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門川市長記者会見(2008年7月16日)

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2023年4月12日

平成20年7月16日門川市長記者会見

はじめに

 門川大作です。今日,明日は祇園祭にちなんで,できるだけ「ゆかた」を着ようということを推奨させていただいておりますので,ゆかた姿で失礼します。
 まず,私から,御報告申し上げます。

梅小路公園における「京都水族館(仮称)」整備構想

 ひとつは,「京都水族館」,仮称でございますが,この構想についてであります。
 オリックス不動産株式会社から,梅小路公園の北東側一画と京都市の市有地である隣接する倉庫跡地を使用して,国内最大級の内陸型の水族館を建設したいという,御提案をいただきました。
 京都を代表する新たなシンボルが誕生するという大きな構想であります。
 御提案いただきました「京都水族館」整備構想によれば,この水族館は,海洋環境を本格的に体感できる環境学習機能を備えた施設として,また,市民や観光客に愛され,地域のにぎわいに貢献する施設として整備したいというものであります。
 整備の予定地でございますが,梅小路公園自体は,約12万平方メートルございます。その北東側に,サーカスをはじめ,いろいろなイベントに使っている,公園としてはまだ整備していない約1万平方メートルの区画があり,そこに設置したいというものでございます。梅小路公園には,「いのちの森」というものが約1万平方メートルございます。それから「芝生広場」が約2万5千平方メートルあります。そうしたものと機能的に連携させて,水族館を造りたいということであります。
 豊かな森が豊かな海を育てる。森と海は繋がっている。魚があるいは昆布が,海藻が育つためには,豊かな森が必要だ。森に木を植えよう。こういう取組がなされていますが,豊かな森,そして都市,そして海,この3つを関連させていきたいと思います。森で生まれた水が,都市を通って,海に流れ込む。したがって,森を大事に,そして都市の,都会人の生活,それが海の環境にどのような影響を与えるのか,こういうことを学ぶ機会を持つことが重要であると思っております。
 そういう意味では,京都駅のすぐ近くで,市民によって育まれてまいりました「いのちの森」を有する梅小路公園の一画に,水族館という「海」が誕生することは,海,森,そして都市,これらが一体となった地球環境保全について,子どもたちから大人,お年寄りまでが,考える契機となるものであり,「環境先進都市・京都」にとって意義深いものであると感じております。
 また,屋内施設の水族館は,四季を問わず快適な観覧が可能ですので,京都観光にとりまして,オフシーズンであります夏とか冬の誘客対策としても期待できることに加えて,「癒し」ですとか,「ゆとり」といった精神的な充実が求められている近年の観光ニーズにも適しているものであると思います。
 京都観光の「質」の充実,向上につながるとともに,京都旅行の楽しみ方がまた一層深みを増す,広がりを増すと考えています。
 公園敷地における水族館の建設につきましては, 当然,京都市の設置許可が必要となります。このため,この度の提案を受けて,早急に第三者委員会を立ち上げまして,設置許可の妥当性について厳正に審議していただきたいと思っております。また,市民の皆様からの御意見,御提案を十分にお聞きし,京都市がそれらを踏まえて,梅小路公園の今後の計画や周辺地域の活性化などとの関係性,あるいは京都市のまちづくりといった大きな視点からも水族館建設の妥当性を検証し,できるだけ早期に,年内を目途に,京都市の方針を固めてまいりたいと考えております。
 様々な議論や検討を重ねたうえで,京都市が水族館の設置を許可することになった場合には,都市計画等の関連手続きを経まして,提案事業者が施設の建設・運営を行うこととなります。同時に,京都市は,事業用地として市有地の提供を行うとともに,大勢の来園者が予想されますので,公共交通機関の活用を軸に,梅小路公園一帯のアクセス対策を進めてまいる所存でございます。
 このように,民間企業の知恵・資本・経営の手法を活かして大規模事業を進めることは,極めて厳しい財政状況であります本市にとりまして,非常に素晴らしいリーディングケースになるのではないかと考えております。
 京都は海に接しておりません。しかし,海の恩恵は大いに受けております。海に面していない内陸都市である京都市の子ども達に,水族館で海洋生物と触れ合い,「海」という大自然,水環境を体験していただくということは,非常に素晴らしいと思います。また,都心部の貴重な憩いの場であります梅小路公園が,現在の公園施設や,動態保存されている全国でも最高の梅小路の蒸気機関車館と関連付けて,年間を通じて楽しんでいただける交流の場になるのではないか。また,周辺地域の活性化につながるものと,想いを巡らせているところであります。
 この構想が実現しましたら,1200年の歴史と伝統のある京都に,新たな魅力を加えていくと期待しております。

