

市長

税務調査自体が,就任以前のことではありますが,当然に報告を上げていただくべきことだったと思います。

(問題の背景について)

記者

特別監査をされるということだが,今の段階で,保育課が扶助費を補助金として使っていたのは何故なのか。この問題の背景には何があるのか。

市長

それは,監査委員会の監査を待ちたいと思います。

記者

今の段階で何が問題であるとお考えか。

市長

監査委員の方で制度も含めて監査していただきたいと思っています。

(保育園連盟の事案における市の責任について)

記者

先程,「保育園連盟を信頼していたのにこのようなことになって残念」という発言もあったが,公金管理については京都市側が指示していたり,お金の出し入れについては領収書などが必要であるのに一切口頭で行われていたなど,市民感覚とは明らかに違った対応があったと聞いている。その辺り,市の責任は如何か。

市長

監査委員会の監査結果で明らかにしていきたいと思っています。

記者

市長としての現段階でのそういうものに関してのお考えは。

市長

問題意識があるから特別監査を要求するということです。

(僅差での当選の影響について)

記者

冒頭から市長の御発言にもあったが,非常に厳しい選挙戦であって,就任早々にも経済界の方々から「951を忘れるな」と激励される場面もあった訳だが,僅差でお勝ちになったことが,この一年間の市政運営や市民への説明の仕方,市役所内での合意の作り方,市長の政策の進め方にどういった影響を与えたか。

市長

 私は,常々申していますけど,徹底してプラス思考です。正に厳しい選挙結果であり,天命とも思える勝ち方をさせていただいたことを,私自身が常に意識の中に持ち続けることが大事でありますし,そのことを京都市職員全員に持っていただく,これが大事だと思っています。そのことは引き続き私自身,全職員にも求めていきたいと思っています。

(一年を振り返って)

記者

この一年を,一言,二言でまとめるとすればどのように言えるか。

市長

「厳しさの中に夢を求めている,未来を拓いていく」,という感じです。

(水族館建設について)

記者

水族館の建設については,環境に関わる市民団体から疑問の声が上っているが,特に考えが変わったとかはあるのか。

市長

 計画どおりに進めます。動物園も廃止すべきだという御意見もあり,いろんな意見があるのは,京都ならではだなと思っています。和風迎賓館の時も大反対運動がありました。40数年前ですが,京都国際会議場も凄まじい反対運動がありました。嵯峨や嵐山,東山の古都保存法による保存,あの時も反対運動がありました。いろんな議論をしながら,しかし,断固たる決意で行政は進めてきた。だから今の京都があると思っています。新景観政策のときも多くの反対意見がありました。しかし今,京都市民はもとより多くの方々から高い評価を受けています。私は心配しておりません。

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