京都市における地中熱の利用について
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2018年12月25日
本市では,再生可能エネルギーの飛躍的な普及拡大を目指し,あらゆる導入可能性を追求することとしており,地中熱に関する基礎調査として「京都市地中熱利用可能性調査」を実施しました。調査結果を踏まえた地中熱利用の概要及び今後の導入に向けた本市の取組については,次のとおりです。
1 地中熱について
地中の温度は,年間を通して一定の温度を保っています。地上と比べ,冬は暖かく夏は冷たい地下水や地盤と熱のやり取りをすることで,天候に左右されず,また,季節・昼夜を問わず利用可能な熱源となります。
地中熱の利用には,ヒートポンプを利用するもののほか,空気や水を循環させる,熱を伝えるなどの方法があり,用途に合わせて選択することができます。
具体的には,建物の冷暖房・給湯,プール・温浴施設の給湯,道路等の融雪,農業ハウスの冷暖房などに利用されています。2 地中熱利用の効果について
一般的なエアコンは,屋外の空気を熱源にしているため,夏は熱い外気から室温を下げ,冬は冷たい外気から室温を上げるために稼働しています。
地中熱を利用すると,夏も冬も一定の温度を熱源とするため温度差が減り,少ない電力で快適さを維持することができるため,経済効果として地中熱利用設備を設置した場合の電気料金や燃料などのランニングコストが低減できます。
また,環境負荷低減効果として化石燃料の削減による温室効果ガス(CO2)削減や,冷房時に室外機から排熱を出さないことから,ヒートアイランド現象の緩和に貢献できます。

地中温度を利用するイメージ
出典:環境省 地中熱利用システムパンフレット
3 全国の地中熱利用状況について
地中熱は,気象の影響を受けず自然界のエネルギーを利用できる優れた再生可能エネルギーですが,国内では太陽光や風力と比較し普及が進んでいないのが現状です。
地中熱の利用状況については環境省が継続的に調査を行っており,平成28年3月までの全国での地中熱利用設備の設置件数は6,877件です。
地域別でみると,千葉県が644件と最も多く,北海道,青森県,秋田県,山形県,長野県等,主に寒冷地域での導入件数が多くなっています。
京都府内の導入件数は,80件です(内訳を表の[ ]内に記載)。
地中熱利用方法 | 件数(件) |
ヒートポンプシステム | 2,230[14] |
空気循環 | 1,919[31] |
水循環 | 1,781[03] |
熱伝導 | 809[32] |
ヒートパイプ | 138[00] |
計 | 6,877[80] |
4 本市の地中熱利用状況について
調査データ等から,本市においても,年間を通して17℃前後の安定した地中の温度を利用することが可能であることが確認できました。
本市施設では「京都市公共建築物低炭素仕様」(平成26年3月改定)に基づき,公共建築物の新築,増築及び改修時には,再生可能エネルギー利用設備を積極的に採用することとしており,地中熱利用についても計画段階において導入の検討を行っています。
現在,京都市新庁舎整備において,CO2排出量の削減効果の高い再生可能エネルギーの導入,経済性の高い省エネルギー技術の複合利用に積極的に取り組んでいます。
【本市の導入事例】