文化財とその周辺地域を守る新たな防災水利整備の本格運用開始について

 次に,文化財とその周辺地域を守る新たな防災水利整備の本格運用開始についてでございます。
 私は,マニフェストで「災害に強いまちづくりをすすめる」取組を強調しております。地域力を最大限に活かして,文化財とその周辺を守る体制を作っていこうということであります。
 日本の文化は「木と紙の文化」であります。そして,文化財は火に対して非常に弱く,歴史的に見ましても文化財が失われた最大の原因は火災であります。度々,火災によって貴重な文化財が失われております。同時に火災は,人々のいのちにかかわる大変な問題であります。
 京都市内には,国宝の約20パーセント,そして重要文化財の約15パーセントが存在しております。特に東山区の清水地域は,清水寺,高台寺,法観寺など数多くの文化財,さらには産寧坂伝統的建造物群保存地区など歴史的な町並みが連なり,日本全国から,また世界中から多くの観光客が訪れる地域であります。日本はもとより世界の宝と言える地域であります。
 しかし,防災面におきましては,道路幅が非常に狭い。木造住宅が密集している。地震等による大規模な火災が発生すれば,地域とともに貴重な文化財が焼失する恐れがあります。また,人の命を守るということについても深刻な課題がございます。
 このことから,当該地域において,平成18年度から22年度までの5年間の計画で,総額10億円を投入しまして,防災水利整備事業を進めております。
 この度,学校のプール5つ分に相当する1,500㎥(トン)にもなる全国最大規模の耐震型防火水槽を高台寺公園の地下に整備いたしました。また,その周辺地域において,市民が1人でも簡単に操作できる消火栓等を何箇所も作りました。そして,これを活用して,面として防火防災を進める取組の本格運用を開始します。
 地域ぐるみで文化財を守る。いのちを守る。お寺,神社さらに地域,皆さんで一緒に守っていく取組であります。
 ハード整備に併せてソフト対策として,今月23日に,多くの地域住民の方々,また地元の消防団など240名が参加する大規模な合同防災訓練を高台寺公園周辺において実施いたします。
 訓練は,阪神・淡路大震災級のマグニチュード7.5相当の地震により火災が発生したということを想定しまして,AEDを活用した応急手当,担架による搬送,14基の市民用消火栓の一斉放水のほか,消防分団,消防隊による放水訓練も行います。
 住民の皆様と合同で,実戦さながらの大規模な放水訓練を歴史的な景観を背景に実施します。文化財や,木造住宅をしっかりと守っていこうということであります。
 そして,訓練終了後に,地域の皆様に防災意識,防災能力を高めていただくために,ヘルメットや担架,レスキュー器材などの贈呈式を高台寺公園で行う予定であります。
 何物にも代えがたい文化財,あるいは,いのちを守っていく取組を市民ぐるみで進めていきたいと思っております。
 その後に,3回目になりますが,「おむすびミーティング」を開催させていただきたいと思っています。地域の代表の方々,自主防災に取り組んでおられる方々,そして文化財を保存されているお寺の関係者等々,ざっくばらんな話し合いを進めてまいりたいと思っております。

「環境にやさしいライフスタイルを考える市民会議(仮称)」について

 最後になりますけれども,「環境にやさしいライフスタイルを考える市民会議」についてであります。
 環境問題について考えよう。京都議定書誕生の地ならではの取組をしていこう。さらには,日本人の心の故郷「京都」,そして,伝統と創造のまち,常に新たな課題に先進的に取り組んでいたまち「京都」。こうした自負のもとに環境問題に取り組んでいこうということで,ひとつは,「歩くまち京都」戦略会議というのを先だって発足いたしました。もうひとつは,「木の文化」をしっかりと考えて,持続可能なまちを造っていく。こうした取組についても新たに委員会を立ち上げたいと考えております。
 そしてもうひとつは,「環境にやさしいライフスタイル」を考えるということであります。科学技術のイノベーションを起こすということも大事ですし,同時にひとりひとりの生き方を考えていく。このような取組の一つとして,コンビニ等の深夜営業の見直しについて検討するという提言をいたしました。
 全国の各地で様々な議論が広がっておりますし,マスコミ等でも報道されています。また,私どもにもいろんな声を聞かせていただいています。京都から一石を投じたことは,非常に大きな意義があったと認識しています。
 ドイツのメルケル首相が,「DO YOU KYOTO?」は,「環境にいいことしていますか?」という意味で使われているとおっしゃられた。京都という名詞は,単なる都市の名前ではなく,動詞としての役割を果たしているということを聞いた時に,こうした取組を市民ぐるみで進めていかなければならないと感じました。
 そこで,コンビニ等の深夜営業の見直しをはじめとする「ライフスタイルの変革」について議論する「環境にやさしいライフスタイルを考える市民会議」という名称の市民会議を7月中に組織いたしまして,第1回の会議を8月に開催したいと考えております。
 この会議につきましては,低炭素社会の構築をはじめとする環境にやさしいライフスタイルを実践するための課題や方策について,幅広い層の市民の方々の参画を得て,多様な観点から議論していただきたいと考えております。
 そのため,委員につきましては,市民,地域の様々な活動をされている団体の方,業界,学識経験者,さらに行政などで構成し,環境分野だけにとどまらないで,経済,景観,まちづくり,教育,青少年の育成,防犯など,幅広い分野の方々に参画いただき,自由で闊達な議論をしていただきたいと考えております。
 なお,市民委員については,今月下旬に公募を行いたいと思います。 会議は全て公開し,業界団体や事業者をはじめ多くの方々から,積極的な意見を聴取していただきたいと思っております。また市民の皆様にもできるだけたくさんの方に傍聴していただけるように考えていきたいと思っています。
 既に多くの意見が寄せられておりますが,会議の議論の内容を,ホームページ等で幅広くお知らせし,更に多くの市民の皆様の御意見をお聴きし,市民レベル,国民レベルでの幅広い議論を期待したいと思っております。
 私からは,以上でございます。

