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京都市左京区

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左京区基本計画(第1期)その1

ページ番号9793

2013年3月26日

左京区基本計画(第1期)



第1章 計画の位置付けと左京区の概況・課題

1 計画の位置付け

 1999(平成11)年12月,京都市では21世紀の京都のまちづくりの指針として「京都市基本構想(21世紀・京都のグランドビジョン)」を策定しました。
 「左京区基本計画」は,これに基づく地域別の計画のひとつとして,左京区の個性を生かした魅力あふれる地域づくりを地域自らの手によって進めていくために左京区で作るはじめての計画であり,まさに21世紀の左京区づくりの礎となる計画です。
 京都市における位置付けとしては,他区基本計画と同列同格にして,京都市基本計画と相互に補完するものであり,2010(平成22)年を目標年次とします。
 また,区民・来訪者を問わず,左京区があらゆる人にとって愛すべきまちでありつづけるよう,区民・事業者・区行政がまちの将来像をともに描き,また,その将来像の実現に向けて力をあわせていくための指針たることを計画の理念とします。

2 左京区の概況

(1) 左京区の成立

  1889(明治22)年の市制施行後,1918(大正7)年に愛宕郡白川村,田中村,下鴨村が上京区に編入され,1929(昭和4)年,左京区はこれらの地域を中心として上京区から分区して成立しました。その後,1931(昭和6)年に北部の愛宕郡の一部(修学院村,松ヶ崎村)を,1949(昭和24)年には愛宕郡の残り全て(岩倉村,八瀬村,大原村,静市野村,鞍馬村,花脊村,久多村)を編入,1957(昭和32)年には北桑田郡の一部(京北町広河原地区)を編入して,京都市の面積の約40%を占める,現在の区域となりました。

(2) 地勢

  京都市の東北部を大きく占める左京区は,東は滋賀県大津市に,西は北区,上京区,中京区,南は東山区と山科区に接し,北は京都市の最北端となって遠く北桑田郡京北町,美山町,滋賀県高島郡朽木村に続いています。区域は高野川・鴨川水系,桂川水系,安曇川水系の3つの水系の流域に大きく分かれ,また,地理的な特色からは都市市街的な南部,市街地と農村地が混じり合っている中部,純農山村的な北部の3つに大別できます。

(3) 気候と動植物

  区域には府下第1位の標高の皆子山(972m),第2位の峰床山(970m)を含み,気候帯は,低地部及び標高600m以下の山地部が暖帯に,標高600m以上の山地部が温帯に分かれて属します。
 低地部は概ね市街地や農地となっていますが,暖帯に属する山地部の植物相は,シイやアラカシなどの常緑広葉樹を中心とした照葉樹林と,人の手が入ったアカマツ林,谷筋へのスギの植林が主となっています。市街地には下鴨糺ノ森(しもがもただすのもり),半木の森(なからぎのもり),吉田山など,一部に原生の照葉樹林が残っています。
 山地部では,鞍馬・貴船辺りを境として,北は多雪地帯の日本海側型,南は太平洋側型の植物相に分けられ,北側にはスギ・ヒノキの植林地の間にアシウスギ(ダイスギ)等も自生しています。また,峰床山の東には八丁平が関西では珍しい高層湿原としてあり,貴重な動植物を含む豊かな生態系が保たれています。
 区の面積の約80%を占めるこうした山林は,左京区のみならず京都全体にとっての水源かん養の役割を大きく担うとともに,多種多様な動植物のかけがえのないすみかとなっています。

