スマートフォン表示用の情報をスキップ

門川市長記者会見(2008年10月8日)

ページ番号49114

2023年4月12日

平成20年10月8日門川市長記者会見

益川敏英氏のノーベル物理学賞受賞について

最初に,昨夜すばらしいニュースが飛び込んで参りました。益川敏英(ますかわとしひで)先生のノーベル物理学賞受賞であります。京都大学名誉教授で京都産業大学理学部教授の益川敏英先生が,南部陽一郎先生,小林誠先生と共にノーベル物理学賞を受賞されるというニュースが入って参りました。日本人のノーベル賞受賞は,島津製作所のフェローであり,京都市名誉市民であります田中耕一様,そして小柴昌俊様以来,6年ぶりの快挙であります。厳しい社会状況,また,混迷する社会の中で明るい,希望を抱かせる素晴らしいニュースだなと,多くの市民の方々からお祝いの声が寄せられております。とりわけ京都にお住まいになり,永年にわたって京都大学で素粒子論の研究を重ねてこられまして,京都産業大学で今も教鞭をとっておられる益川様の満を持してのこの度の御栄誉は,学術研究のまち,大学のまち京都の底力を世界に発信し,科学を志す若い人たちにとって大きな励みとなるものであり,京都市としても大きな喜びであります。

先ほど,京都大学に寄せていただいて,直接,御受賞の御祝いを申し上げました。合わせて,京都市名誉市民の称号をお贈りしたい旨をお伝えさせていただいたところ,非常に喜んで快諾いただいたところであります。今後,京都市会の同意を得た上で,時期につきましては,益川先生とも相談の上,しかるべき時期に表彰させていただきたいと思っております。明るいニュースで,ありがたいなと思っております。大学のまち,学生のまち京都の新しいプラン作りを今,正に進めているそんな時でもあります。非常にありがたいニュースと思っています。

「未来の京都創造研究会」の設置について

続きまして,3点について御報告,お知らせ申し上げたいと思います。

ひとつは,「未来の京都創造研究会」の設置についてでございます。平成23年度から始まります次期基本計画の策定を来年度から本格的に取り組むことと致しておりますが,柔軟な発想によって,計画の策定方針案等を取りまとめていただきたいということで,この度「未来の京都創造研究会」を新たに設置することと致しました。

私は,マニフェストにも掲げておりますとおり,地域主権時代をリードし,京都の未来を切り開く新しい地方自治の在り方をこの京都から,「共汗」と「融合」をキーワードに進めていきたい。国も地方も極めて厳しい財政状況であります。そのような中でも,効率的・戦略的な行政経営を市民の皆様と知恵を合わせて実行していく。そのための新たな基本計画を策定していく,そして,京都においてモデルとなるような取組を実践し,全国に発信していきたいと思っています。

今回,計画の策定方針あるいは政策課題の抽出と解決の方針,あるいは具体的な施策の方向性や重点施策の案づくりなど,来年度から始めます本格的な論議の素材作り,検討の素材作りを行うために,新川達郎(にいかわたつろう)同志社大学大学院教授に座長への就任をお願いしまして,そして大学のまち京都ならではの若い人,30歳代から40歳代の次代を担う新進気鋭の各分野の研究者にお願いしまして,12名で構成する「未来の京都創造研究会」を設置することとしました。

この研究会の特徴は次の3点です。

ひとつは,検討の初期段階から研究会が活動するということであります。

ややもしますと行政が現状認識を示して,政策課題を探り,そしてテーマを設定する,そして審議会にお諮りする,これが従来型の審議会や研究会でなかったかと思います。今回は,そういったことを一切,行政側が用意せずに,最初の段階から研究会が動き出し,研究を始めていただきたい。更に,分野ごとの検討部会の設置,あるいは特定の分野について専門的な調査研究を行う等,具体的な運営についても研究会に委ねることにしたいと思っております。できるだけ行政が用意をして,用意した範囲内で研究してもらうということではなく,現状課題から,研究のテーマから,全てを若手の研究者の方々にお任せして,柔軟な発想で研究していただき,それを土台に来年度新たな基本計画の策定委員会を作りたいと考えております。

2点目は,分野横断的な「融合」の観点により議論を進めて欲しいと思っています。

徹底して縦割りを排除する。保健福祉,まちづくり,様々な専門分野で最先端の知識を持っておられ,研究をされている方々に,分野横断的な視点から「融合」していただく。あえて分野を固定せずに議論を進めていただきたい,そして大きな転換期にあります京都市の未来について最適な計画の在り方,政策課題の抽出,解決策の案を示してもらいたいと思っております。