5 導入シミュレーション(地中熱利用システムの効果と課題)
(1) 効果:CO2排出量削減効果・省エネ効果
ア 住宅におけるシミュレーション
[設定] 新築一戸建,建築面積100㎡(延床面積150㎡)
空調は電気式エアコンとし,地中熱交換パイプを通じて得られた20℃程度の空気を地中熱ヒートポンプで冷却・加熱して使用する(運転時間:3600時間/年)。
地中熱利用システム | (参考)従来型システム | |
方式 | 空気循環方式 | - |
熱媒体温度 | 20℃ | 外気を空調利用するため季節によって変動する |
機材 | 空気循環用ファン1台,地中熱ヒートポンプ1台,電気式エアコン4台 | 電気式エアコン4台 |
規模 | 5kW(消費電力0.6kW) | 5kW(消費電力1kW) |
地中熱交換機 | アルミ製熱交換パイプ方式10m×2本 | - |
[結果] 地中熱利用システムを利用した空調機の省エネ効果・CO2排出量削減効果
年間0.7tのCO2排出量削減効果及び1,440kWh(約3.6万円)の省エネ効果を見込むことができます。太陽光発電システムの導入に置き換えると1.4kW分に相当します。
対象施設(延床面積) | エネルギー使用量 | 省エネ効果 | CO2排出量 削減効果 | 相当する 太陽光発電 システムの出力 | ||
地中熱利用 システム | 従来型 システム | 率 | ランニング コスト | |||
住宅 (150㎡) | 2,160kWh | 3,600kWh | -40% | 約3.6万円減 | -0.7t | 1.4 kW |
イ 業務施設におけるシミュレーション
[設定] 4階建て事務所ビル,建築面積750㎡(延床面積3000㎡)
地中熱利用システムは,地中熱交換パイプを循環させた熱媒を熱源として地中熱ヒートポンプを運転し,事務所ビルの居室の空調を行う(運転:3600時間/年)。
地中熱利用システム | (参考)従来型システム | |
方式 | クローズドループ方式 | - |
熱媒体温度 | 20℃ | 外気を空調利用するため季節によって変動する |
機材 | 地中熱利用システム | 電気式エアコン |
規模 | 200kW(消費電力35kW) | 200kW(消費電力50kW) |
地中熱交換機 | ボアホール方式※10m×30本 | - |
[結果] 地中熱利用システムを利用した空調機の省エネ効果・CO2排出量削減効果
年間26.6tのCO2排出量削減効果,54,000 kWh(約135万円)の省エネ効果を見込むことができます。太陽光発電システムの導入に置き換えると54kW分に相当します。
なお,地中熱利用は,空調に加えて温水プールや浴室などの熱需要にも適用可能であり,スポーツジム等稼働時間の長い施設では,より高い省エネ効果を得ることができます。
対象施設(延床面積) | エネルギー使用量 | 省エネ効果 | CO2排出量 削減効果 | 相当する 太陽光発電 システムの出力 | ||
地中熱利用 システム | 従来型 システム | 率 | ランニング コスト | |||
業務施設 (3,000㎡) | 126,000 kWh | 180,000 kWh | -30% | 約135万円減 | -26.6t | 54.0 kW |
(2) 課題:導入コストの低減化
現状の地中熱利用システムについては,導入コストが高いという課題があります(単純投資回収年数では,住宅で約24年,業務施設であれば約30年という試算もあります)。
地中熱利用システムを導入する際は,既設の井戸利用による掘削費の削減,各種補助金の活用など導入コストの低減を図ることで,経済性を向上させることができると考えられます。- 環境省:地中熱利用にあたってのガイドライン 改訂増補版
- 国土交通省:官庁施設における 地中熱利用システム導入ガイドライン(案)
- 環境省:再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ ・ゾーニング基礎情報(平成28年度更新版)
地中熱導入ポテンシャルは,「20万分の1日本シームレス地質図(産業総合研究所)」や「ArcGISデータコレクション 詳細地図(esri ジャパン)」等をベースとして、前提条件を設定して開発可能性のある地点等を推計し,作成したものです。
6 今後の導入に向けた本市の取組について
(1) 導入事例に関する情報の発信
- 国立研究開発法人建築研究所:サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)(平成27 年度-29 年度)における採択事例の技術紹介
平成28年度第二回<建築物(非住宅)一般部門>において,京都市新庁舎整備が採択されました。
(2) 施設見学,イベント等による普及啓発
- 京エコロジーセンター(フロアマップ1階)
京エコロジーセンターでは,外の空気を地中でゆっくり一周させてから館内に流しています。
- 「すまいの創エネ・省エネわくわく広場」
みやこめっせにおける京都エネルギーフェア「すまいの創エネ・省エネわくわく広場」において,地中熱を取り入れた省エネ住宅を紹介しました。


京エコロジーセンター(略称:エコセン)
京エコロジーセンターは,「地球温暖化防止京都会議(COP3)」を記念して,2002年に開設された環境学習や環境保全活動の輪を広げるための拠点施設です。
〒612-0031京都市伏見区深草池ノ内町13
TEL.075(641)0911 FAX.075(641)0912
※駐車場はありません。近隣の有料駐車場をご利用ください。
(3) イノベーションの創出に繋がる情報の収集・発信
地中熱利用システムにおける初期コストの高さや設備費用の回収期間の長さといった課題を解決するため,現在,NEDOや企業等の取組によって,導入コストの削減に向けた技術開発が進められています。
イノベーションの創出に繋がる技術開発等の最新情報を収集・発信しながら,再生可能エネルギーの飛躍的な普及拡大を目指し,あらゆる導入可能性を追求します。- NEDO:地中熱利用システム専用の新型掘削機を開発
~掘削時間と作業人員の大幅削減により,コスト低減に貢献~
- NEDO:一般住宅向け浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発
~導入コスト40%減と運用コスト10%減の大幅なコスト削減にめど~
- NEDO:国内初、高効率帯水層蓄熱システムを開発
~初期導入コスト23%削減と運用コスト31%削減の達成にめど~
資料
平成29年度京都市地中熱利用可能性調査 報告書
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その他
- 特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会
地中熱利用促進協会は,環境に優しい地中熱の利用技術全般について調査・規格化・普及促進等の事業を行い,国民生活環境の向上に寄与することを目的とする団体です。
お問い合わせ先
京都市 環境政策局地球温暖化対策室
電話:075-222-4555
ファックス:075-211-9286