 (4) 人口動向

  左京区には2000(平成12)年10月1日現在,171,556人,77,663世帯が暮らしています(平成12年国勢調査概数人口)。区の人口は漸減の傾向にあり,各年国勢調査によると,2000(平成12)年人口は1975(昭和50)年人口の90.6%になっています。この傾向は一層強まるものと予想され,京都市では,本計画の目標年次である2010(平成22)年の左京区の人口を153,898人[2000(平成12)年人口の89.7%]と推計しています。
 少子・高齢化も顕著で,1995(平成7)年10月1日現在で65歳以上の高齢者が区人口に占める割合は16.1%,15歳未満の年少者が区人口に占める割合は11.9%となっています。
 また,区の人口は学生を多く含んでいるため,一定期間左京区に居住して流動する単身の青年層が厚いことが特徴となっています。

 (5) 文化特性

ア)豊富な文化財

  左京区東山の山麓には,慈照寺(銀閣寺)や南禅寺など,国の史跡・名勝に指定された有名な社寺,また国宝や重要文化財が数多くあります。特に賀茂御祖神社(下鴨神社)と慈照寺は,世界文化遺産にも登録されて内外の称賛を集めています。
 また大文字・妙法の送り火,花脊・広河原・久多の松上げ,久多花笠踊,八瀬赦免地踊,鞍馬の火祭り,石座(いわくら)の火祭りなど,観るものを魅了する伝統芸能・祭事も多く,国や市の無形民俗文化財となっています。

 イ)集積する文化・学術施設

  市街部には,文化・学術に関連する施設が集まり,岡崎公園一帯に美術館,京都会館,国際交流会館,琵琶湖疏水記念館,動物園,図書館,勧業館(みやこめっせ)などが,地下鉄北山駅付近には植物園,資料館,京都コンサートホール,京都府立大学などが集積・立地していますし,京都大学,京都工芸繊維大学など,大学・短期大学はあわせて8校が区内に点在しています。

 ウ)高い国際性

  ‘学生のまち’として留学生が多く,外国人登録人口も増加しており,区内での外国人登録者の国籍数は80か国を超えています。中部北地域には,従来より国際コンベンション(注1)の施設として国立京都国際会館が立地していますが,地下鉄烏丸線が国際会館駅まで開通したことで,国際的な会議などでの利用も増加するなど,左京区は市内でも特に国際性が高いと言えます。

  3 左京区の抱える課題

(1) 時代の潮流を受けてのまちづくりの課題

ア)都市矛盾を解消・克服するまちづくり

  20世紀の間に私たちの生活は飛躍的に便利で快適になってきましたが,一方で都市活動による地球環境への悪影響も同じく加速度的に大きくなり,地球の持つ受容力を超えて人類自体の生存をも脅かす時代となってきました。都市における生活の局面では,人と人との関わりあいの希薄化などを遠因として,マナーや常識といった私たちが社会的に共生するための‘折り合いの知恵’が手放しでは共有しにくい状況も生まれています。
 このような,利便性や快適性などを志向するはずの都市の活動自体が,かえって不便で不快な環境を形成してしまうという都市の矛盾は,左京区においても様々なかたちで顕在化しています。
 私たち一人ひとりの努力と社会的な仕組みの双方によって,この都市矛盾を解消・克服して,地球環境を損なわずに多様な生命が共存でき,かつ,私たち人類も豊かな生活を享受できる21世紀を拓き,真に充実した‘折り合い上手な’都市環境,都市社会を築いていく必要があります。

イ)安らぎを感じられ,住み続けられる人権・福祉のまちづくり

  21世紀は,環境・人権の時代と言われています。しかし,実際には,女性,子ども,高齢者,障害のある人,同和問題,外国人,HIV感染者等に関わる人権問題があり,今後とも,すべての人が互いの人権を守り高めていく必要があります。
 また,全国的に少子・高齢化がますます進行することが予想されるなか,左京区においても地域社会の年代構成が大きく変わることに対応したまちづくりを,ソフト・ハードの両面から着実に進めていくことが重要となっています。とりわけ,安心して子どもを生み育てられる地域づくりや,生きがいを持って長寿を楽しめる地域づくり,多様な世代が日常的に交流を持てる地域づくりなどの観点が,各般の分野の取組のなかで留意される必要があります。

