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京の商いシンポジウム 「商い百花繚乱~お店咲く咲く京のまち~」講演録

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2017年1月4日

京の商いシンポジウム 商い百花繚乱~お店咲く咲く京のまち~ 

平成20年2月19日火曜日に,キャンパスプラザ京都 2階ホールにおいて開催致しました,京の商いシンポジウム「商い百花繚乱~お店咲く咲く京のまち~」の講演録です。

 当日使用した資料は以下のとおりです。適宜ご利用ください。

 

 

※宗田准教授の資料「都心の店舗・顧客の移り変わり」は掲載しておりません。

第1部 リレートーク

若林靖永(京都大学経営管理大学院教授)

若林教授の画像です

【講師略歴】
 マーケティング,流通,商業が専門。京都市商業振興ビジョン策定委員長として,現在の京都市商業ビジョンの策定に中心的に携わり,策定後,京都市商業ビジョン推進委員長として各事業を推進。また,京都市の景観政策や伝統産業振興にも取り組む。経済学博士(京都大学)

「Introduction~京都市商業ビジョンとは~」

 ご紹介いただきました京都大学経営管理大学院の若林と申します。大学ではマーケティング,流通,商業を担当しています。京都大学でも2006年からMBAが取れる経営管理大学院が開設されまして,そちらでマーケティングの教育と研究を担当しております。

 本日の最初の私のお話は,「おいでやす京の商い~京都市商業ビジョン2004~」の中間報告についてご紹介したいと思います。「京都市商業ビジョン2004」は京都市産業観光局商業振興課のホームページをチェックしていただければPDFファイルそのものがダウンロードできますので,これ自身に興味があるという方は,詳しくはそれ自身を読んでいただければよろしいかと思います。私はこの策定委員長として関わって,策定後もビジョンに基づく事業の進捗管理をする京都市商業ビジョン推進委員会というのがあるのですが,その委員長を務めさせていただいてます。今日はシンポジウムの最初に京都市商業ビジョンの概要と,そして2004年から2007年にかけてどんな新しい展開が進められているのかという事柄のいくつかについてご紹介します。

 「おいでやす京の商い~京都市商業ビジョン2004~」は,基本的な京都市の商業とはどうあるべきかということと,商業振興としてどういう施策で行政は応援するのかについて示しています。大きく分けてこの二つのテーマについてこれまでの議論を整理しながら21世紀の新しい時代を切り開くにふさわしい,新しい政策づくりをめざしました。その前に策定された「京都市商業振興ビジョン」(平成10年)を受けて、次の2004年から2010年までの方向性を示したものです。

 まず何を目指すのか。今回の京都市長選でも,京都新聞等も京都市長は二つの顔があると書いていました。市民の生活を守り,市民の代表,行政をリードする役割はあるけれどもそれだけではない。京都というまち自身が日本を代表し,そしてまた世界にアピールするまちであるという意味で,その顔という役割があるのだということが社説などでも指摘されていて,まったくそのとおりだと思いました。京都というところのまちの戦略を考えるときには常にこの二つの性格,使命を京都というまちが持っているということ。京都市民のまちであると同時に,やはりわれわれはこの京都というまちをある意味預かっていて,より立派なものとして展開していく義務がある意味課せられているのだと思います。

 そういうことは京都の商業にも当てはまります。一つ目は,歴史文化都市京都を発信するという,京都の魅力を担う商業という方向でやはり頑張っていくことが必要である。そのことは観光に関わる商業もそうです。あるいは伝統産業と商業とか,祭りや年中行事との関わりとか,歴史文化都市を支えていくというその担い手としての商業。二つ目は,多くの京都市民がここで働き,ここで暮らしているわけですから、そうした人々の日常の暮らしを,しかも若い人,独身,結婚している,子どもがいる世帯,高齢者といった様々な人々の暮らしに対応して消費者としての満足が得られる、市民の生活をサポートできる商業のサービスのレベルを高めていくことが求められます。

 これは民間が担っていることではありますが,京都市としてもしっかり評価をして足りない点は何らかの誘導策なり規制策なりを打ち出す必要があるだろうということで,こういう日常の暮らしを支えるという視点。

 三つ目のあるべき姿は,まちというのはまちという顔と商業という顔が実は結びついているということです。つまり例えばまちが魅力的であればそこに人が集まってくるので自然とある意味商業者も潤うし,頑張ろうということになりますし,逆にまちがイメージダウンしていって治安が悪化して,なかなか恐くて行けないということになると,お客さんが来ないということになるので,商業者も廃業して別のことに変えないといけないというように,まち全体の環境を整備することと商業が回っていくということには強い相互関係があります。

 また商業者自身がまちのなかで例えばゴミを減らしてきれいなまちをつくろうという取組みをすることでまちがどんどんきれいになって,市民の皆さんも協力をしてまちが非常にいい感じになっていくというような,商業者自らがまちづくり,地域をいい方向へもっていく上で果たせる役割もあります。そういった視点から,「歩いて,買って,食べて,遊んで,安心して楽しめる」美しい京都の商業空間をつくっていくことが商業者の利益にとっても大事であるし,商業者自身の課題でもあるということなります。

 最後に第4の視点は,以上のようなことをいいましても別に京都市がディベロッパーになって開発をして何とかというようなトップダウン、あるいは強権的な都市政策をするというような状況ではございません。基本的に商業の分野は現在の先進国においては民間の事業です。そういうことで足りない部分を公共的にどうサポートするかということですので,厳しい競争のなかで互いの店が競い合う,商業者が元気に頑張る。そのためには商業者自身の共同,商業者自身のネットワークといったようなことが広がっていくことで,民間の活力,商業者の活躍が広がるのだというのが四つ目の考え方です。

 これらが京都市商業の四つのあるべき姿ということで提示しています。

当日の写真です

そのうえで商業振興の考え方について,これは結構それ以前の考え方と比べると大きく踏み込んで転換したものもございますが,今日は時間の関係上,説明は省かせていただきます。五つの点で,従来の商業振興から踏み込んで新しい振興の考え方を示していこうということを打ち出していますし、これを受けて11の重点戦略ということを挙げています。京都市の商業振興施策、京都市商業ビジョン推進委員会は、この戦略に基づいて毎年,京都市の商業振興施策が具体化され,フィードバックして修正され,というかたちで進められています。

 中間的なまとめを次にご紹介したいと思います。まず商業をとりまく背景として都市計画的にいいますと,国が大きな制度の見直しをしています。まちづくり三法というのを見直して大型店舗の規制のあり方を変えたのです。地方都市の中心市街地はとくに疲弊していますので,やはり地方都市の顔ですからなんとかしようということになりましたがうまくいっていないのです。うまくいっていないのは古いまちづくり三法が郊外で大型店が展開することの歯止めにほとんどなっていない。どんどん郊外や農村地域に大型商業集積,集客施設ができてしまって,それに加えて病院やいろいろな公共的なサービスまで外に出ている。そういうことで中心地に人が来ないのは当たり前ではないかという状況になっています。そこにメスを入れないといけないという大きな方向転換が行われました。

 京都市は自らまちづくり三法を受けてかなり計画的な商業集積のガイドプランをつくりましたので,その後の大型店の展開でもこの京都市の商業集積の方向性に沿った形での展開になっています。これは全国的にも高く評価されています。

 ガイドプランは,今回のまちづくり三法の都市計画法改正の関係で若干の修正をしております。広域型商業集積ゾーン,地域型商業集積ゾーン,近隣型商業集積ゾーン,特化型商業集積ゾーン,というようにいろいろな商業集積ゾーンをつくりまして,それぞれの大型店の規制や商業の誘導という方向性を示して進めております。加えて昨年,デザインのところとかばたばたしておりますけれども,新しい景観政策が導入されてこのことも商業の展開には影響を与えています。魅力ある京都のまちをつくっていこうということとも関わって進んでいる変化でございます。

 次に地域商業ビジョンをつくったということが大きな目玉です。これまでの商業振興というのは商店街というものを単位に考えてきました。もちろん、引き続き今日でも商業者が共同して商店街というものをつくって,その商店会という組織,団体が主体的にまちに関わっていく,主体的に自らの影響の拡大のために努力していくということが基本的な枠組です。しかし、商店街が組織されていないエリア,あるいは商店街が遠く分かれている,また近隣でも商店街の組織が違うということで別になっているところがあるのです。消費者はそこを同じように歩いたり,あるいは車で移動しながら使い分けをしたり,両方を使ったりするわけですので,地域単位で商業の振興を推進していくべきだということで,山科地域でここ3年ぐらい地域商業ビジョンづくりに取組み,昨年3月に策定されました。これまでは山科ウォーキングラリーなど実験的な事業を展開してきましたが,今後はビジョンに基づいた取組みをさらに進めていきます。

 現在は第二弾ということで,嵯峨嵐山地域で地域商業ビジョンをつくる体制を2008年度中には準備をしながら地域商業ビジョンの策定にかかられています。地域商業ビジョンは,地域の商業者や,関心のある事業者の皆さんが共同でその地域の課題を解決し,地域商業をパワーアップするためにどうすればいいかを一緒に考えていこうという組み立て方です。

 次に都心商業。都心商業については,一つは歩いて楽しいまちなか戦略,これは後ほど説明します。それから京都商店連盟の中京東支部でこれまで自ら勉強会を開いて提言を出すなど,積極的に都心商業の活性化のために何が大事なのかということを検討しています。さらに個別に見ても京都市都心部(まちなか)グリーン配送や,京・輝き隊や,防犯カメラの設置などについて,この都心部の商店街が積極的に関わって取組みを進めているという状況です。

 歩いて楽しいまちなか戦略ですけれども,詳細はこれもまた京都市のホームページをご覧いただけばダウンロードできますのでご関心のある方は見ていただいたらと思います。一つは安心,安全ということもあるのですが,同時にやはり京都というまちが楽しいまちになるということと歩けるということがセットだということが一つのポイントだと思っています。昨年の秋に交通社会実験をしました。四条通と,細街路と二つの取組みをしています。中身ですけれどもこの細い路地のところはこのように不法駐輪がなくなり,車の交通も規制されましたので本当にゆったりと楽しく,歩ける空間が実現できましたし,四条通についても歩道を拡幅してバス,タクシーだけを通すという形にしたところ,非常にゆったりと楽しめる空間ができたという変化が実感できました。

 その代わり,実験開始直後は渋滞が発生したり,実験地域の周辺道路ではやはり渋滞が発生しているのでこのあたりの調整は必要です。さらに商業者の皆さんにとってはそうはいっても商品はくるし,トラックはどうするのかという話になりますので,共同荷受け集積場をつくってその利用も増えましたけれども,なかなかばたばたして大変だったというご意見もあるようです。しかしトータルとしてはこの都心部を楽しんでおられる皆さんにとっては基本的にOKだ,望ましいというのが全体の9割近くになります。住民になると6割ぐらいですし,事業者の皆さんですと5割ぐらいということで,まだまだこの方向で車の規制を広げていくことで都心部の商業,都心部の魅力をパワーアップしようということについては大きな方向では成果は出ていると思いますけれども,もう少しいろいろ個別の問題を詰めていく必要もありますし,合意形成も丁寧にやっていかないと大変だというような結果になっているということです。