3点目ですが,公募職員等の本市職員の参画であります。

9月11日に,市職員から公募しました30名から成る「次期基本計画策定支援チーム」が,活動を開始しております。それとの「融合」を図っていきたいと思っております。

今後,まずは明日10月9日に第1回の会議を行います。そして,その後2回程度の会議で策定方針等を取りまとめていただいたうえで,分野ごとの部会等の設置や議論をさらに深めていただいて,必要に応じまして実務家等の参画も得ていく。更には9月27日に設置しました「未来まちづくり100人委員会」とも連携し,そして「共汗」と「融合」によって,平成21年度からの検討素材を作っていただきたいと考えています。

京町家まちづくり調査の実施について

次に,京町家のまちづくり調査の実施についてであります。この度,来年度まで1年半をかけ,立命館大学とのコラボレーションによりまして,更には京町家の専門家,関係団体の方々,市民・学生等から成ります市民共汗サポーター,延べ5,000名を超える皆様の御協力を得まして,京町家の全数調査を実施することと致しました。

今まで,平成10年と15年に,都心部などの特に町家が集中している地域に限定した調査を2度実施してきました。市域に残存する全ての町家,推定約5万軒と見込んでおりますが,それらを対象とした調査は,今回が初めてであります。また,この機会に初めて,京都の景観や町並みにふさわしい新しい木造建築等について発見し,把握していきたいと考えています。調査方法・内容につきましても,過去2度の調査と比較しまして,ひとつは,専門家の眼による精度の高い外観の判定,そして町家活用に対する意識・ニーズに重点を置いたアンケート調査,これらを行うことによってより充実させていきたいと思っております。京町家の減少に歯止めをかける具体的な施策,あるいは市民の皆様の主体的な取組を促進する,そういった機会になればと思っております。

さらには,新景観政策が施行されて1年になりますが,新しい京都の住まいの在り方,木造住宅のあり方,それらについて,市民の方々に具体的な事例を用いて提案していける。そうした材料にもなればと思っています。

京都の伝統的な建築様式や生活様式を伝える京町家は,歴史都市・京都の景観の基盤を構成するものであります,そして「京町家ブーム」が,好調な京都観光の要因の一つにもなっています。

また,京町家は,外観の美しさだけではなく,内部の住まいの様々な知恵,あるいは暮らし方,ライフスタイルなど京都独特の生活文化を特徴付けるものであり,お茶・お花など伝統文化を継承する「器」とも言えるものであります。京町家を保存するということは,京都の生活文化や伝統文化を守り,創造していくためにも,非常に大切なことであると私自身思っています。しかしながら,木造住宅でありますので,古びてきますし,朽ちていく。それは当然の宿命であります。

平成10年,15年の過去2回の調査から,毎年2%ぐらい,町家が失われていくことが判明しております。単純計算しますと,50年経てば京町家はほとんどなくなってしまうという状況であります。

今回の全数調査を実施しまして,「京町家データベース」を整備して,これは市民の多くの方々の御努力,御協力の賜物になると思いますが,京町家の関連施策を立案していく際の材料としたいと思っております。町家生活の優れた発想やアイデアを実用化する,そうした「マッチング」の仕組みづくりの基礎になるものにしていきたい。知恵を絞って,新たな取組も進めていきたいと思っています。

町家住民と専門家・行政,幅広いボランティアの方々,こうしたネットワークを通じて,京都の景観,これらを守っていく取組にも繋げていきたいと思っております。調査実施に当たりましては,京町家の所有者,またお住まいの方々,地域の皆様,全面的な御理解,御協力を賜らなければなりません。よろしくお願いしたいと思っています。

また,市民共汗サポーターとして,調査に参画していただける方々を随時募集しておりますので,積極的な御参加をお願いしたいと思っています。町家については以上でございます。

「エコドライブ推進事業所」の募集について

 

最後になりますが,「エコドライブ推進事業所」の募集についてであります。

「エコドライブ」は,緩やかな発進やアイドリングストップなどによりまして,10%の燃費改善が期待できる,地球にやさしく,経済性もあって,お財布にもやさしい,更に交通安全にも繋がる,こうした素晴らしい運転方法であります。

京都市では,エコドライブ推進活動の一つとして,今年の3月にエコドライブを積極的に推進していただける方にその実行を「宣言」していただく「京(みやこ)エコドライバーズ」登録事業を開始しました。市民の方々の地球温暖化対策への関心は非常に高く,「DO YOU KYOTO?」の取組や原油高騰も背景に積極的な御参加があり,「エコドライバーズ」宣言をされた方は,今年9月末現在で7,551名にもなりました。

