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京都市交通事業審議会-提言(要旨)

ページ番号7137

2012年4月11日

規制緩和実施下における市バス事業経営のあり方について【 要 旨 】

平成15年4月
京都市交通事業審議会

 

はじめに
近年,バス利用者が減少しているものの,環境問題や高齢化社会への対応の必要性から,バスは将来においても大きな社会的責任を担っていくものと考えられる。市バス事業を取り巻く環境は,これまで以上に厳しさを増すと考えられるが,抜本的な対策を行い,市民の理解と協力のもとに展望を切り拓いていかなければならない。こうした問題認識のもとで,市バス事業の現状と課題について整理したうえ,「規制緩和実施下における市バス事業経営のあり方について」の諮問に対して提言するものである。

 

【第1章 市バス事業の現状と時代潮流の変化】

1.交通事業の現状 -市バス事業を中心として-
●市バスは,地下鉄と連携を図りながら市街地のほぼ全域でネットワークを形成し,都市構造の骨格を構成している。
●市バスの1日平均利用者は,昭和55年の598千人をピークに平成13年には326千人になっている。
●交通局では,市バスの運行系統・運賃・走行環境改善など多くの面でサービス改善に取組んできたが,利用者から見た改善余地が残されている。
●交通局では,平成8年度以降,経営の健全化を目指した取組が実施されているが,民営バス事業者との比較においてコストが高く,その改善を図るため,新たな経営健全化計画が策定されたところである。

 2.市営交通をとりまく時代潮流の変化
●今後人口は減少の見通しであり,これに伴って交通需要も減少することが見込まれる。
●少子・高齢化の進展が見込まれ,通学交通の減少と高齢者のバス利用の増加が予測される。
●環境問題への対応のひとつとして,公共交通の利用促進や自動車交通の適正な利用が求められている。
●乗合バス事業の規制緩和が実施されたことにより,今後バス事業に対しても競争の原理が導入され,内部補助による赤字系統の維持が難しくなるなどの問題の発生が懸念される。

 

 【第2章 規制緩和実施下における市バス事業経営のあり方について】

1.市バス事業の果たすべき役割
【都市の路線バスとして今後も発揮すべき役割】
(1)公共交通優先型の交通体系の形成
●市バスが移動の主たる手段,鉄道駅へのアクセス交通手段として重要な役割を担うことで,公共交通優先型の交通体系の形成を実現していくことが求められる。
(2)市民生活や都市活動の支援
●市バスは京都市の面的に広がる交通需要に対して地下鉄との連携で対応しており,両者が一体となって使いやすいサービスを提供し,市民生活や都市活動を支援することが求められる。
(3)快適に観光できるサービスの提供
●京都市内に広範囲に分布する観光施設などを観光客が快適に周遊できるよう,他の交通機関と連携して分かりやすく利用しやすいサービスを提供していくことが求められる。
(4)高齢者の社会活動参加の支援・促進
●市バスには高齢者が日常生活の足として気軽に使える交通サービスを提供することが求められる。
(5)移動制約者への移動手段の提供における先導的役割
●民営バス事業者に先駆けてリフト付バスやノンステップバスなどの車両を先導的に導入し,交通事業者全体のバリアフリー化を索引することが求められる。
(6)地球環境保全への寄与と先導的役割
●低公害車両の先導的導入と公共交通の利用促進により,地球環境保全に寄与することが求められる。
【公営事業として果たすべき役割】
(7)「まちづくり」と一体となった交通サービスの提供
●交通基盤整備,福祉施策及び環境施策など総合的な「まちづくり」に向けて,京都市の政策と緊密な連携を図りながら積極的な事業運営を行うことが求められる。
(8)市民や利用者の声を反映させた事業の展開
●市民との協力体制をとるのが比較的容易であるので,従前にも増して市民や利用者の声を反映させた事業を展開することが求められる。
(9)市バスと地下鉄が一体となったネットワーク機能の発揮
●利便性の高い公共交通ネットワークを構築していくため,市バスと地下鉄の一体化されたネットワークを保持し,最大限活用することが求められる。
(10)採算性は低いが市民生活に必要な系統の維持
●採算性は低いが市民生活に必要な系統について,新たに交通空白地域を生むことなく,市民のモビリティの維持を図っていくことが求められる。
2.規制緩和への対応策
●規制緩和によってもたらされる効果として,健全な競争のもとでのサービスの向上があげられる。市営交通事業においても,より一層の利便性向上を図る必要がある。
●一方,競争原理の導入により内部補助が難しくなるとともに,採算性の低い系統からの退出が可能とされたことから,退出が発生した場合に地方自治体がその対策を検討することが課題となる。
●このようななかで,京都市において円滑な交通を確保するためには,市バス・地下鉄の一体的な公共交通ネットワークを最大限活用し,全市的・総合的な交通システムを形成することが最も有効である。