当日の写真です

 次に,京都の特色を生かした創造的な商業ということでは,さまざまな商店街が観光,大学,国際交流などの事業に取り組んでいます。また京都市もセブンイレブン,スターバックス等の協力で「京都まちなか観光案内所」といったような取組みをしています。さらに新たな商業者の育成ということで,今日も曽和様のお話のなかに出てくると思いますけれども,商業ベンチャーを応援する取組みである商い創出事業(VIS:Venture Incubation Shop)の実施。商店街元気店舗創出事業,これは空き店舗がある商店街に選択的に店舗を誘致して活性化につなげようということを応援する事業ですがそのような取組みがされています。

 実はまだまだこれが弱いのです。もっともっと,魅力あるお店,魅力ある商業者がたくさん切磋琢磨する中で魅力のある商業集積,商業空間が生まれるわけですから,なんといっても個店が元気になるためにどう応援するのかということが,行政としてはなかなか難しい面があるのですけれどもそこが課題だと見ております。

 最後に商業者ネットワークということで,日経情報化大賞とかいろいろな賞を取って評価されるようになっています,きょうと情報カードシステム(KICS)です。これは商店街の組合や業種組合等によって構成される組織で,クレジットカードとかデビットカードの一括処理、共同利用するという情報システムから始まりました。近年は合同会社(LLC)という法人化を実現しましたし、「電車deエコ」(レール&ショッピング in京都)事業を展開して,今年以降も継続的に展開する予定です。このレール&ショッピングというのは面白い企画で,SMART ICOCAとかPiTaPaとかで電車に乗ってお出かけをして,KICSの加盟店で買い物をするとKICSのエコポイントで運賃相当分が返ってくるというものです。具体的には1店舗で買えば半分返ってくる,2店舗で使ったら全額返ってくる。ですから,公共交通機関を利用してKICSでお買物しましょうというもので,京都の商業者のイニシアティブで市民のエコ意識を高めようというものです。

 こういう組み立て方でJR西日本様,阪急電鉄様,京阪電鉄様,京都市営地下鉄様,こういった公共交通とコラボレーションをしています。国がこの仕組みを評価して応援してくれることになり、このような画期的な事業が実現されました。

 以上が中間のまとめです。最後に表をご覧下さい。市民に対して,京都市民が市内の買い物環境に満足しているかというものを毎年調査しています。トータルで見ていくと全体としてはいい感じなのかな,満足している人が増えているのかなということです。なかなかこういうものは年々のサンプルの違いその他で,しかも京都市というのは非常に広いエリアですから,その人の住んでいる場所とか活動エリアによって商業環境の評価も大きく変わります。もっと地域を切らないとシビアに見ることはできませんけれども,トータルで見る限りは大きく変化はしていません。

 していませんが概していい方向に頑張っているのだろうなと思います。どんどん「市内の買い物はあかん」という声が増えているという赤信号は出ていなくて,どちらかというと緑信号で頑張っているなという評価だろうと思います。引き続き課題は課題として認識しながら,今後とも皆さん方と一緒に京都の商業の活性化のために頑張っていきたいと思っています。以上がイントロダクションでございました。ご清聴ありがとうございました。

 

 

宗田好史(京都府立大学准教授)

宗田教授の画像です

【講師略歴】
 イタリア ピサ大学・ローマ大学大学院にて都市・地域計画学専攻。歴史的都市保存計画,景観計画,都市商業政策の研究が専門。工学博士(京都大学)

「都心の店舗・顧客の移り変わり」 

 20分しかお時間をいただいておりませんので,早速始めさせていただきます。今日のタイトルに「お店咲く咲く京のまち」とありますが,実はお店は減っています。まずこれが全国の卸売業グラフです。見ていただくとわかりますが,1991年,バブルの崩壊を境に従業者数,事業所数,それから年間商品販売額,全部下がっています。つまり卸売というものは今消えていく一方です。流通革命が起きたです。

 次が全国の小売業です。これはちょっとずれていますが,事業所(店舗)数が1982年から減少,次に年間販売額も減少,さらに従業者数も減り,唯一伸びているのが売り場面積です。小売業というのは日々大型化しているけれどもお店は散っていく一方です。

 これが京都の商業統計ですが,いちばん上の中京区が1972年,地下道ができた頃,あるいは四条広場をやった大昔ですが,ここをピークとしてずっと減ってきています。全11行政区,どこでもお店が減少しています。もう減っているどころの騒ぎではない。

 今2007年に新景観政策,それから交通社会実験が行われましたが,これだけの店が減ったことには理由があります,国民生活金融公庫から新規貸付を含む,各種融資を受けた方が毎年決算書を出します。それを公庫がまとめ業種ごと,都市規模別といろいろな統計を取ります。そこから小企業の経営指標という資料を出しています。全部で32の経営指標があるのですが,左側が総資本経常利益率(ROA:総資産に対する利益率),右側が売上高総利益率(gm:売上高に対する利益率)見ます。1980年代はサービス業も小売業も利益率の差はさほど大きなないのです。バブルが崩壊する頃から小売業が落ち,さらに2000年代になってくると飲食や美容などサービスが伸びるという傾向が分ります。つまり,流通革命後,小売業は衰退産業になったのです。

 実際,この小売業が減る,サービス業が伸びるという状況を京都の都心ではどんな現象になって表れているか。平成4年から10年と,平成10年と14年の2つの期間に,それぞれお店の数が増えたか,減ったか。どんな業種,業態,あるいは立地動向がどう変わったかということをお見せします。調べたのは丸太町,河原町,五条,堀川の間の四角形のなかです。まず三つにします。丸太町通・御池・四条,この右側のグラフを見ていただくとわかりますが,オレンジはお店が増えた数です。青はお店が減った数です。黄色がそれを差し引いた数,増減でそう店舗数の増減が分かります。

 多いのは2番,当然都心ですが増加は激しいけれども減少も激しくてその総数が増えている。つまりお店が新陳代謝をする。入替わりが激しいところの方が店の数が増えるという大原則があります。これが平成4~10年の立地動向です。これは地図になっています。見ていただくとわかりますが,平成4~10年でなんといっても四条河原町のところが新規出店が多いところです。平成10~15年になると,この5年間でずっとお店の出る場所が西の方にきているのがわかります。これは皆さんも実感としておわかりになっていると思いますが,四条烏丸に向けて,あるいは三条烏丸に向けて都心の新規出店がずっと伸びてきているということです。

 それはなぜか。飲食店です。飲食店の出方は四条河原町中心ではなくてずっとこちら,西にくる。ですから例えば『Leaf』が「四条烏丸特集」という特集号を組んでこのへんに新しく出たお店を紹介しますが,烏丸通というのは飲食店街なってきました。それは,そもそも,日本人が消費行動を変えたからです。衣食住に関しても服にはあまりお金を使わなくなった。家具も買わない。さらに生鮮食品を買わない。他に何を買うかというと加工食品,そして外食です。そのようにこれは95年ですが2005年になると,今度はまた対照的にググッと伸びています。ですからうちのカミさんが家で料理をしない分,街にレストランが増えるという,そういうきれいなというか,当り前の相関関係になっているのです。

 それに併せてサービス業です。サービス業がどんどん西の方に行って,こちらが増加したサービスの業種です。4~10年,10~15年の2期間にわたって増加の1番,減少の2番は美容院です。美容院はいかに新陳代謝が早い業種かということがわかります。その美容院の増加がちょっと止まったと思うと今度はエステが出てきます。私は美容院もエステも一度も行ったことがないのでどういう業種かわからないのですが,ともかく数のうえでは相当できています。増加が止まって減少が起きたのはマージャン・カラオケ・パチンコです。まちに女性向きのサービス業種が増え,かつマージャン・カラオケ・パチンコという男性が遊ぶ場所が減る。美容院が増える。これはまちの「女性化」というのですが,このことが経営指標にも表れていますが,同時にまちのなかにもはっきり表れています。このメカニズムをつかまない限り,都心の再生,活性化というのはありません。

 これは参考にお見せしますが,1世帯当たり年平均1カ月の消費区分別支出です。一番下から耐久財,半耐久財,非耐久財,サービス。サービスはどんどん増える一方です。お配りした資料のなかになぜサービスが伸びるかということを詳しく書いてありますがだいたい四つの方向(1.情報・通信,2.文化・芸術,3.福祉・健康・美容,4.観光・レジャー)で伸びます。比率で見せていますが,88年を100とした場合にサービスは1.4倍,1.5倍,それに比べて半耐久財,被服などは減っている。耐久財が家電製品です。みんな伸びていますがサービスは特に伸びるわけです。この「サービス化」,消費行動が変わった,消費者のニーズの変化に対応しない従来の商店街はどうしても衰退します。しかしニーズに対応した新しい経営者はまず商店街に入ろうとしますが,テナント料が高い。あるいはいろいろ条件の厳しいことをいいますから,先ほど見ていただいたように商店街振興組合が形成されていない,テナント料も安い都心部の細街路に入ります。

 まず飲食が入ります。その次にサービス業,その他の小売業が追いかけて,ここまでくるとにぎわいのあるまちになります。そこを狙うようにして出てくるのはコンビニとファッションです。実際に今見ていただいた都心部でその他の小売業は西へきています。さらにファッション,これはだんだん寺町,御幸町,麩屋町,富小路と,三条通を中心に西の方へ,まもなく烏丸通に達しようという勢いです。

 ここからまた全国に戻ります。全国の主要都市を都市計画では,統計単位のメッシュデータ(この場合,100m四方の枡目で市街地を区切り,その中の店舗数などを数えた)で数えるのですが,桝目ごとに飲食店が増えた場所,それから店舗の総数が増えた場所と蚊数えていきますと,飲食店が増えている地区では総店舗数が増加する。つまりお店を増やしたい,お店を咲かせたいのなら飲食店が要る。その次にサービス業が増えると店舗が増える。これもきれいな相関関係になっています。サービス業が増加する都市ほど店舗総数が増える。これは間違いない。さらに飲食店が増えるとサービス業種が多様化して,ファッションにいきますが,その前に学習支援業とか理容・美容業が増えることもわかります。。

当日の写真です

 京都でも今いったようにまず飲食がリードし,サービスが追いかけ,ファッションという順番で都心が変化してきたのですが,それがうまくいった最大の理由はこれです。いわゆる四条烏丸というのは金融証券街でした。その金融オフィス街が金融機関の統廃合,いわゆる金融ビックバンでどんどん統合されていって空きテナントが増加しました。みんなあれが失われた。これはあとでお話が出ますが大丸心斎橋店の周辺,御堂筋界隈は一時期,95年とか96年は御堂筋が寂れるということがまじめに朝日新聞の一面に載りました。ところが実は寂れるどころか,ビルが新規出店の温床になった。ビルのコンバージョンが進んだ。それで今でも京都のまちなかだと新風館などは進んでいますが,ですから空きテナントが商業地化して新たなにぎわいが生まれました。そのことを今お見せします。