質疑応答(要旨)

「京都水族館」について

(提案内容の評価)

記者
現時点で,提案を受けて前向きに考えたいということか。観光の面でも期待しているとのことであるが,アクセス対策について方向性は。

市長  
素晴らしい構想であり,大いに期待しています。同時に,専門家による第三者機関を設置し,事業の妥当性等について厳正に審査していただいて,答申をいただきまして,そして,京都市としては,その答申に基づきまして,最終的に決定したいと考えています。
整備の予定地は,京都駅から1キロメートルというアクセスの良い場所であり,年間200万人が来られると予測されている施設であります。
先ほども申し上げましたように「歩くまち・京都」という意味で,できるだけJR・私鉄・地下鉄・市バス等を使って水族館を含む梅小路公園に来ていただきたいと思っておりますが,やはり観光バスなど必要最小限の駐車スペースは必要と思っております。アクセス等については,京都市が主体的に,第三者機関の意見や市民の皆様の意見,鉄道・バスの事業者の方々の意見も聴きながら,何をなすべきか決定していきたいと考えております。

(京都市の財政的な負担)

記者
土地の賃料,水族館建設に伴う道路の拡幅など,水族館建設に伴う市の財政的な負担に関して,どうお考えか。

市長
水族館施設そのものは,事業者が市有地を借り,独立採算で運営されることが基本であります。市有地の貸与,賃料の設定については,体験型学習施設であること,京都市の従前の事例,第三者機関の御意見などを踏まえまして,これから決めていく課題であります。
梅小路公園全体の12万平方メートルのうち,1万平方メートルの用地に水族館を建設するというものであります。この水族館と,いのちの森や蒸気機関車館を有する梅小路公園が有機的につながりまして,活性化していくことが大事であります。現在,真夏や真冬は公園が閑散としています。公園全体がどのように活力を増していくか,そのために交通アクセスなどをどう考えるかについて,公園設置者の京都市が事業者等とともに十分に検討していきます。

(オリックス不動産からの提案の経過)

記者
少なくとも2年前から打診があったと伺っているが,急速に話が進展した直接的な契機があれば。

市長
平成17年12月,オリックス不動産の方から打診がありました。そのときは,意向を聞きたいということで,もっと大まかな話であり,詰めた話ではありませんでした。その後,オリックス不動産も,新江ノ島水族館の成功事例等も見ながら,この事業が成り立つかについて様々な研究をされまして,今年度に入りまして,実務レベルで相当具体的な,詰めた協議をしてきました。そして,一昨日,正式に提案をいただいたということであります。
御存知のように,京都市は非常に財政事情が厳しいです。そうした中,これからは,京都の伝統を活かすことはもとより,民間の知恵・活力・資本を活かしながら,京都のまちの新たな魅力も創造していくことが大事であります。今後,第三者機関を設置して厳正に審査いただくこととなりますが,今回の提案が良いリーディングケースになればと期待しています。

(内陸型水族館の課題)

記者
国内最大の内陸型水族館とのことだが,内陸型にするには多くの課題があり,排水処理,海水の運搬など,水族館が与える環境への負荷は見逃せない。それについて,市民や子どもたちに水族館を環境学習の場であると説明していく上で,どうお考えか。

