区民ライターがゆく!頑張る中京人・魅力再発見(伝統産業)京都紋付
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2023年4月28日
京都紋付(令和5年4月28日更新)
「世界一の黒」と誇れる技術をもつ京都紋付。伝統的な「黒紋付」という着物を染め続けて100年、染めの技術は時代の流れとともに変化し、アパレル業界への参入など、新たな需要を生み出しています。今回はその新たな需要に対応しながらも、伝統を守り続ける株式会社 京都紋付の荒川社長にお話を伺いました。
「紋付の売上は、最盛期には約十数億円ありましたが、今では数百万円ほど」と、紋付の需要が減り、会社存続の危機を感じていた荒川社長。何としても京都が誇る染めの技術を守りたいという思いから、紋付だけではなく、幅広い衣服を製造・流通させているアパレル業界へ参入することを決意し、2つの改革を起こします。
1つ目は、紋付で培った加工技術の改良でした。紋付のために開発した独自の加工技術「深黒(しんくろ)加工」を、色落ち、汚れ、洗濯に強く、撥水機能をつけてアパレル製品用に改良しました。黒染めすることで、汚れやシミで着られなくなった衣服も再び着られるようになり、「環境保全」につながる取組として注目されるようになっていきました。その後、有名なブランドや百貨店等のコラボレーションにより、この「アップサイクル(廃棄予定であったものに手を加え、価値をつけて新しい製品へと生まれ変わらせる手法)」な取組が注目を集めるようになり、「黒に染めれば、衣服は生まれ変われる」という京都紋付ならではの概念が、世の中に広まっていきました。オンラインで黒染めを依頼することができるため、「お気に入りの一着をずっと大切に着てほしい」と話されました。また古着の染め替えだけではなく、新品の黒染め依頼も国内はもとより海外の意有名ブランドから受注するようになりました。
2つ目は、染めには欠かせない「染料」の変更でした。1970年代に、染料全体の7割を占めていた「アゾ染料」のごく一部から有害物質が生成されることがわかり、国際的に販売・使用が規制されるようになりました。荒川社長はその流れを契機と捉え、自主的に1996年にアゾ染料から別の染料に変更しました。染料を変えたことで、機械の総入れ替えなど、コストアップもありましたが、「このタイミングで世界基準の染料に変えたことで、アパレル業界にも参入できました」と、荒川社長の先見の明により、染めの技術はアパレル業界にも安全を担保して用いられるようになりました。
今後は海外のアパレル業界への進出も視野に入れての展開し、「黒染めによって衣服が再び着られるようになる喜びを拡充していきたい」、「ビジネススキームは黒紋付の技術の伝承とその技術を今の世の中に適合した形で進化させること」と、荒川社長の熱い思いを伺うことができました。
また最後に、「黒の魅力」について伺うと、「黒を英語で表現すると、ブラック(black)かダーク(dark)ですが、日本では、漆黒(しっこく)、鈍色(にびいろ)、呂色(ろいろ)など、さまざまな表現があり、日本人の生活の中で、黒は文化的に根付いていて、日本人独自の『黒の文化』を構築していると思います」と話され、日本ならではの色彩感覚の豊かさと、荒川社長の人生をかけた染めの技術によって、「世界に誇れる黒」を誕生させたのだと感じました。
>>紹介動画はこちらから
https://youtu.be/SORhhyg4vlQ
BEFORE(染め上げ前)とAfter(染め上げ後)
二条城での展示会の模様(2022年9月)
京都紋付 代表取締役社長 荒川 徹(あらかわ とおる)様からのメッセージ
私にとって黒は人生そのものです。多くの方に黒の魅力を知っていただきたいし、シミなどで着られなかった衣類が、新品のように蘇る黒染めをぜひ体感していただきたいと思っています。また、中京は染めのまちとして知られています。身近にある染めの技術をぜひ体験していただき、まちの魅力も知っていただけたら嬉しいです。
<詳細情報>
株式会社 京都紋付
所在地:中京区壬生松原町51-1
電話番号:075-315-2961
会社ホームページ:http://www.kmontsuki.co.jp/
染め替え専用ホームページ:https://k-rewear.jp
お問い合わせ先
京都市 中京区役所地域力推進室総務・防災担当
電話:庶務担当075-812-2420 地域防災担当、調査担当、企画担当075-812-2421
ファックス:075-812-0408