 ウ)市民参加,市民と行政のパートナーシップ(注2)によるまちづくり

  モータリゼーション(注3)と高度経済成長などを契機として,国全体が大きな社会的・経済的変革を経験した半世紀が過ぎ,それらの経験を踏まえた今日のまちづくりは,市民の参加,市民と行政の協働なしには進められないという局面を迎えています。
 さらに近年では,少子・高齢化や国際化,高度情報化などの急速な進展が,いま再び私たちに新たな変革を迫ってきています。これらのことを追い風として捉え,左京区のまちづくりを区民自身の手で,また,区民と区行政のパートナーシップを強めて,進めていくことが重要です。

 (2) 区民の生活を支えるまちづくりの課題

ア)交通基盤の整備

  北部地域は,地区間相互及び市街地とを結ぶ道路基盤が非常にぜい弱であり,冬期には積雪・凍結によって通行できないこともしばしばあります。中部北地域では,新住宅地として発展中の岩倉地域へのアクセスルートが狭く,また限られています。中部南,南部地域は滋賀県と隣接し,京都と滋賀を結ぶ山中,途中の2つの峠道がありますが,これらの路線は狭い上,大型車両も多く通行しており区内白川通りまでも混雑しています。鉄道交通としては,地下鉄烏丸線・東西線,叡山電鉄,京阪電鉄がありますが,バス交通とあわせて,区内の公共交通基盤は,回遊性や東西方向の移動性が十分ではありません。また,区内全域での安全・快適で魅力ある歩行者道・自転車道も,いっそうの充実が求められます。

 イ)都市生活基盤と地域コミュニティ施設の充実 

 北部地域では,全体として人口は増加しているものの,花背峠以北の山間地域では,1960(昭和35)年から2000(平成12)年までに人口は約1/3に減少し,65歳以上の高齢者人口比率も1995(平成7)年10月1日現在30%を超えるなど,過疎化・高齢化が進んでおり,地域の福祉を支えるコミュニティ施設の充実や医療不安の解消が望まれます。同時に,若い世代が帰ってくることによる地域の活性化への期待も高く,そのためにも上下水道など都市生活基盤の充実が望まれています。
 中部北地域では,都市化の進展によって住宅市街地が発達していますが,これに対応した地域コミュニティ施設が求められています。中部南,南部地域では,京都市の文化拠点などが集積・立地していますが,区民が日常的に活用できる施設の不足が指摘されています。
 左京区新総合庁舎の整備とあわせてこれを補うとともに,区内に点在する公有地の利用転換を検討する過程で,高齢者の日常生活を支援する施設や,地域の文化・スポーツの場としての施設の検討・整備などが,ソフト面の充実とあわせて重点的に考慮されるべき状況にあります。

 ウ)まちの安全性の向上

  京都市地域防災計画において,北部地域は全域が任意避難地域(注4)となっており,地域コミュニティの連帯が大きな防災機能を果たすこととなりますが,一方でそのコミュニティは過疎化・高齢化等により弱体化が進んでいます。その他,治山治水の対策,道路分断等による孤立化への備えなどが重要となります。中部北地域は,比較的新しい住宅市街地ですが,ミニ開発(注5)・スプロール(注6)の進行によって都市防災機能の低下が一部に生じていることや,主要な広域避難路の未整備も課題となっています。中部南,南部地域では,特に南部の市街地の成立は古く,下鴨,葵,吉田,新洞地区に密集した市街地が残っています。ここでは,路地にネットワークされた街区とコミュニティの連帯があり,その魅力と表裏一体にして,防災機能の不足が指摘されます。まちの魅力を損なわずに暮らしの安全を確保する方策を検討していくことが望まれます。