 いわゆるオフィルビルのなかで何が起こったか。例えば飲食店が入っているビルがどこにあるのか。これは1977年ですから今から30年も前です。これを見ていただくとわかりますが当時は木屋町に飲食店が集中しています。これが86年,西側での出店がじょじょに見られるようになっていき,これが95年,2006年でここまできました。飲食店はだいたい1階がほとんどなのですが,1階以外の出店でも5割を占めています。お店が路面だけというのはとんでもない誤解でして,2006年を見ると1階以外のところに飲食店が入っているところがこれだけあります。

 もう一つ,増えたのは皆さんご存じの教育・学習です。塾,あるいはパソコン教室です。これももともとビルの上の方で営業していました。これが1977年の四条烏丸,これが86年,95年,2006年でこれだけ増えました。ですから夜の8時や9時に小学生の子どもやそのお母さん,お父さんが都心に来ているのです。いつの間にか小学生がたくさんいるようになった。いわゆる塾通いしているわけです。四条烏丸中心に学習塾が増えた。語学教室は30歳前後の男女が英語を習いにといいますか,ほとんど彼氏・彼女を探しに来ているのかもしれませんが,これは英語教室,パソコン教室などが終わると友だちと一緒にお食事に行くというパターンです。パソコン教室は烏丸通沿いが多いのですけれども。

次が医療と福祉です。これは1階と3階が多いのですが,結構上の階にもある。医療というのはいわゆるクリニックとかです。1977年にもところどころにありました。86年,95年,これだけ増えました。長寿社会といいますか,仕事に疲れた人たちも行くのかもしれません。そして美容院があります。美容院はなぜか2階が多いのです。これは京都だけの特徴ではなく,95年以降の美容院の出店は1階ではなく2階です。美容院は郊外型と都心型と分かれますけれども都心型美容院は2階が多いのです。1977年はまだまったく姿がありません。86年はちょっと増えてきました。95年,2006年はこれだけできています。

 なぜかといいますと,男女雇用機会均等法を覚えていますか。1987年,今から20年前の施行です。ですから四条烏丸の交差点からコンパスでグルッと1キロの円を描くとその内,働いている女性の数が20年前から今日まで圧倒的に増えたのです。とくにこの周辺にある第3次産業,銀行・金融は少し減りましたが,オフィスはいわゆる女性総合職と呼ばれるキャリアの皆さん方が働き出した。この方たちは所得が高いのです。

 さらに今日はお見せしませんがこの界隈はマンションがずいぶん増えました。これは別の研究でやったのですが誰が住むのか。1,000万円以上の所得のある世帯の割合がいちばん高いのはいまだに左京区です。ついこの間まで2番目は西京区だったのですが,今中京区が2番に踊り出ました。間もなく左京区を上回ります。なぜか。それは,働く女性が多いのです。フルタイム(専業)で働いている女性の率がいちばん多いのが中京区です。共働き夫婦2人で年収が高い方がここに住むのです。ですから働く女性の,マンションに住む女性向けのショップがだんだん増えたということです。

 それはそうでしょう。レストランに行くとよく分かります。女性の高額所得の方はわれわれ男性のようにカミさんに取られないのです。ご自分の美容院の費用も惜しまない。お食事をするのも私の稼いだお金は私の好きに使うという開かれた発想です。なかなかわれわれ男性には真似のできないことです(笑)。

 エステは結構上の階にあります。これが95年,2006年,これだけ増えました。エステはここまできています。いわゆる四条通,錦小路通にずいぶん増えまして,いかに増加しているかということがわかります。それを追いかけるようにファッション,衣料は1階に多いのです。2,3階もある。ファッションの店も今これだけ出てくるようになりました。

 ビル街とオフィス街のテナントが,この新世代のサービス業に変わってきているのです。今ここで業種,業態が大きく変わろうとしています。これを新たなムーブメントとして京の新しいお店が咲く咲くという今日のテーマになるのです。

当日の写真

 最後に申しあげたいのが新世代ビジネス,元気な小企業の皆さんです。国民生活金融公庫の小企業の経営指標ですが,93年,94年ぐらいに大きな変化期を迎えます。この下の青い線は全体平均です。これは総資本経常利益率(ROA)を取っていますが,大部分の小売業はバブル以降ずっと落ちていってマイナスになっているのですが,このうち自己資本を増資している会社の成績が突出します。境は1993年です。何が起こったかといいますと92~95年の間に安い輸入品,とくに中国製品が組織的に流入されてくる。さらに流通革命(サプライ・チェーン・マネージメント)がどんどん浸透していって流通大手の中でも淘汰が起こった。ダイエー,イオン,ヨーカ堂,ヤオハンと,デパート以外にも大丸さんの競争相手はたくさんいたけれども,今ではかなり減りました。

 さらに大手小売チェーンがプライベートブランドを展開します。マス・カスタマイゼーションという言い方をしますが,それがどんどん進化していきます。何がいいたいかといますと普通の小売には勝ち目がないのです。ですから価格破壊の結果,小売業全般に大打撃が起こって多くの小企業,多くの小売業が淘汰されました。

しかし,わずかに健全企業が残った。これを私たちは新世代ビジネスと呼んでいます。このビジネスモデルをチェーン化し,新規性,独立性をもった業種として発展させるのが一つの方向です。マス・カスタマイゼーションに対してフル・カスタマイゼーションという言い方をしますが,そういう特化性をもちつつも,小さいままの勝ち残る小企業がもう一つ。どちらかが生き残る道なのです。その特徴は何か。総資本経常利益率が50%以上とか売上高総利益率の値が共に高い。数少ない小売業なかでは,花,中古品,印判,ペットが生き残ります。ROA,gmが高い。仕入値を安くできる業種なのでしょう。

 製造小売は少し有利です。まず菓子製造業,パン,健康食,惣菜,弁当仕出屋。何がいいたいかといいますと「仕入れって何」という世界です。つまりただ単純に仕入れて並べるという売り方ではない。飲食業でも儲かり,これがそうです。右の方に書いてあるのは最低開業資金がどれぐらいかというものです。意外に小さいものがあります。喫茶店とかカレー料理というのはわりと少ない資金で始まる。それからサービス業,美容,エステ。エステなどは400万ぐらいから始める人たちでもROAが5.8%とかgmが81.1%と,かなりいい成績をあげます。

 今の若者は,サラリーマンになりたいばかりではない。自分の好きなものを探し,自分らしさを追及する。それを仕事にしたいということを強く思うようになっています。その勢い余って創業,自己資金と国民生活金融公庫の新規開業資金を借りている。これが一般的には美容業とか飲食店を開くようなことになりますが,ちょっと新しい工夫をするとネイルサロン,ペットホテルとかいろいろあります。

 この若者たちはしっかりとした専門知識,確かな技術を身に付けています。そして,素晴らしいのは付加価値の高い商品・サービスを提供している。もちろん全部ではありません。そういう人たちが確実にお客様の需用を捉えてその周辺部の収益性,そして雇用も発生するというように,実はこの新しく咲き出した新世代ビジネスの連中が今京都の都心でお客さんを次々と集めているわけです。それを使って都市商業を活性化しようということで,新ビジネスの創出事業として京都市も若林先生がご説明になったようなチャレンジショップ,創業支援をしていますし,その効果的な利用法,まち全体の活性化につないでいけばいいかという策が,これから地域の商業ビジョンが策定されていくべきなのです。

 この彼らの活発な活動が地域商業に結びつくためにはどうしたらいいかということを,よく考えていただきたいのです。これは実はリチャード・フロリダという人が,京都のような歴史があり,よそ者や新しいアイデアに寛容な都市ではこういう新世代ビジネスがどんどん出てくるといっています。それから日本の経営学者もアメリカ村などの事例を引き合いに出しながら,新しくつくられた,従来の商業地域から少し離れたところに集まるといっています。私も中心市街地について,こういう本(『中心市街地の創造力-暮らしの変化を捉えた再生への道』外部サイトへリンクします)を書きまして,そのなかでもいっていることです。どこで出るか。そういう人たちとは違うことが好きですから,都心でもないでしょう。今示した総資本経常利益率と売上高総利益率の高い業種を選び出して,その業種がどこに出店したかを517件まで調べました。美容業がもっとも多くて171件,次にカフェが多いとかだいたいこういうのをずらっと出します。それはどこに出てきたのか。

 新世代ビジネスの事例を示します。私はあまり美容には用がないのですが,たまたまイヌ(パピヨン)を飼っているものですからトリマー(犬の美容師)さんに連れて行くのですが,イヌにアロマテラピーをするのです。私もしたことがないのですけれども。その飼い主というのは私のカミさんですけれども,足のマッサージをしてもらっているのです。イヌだけで4,000円なのです。実は,私の床屋代も4,000円なのです(笑)。私は6週間か7週間経つと床屋に自転車で行くのです。イヌは車に乗って2週間に1回行っているのです。アロマテラピーまでしている。仕方がないですね。こういう新世代ビジネスが伸びると男性は衰退していくといいますか(笑)。

 そういう人たちがいつ頃創業したかというと新しいのです。2003年以降です。もともと何をしていたかというとフリーターが73%です。男性もいますが女性の創業者が非常に多いことと,若いこと。美容業がとくに特徴がありますが,都心のちょっと上の方,下鴨とか西の方でもできる。カフェは河原町の今出川の界隈。それから居酒屋は都心が多いのですが,大宮界隈とか西の外れたところ。それからペット関係は都心もありますが下鴨もありますし,第一種低層住居専用地域,いわゆるお金持ちが住んでいる住宅地にペット業等が出てくる。花屋さんもそうです。そういうところにいいお客さんがいるわけです。

 その方たちは大きなものを買われるときは当然大丸さんとか,その先の大阪や神戸に買い物に行くかもしれないけれども,サービス業に関してはまだまだ十分零細事業者,それも若手の零細事業者のお得意様である。その方たちはちゃんと消費をしてくれる。イタリア料理店などは西ノ京界隈に伸びているのですが,これはマンションの増加と比例します。地下鉄東西線の延伸に伴ってこの界隈にマンションが建った。そこに住んでいる人たちがターゲットです。割合と高額所得者です。その方たちはもちろん和食にも行くでしょうがイタリアンが好きなのです。都心でテナント料が高くてお店が出ないという人がどんどん移って来ているのです。こういう方たちが次に京都のまちのどのへんに出てくるか。

 このフリーターや会社員,主婦や学生が新しいビジネスを始めるというムーブメントが今起こっています。彼らは上手に立地環境を読むし,さらに商品,サービスをいかにうまく見せるかという,小さな努力ではありますが,確実に店の外観,内装をつくって,それなりのブランドをつくっています。ここから商業者が望む新しい景観政策が生まれます。

 そのことをどう行政が支援できるか。今地域の商業者の皆さん方,振興組合の皆さん方がこの方たちの活力を地域の活性化にどうつなげるかということです。

 これはブランドをつくる仕組みと書きましたが,企業の領域,個々の事業者さんの領域,そして行政の公共の領域とあります。京都市は景観政策等を使って都市の魅力をつくるということに取り組みました。大丸さんのような大手企業はその大きな特色のブランド,コンセプトでうまく出していく。個々の事業者さん,とくに若い方が独自の取組みで新世代ビジネスを始めようとしているということを今申しあげたわけです。この三者が一体となって都市ブランド京都のコンセプトをどうつくっていくのか。できればそれをうまくつないでいくことでマーケティング,あるいは技術,ものづくり。それから見せ方。そういうものをうまくコーディネートしていくということが,これからまちのムーブメントを大きく取りまとめていくということになるだろうと思っています。すみません。長くなりましたが終わります。

