サキョウ見聞録 その24 まちの縁側 ぽかぽか茶屋
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2025年11月13日
叡山電鉄二軒茶屋駅近くの住宅街の中に、「まちの縁側 ぽかぽか茶屋」はあります。
外から見たら普通のお家。中に入って、廊下の奥の扉を開けたら、そこには・・・
ご高齢の方からこどもまで、誰もが自由にくつろぐことができる空間が広がっていました。「カフェ併設型コミュニティスペース」として、お食事をしたり、お茶を飲んだり、話をしたり。
カウンターがあって、確かにカフェのようでもあるけれども、来られた方同士もスタッフの方も自然に会話している感じ。というか誰がスタッフなのかちょっと見ただけでは分からない。カフェというよりも、それこそ縁側のような・・・
2016年10月にオープンして、9年目を迎えるぽかぽか茶屋。どのような思いでできた場所なのか、スタッフの白田美佳さんと中村敏美さんにお話を伺いました。
元々福祉のお仕事をされていたという白田さん。
白田さん:「昔は家の前で立ち話したり、縁側で将棋を指したり、まちの中で人が集う姿があったのに、今はそういうのがあまり見られなくなって。孤立していた人が起こした事件のニュースを見るたびに、つながりがあれば、話せる場があれば、こんな事件は起こらなかったんじゃないか。
そう思ったのがきっかけで、お子さんからご高齢の方まで、誰もが気軽に立ち寄れる場所をつくったんです。」白田美佳さん(左)と中村敏美さん(右)
そんな白田さんに巻き込まれた、という中村さん。
中村さん:「ぽかぽか茶屋を立ち上げるから、コーヒーの淹れ方を教えて、と言われて巻き込まれた感じ(笑)。自家焙煎したコーヒー豆でコーヒーを淹れたり、ランチや軽食をつくったり。
私はあまり人付き合いが得意な方ではないので、人と人をつないだりするのは白田さんがやってます。私はやりたいことやできることをやる方で。」
確かに単なるカフェではなく、来られた方と白田さんや中村さんとが自然に話をしていて、来られた方同士も自然に会話している感じ。スタッフというより家族のような。
白田さん:「中村さんが関わってくれることで、今みたいな場になってます。私一人でやっていたら、作業所みたいになっていたんじゃないかな(笑)。二人とも、目指す方向は一緒。来てくれた人がほっとしていたり、いい顔をしていたらうれしい。
もちろん、運営するには光熱水費などお金もかかるし、そのためにカフェという形でやっているけど、やりたいことの7、8割できていると思う。
幸福感や安心感があったらいいし、何かしなければではなく、かなったらいいなを出せる場にしたいと思っています。」
ぽかぽか茶屋の7月の予定表を見ると、手書きのかわいいイラスト入りでイベントの予定がいっぱい。

-すごくたくさんのイベントを行っていますね。
白田さん:「ここに集う人たちとの間にお世話する側される側みたいな関係はなくて、集う人の「やりたい」で、イベントができあがります。参加する方から教えてもらうこともあるし。ここは「スタッフ2名」ではなくて、関わってくれる方の集合体がこの場所。予定表のイラストも、来てくれた方が描いてくれています。
お願いはしません。理想は伝えるけど、ぽかぽかとしては「やりたい」と思ったことに関わってもらう感じ。こんな感じでもう8年。こういうのがあったらいいな、と言っていたら、ほんとに実現したりするので、おもしろいなと。」
-ぽかぽか茶屋ではいろんな人同士がつながっていますが、人と人をつなげようと思ってつなげているんですか?
中村さん:「つながったらいいな、という願いはあるけど、意図してつなげない方がほんとのつながりになるんじゃないかと思っていて。この人とこの人が話したらいいんじゃないかなと思ったら、最初のつなぎはするけど、ポンと放る。タイミングもあるし、あとは縁があったらつながるだろう、と。」
なるほど、と合点がいきました。「つなげたい」と「つながりたい」は別物で、つながる機会は提供するけれども、あとは本人の「つながりたい」に委ねることで、はじめて意味のあるつながりになるのだと。
-「ぽかぽかDAY」というのは?みんなで「お金のいらない日」を体感してみましょう!!と書いてありますが、お金でないものを持ち寄る場、って感じでしょうか?
中村さん:「「お金」も「持ち寄る」も外しても成り立つ場にしたい。私たちはついモノとかお金だけに気持ちがいきがちだけど、それぞれができることをして、うれしかったこととか、人が言ってくれたこととか、喜んでくれた顔とかが、心を動かす。世界を変えるのは難しいけど、目の前を変えることはできる。おままごとみたいだと言う意見もあったけど、ここにこだわったら世の中がいいバランスになるんじゃないかと思います。次回は7月28日なので、寄ってください。」
7月28日・・・と。私は自分の手帖に書き込むことにしました。
ぽかぽか茶屋に来られている方にもお話を聞いてみました。
85歳になられるという紳士の神田さん。
-ぽかぽか茶屋は神田さんにとってどんな場所ですか?
神田さん:「ふらりと来て、ふらりと帰れる。こどもから高齢者まで幅広い人たちがいられる場所。山登りが好きで、左京区の広河原や久多をよく訪れ、写真を撮っていた、という話をしていたら、GWに「ぽかぽかウォーク花背編」を企画して花背の三本杉を見に行くことになった。どんぐりを使って工作もやったなあ。こういう場所がいろんなところにあったらいいと思う。」
そして、こども向け性(生)教育、ぽかぽかトーク(食&くらし編)に関わっている塚田さん。
塚田さん:「居場所があるのはすごいこと。いろんな世代の人が来るので、いろんな方に向けたいろんなことができるし、大事なことを伝えられる場所。」
そして7月28日。なんだかんだで私も、ぽかぽかDAYで出番をいただくことに。
「アンパンマンを通して平和のことをこどもにも感じてもらえたらいいなあ」というお題をいただいて。ギターもウクレレも歌もヘッタクソなのですが、家族で出演。私自身がちゃっかり居場所と出番をいただいてしまった感じ・・・。
当日は小学生からご高齢の方まで幅広い方が来られていて、「お金のない世界」を描いた演劇もあり、平和とはお金とは?についてう~んと考えるなんとも楽しい1日でした。
「お金のない世界」の演劇
集う人にとっての居場所になり、つながりや喜びや出番がいつの間にか生まれているぽかぽか茶屋の場の力。
人の力をうまく引き出して、いや、引き出してすらいなくて、人の「やれそうな気がする」「やってみようかな」が「ほんとにやってみていい」「みんなでやろうよ!」になってしまう、集う人たちの暖かさのようなものがそれなのかなあと思いました。
まちの縁側 ぽかぽか茶屋
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この記事を書いた人
矢野裕史(左京区役所 左京の魅力づくり推進・山間地域振興課長)
左京区北部の花背在住の、左京区民歴20ウン年の自称左京ファン。冬は花背の山でシカを獲ったりしてますが、今年の猟期はクマが怖い!
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