また,最近では,自動車関連の事業者の中で,CSR(企業の社会的責任)活動の一環として,「エコドライブ」を積極的に実践,更に普及していただく熱心な事業者も出てきております。ありがたいことだと思っています。

このたび,こうした気運の高まりを受けまして,「エコドライブ推進事業所」の登録事業を開始致します。「推進事業所」は,毎日の配達や営業活動において,「エコドライブ」を自ら実践していただくことはもちろん,更に一歩進んで顧客や取引先に宣伝し,普及に努めていただきたい。例えば,損害保険会社であれば,営業の際に顧客に対して地球にやさしい安全な運転,「エコドライブ」を勧めていただく,そのことが,損害保険の効率化にもつながる。あらゆる部分でこれはプラスに展開するものであります。

京都市と致しましては,「エコドライブ」の進め方などについて気軽に相談いただける,ひとつは相談窓口の設置,それから「エコドライブチェックシート」によるアドバイス,あるいは,(ここに置いておりますけども,)エコドライブによるガソリン節約量を計測できる機器を20台お貸しして実践していただく。この機械を御使用いただきますと,燃費改善にどのように繋がるかをきちっと具体的なデータとして把握できる,こうした取組を実施していきたいと思っています。

更に,実際のCO2排出量削減を計算しまして,それを「登録証」として発行し登録していく取組も行います。多数の事業者の参加を期待致しております。

目標事業所数としましては,平成22年度までの3年間で1,000件を目指して参りたいと思っています。

地球にやさしい,経済性もある,財布にもやさしい「エコドライブ」が都大路を走る車のステータスになる,そんな京都を市民の皆様と共に創って参りたいと思います。

私からは以上でございます。

質疑応答(要旨)

(ノーベル物理学賞受賞について)

記者

 今回のノーベル物理学賞受賞は,「基礎研究」の重要さが一層認識された結果であると思う。基礎研究を今後推進していくために,市として何か考えはあるのか。

市長

 先程も,益川敏英(ますかわとしひで)先生に,湯川秀樹先生が名誉市民第1号であるという話をして参りましたが,基礎研究の大事さが改めて認識され,大学も,行政も,また初等・中等教育も含めて,今一度心する機会になればと思います。

 昨日までの3日間,STSフォーラムが京都で開催され,750名を超える海外からの科学者が来られて熱心な議論がなされました。昨日,東大の小宮山総長等々とも話していたことであり,また,教育再生会議でもさんざん議論をしたことでありますが,すぐに結果を出さなければならない成果主義,勝たなければならない競争試験といった傾向が強まってきたことを感じています。もちろん,成果主義,競争試験を否定するものではありません。しかし,私が教育再生会議で話したことでもありますが,すぐに見える成果とずいぶん時間がかかって見える成果とがあります。あるいは,見えやすい成果となかなか見えにくい成果とがあります。そのことをきっちりと踏まえた上で議論しなければならないと改めて実感しています。

 もう一つは,今,「理科離れ」が懸念されています。私は,「理科離れ」だけではなく,「学び離れ」と考えています。子どもたちが,生活する中で様々な疑問を持ち,その疑問に挑戦していく「生活の中での学び」がある。学校で学ぶことでも,必ずしも答えがあるわけではない,いわば「正解のない学び」がある。そういったことも踏まえた「教育の原点」を考えさせていただく機会になれば良いと考えています。

幸いなことに,京都大学・東京大学等々,初等・中等教育を担う京都市教育委員会も参画し,「大学発教育支援コンソーシアム」が発足しました。初等・中等教育における学力が落ちている,「理科離れ」が起こっているといった指摘がある中,大学,初等・中等教育の関係者と行政が一緒になって,大学の多様な知見を初等・中等教育に活かす取組を具体的に進めていこうというものです。この夏にできたその仕組みを加速させる契機にもしていきたいと思っています。

(高さ規制への対応について)

記者

 京都大学へノーベル賞受賞の御祝いに駆けつけられた際に,益川先生から「高さ制限についてもう少し柔軟に対応して欲しい」というお話があったが,今後,手続きの簡素化や,柔軟な対応を取ることがあるのか。

市長

まず一つは,新たな景観政策の枠組みの中でも,公共性の高さや優れたデザイン性,施設建設の代替場所が確保できないこと等を考慮し,特例を認めていくことがきちんと制度化されています。

また,このたび,素案として発表している『「大学のまち京都」「学生のまち京都」推進計画(仮称)』にも,景観に配慮しつつ,大学の研究機関などを整備していくことをきちんと掲げています。