 

 

内田隆(株式会社大丸 執行役員京都店長)

株式会社大丸執行役員京都店長 内田隆氏の写真です

【講師略歴】
昭和50年株式会社大丸入社。心斎橋店において主に営業を担当し,御堂筋で地元商店街や行政と協力したイベントを開催。平成16年から営業統括店次長として心斎橋周辺の路面店展開を手掛け,現在は24店舗に至る。平成19年から現職。

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「大丸京都店の戦略~路面店の拡大~」

 ただいまご紹介ただきました大丸京都店の内田でございます。今日,私をサポートしてくれます営業企画の岡原です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず,平素は本当にご愛顧賜わりまして誠にありがとうございます。高いところから非常に恐縮でございますがお礼を申しあげたいと思います。今日は私どもの周辺店舗開発について,私は話の専門家ではございませんのでどこまでお話ができるかわかりませんが,われわれの取組みについて少しお話を申しあげたいと思います。お手元の資料を見ていただきながらお話を進めたいと思います。

 まず今日は時間もあまりございませんので,六つの視点で私どもの周辺店舗開発についてお話を申しあげたいと思います。一つは外部環境の変化です。二つ目には想定される機会と脅威ということで,プラスの外部環境とマイナスの外部環境。三つ目は周辺店舗開発の目的です。何のために周辺開発をするのかということでございます。四つ目は大丸近隣商業施設,皆さんご存じのとおりでございますが,とくに今詳しく宗田先生からお話があったとおりいろいろな施設が出ております。それと私どもの周辺店舗の出店状況について,改めて見ていただきたいと思っています。

 五つ目が周辺店舗戦略の考え方ということで,私どもが思っております重点対象顧客,あるいは展開の考え方について少しふれてみたいと思います。そして六つ目には開発エリアの考え方でございます。最後に,今後私どもが感じております課題について少しふれさせていただいて,今日のお話を終えたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず外部環境の変化ということで京都における主な商業集積地区でございます。これは今お話のあったとおりで皆様ご存じのとおりでございますが,四条烏丸地区,四条河原町地区,京都駅周辺,この三つぐらいが商業集積としては大別されるのではないかと思っています。そのなかで外部環境の変化ということでまず京都駅周辺ですが,皆さんご存じのとおり,昨年8月にビックカメラがJR京都駅に出店をされました。また今年の3月にはご存じのとおり八条口に,京都駅南の再開発ということで新しい商業施設が出てまいります。あるいは近鉄さんのあとには,これは建替え後になりますけれどもヨドバシカメラさんが出店を予定されているということで,今後再開発が進んでファッション性,あるいはエンターテインメント性の高い商業集積によりまして,20歳代,30歳代の集客力が一気に高まるのではないかといわれています。

 それから四条河原町地区ですが,これは歓楽街化傾向が少し見られますけれども依然として京都のなかではトータルな魅力で京都一の繁華街です。高島屋さん,阪急さん,OPAさん,藤井大丸さんの集積によりまして年齢やグレード,テイスト,各要素において多様な集積の魅力をもつ地域です。そして3番目が四条烏丸地区ということで,私どもが位置します場所でございますが,宗田先生からお話があったとおりで銀行,証券の店舗の統廃合を受けまして再開発のなかで洗練されたおしゃれな大人のまちへと変身しつつあるのではないかと思っています。先ほど飲食店が多くなった,ファッション店も多くなったという話がございましたが,たしかに今そういう傾向にございます。さっとこのぐらい大きな三つの流れがあるのかなと思っています。

当日の写真です

 そして想定される機会と脅威ということで,プラスの外部環境でいきますと私が思っていますのは四条烏丸地区の洗練された大人のまちに向けた再開発に参画をすれば,先ほどいました他地区,河原町ですとか京都駅周辺とは差別化された新たな魅力によって地区間競争に勝てるといいますか,優位に立てるのではないかと思っています。ただ,逆にマイナスということからしますと,こういった周辺店舗の開発といいますか,良質な商業環境の維持,育成に努めていかなければ,逆に四条烏丸地区は荒廃を招いて,大丸京都店を取り巻く環境もさらに劣化するのではないかという危機感をもっているところでございます。

 そういうなかで今進めております周辺店舗開発をなぜするかということですが,大きく三つぐらいを考えております。一つは面としてのまちの魅力化の積極的な推進によって,洗練された大人のまちとして,四条烏丸地区の商業集積としてのプレゼンスを高めたいということが1番です。

 2番目には,良質な商業環境の維持,育成に取り組んで,大丸京都店を取り巻く環境の劣化を阻止したいという思いがございます。これが二点目です。3番目は,周辺店舗において店内とは違った新たな顧客を獲得するのだという思いがございます。要は烏丸地区を面として魅力化することによって,洗練された大人の方々に烏丸地区にお越しいただきたいということでございます。

 次に現在の大丸近隣の商業施設と,周辺店舗の出店状況について改めて申しあげたいと思います。いろいろございますけれども主なものということで,まず16年12月に,烏丸四条を下がったところにございますがインテリアショップ,アートショップ,ギャラリー,シネマ,カフェダイニング等々ございます,COCON KARASUMAがオープンされました。それから蛸薬師の手前ですが昨年19年4月にカフェダイニング,ボディスタジオを併設されたFlowing KARASUMAがオープンいたしました。それまでにも17年7月に四条通に大人向けのセットショップとしてトゥモローランドがオープン,あるいはJEUGIAさんが改装オープンされています。

 それ以外にも今お話があったとおりで,いろいろな飲食店,おしゃれなレストランもたくさんできましたし,あるいはファッション専門店もたくさんございます。そういうまちになってきました。

 次のこのなかで大丸の周辺店舗として,今大丸がどういう店を出しているのかということで少しご紹介申しあげたいと思います。

 まず京都店の向かい,京都恒和ビルの1階に16年12月にルイ・ヴィトンストアをオープンいたしました。その後,17年11月に大丸の東洞院入口の向かいにA.P.C.というショップをオープンしました。そして去年2月に,ちょうど1年になりますけれども日本生命の四条ビルの1階と2階,大丸の横になりますが1階にはエンポリオアルマーニ,ディースクエアードというショップをオープンしました。それから2階には大丸リラクシングガーデン京都ということで,女性専用フロアですけれどもご存じの方も,ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが,タアコバ,リヴォーン,スタイルスパ ガウシェル,ニューヨークヨガ,来月からはアナスタシア,それから睫のケセランパサラン,こういったものもオープンいたします。これは女性専用フロアで非常に喜ばれていますけれどもそういうショップをもっています。

 それから昨年10月,いちばん新しいショップとして京都のダイヤビル,四条通と烏丸通の交差点のところですがボッテガ・ヴェネタ,ジョゼフ ザ ストアをオープンしました。今4カ所で10ブランドが周辺に出ているという状況です。

当日の写真です

 次に周辺店舗戦略の考え方について少しお話を申しあげたいと思います。まず重点対象顧客とあります。私どもが思っていますのは京都市および郊外の生活者,四条烏丸で働く人のなかで,「毎日の生活を楽しみたい」「生活の質を高めたい」と考える生活向上意欲の高い大人の方を重点対象顧客に据えました。展開の考え方につきましては,大丸京都店・周辺店舗が連動したまちの魅力化の推進を図るということで,一つは大丸京都店との相乗効果を図ることができる業態・ショップの導入を図ろうではないかという思いがございます。二つ目には,店内では展開が困難なMD(商品),例えば売場スペースがなかなか入らないとか条件が折り合わない。こういったところのMDを周辺で補うという思いでございます。三点目は,近い将来,新たな需要の掘り起こしが期待できる業態やショップの導入を図ろうという思い。

 こういう三つの展開の考え方に沿って出店をしてまいった。これからもそういう思いをもっております。

 今後の開発エリアを大丸はどう考えているのかということで,現在のところ,私は大きく三つのエリアを基本的に考えております。まず一つは四条通エリアです。これは四条通の烏丸から柳馬場までと今のところは思っておりまして,大丸京都店との連動性がいちばん図れるエリアです。とくに特選ブティックなど,本館と連動した提案性,情報発信性を重視したショップの誘致を行って,トレンド性,グレード感のあるファッションエリア構築をこの地域で目指したいという思いでございます。

 それから二つ目が東洞院エリアです。これは東洞院の錦の交差点周辺ということで,烏丸錦から高倉錦まで,東洞院四条から蛸薬師までのエリアを考えております。大丸京都店,とくに西館と北館との連動性を図っていきたいと思っています。ご存じのとおり,まち歩きの楽しみを創出するカジュアルな裏通りの構築を図りたいと思っています。

 それから三点目は烏丸通エリアです。今も宗田先生からお話があったとおりですが,烏丸通の四条から蛸薬師の間を考えております。ここは,市街中央を南北に貫く目抜き通りで並木の景観が非常に美しい,ポテンシャルをもつエリアで未開発物件が非常に多い。それから今後もっとも環境変化が起こると認識しております。現在のところ,この三つのエリアを基本的に今後出店を進めていきたいという思いをもっております。

 ただ,今後の課題として大丸京都店が考えていることがございます。それを少しお話いたします。周辺店舗の出店に際しましては,当然企業ですから利益をやらないと中長期的には成り立たないわけですけれども,利益志向にのみ走るのではなく,展開する店舗やブランドはまちづくりにとってどのような役割を発揮できるのか。これをぜひ見極めたいと思っています。まちづくりに対する貢献度にも留意した展開内容を今後は考慮したい。このように強く思っています。ですからスクラップ・アンド・ビルドを頻繁に繰り返すというよりも,長期的な展開を視野に入れた計画を基本としたいと思っています。

 そういうまちづくりの考え方を皆さんに提案しながら,地域の方々との連携を図って,行き過ぎた賃借料の高騰等を抑制し,好ましくない業種を排除して,安全で秩序あるまちづくりを推進していくことが,大変大切だろうなと強くそのように思っております。それをベースに今後周辺開発をうまくいけばやっていきたいなという思いでございます。

 私はここへ来るまでは心斎橋店にずっと勤務をしておりまして,心斎橋の周辺店舗をやってまいりました。あるいは神戸の大丸はご存じのとおり,旧居留地という場所がございまして周辺店舗をしてまいりました。いろいろいいところ,悪いところがございますが,まちづくりといいますか,面としてお客様を呼ぶということは非常に大事なことだと痛感をしてまいりました。後ほどまた少しディスカッションのなかでもお話があるかもしれませんが,そんな思いで頑張っておりますので今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 

 

曽和裕次(コンセプトグラマー有限会社 代表取締役社長)

コンセプトグラマー有限会社社長 曽和裕次氏の写真です。

【講師略歴】
 デジタルハリウッド株式会社京都校統括責任社を経て,コンセプトグラマー有限会社を設立。企業やサービス,商品のブランド構築とそのプランニング・コンサルテーション,ウェブサイトの企画制作運営等を行う。主なクライアントは,晴明神社,京都国際会館,呉服販売店等。京都市商い創出事業VIS選考委員。