 (3) 左京区の魅力を高めるまちづくりの課題

ア)農山村と都市との新しい関係づくり

  京都に暮らす私たちの生活は,まちなかにあっても水や空気をはじめ様々な森林の恵みによって支えられており,山の緑と農山村の持つふるさとの風情はいつも変わらず,私たちの心と身体に瑞々しさを取り戻させてくれます。
 その一方で,生業としての農林業は全国的に大きな構造的課題を抱えています。特に林業では,依然高いブランド力を持つ京都の北山杉産地でも,木材需要の低迷,林業従事者の高齢化,過疎化などが進んでいます。
 全国的に21世紀の農林業の姿を模索し,大きな転換を図っていこうとしている今日,左京区においても農山村と都市との関係を新しいかたちで築き,新しい農林業環境の見直しを進めていく必要があります。そして,いまある農地・森林を守り活用することで,山間地域の活性化を進めていくことが求められます。

 イ)文化の継承と観光機能の向上

  悠久の歴史のなかで生まれ,培われ,継承されてきたあまたの文化や文化財を知り,さらに高めながら次代へとつないでいくことは,現代を生きる私たち一人ひとりの責務といえます。そして,世界的な文化観光都市・京都の持つ魅力や資源の多くがあり,また集積している左京区では,これらを区の魅力としてさらに生かしていくまちづくりを進め,京都市全体の観光機能をさらに高める役割を果たし,京都観光を振興していくことが望まれます。

 ウ)安心とふれあいのある,楽しい買物環境づくり

  地域の商業はまさに地域生活の基盤ですが,同時に,まちの風情や活気を生み,充実した地域コミュニティを育てる核となるなど,まちづくりにおいても重要な機能を持っています。
 しかし,こうした役割を主として担ってきた商店街は,消費ニーズや流通事情の変化等にともない,全国的に低迷しています。区民の生活利便性を高め,まちの活気と地域の連帯を育んでいくために,商店街や大型店を核とした商業集積など多様な商業機能のバランスのとれた共存を進めて,暮らしに密着した商業の集積を図ることが大切です。このような買物環境が充実することは,生活者である区民だけでなく,観光客など来訪者に対しても大きな魅力を作ることになります。

 エ)大学とまちの共生

  左京区には多くの大学が立地し,その周辺地域では大学とともに形成され発展した‘学生のまち’があります。近年,大学の市外流出等が論議されているなかで,地域が大学とともに生きるために,また,大学が地域とともに生きるために,互いにどのように関わっていくかを考えていく必要があります。

 オ)国際的なもてなしに満ちたまちづくり

  文化資源,文化施設などに恵まれ,また,国立京都国際会館をはじめ国際的な施設や大学等が多く立地している左京区では,外国人観光客など海外からの来訪者,留学生として滞在する外国人など外国籍区民(注7)が区内を行き交います。
 来訪者・外国籍区民双方に対してのホスピタリティ(注8)として,持てる国際性をさらに高めた国際的なまちづくりを進めていくことが望まれます。

(注1)コンベンション(convention):政治,学術などの大会,代表者会議などをさします。
(注2)パートナーシップ:(partnership):この場合,住民参加をさらに進めた市民と行政との対等な立場での協力,協働関係をいいます。
(注3)モータリゼーション(motorization):動力化,自動車化。移動手段を自動車に大きく頼るようになった社会変化を指します。
(注4)任意避難地域:地域住民の避難行動が比較的容易にできる山間部や都市周辺部等で,原則として住民の自由判断に基づいて避難する地域をいいます。
(注5)ミニ開発:市街地で開発行為の規制の対象とならない小面積の開発をいいます。結果的に,個々の宅地が狭小で公共施設等が不十分な場合が多く,好ましくない市街地を生み出すことになります。
(注6)スプロール(sprawl):ここでは都市の無計画な広がりを指します。
(注7)外国籍区民:ここでは外国籍で区内に居住する人を指します。
(注8)ホスピタリティ(hospitality):手厚くもてなすこと,歓待。

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