したがいまして,現行制度の運用の中で,柔軟な対応が可能であり,新たな仕組みを作るというものではないと思います。どちらに大きくシフトするかというバランスの問題であると思います。これらについては,大学の先生も含めた専門家の皆様に叡智を絞っていただき,京都が京都でなくなってしまわないよう,京都のまちが将来に向かって大学のまち・学生のまちであり続けること,研究者が研究に存分な力を発揮していただくことに,十分な配慮をしつつ対応していきたいと考えています。

市民的議論を呼んでいただく一つの課題提起として,仰っていただいたものと受け止めています。

(益川氏の名誉市民内定について)

記者

先程,門川市長は,ノーベル物理学賞を受賞された益川先生に名誉市民内定を伝えられたが,名誉市民の称号を授与される際の要件として,業績は今回の受賞で満たされていると思うが,人柄等についての市長の所感は。

市長

 益川先生は,研究者として非常に誠実,まじめであり,かつ,教育者として若い人の育成に真摯に取り組まれておられます。心から敬意を表したいと思います。現在も,京都産業大学で教鞭をとっていただいていることについても大変ありがたいことです。

(後期高齢者医療制度に係る意見書可決について)

記者

9月定例市議会本会議において,民主党と共産党が賛成多数で後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書を提出,可決された。今回のように,民主,共産で多数派を構成するという状況になったことで,今後の市長側から議会への説明や関係について変化は生ずるのか。

市長

一切無いと思っています。国政において与党と野党に分かれており,国政段階で意見が違うということは,市民の皆さんも重々承知しておられたわけであります。

京都市政においては,言うべきは言うが,与党として門川市政をしっかり支えていくという姿勢にゆるぎはないと仰っていただいておりますので,一切の心配はしておりません。

(「未来の京都創造研究会」について)

記者

研究会のメンバーですが,座長に新川達郎同志社大学大学院教授が選任されているが,新川氏は,市長が力を入れておられる「同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会」の委員長もされている。総点検委員会の方は,今年4月に設置されてから1年間で結論を出さなければならず,非常にタイトなスケジュールで行っておられる。それに加えて,今回の研究会もまとめられるとのことだが,総点検委員会の方はきちんと仕切っていけるのか。

市長

大丈夫です。それと,後程,研究会名簿について説明させていただきますが,非常に若い研究者を中心にして,新川先生だけが比較的熟年である。これまでの審議会等の座長でしたら,座長の負担が極めて大きいですけれども,この研究会では,若い研究者に自由闊達に議論してもらいたい。ただ,若い人だけではまとめ役が出にくいので,新川先生にその役目を果たして頂こうということです。通常,審議会のような諮問機関の委員には,各分野の権威と称される学識者に就任をお願いすることが多いですが,今回は敢えて,今,あるいはこれからという先生方に入ってもらいました。従って,新川先生にはまとめ役としての役割を果たしていただこうと考えています。

ここで,新川先生にすべてを仕切っていただこうということでしたら,この研究会の趣旨でなくなりますので。まとめ役として役割を果たしていただけるということです。

記者

「未来の京都創造研究会」について,自由闊達ということは,行政にはない発想の計画をまとめたいということで,あくまで方向性をこの研究会に委ねようということだと思うが,その一方で,今後4年間の市政運営を示す「未来の京都まちづくりプラン」が別にある。今回設置する研究会で,そのプランと大きく方向性が異なるものが出てきた場合,異なる二つの指針が出て,行政が逆に混乱する可能性もあると思うが,その辺りの整合性はどのように行うのか。

市長

私は,議論の段階において選択肢が広がるということは,大いに結構だと考えています。したがって,従前の基本計画の延長線上でお願いしたいとか,私の思いを先にすべて示すとか,京都市にいろいろな審議会があります。その審議会の中核となる先生方に集まってもらって議論していただくとか,そういうことではなしに,本当にこの大きな変革期に,新しい目で見てもらおうと考えています。30歳代,40歳代前半のこれからという研究者が,最新の知見で,情熱で,外部の目から見てもらおうと。その時に今までと違う意見が出てきたら,それはそれでいいと思います。それは議論の幅が広がり,厚みが増します。しかし,いつまでもそうしていてはいけませんので,それをどう融合していくのか,その作業は,平成21年度からの基本計画の検討委員会になります。ですから,初めは少々心配なことがあっても大いに議論してくださいと。それは想定外ですとか,そういうことは言わないでやっていきたい。その方がいいと思っています。

市長記者会見資料

お問い合わせ先

京都市 総合企画局市長公室広報担当

電話:075-222-3094

ファックス:075-213-0286

フッターナビゲーション