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「商店のキラメキが京都ブランドを強くする」

 こんにちは、コンセプトグラマーの曽和と申します。リレートークの最終バッターを務めさせて頂きます。どうぞよろしくお願い致します。私のトークでは個店・商店を中心に絞ったお話をしていきます。

タイトルにある「キラメキ」というのは、発信を意味します。星空の星で一番見つけやすいのは一等星。輝きが大きいものは見つけやすいものです。自ら輝き(キラメキ)を発信(PR)し、京都ブランドの一員となっていきましょう。というメッセージが本日のタイトルにあります。

 普段、私の仕事は、「宣伝」のお手伝いをしています。具体的には、ホームページの制作や広報(PR)計画をしたり、ブランドの構築からマネージメントまで。広報・PRを軸としたさまざまなサポート業務に従事しています。とくにインターネットを活用したプロモーションが得意です。

 今日は、世の中に広く報じることを意味する「広報」のお話をします。広報とは、より多くの人に(企業や商品、サービスを)知ってもらうための宣伝活動です。そして、それは「伝える作業」より「伝わる工夫」を前提とした活動でなくてはなりません。

 宣伝活動においてPR(ピーアール)という言葉が良く使われます。皆さんは、この言葉からどんな印象をお持ちでしょうか?PRといえば、「広告」と想像される方が多いと思いますが、それは間違いです。PRは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略で日本語では「広報」と訳されます。つまり「広告Advertising(アドバタイジング)」とはベツモノなのです。もう少し詳しく説明しますと企業(商品・サービス)を「宣伝する」という行為においては「広報」も「広告」も同じなのですが、その手法や効果、相手への伝わり方が大きく異なります。(プレゼン資料6P参照)

 ご存じの方もおられるかと思いますが、まずは、その違いからお話したいと思います。

 まず、「広告」とは何か。新聞や雑誌、或いは看板のなどの媒体(メディア)の広告枠を買って自社の商品なりサービスを宣伝するというものです。訴求力のあるマスメディアに大きく広告すれば一気に知れわたりますから非常に早い伝達が可能です。

 しかし、その広告スペースは、支払う金額(コスト)と比例します。つまり小額で広告した場合、宣伝できるスペースも小さくなります。限られた枠内で宣伝するとなると商品の性能や価格など、基本情報を書くのが精一杯。顧客が知りたい更に詳しい(+αな)情報は伝えることはできません。また、企業側からの一方的な情報掲示になりがちで「この商品を買って」といった少し押しの強い印象になる特徴があります。

 次に「広報」とは何か。費用は活動に関わる経費のみで、宣伝することが可能になります。「広告」に比べて低コストで行える特長があります。記事として掲載されるためには、プレスリリースを工夫したり、それに載せる情報を企画したりしなくてはなりません。また、ブログなどホームページで広報・PRする場合も制作費や運営していくのに費用はかかりますが、枠の制限にとらわれることがありません。言いたい事、書きたい事を宣伝することが可能です。つまりお客さまにとって有益な(+αな)情報を伝達することで「商品を買いたく思わせる」ことが可能になります。

 伝達の確実性やスピードという面では、広告は勝っています。お客さま視点で商品の情報を発信できる点では、広報が優勢だといえます。つまり、「広告」と「広報」はベツモノでそれぞれの特徴をもった宣伝方法であるということ、上手に使い分けることで更に効果的な結果が得られるのです。

 (情報収集をした上で商品を購入するという)近年の消費者動向を考えると広報活動がどれだけ大切かということがわかります。また、書店のビジネスコーナーでも「広報」という分類の書棚が登場していることから売り手側も非常に注目していることがうかがえます。 

 さて、ここにある新聞(曽和氏が新聞を取り出す)は、本日の京都新聞です。ご存じのように新聞にはたくさんのニュースや記事が書かれています。新聞記者が見つけてきたスクープや(広報活動の一環として行う)プレスリリースなどで得た情報を記事にして掲載されています。しかし、新聞の全てが記事で構成されている訳ではありません。例えば、この下にあるエリアは広告です。全面広告というページありますし、編集タイアップの記事風広告も存在します。新聞というメディアの中でも広告と記事が混在しているのです。

弊社では、平安の陰陽師・安倍晴明公をお祀りする晴明神社の広報活動のすべてを請け負っております。たまたま本日の朝刊で晴明神社が載っているのですが、これは広告ではなく記事です。晴明神社では、基本的に広告は出しません。いろいろな雑誌や新聞、テレビ等でも多く紹介されていますが、すべて広報の私たちがお手伝いさせて頂いている成果だと思います。(笑)
当日の写真です

 もうひとつ、すごくいい広報活動の成果として記事になった例をこの新聞から紹介しましょう。このページをご覧ください。『大津絵』というのがあるそうですね。あまり私も知識がないのですが、和柄といいますか和風な印象をうける絵です。この記事は、その絵を即席麺のパッケージに起用しドイツで販売したというもの。実は、食品メーカーの日清食品が出した商品でこれも、広告ではありません。まさしく記事です。(広告費に換算すると非常に高い)宣伝効果としてはかなり大きなものです。おそらく新聞社に届いたプレスリリースを記者が見て「これは面白い」と思い記事にした。そんなことが想像できます。日清食品は、「こんなことをやっています」という自分たちの活動をマスコミに対して一生懸命PRしているわけです。それがいわゆるプレスリリースというものです。

 このようなプレスリリースは、毎日たくさん新聞社をはじめマスコミ各社に送られてきます。大量に送られてきたプレスリリースは振り分けられ、魅力のないものはゴミ箱に直行したり、シュレッダーで切り刻まれる羽目になるのです。

 その中で勝ち抜いていくプレスリリースとは何か?つまりそれは、消費者にとってメリットがあることをふんだんに盛り込んだ情報であることがポイントの1つにあげられます。地元のメディアでエリアを限定したり、インターネットの無料サービスを使ったりしても掲載につながるチャンスは増えます。詳しくは、また聞いてください。

 キラメク(輝く)というのは、まず自分たちでマスコミ向けに見つけてもらいやすい(しいては、記事にしてもらいやすいように)しっかり発光(発信)していかないといけないのです。皆さんのなかでも凄い商品や技術をお持ちの方はおられるのではないでしょうか?まずは、それをしっかりとマスメディアに向けてリリースしてみましょう。

 次にその他の広報・PRの方法を紹介します。皆さんもご存知のホームページやブログを使って発信するという手法もあります。これは、プレスリリースとは違って確実にお客様に伝えることが可能になります。

 広告の場合、一気に広げることが可能だというお話をしましたが、インターネットで広報する場合は、同じようなチャンスもあります。ただ、広報は、即効性のあるものではなく、後でじわじわと効果がでてくる特徴があります。ですので、ある程度の時間は必要になりますが、じっくりとやっていくと必ず実を結びます。ブランドを短時間で確立させることは非常に困難な話と同じですね。そもそもブランドとはじっくりと時間をかけて育てていくものです。しかし、計画的なプロモーションを実践することによりブランド作りをスピードアップさせることも可能になります。

 仕掛けたもの(やったこと)をしっかりプレスリリースをする。掲載された場合はもちろんのこと、プレスリリースを発信したことも必ずホームページで紹介していきましょう。どんなきっかけで記事になるかわかりません。キラメキをどんどん発信していきましょう。

 ほかにもセミナーで仕掛けるPR、ケータイを使ったPR、キャラクターを起用したPR、今話題の検定試験などを使ったPRなどなど。様々なPRの方法を考えてください。そういう事例が私の書いたこの『イヤでも売れる露出力』にたくさん載っています。これは本当にお勧めです。良かったら買ってください。

 最近の消費者の動向というのは確実に変化しています。皆さんもよくご存じのとおり、どれだけ広告をうったところで消費者はそれをなかなか信頼してくれません。去年、いろいろな偽装事件が発覚しました。清水寺の今年の一文字が「偽」という残念なニュースもありました。そういった点でも「広告」より「広報」が強い時代に突入しているのではないかと思います。ブランドは、「広報」によって作られるといわれています。

 日本は、ヨーロッパの諸外国と同じようにブランド志向の強い国民性を持っています。特に京都には、「京都ブランド」という言葉がある程に全国、世界から注目される街なのです。

 今は、消費者がモノ選んで買う時代。売り手より買い手の方が強いのです。良いモノをつくっていると黙っていてもモノが売れる時代ではなくなっています。良いモノをつくるのは大前提ですが、それをいかに発信していくかが非常に重要なポイントになっています。詳しくは、皆さんにお配りしている資料をご参照ください。ここでは割愛します。
当日の写真です

 では発信していく、PR活動をしていくうえで無理なくできる方法をご紹介したいと思います。

 皆さんもホームページをお持ちだと思いますが、まずはこれを活発に使うことからはじめていきましょう。つまり、更新をこまめにするということです。理想は、毎日更新することですが、必ずではありません。何か会社のなかで起きた出来事は、こまめに発信する癖をつけください。習慣になるまで少し大変ですが、慣れてしまうと書くことが楽しくなってきます。ブログに書いて発信するのもいいですね。できる範囲で無理なく続けていくことが大切です。ブログを上手に活用した事例を1つ紹介したいと思います。

 ブログの何が広報になるかということから説明します。「ブログ=日記」と思われている方がまだまだ多いと思いますが、実はブログというのは宣伝にとても有効な営業ツールなのです。企業から、或いは自分から発信することのできる独自メディア(媒体)なのです。

 例えば日産自動車のブログを紹介します。(プレゼン画面を指差して)この『ティーダ』という新車種のプロモーションに使われたブログです。

 『ティーダ』は、かつてない“コンパクト・ラグジュアリー”という独特のコンセプトで生まれた新しい車。もちろん誰も知りません。ましてや、聞きなれない言葉「“コンパクト・ラグジュアリー”ってなんだ?」というのが消費者の素直な印象だと思います。そんな状況で「イメージ広告」を使って消費者に訴えても伝わりにくいのです。テレビCMであっても15秒で伝えるには情報が多すぎるのかもしれません。「何がコンパクトなのか?」「何がラグジュアリーなのか?」イメージだけではわからない、のですから。

 そういう時にこの「広報」活動の一環として行われたブログが有効な手段となったのです。当初は、キャンペーンの2週間限定のという予定でしたが、驚くことに3年以上たった今もなお続いています。

 どの様なことが書かれているかというと、例えば「このシートは指で押したら戻ってくる。いわゆる低反発な素材で作られている」ことや「“コンパクトラグジュアリー”で小さいけれど、“180センチの私でもこんな風に乗れる”」ということが写真を添えて書かれています。情報スペースの限られたカタログには180センチの人が乗れるかどうかなんて載せられませんよね。(笑い)ましてや、イメージや雰囲気を味わいたいパンフレットに文字がたくさん書かれていても読みたくないですよね。(笑)