市長
京都市の青少年科学センターに,小さな,本当に小さな磯を体験できる展示物があります。小さいトンネルを作って,子どもが通れるようになっています。子どもたちにたいへん人気があり,学校の先生から聞く話でも,「学習効果が素晴らしい。やはり「ほんまもん」を見ることは,映像で見るのとは違う。」ということであります。排水にも注意を払っており,水が汚れれば,海の生き物が駄目になってしまうこともきちんと教えています。もちろん海へ行って学べれば良いが,内陸の京都人はなかなか行けません。
ただし京都市には,動物園があり,動物園で動物愛護の精神が培われるということはあります。
もう一つは,オリックス不動産も様々な研究をされておりまして,大量の海水をタンクローリーで運んで来るのではなく,現地で人工海水をつくり,それを循環できる技術を開発されています。そして,最小限の排水は,環境基準にきちんと適合した水準まで浄化して下水で流す,そういった技術も含めて,提案をいただいています。

(構想実現に向けたプロセス

記者
少なからず市の財政的な負担を要する中で,市長自身は提案に前向きであると感じる。京都市はこの構想を進める方向で動いているようにも受け取れる。まだわからない部分,様々な課題がある中で,この構想を前に進めるプロセスについてどう考えているか。

市長
行政が構想を全てつくり,市民の意見を聴き,実施していく。これは,従前型の手法であると思います。民間企業も含めて,様々な方から提案を受け,妥当性があるか,市民にとって,京都のまちにとって,あるいは日本にとって良いものであるか,第三者機関を設置して十分検討していただきたいと思っております。市民個人でも民間企業でも,幅広い方々がいろいろな知恵を絞られ,これは事業として成り立つ,京都の発展のためにも,日本の発展のためにもなる,そして事業の継続性もクリアできるような提案を練ってこられました。そんなとき,頭から「無理ですよ」と断る必要はありません。今回の水族館の提案は,非常に魅力のある提案だと私は思いますが,市議会も含めて市として判断する前に第三者機関を設置しまして,その場で議論していただこうということであります。
すでに,この構想について,私のところに「いいですね」といった声が届いてはいますが,どんな課題があるか,妥当性があるか,これはしっかりと,厳正に専門家によって議論していただきたいと思っております。私はその答えを待ちます。

記者  
第三者機関の判断によっては,このプランを退けるということもありうるのか。

市長
もちろんありうることです。

環境にやさしいライフスタイルを考える市民会議(仮称)について

(会議の内容)

記者
委員を練っておられると思うが,既に打診はされているのか。市民会議という名称であるが,市長御自身もメンバーとして参加される可能性があるのか。議論が多岐にわたると思うが,専門部会のようなものを設けて議論していく可能性はあるのか。

市長
市民的,国民的関心が非常に高く,是非とも議論に参画したいという声が市役所,私の方にも届いています。しかし,今,準備を進めている段階であり,委員への打診はこれからになります。おっしゃるとおり,幅広い議論が必要ですし,様々な団体の代表の方々等30人くらいの委員の方々を考えています。
また,私の意見を求められればもちろん申し上げますが,私自身が委員として参画することは避けておこうと考えています。できるだけ幅広い市民の方々の主体的な参画によって議論を盛り上げていただき,京都市に提言いただく形にしたいと思っています。専門委員会を設置するかどうかについては,今のところ考えておりません。

(会議の事務局)

記者
議論が非常に多岐に渡るということだが,市側の事務局はどうされる予定か。

市長
体制を少し補強しなければならないかもしれませんが,地球温暖化対策室が担っていきます。

記者
事務局として,新たに室を設けるといったことはないか。

市長
そういうことはありません。
これは,教育分野や青少年の健全育成等,様々な分野に関わる問題です。常に縦割り行政は駄目だと考えていますので,庁内でチームを組むなども含めて,全庁的な協力体制を作って取り組んでいきたいと考えております。

その他

(浴衣を着た感想)

記者  
浴衣を着られた感想は。

市長
私は,日常生活はほとんど作務衣で過ごしておりますし,浴衣もよく着ます。また,結婚式には可能な限り,紋付羽織袴で行くという生活をしていますので,それ程違和感はないのですが,役所の中で見る浴衣姿もなかなかいいものだなと感じています。
職員からは,生まれて初めて浴衣を着ましたと,一つのきっかけだという声もありますので,こうした取組を通じて,できるだけ市の職員が浴衣を着る,そして市民の方々にも浴衣を着ていただく,そういう機会が増えてきたらいいなと思っています。

文化財とその周辺地域を守る新たな防災水利整備

市長
清水地域の取組ですが,高台寺公園に非常に大きな水槽や瓦屋根の京都の景観に見事に調和したポンプ庫を作りまして,そして細い道に配水管を敷設し,木で囲った消火栓を整備しました。これは,面で文化財を守っていこうという全国でも初めての取組です。市民の方々が関心を高めていただくためにも,是非皆さんにご覧いただきたいと思っています。よろしくお願いします。

 

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