スマートフォン表示用の情報をスキップ

現在位置:

京都市庁舎の沿革 2 現本庁舎の特色

ページ番号294354

2022年2月18日

 市庁舎の整備を検討するにあたり,本庁舎の歴史的,文化的,建築的位置付け等について評価するため,平成10年度に本庁舎に関する学術調査を行いました(調査実施機関:京都近代建築史研究会)。

本庁舎の歴史

 京都市役所本庁舎は三代目の庁舎であり、鉄筋コンクリート造の市庁舎が「関西建築界の父」と言われる武田五一による監修のもとに昭和2年4月に竣工しました。これが現在の本庁舎東館です。さらに,昭和6年8月に二代目市庁舎を改築して本庁舎西館を建設し,現在の本庁舎の全容が整いました。

設計者

   本庁舎の設計については京都市営繕課が行い,意匠は主として嘱託職員であった中野進一が当たり,中野氏の師匠であり,「関西建築界の父」とも言われた,顧問の武田五一の監修のもと出来上がったとされています。
<武田五一>
  京都大学の建築学科の創設にかかわり,創設と同時に教授に就任しました。ほかには,京都大学の本館・時計台の設計を行っています。
<中野進一>
  京都大学の建築学科を卒業したばかりの頃で,武田五一の指導を受け設計に当たりました。また,自ら工事監督を担当しました。

意匠的特徴

ネオ・バロック的骨格の保持

市庁舎の写真

 ほぼ完全に左右対称で,中央と両翼を突き出させて協調し,さらに塔を建てる形態をもつなど,ネオ・バロック的骨格を有しています。また,細部には東洋的な建築様式を採用しています。
 日本においてネオ・バロック様式は,官庁建築の正統的様式として多くの建築に採用されましたが,現存するものは少なく,関西では京都府庁舎,兵庫県庁舎とともに,本庁舎が挙げられるのみです。

細部装飾における東洋的モチーフへの置き換え

 装飾的要素が配される位置や寸法は西洋の建築様式に従っていますが,半円形アーチがイスラム風の葱花形アーチに置換・変形されるなど,全館の内外にわたり東洋的モチーフ(日本的,中国的,インド的,イスラム的と多彩)への置換・変形がみられます。この東洋的モチーフへの置換えは,本庁舎最大の特徴といえるものであり,特に,装飾密度の高い前面中央部とエントランスホール,市長室,第一応接室で顕著に見られます。
 また,議場においても議長席後方の壁面に配された半円アーチの縁には,インド的な繰形が巡らされ,天井はイタリア・ルネサンス的な骨太の格天井であり,格間にはイスラム風の円花飾りが配されています。このように,中国・インドまで含めた東洋的モチーフを用いている建物は少なく,公共建築においては神奈川県庁舎,宮崎県庁舎,大阪市電気局庁舎など数えるほどですが,その中で,本庁舎は建物の内外で一貫してこの手法を用いており,この意味で近代建築史上重要な位置を占めているといえます。

市庁舎日本的造形

日本的造形

塔屋の毛筆をかたどったタレット
(建物に付属した細長い小塔)

市庁舎中国的造形

中国的造形

バルコニー下部に見られる石造りの
舟肘木(ふなひじき)をモデルとした支え

市庁舎インド的造形

インド的造形

塔屋の正方形の凸凹

市庁舎イスラム的造形

イスラム的造形

エントランスホールの葱花形(ねぎばながた)アーチ

本庁舎の保存の意義について

本庁舎は以下のような保存を図るに値する価値を有しており,特に意匠的特徴について保全する必要があります。

本庁舎の保存の意義について
 歴史文化的価値  本庁舎の意匠の特徴である「ネオ・バロック的骨格の保持」及び「細部装飾における東洋的モチーフへの置換え」は,ともにその時代の歴史的特性を体現しています。
 技術的価値 構造面・設備面では特に重視する点はないが,「細部装飾に見られる石膏彫刻の施工技術」は今日では再現が困難なものであり,この点については非常に高い技術的価値を有します。
 デザイン的価値 「内外に施された装飾」は,現代建築には失われた魅力を伝えるものとして評価され,「立面の凹凸など細部装飾が生み出す人間味豊かなスケール感」も,無機質な現代の都市において大きな価値を有します。
 景観的価値 御池通と河原町通の街路景観に魅力を与える重要な要素となっています。特に,御池通シンボルロード事業と連携する中で都市景観の形成に寄与する建築物としての価値を有します。
 地域のシンボルとしての価値 明治31 年以来市庁舎が立地し続けているとともに,明治28 年から市会議事堂が置かれていたという「土地の記憶を象徴する建築物」としての価値を有します。
 地上33 メートルに及ぶ塔が,一帯の都市空間を最も特徴づける存在の一つとなっており,「周囲のランドマーク的存在」となっています。
市庁舎三代目竣工当時の写真

お問い合わせ先

京都市 行財政局総務部庁舎管理課

電話:075-222-3046

ファックス:075-213-4587

フッターナビゲーション