 ブログをよって細かい使用感とか、商品のよさを更に伝えることが可能になるのです。

 ブログは、知りたい情報をキーワードでスグに検索できる、そんな機能が付いた分厚いカタログと同じなのです。これは企業発信のものなので「広告」のように思えますが、社員が消費者の視点で伝えることによって「広報」的な宣伝になるのです。社員も消費者の一人となって「乗ってみました」とか「押してみました」というような記事を書けば非常にわかりやすく伝えることができるのです。

 ブランドの話をしようと思ったのですが時間があまりなくなってきました。宣伝は「広告」だけではないということ、ブランドは、「広報活動」で実を結ぶということ、を少しでもわかって頂けましたら幸いです。あとは常に広報活動をすることを意識し、やれることからやっていくということを頑張ってください。時間の関係で全てお話できませんでしたが、他の資料(ページ)も読んでください。

 最後にこれだけお話したいと思います。「京都ブランド」について。京都は、歴史的な文化のある街で、世界に誇れる「京都ブランド」というものがあります。

 京都で商売しているだけでも「京都ブランド」がその価値をあげてくれます。「うちの○○は、京都発です」「京都にあるお店です」といった具合に・・・。ただ、今ある「京都ブランド」は、先人たちが千年以上もの長い歳月をかけて創り上げられたもの。それを忘れてはならいないと思います。 

 未来を生きる人たちが現代と同じく「京都ブランド」誇りに思えるよう守り続ける、あるいは、新しく創造していかなくてはならいないのです。それが、現代に生きる私たちの使命でもあると思います。

 非常に駆け足になりましたが、これで私の話を終わりとさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

 

 

第2部 パネルディスカッション

コーディネーター  若林 靖永(京都大学経営管理大学院教授)

パネリスト       宗田 好史(京都府立大学准教授)

                内田 隆 (株式会社大丸 執行役員京都店長)

                              曽和 裕次(コンセプトグラマー有限会社 代表取締役社長)

当日の写真です

●若林 リレートークを踏まえてのパネルディスカッションということで,今日のテーマについてさらに深めていければと思っています。多少フロアから「質問ございませんか」という時間もあとで取りたいとは思います。

 最初に三者のお話に共通すること,そして商業者がもっとも敏感でなければいけないことは何だろうということを考えてまいりました。昨年は「偽」という字がキーワードになりました。今年は中国ギョウザという食の安全にとってとんでもないことが起こりました。もちろんこういう安全,安心を担うという商業者の役割。このことは改めて心しなければならないと思います。当然事業者としてもそういった点での取組みはますます重要になってきています。

 それはそれで置いておいて,今日の話に関連しては,やはりまちの変化ということをしっかり見て,それに注目する。そしてそれに乗ったり,読み込んだりしてまちの変化を起こす。これは広報の話にもつながるかもしれません。変化に注目し,変化を起こすというのが商業者にとっては非常に大事なことだということを思いました。そこでまず、私はここに注目している,あるいはこういうことが変化を起こすうえでのポイントだと思っている。変化に注目する,変化を起こすという点で意見交換したいと思います。

 では大丸百貨店の内田様からお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いします。

 

●内田 いろいろなまちの変化があるのですが,先ほどからお話が出ている関連からいいますと,実は私ども大丸京都店にはIDのお客様,つまり,うちの自社カードをお持ちのお客様がかなりいらっしゃるのです。その方々の売上動向をずっと見ているわけです。年々,残念ながら大丸京都店のカードをお持ちになりながら,大丸の梅田店とか心斎橋店とか神戸店でお買い物いただいているケースが増えてきているのです。これは逆に神戸や大阪の大丸のカードをお持ちの方が京都へ買い物に来られることももちろんあるのです。あるのですが,どちらかというと流出といいますか,大丸にとっては同じなのですが神戸や大阪へ行かれる方が非常に多くなっているのです。

 これは非常に由々しき事態で,われわれのなかではどうしたものかと考えています。ご存じのとおり,これからますます梅田地区が商業集積が非常に大きくなってまいります。そうしたときにアクセスが非常によくなっていますので車で行ってもそれほど時間がかからないということになりますと,今後京都店を,あるいは京都へ来ていただくというのは京都地区だけの競争ではなくて,大阪も神戸も含めたうえで大丸京都店にわざわざ来ていただける何かがないと,これからは生き残っていけないなという話をいつも議論しております。

 そういう意味で先ほど京都ブランドというお話があったのですが,われわれも論議をしまして今後の店づくりのなかで何なのかという話をしたときに,やはり京都ということでもとからあるものという話を社内でしております。実は東京店が先だって新店オープンをいたしました。テレビでもいろいろ報道されましたが,ここでいちばん数字がいいのは京都ブランドなのです。京都のレストラン,喫茶,それから京都の品が非常によく売れるのです。その意味ではもちろん「新しい京都」という先ほどのお話は当然です。けれども今までの,われわれがもう一度見直さないといけない。いい意味での京都というのをもっとわれわれはモノだけではなく,事も含めて情報発信をしないといけないのかな。そういう話を実は社内ではしているところです。

 お客様の変化というよりも,動態のような話になってしまいましたがそういうことを感じております。

 

●若林 ありがとうございます。本当に都市間競争の視点とか,あるいは最初の私の話だと京都をアピールするということが,やはりとくに都心部の商業の一つの大きな役割としてあるのだと思います。しかも,やっかいというと言い過ぎかもしれませんが,しばしば京都の外から見たときの方が京都ブランドのパワーとかメリットがはっきり出てくるということがポイントになるということなのです。京都の市民は逆に流出してしまっているという面もある。このあたりの事柄も京都の性格を考えさせてくれるような気もしますし,ちょっと注目したいと思います。

 続きまして曽和様はいかがでしょうか。お願い致します。

 

●曽和 私は大阪出身で、京都に来て8年目になります。以前勤めていました会社が京都支社をつくるというきっかけで京都に移ってきました。近郊の大阪出身ではありますが、京都にくる機会はほとんどなく、あまりよく知りませんでしたのでエリアマーケティングや京都ブランドについてのリサーチを行いました。京都について一通り調べていると伝統や文化といういわゆる「京都ブランド」にあたるものと、(歴史をみても)京都初のものがたくさんあることを知りました。新しいことを全国に発信している点からパイロット的な風土もある土地柄なんだなぁと、そういった京都の一面も非常に注目しています。

また私は、京都市の商い創出事業(VIS)という個人の商店とか、個人事業主を対象にしたベンチャー支援事業の審査委員をさせていただいているのですが、そのなかで最近非常に多いのは、伝統工芸などを継承しつつ新しいものと組み合わせる、マッシュアップ的にものを創造し、それを新たな京都ブランドとして掲げておられる方もおられます。非常に面白いなと思ってみています。

 

●若林 ありがとうございます。その点は本当に京都というまちの魅力を考える,あるいは京都ブランドというふうに考える際に,あまり決めつけないほうがいいことなのかもしれません。つまり実際の消費者が,あるいは市民が,日本の全国の人々がどのように見ているのだろうかということを丁寧にリサーチしていくと,一方で京都の老舗のブランド,京都の伝統技術や伝統芸能とか,そういった文化と結びついているもの。そういった事柄の一方で、そうした古いものとは関係のない文脈で、京都ブランド,京都の魅力だということで選ばれているものもあります。わかりやすい例は帆布の鞄の例だと思います。

 あの帆布で鞄作りというのはどこでもできるので,別に京都にゆかりがあるのか,ないのかよくわかりせん。しかし最近も京都新聞に,鞄をいろいろあちこちでつくられていて京都は面白いという記事が載っていました。例えばこういうものは,若いちょっとおしゃれに興味がある人からすれば,京都の鞄で帆布の鞄とかそういった新しいセンスをもった鞄を使うことが楽しいということで,それが彼らにとっての京都の魅力であり,京都のまちだったりするわけです。そこは京都ブランドという場合に広がりをもってとらえていく。非常に多様な展開,そして古いものと新しいものが出会ったり,ぶつかり合ったりしながら,いろいろなタペストリー,織物のように広がっていくイメージといいますか。

 そういう意味では今おっしゃられたように,まったく違うものとか今まであったものをマッシュアップするというのがおもしろいですね。マッシュアップというのは,インターネットのビジネスのキーワードで、元々プログラミング的なところから来ています。「マッシュアップってなんだ」と言いますと、既存のものを組み合わせることによってより豊かな,大きな価値をもたらすようなものだと思っていただいたらいいのかもしれないと思います。こういうことは京都ブランドを考えるうえで非常に大事なことだと思います。

 それでは最後に,宗田先生,変化に注目する,変化を起こすという点でコメントをお願いいたします。

当日の写真です

●宗田 コトラーが,小売業というのは変化対応業であるということをいいました。実際毎日お店で立っておられる売り子さんが,日々お客さんとどういうコミュニケーションをするかというところに非常に大きなポイントがあるわけです。もちろん都心の商業者の方も,あるいは観光客に商いをされている方もということなのですけれども。

 先ほど申しあげた小企業の新世代ビジネスが強いのは,経営者の方がじかに売場に立つからなのです。ところが,ある程度の規模のお店になって,50歳代,60歳代の私よりも年配の経営者の方がお店に立っても,今これだけ女性化している,サービス化しているお客様と会話すらできない。私自身,カミさん,娘と買物の話はできないのです。おじさんが,立っても仕方がない(笑)。だから今カリスマ店員のような方がいて,そういう方たちがどのように日々変わるお客様のニーズを捉えているかを上手に総合化して,お客様に合わせていく,市場の変化に合わせていくというのがカスタマイゼーション(顧客化)です。それを組織的にやればマス・カスタマイゼーションですし,それを小企業が独自の方法でやっていればフル・カスタマイゼーションだということを先ほど申しあげたわけです。

 そのときにいろいろな情報が売場に入ってくる。それをどう取捨選択していきながら,何が大きな変化で,そのなかから何を大きなトレンドとして読み取っていって,それを自分の店の経営戦略にする,あるいは商業ビジョンにする,あるいはまちづくりとつなげていくかということをきちっとわかる必要があります。今日は個々のお店の経営方針をお話するわけではないし,私は都市計画専門なのでもう少し大きなことを申しあげます。

 われわれ都市計画をやっていますと同じような仕事を大阪の御堂筋,心斎橋界隈でもしますし,神戸も大丸さんが20年近く前からされて展開されています。すると神戸市も大阪市も京都市もそうですが,当然その大きな変化をリードする動きに合わせようとします。例えば元町の方でいうと,あそこはハーバーランドにどうつないでいくか。商業も観光もそうですけれども。さらには兵庫区,長田区の方にどう結びつけていくか,いわゆるウォーターフロントエリア,そこに産業構造の転換で工場跡など空地がたくさんあるのですが,土地利用転換で生まれた低利用地とどう結び付けるかという議論をするわけです。

 元町,居留地のすぐ南のところに,水上警察署と国の官公庁の建物群があります。あそこが,いちばん都心と近い港,水辺です。いわゆる都心のウォーターフロントです。あそこの土地を今,国が払い下げます。それをどうするか。せっかく元町の近代建築の周辺にあれだけお店を出していただいた。その力をあそこの水辺文化の再生に使わないともったいない,だからこれから先,重点的に整備するのです。

 それから心斎橋界隈は,大阪市の商工会議所も当然ながら関心を高めています。しかし,大丸さんが展開されるとそれを妨害される方もいるのです。大阪商工会議所さんがそこを大丸さんに歩調を合わせてちゃんと交渉してくれるかというと,京都商工会議所と大阪商工会議所は全く違いました。大阪では大阪商工会議所さんが相手にできない三つのところがあるのですが,そこの関係だったりすると手が出ない。同じようなことをまた別の方ですけれども,アメリカ村が西に広がっていこうとするのを阻止しているということがあります。今度これを大阪商工会議所ができないのなら大阪市,大阪府が,あるいは国土交通省が別の手を使って進めます。心斎橋界隈は,大丸さんだけでなく,むしろ大丸さんの手は離れて心斎橋は大きなブランド街といいますか,アウトレットモール街のようになって東京より気楽で便利なために,中国,韓国,台湾のお客様がたくさん来られます。そこをどう伸ばすかというのは,実は都市計画なのです。大きなまちの変化,例えば金融機関の再編もそうだし,国の公共事業のあり方も変わっており,大阪国道事務所がブランド街にふさわしい歩道整備に努めています。

 個々の消費者,家計がどう変わっているかというレベルのことと,それとまち,あるいは国全体がどう変わっていくかということの全体像を一貫して捉えないといけない。それが都市計画の仕事です。大丸さんがこのまちで重要な役割を果たした。一歩,二歩先を行ってリードしていただいた。そうするとそれに国もついていこう,神戸市もついていく,大阪商工会議所もそうだし,京都でも市も商店街の方もついていこうとします。そのベクトル合わせ,つまり投資の方向を上手に合わせ,相乗効果を生むように組織力で変化に対応する。その組織力で変化をリードするという商業まちづくりのビジョンが大事になるのです。

 そのベクトル合わせのためにデータを持ってきて,今こちらに流れているぞ。それなら大丸さんの流れはこう評価できるから,皆さん合わせて,日々お店で感じている消費者の変化に対してこういう投資をすると元がとれるぞと説明するのです。

 例えば先ほど少しおっしゃっていましたけれども,英語ではスペシャリティー・ショッピング・イン・ヘリテージ・セッティングというのです。日本語で言うと,こじゃれた店で,こじゃれた商品を買うということなのですが,「こじゃれた」というのが近代建築,町家を使うと簡単にこじゃれるのです。こじゃれた商品というのは可愛い小物,帆布をはじめいろいろなブランドがあります。この雰囲気が大きなトレンドであるということがわかるから,京都商工会議所も美観都市というし,さらにまた京都市も景観政策を打ち出したというのが大きな流れです。

 今,京都は組織的な変化対応力,変化をよしとする力があります。これがその先に本当にブランドにいくのかという議論をしています。まさに組織力を発揮する強さ,上手な調整,情報の共有化というものがこれからもっと効いてくるのだろうと思います。

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●若林 基本的には民間の自由な活動,企業の事業者の活動のなかに広がっていきますから,いろいろな方向のベクトルを向いているわけです。原則的にそのことをトップダウンに一律になんとかできるような社会ではありません。景観とか建築物などはハードの規制でコントロールすることが市民合意のもとで広まってきていますが,原則ここにエステのお店を開けなどとトップダウンで入れる必要は何もないわけで,そういうことをやって増えるものなのかということがそもそもあるようなことなのです。けれどもそういう状況だからこそ,今日のシンポジウムも関係者が自ら発見し自発的に行動して変化を起こすきっかけになる、そういう役割を果たせる機会の一つになればと思います。

 それぞれご関心のある方々のベクトル合わせというものが広がっていって,いい方向で京都のまちの魅力がアップする方向でいろいろな方々の努力が一つひとつ始まっていく。土地をもっている人の判断もあれば,商業に関心のある人の判断もある。行政も市民もNGOもいろいろな関わり方があるのだと思います。そういった方々のベクトルが合っていって,いい方向に回っていく。そういうサイクルが動き出したときというのは本当にトータルに見ると「すごいことが起こっているな」と,誰が起こしたとはいえないけれども,みんなで起こして,みんなで乗れるように,そういう夢のある元気のあるまちが今後継続,発展していくのかなと思います。ベクトル合わせ,そういった調整のプロセスや,協力してお互いに学び合うということが大事だと思います。

 

●宗田 先ほどお店の増え方をグラフにしましたが,もう一つ,今日のポイントは,小企業の経営指標を使って,どの業種がどのぐらい順調に利益率を上げたかをみたことです。お医者さんがそうです。患者さんを前にして「今日はどうされました」と聞いて,「頭が痛い」「喉が痛い」とか言われます。そこから診断を重ねます。医者は患者の言い分を聞き,様子も見ますが,自分でちゃんとデータ,血液検査などを積み重ねて,様々な指標で患者のいっていることと体から取ったデータとを総合的に整合して診察を下すのです。

 同じようにまちでも,お客様や市民が口に出していっていることが必ずしも事実ではないのです。昔がよかったという人は多いですが,そのほとんどの人は気付きもせず現代風の楽な暮らしにどっぷり浸かっています。自分の暮らしは元に戻せません。共働きか,そうではないか,奥さんがフルタイムで働いているか,パートタイムかによって,時間の過ごし方も,可処分所得がずいぶん違うわけです。大丸さんなど流通大手は,カードなどでその個人データを豊富にもっているわけです。ですから土曜日に,2年前,3年前と比べて可処分所得の高いお客さんが来るようになったか,なっていないかがわかったうえで商品陳列をするわけです。個々の個店にそういう力はありません。今コンビニから始まったPOSは各業界に広がって上手にデータ処理をしています。情報戦争なのです。もう一つ,何かみんなで力を合わせてそのデータをベースにお客さんがいっていることの裏を取る。あるいは正しくお客さんのニーズを知って,商品と広告もそうですが,そういう企画をする工夫も必要かと思います。それは組織力を発揮する大きなポイントだと思います。

 

●若林 個別の企業でどう共有するかというテーマも出てきそうです。つまり基本的には個々のお店が顧客維持,顧客サービスの観点から専門用語ではID付きPOSシステムといいますが,わかりやすくいうとポイントカードに取り組んでいます。ポイントカードを導入することによって、ポイントでお客さまの反復購買を刺激するとともに、集められた取引データからお客の分析が深くできるようになります。いま、このデータをどう活用するかが小売業の大きな挑戦課題となっています。

 先ほど宗田先生が神戸,大阪の話をされていましたが,ここでちょっと関連して,今日会場からの質問が大丸の内田様への質問です。「神戸と京都で大丸の周辺店舗開発の取組みということで,共通点と違いのような,比較するとどんなことが見えるのでしょうか」という質問が出ております。わかる範囲でお答えいただいて,またもしそれに関連して曽和様から京阪神企画のようなもので,何かつくりたいことなどがあれば出していただければと思います。内田様,お願いします。

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●内田 神戸と京都の周辺開発というのは基本的にかなり違うのです。神戸につきましてはそごうさんと従来2店舗でずっと競争を繰り返してきたのです。ところがとんでもなく変な競争になりまして,要は例えばお得意様に対して値引きをしたり,分引きをしたり,こういうことをどんどん繰り返してお互いが何のメリットもない競争をし始めたわけです。私どもは地域2番店でそごうさんとかなり離れていたのです。こういう商売をしていたのではいつまで経っても将来がないという危機感がありました。そのときにある経営者がきまして,本当の神戸のよさは何なのかということを見たときに「旧居留地という財産があるではないか」ということで,地元の方々といろいろ話をしながらあの場所をできるだけ面とする。

 神戸そごうさんは三ノ宮にありますから最大の集積になります。ですからすべてあそこに行っていろいろ大きな差が出ていたのです。それと対抗するために何をするのかというところから,旧居留地を生かした神戸らしさの周辺店舗をしていこうではないかというところからスタートして,今かなりの店舗が出ているのです。

 京都の場合はそういうことではなくて,もちろん河原町地区なりJRの京都駅地区との地区間競争もありますけれども,どちらかというと最初に聞いているのは荒廃をしてほしくないといいますか。烏丸で生きていくために河原町が最大の商業集積ですから,先ほど脅威という話をしましたけれども,烏丸がやっといろいろいい店が出てきたのに,放っておくと烏丸地区を壊してしまうのではないか。そうなると大丸京都店はさらに来ていただけなくなる。そういうことからちょっと消極的なところから実はスタートしたのです。

 するとお客さんの動きがかなり変わってきまして,いろいろな波及もあるということから今第2期といいますか,少し変わった視点になってきています。ですから先ほどいいましたように烏丸地区というものをもっと見直して,洗練されたおしゃれな大人の方が来られるような,安心して買っていただけるような,そういうまちにしたいなと今はそう思っています。

 

●若林 ありがとうございます。私は危機感から対応したというのは決して消極的だと考えません。やはりこのまちをどうにかしたいとか,この店をなんとかするためには周りの立地環境がいいところでないといけないというように鋭く感じれば感じるほど,ポジティブに考えるというより危機感が先に立つというのは、大変すぐれた経営センスだと思います。危機感から,危機管理の対策は防衛戦略で,ポジティブに考えたものが成長戦略と理屈では言われますが,実際にやっていることはそう違うわけではないのです。いい環境をつくることがいいお店が広がることの前提であり,それがまた伸びようとするほどいい環境ができるという相互関係ですから,そこがある意味で本質的には変わりません。

 しかも実際にやってみるとそこから変化が出てきて見えてくるということで,実際にいい取組みをすると,ちゃんと投げたボールが返ってくるということで面白くなってくるのが,商業の成長戦略なのだと思います。

 曽和様,今のお話をうかがっていかがでしょう。

 

●曽和 エリアごとに、売りがどう変わっていくかということで、私は、ネットショップを例にあげてお話したいと思います。弊社は、ネットショップの運営サポートもしています。それは、もちろん全国の人たちが顧客で商圏というものは関係ないのですが、ネットショップという特性上、どこに(お住まい)の方が何を買われているかというデータがはっきりと出るのです。そのデータを見てみますと各エリア(都道府県)で、購入される趣向がちがってきます。客単価が違ったりすることも面白い点ですね。先ほど内田さんがお話されたように、神戸は神戸らしさを特徴とした店づくりや街づくりをし、京都では京都らしいものをつくるということが大切ということが、ネットショップの世界からみても顕著に表れているなぁと感心して聞いていました。

  やはり地域差を考え、そこにおられる方たちの特徴を捉えることは、非常に大事ことだと改めて感じました。

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●若林 ありがとうございました。ここでお一人ぐらい,時間の関係もありますがもし今のコメントなどを聞かれて発言したい方がおられましたら。

 

●会場質問者 今日のシンポジウムは京都ブランドの定義というものができていなければ,扇の要が外れてばらけた話になるのです。京都ブランドって何なのか,うちとどう違うのか,イタリアやフランス,イギリスのブランドとどう違うのか。なぜなのかということを見たら,今年は『源氏物語』ができて1000年ですが,これが重層的に堆積したまちということです。そこに西陣織とか友禅染,清水焼とかいろいろ京都の扇子とかあらゆる文化的な,伝統的な産業がある。これはまぎれもなく本物だということなのです。

 やはりモノづくりの本物というのは的を外さない。そして春夏秋冬の機を逃さない。なんといっても東京の人や海外の人は,口では言わないけれども,やはり京都人の情熱と情感,情操,そして舞妓さんの京情緒,1200年の情熱というものと知らず知らずに憧れて買いに来ている。そういうことをわれわれ京都人が本当に定義づけて知らないのが問題ではないか。やはりわれわれ住民である150万人が本当の京都人になることが大切ではないかと思うのですが,内田さん,いかがでしょうか。

 

●若林 では、内田さんにご回答いただきたいと思いますが、そろそろ時間が近づいてまいりました。この京都ブランドをどう守るか,定義をしなければいけない,京都人が学ばなければいけないという熱いアピールをいただきましたが、このことについては、それぞれの立場からのご意見があると思いますので,これを今日のシンポジウムの最後の問題提起として,それぞれのご意見をうかがって終えていくということにさせていただきます。

 そういうことで内田様からご発言をお願いいたします。

 

●内田 大変熱いご意見をありがとうございました。実は私ども京都店は近い将来に向けて店づくりをどうしようかということで,かなり具体的な論議をしています。まさしく京都ブランドの話を,今おっしゃったのと同じようなことを若手も入れてずっと論議をしています。先ほどおりました岡村も一緒に同じ話をしまして,今日はわれわれにとっても役に立つなという話をしていたのです。本当に京都のブランドは何なのか。今おっしゃったように意外と知られていないところがたくさんあるのではないか。ですから本物の京都をぜひ発信していこうではないか。単なる土産物だけではなしに,本物の京都をもっと発信しよう。それはモノだけではなくて情報も一緒だ。こういう論議は同じ意見です。

 ただ,もう一方で先ほどいわれたように少し新しい京都,今後先へ向けた京都は何なのかということを一緒にやらないと単なる歴史文化だけの発信では,よその東京でもどこでも同じようなことをやっていますから,京都で京都を発信するということは両方やってみないといけないのかなと思います。そういう意味では非常に難しくて実は答えが出ていないのです。どうしたものかということをいっております。答えに全然なっていませんが非常によくわかります。同じ論議をしております。

 

●若林 ありがとうございます。では順番に,曽和様,お願いいたします。

 

●曽和 京都から日本に発信するということでしたが、逆に世界から見た京都はどのようなイメージなのか?を考えることが今後、京都ブランドをさらに成長させていくうえで大事なことではないかと思います。今おっしゃったような1200年の伝統と文化というものがもちろんあるわけですが、「京都議定書」なども京都ブランドの1つだと思うのです。次世代に向けた提案を京都がフラッグシップをもって世界に発信していく。それはまさに新しいことを建設的にやっていくというイメージが、世界から京都を見た場合にあるのではないでしょうか?そういった意味ではそれもまた、京都ブランドになるのではないかと感じます。古いものと新しいものを同時に発信していく必要があると思います。

 私は外の人間というとおかしいのですが、京都でお世話になってまだ8年目の大阪人です。その大阪出身の私から見た京都は非常に本物がたくさんあるという印象があります。が、しかしそれを上手に発信できていないこということも同時に感じます。今までは、だれが、発信するわけでもなく、京都の千二百年という歴史が少しずつ培ってきたもので京都ブランドが創られてきました。現在の情報社会では今までの「京都ブランド」も「これからの京都ブランド」も共に発信していく必要があると思います。その京都ブランドを日本国内、世界に向けてどう発信していくべきか、そこが大変気になる部分ではあります。

 

●若林 ありがとうございます。では宗田先生,最後にお願いします。

 

●宗田 商工会議所でも京都ブランドというのは一生懸命やっていて,私も講演とかをするのですけれども,「京都ブランドって何ですか?」「誰が決めますか?」というところから始めます。ブランドというのはグッチとかフェラガモがよく知られていますね。イタリアンブランドです。そのイタリアンブランドという言葉に実態があるのかというとグッチとかフェラガモがたくさん集まったものです。私もイタリアにいましたし,イタリアの建築史も勉強しましたから,グッチやフェンディはイタリア的だと思います。伝統産業の上に発展しました。ボッテガ・ヴェネタは,フィレンツェのグッチ社傘下になってはいますが,ヴェネツィアの工房らしさがあり,まだ我慢できます。けれどもドルチェ・アンド・ガッパーナは,どこがイタリアかと思うような新しいイタリアンブランドですね。

 ブランドというものは元からつくるものではなく,お客様の期待から生れます。プロダクト・オリエンティッドではなくマーケット・オリエンティッドという,作り手が伝統的でいい商品だと決めるのでなく,お客さんの眼に映る美しい品が売れるという当り前のことです。だから,お客さんとの対話の中で生まれてくるものす。京都の花鳥風月や物は京都を代表する文化であり,その粋が伝統産業製品だった。それがかつての京都ブランドだったのですが,これから京都のブランドを作っていこうとするならば,今のお客さんの京都に対するイメージをどうとらえるか。マーケティングが重要だと思います。

 ですから例えば,観光のお話をする時間はなかったのですが,どんなお土産物が売れているか。昔は八つ橋でした。もっと前は西陣織でした。今なぜ漬物が売れるのか。京野菜の漬物といってもずっと千枚漬けやしば漬けが売れているのではなく,今やハクサイ,キュウリ,ナスが売れている。お客さん,とくに中年の女性が漬物を漬けなくなったのが大きな理由で。その人たちが京都に来て,大安さんや西利さんのハクサイの漬物を京都ブランドとして買っていく。商売としても立派な京野菜の漬物になっていますね。

 そのように次から次へとお客様が求め,つくる京都ブランド,そのなかから本物をどうつくっていくかという議論になるのです。お客様のキャッチアップをするときに,やはりまちの雰囲気というのは決定的に大事です。その背景である京都の文化,あるいは芸術がある京都のまち。ですからいくらミケランジェロ,ラファエロが偉くても,今のイタリアのまちがきれいで魅力的でなければだめです。昔の貴族の邸宅が今はフェラガモ,フェンディが入って,一般庶民が買い物をする。開放されたかつての貴族の空間が今のブランドに非常にうまく役立っているということが魅力なのです。そこをどう上手にお客さんの空間として大丸,高島屋の店内と同じように,あるいはブランド店内と同じようにおしゃれな四条通,河原町通にしていくのかということが非常に重要です。するとブランドは自ずから,お客さんとのコミュニケーションとの中で生まれてくると思うのです。

 四条通にしてもパチンコ屋が増えそうになったときにそれを止めて,地区計画を作った。放置自転車が多いと一生懸命違法駐輪を追い出し,大変なご苦労をされています。ですから大丸の内田さんが今日お話になったように大丸から西側の方は烏丸通に向けてシックなブランド街をつくりたいということになったら,例えば,今度は大丸から西の方に向けて世界のブランド。東の方は,和の文化,老舗が並ぶ。さらにその向こうには祇園があるという街のコンセプトが,質の高いテイストを生みます。その中心に大丸さんと高島屋さんが位置して和と洋が上手に接点をもつ。そこにさらに北側には三条通の近代建築が演出されるというような,そういうまちのトータルコーディネートをするなかで,和のブランド,洋のブランドが輝きます。ルイ・ヴィトンもいいのだけれども,京都で生まれた新しい洋のブランドが烏丸通に登場するという,そういうビジョン,夢があるじゃないですか。お洒落な京都の街ができそうです。

 大事なことは,京都には伝統産業の技があるから美しいモノをつくれるけれども,それを今のお客様に美しく見せ,お客様の喜びでブランドにしていく。柔軟な協働作業です。そうして初めて京都の力が発揮できる。おそらくもう考えている時代ではないのです。男の発想で考えると壁があります。男の発想では,こんなにいいものがあるからこれが京都ブランドで売れるはずだと思ってしまうのです。女性にとってはそうではない。ですから私はあるときから男としての思考をやめました。まちづくりのことはカミさんに聞くに限る。カミさんの感性を上手に理解した上でお話すると,フロアに受けるようなお話ができるといいますか(笑)。発想の転換をしないといけません。

 今,大丸の紳士服売場に行くと,われわれのような女性化した男性が結構お客さんになっていて,かなり柔らかく変わってきています。プチブランドによるマス・マーケティングなど,紳士服でも女性化した売場づくりを進めています。すみません。長くなりました。

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●若林 ちょうど時間になってきたようです。まとめに代えて地域ブランドについて少しお話ししたいと思います。企業ブランド,商品ブランドの話と地域ブランドの話は共通点もありますけれども違いもあるのです。

 共通点は3人ともおっしゃったようにやはりブランドになるということはお客様,あるいは社会が支持するということ、社会がこういうブランドだと強く認識して,認めて,魅力があると思ってくれているということがブランド価値のあるブランド,ブランド力のあるブランドであるということなのです。結局のところ,いくら自分たちが「これがブランドだ」と思っても社会が認めてくれなければそういうものはブランド力のないブランドです。ブランド品ではないのです。その点でいうと宗田先生がおっしゃったように女性に注目するということでもう一度組み立て直すことで,本当に今の人たちが「やはりブランドだ」と思ってくれるということを真剣に考えないと,いくら「ブランドだ」と自分たちで言っていても自分たちで勝手に決めているだけでは完結しません。

 地域ブランドが商品ブランド、企業ブランドと違ってやっかいなのは次の点です。ルイ・ヴィトンであればお客様との関係でずれていると思えばヴィトンの経営者が新しいデザイナーを雇ったり,新しい経営戦略をしたりして軌道修正する。ルイ・ヴィトンのブランドを守るのも発展させるのもルイ・ヴィトンの経営者であり,従業員が主体的に頑張っている。ブランドを育てることが自分たちのブランドビジネスだと頑張っているわけです。ところが地域ブランドの場合、京都の場合は,それは誰なのか。京都市ですか。私は京都市だとは思いません。京都市もその主体の一つだけれども京都市だけがやる仕事ではない。同じように京都商工会議所だけがやればいいのか,そうでもない。

 結局地域ブランドを担っているのは本当にみんな、多くの関係者なのです。いろいろ多様な主体が関わるのです。ということは,申し訳ないけれども京都ブランドの定義はここで決めるというよりも,皆さん一人ひとりが自分の思いとして京都ブランドをもって,それでお友達と、お客と対話を始めることが京都ブランドを活性化するということなんだと思います。誰かが京都ブランドはこうだと決定したりしたからといってそれで何かが始まるわけではありません。やはり多様な事業者や市民がそれぞれの「京都のいいところはここだ」「京都っていいね」と思えるところを大事にして発信していくこと。これが実は京都ブランドを主体的に育てていくことなのです。

 そうなると事業者の皆さんの役割は大きいし,京都市の役割も大きいし,商工会議所や商店街などの団体も大きいけれども,同時にこれは市民一人ひとりの課題でもあるのだろうと思います。

 きれいにまとめられたように思います(笑)。そこはお許しいただいて今日のシンポジウムを終わりたいと思います。どうも本当に内田様,曽和様,宗田先生,長時間ありがとうございました。参加者のみなさん、ご清聴ありがとうございました。

 

 

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