↓

2.1 利用促進を図るための課題の抽出と解決の方向性
(1) 系統の抜本的見直し

(1)中心部における系統の改善

(2)需要の少ない路線や地域における系統の再編

(3)距離の長い系統の見直し
(4)市バス同士の乗継を円滑にする系統設定上の工夫


(2) 乗継抵抗の軽減

(1)市バス同士の乗継への大幅な割引
(2)バス-地下鉄乗継割引の拡充,システムの改善
(3)魅力的で楽しみのある運賃制度の導入
(4)鉄道アクセスを考慮した系統設定,バス停留所の設置位置の見直し


(3) ダイヤの見直し

(1)ダイヤのパターン化(等間隔運行,毎時同時刻発)
(2)鉄道との接続に留意したダイヤ設定
(3)快速バスの活用


(4) 定時性を確保するための運営上の工夫

(1)遅れの生じにくい系統・ダイヤ設定

(2)バスターミナルなどの積極的活用

(3)運行管理システムの活用

(4)遅れへの随時対応

 

(5) 公共交通への利用転換に向けた各種施策との戦略的な連携

「「歩くまち・京都」交通まちづくりプラン」,違法駐停車防止や公共車両優先システムなどの走行環境改善の取組など,各種施策と十分な連携を図る。

 

(6) 公共交通のための社会基盤整備

(1)バスの転回場,待機場などを,道路整備や都市計画事業とあわせて体系的に整備
(2)公共施設,病院,ショッピングセンターなどの計画に当たっては,公・民一体となって公共交通を利用しやすい環境を整備


(7) 市民とのパートナーシップによる事業推進

(1)サービス水準や経営の目標,取組状況を市民に明らかにしながら事業を推進
(2)市民の公共交通利用促進の取組などとの連携


2.2 運営コストの削減の手法など,企業としての経済性を発揮する方策
(1) 現状と課題
●市バスの全系統を対象に,仮に民営事業者の平均的なキロ当たり走行経費(民営並コスト)によって運営した場合の収支状況を地域別に試算すると,市内中心部では多くの系統が黒字となる一方,周辺部では多くの系統が赤字となる。
●より一層の運営の効率化を図る一方,利便性の向上により利用者の増加に努め,収支改善を図ることが求められる。
● 横大路営業所では,路線維持と経営改善のため「管理の受委託」が行われており,財政効果が実証されている。
(2) 対応の方向性
(1)運営の効率化
● 系統のあり方など,市バス事業のあらゆる面において運営の効率化を図る。
(2)人件費・経費などの削減
● 民営並コストを目指した人件費の削減努力,コスト意識の徹底による経費削減に取り組む必要がある。
(3)「管理の受委託」の拡大
● 市バス・地下鉄のネットワークを維持しつつ,経営改善を図るためには「管理の受委託」を拡大することが有効であり,具体化に向けた検討が必要である。


2.3 「生活交通」の確保方策やサービス水準などのあり方
(1) 現状と課題
●「生活交通」とは,諮問において市バス系統のうち「企業性を発揮しても赤字となる系統」とされている。企業性の発揮を民営の平均コストと仮定し,外郭線の内と外で区分しながら収支状況を分析すると,周辺部の大半が企業性を発揮しても赤字となる系統となった。(平成13年度実績  市バス72系統中民営並コストで赤字27系統,民営並コストで外郭線外のみ赤字13系統)
(2) 対応の方向性
(1)生活交通とその確保に当たっての考え方
●「生活交通」とは,民営並コストで運営しても赤字となる市バス系統であるため,規制緩和実施下では,民営バス事業者であっても退出を検討する対象となるものであり,措置すべき緊急性の高いものである。
● 「生活交通」の基本的な役割は,新たに交通空白地域が生じるのを防ぎ,市民のモビリティを確保することである。さらに,京都市が目指す公共交通優先型の交通体系の実現や「まちづくり」の観点から,公営交通として市バスで維持することが望ましい。
(2)生活交通のサービス水準の設定
● 地元住民などの利用に関する意向も踏まえそのあり方を検討する。なお,当面のサービス水準としては,1日15回以上を目安とする。
(3)生活交通の維持・確保に関する方策
● まず,事業者の経営努力として,利便性の向上による利用促進とコスト削減に取り組み,収支の改善を図る。
● それらの努力にもかかわらず,依然として民営並コストで運営しても赤字となる市バス系統については,財政支援を含む維持・確保のための方策を検討する必要がある。
(市民,行政,交通局が協調し,利用促進,サービス水準,負担のあり方などを検討)


3.今後の進め方
● 市民とのパートナーシップによる推進を基本とし,サービスや経営の目標と取組状況を市民に明らかにし,事業の展開を図っていく。
<サービスや経営改善の目標(例)>
(1)市民の満足度調査による評価
(2)市バスのサービス水準:安全性, 確実性, 利便性, 快適性など
(3)「まちづくり」などへの貢献:環境への貢献度など
(4)経営の改善:収益性,生産性など
《各方策ごとの進め方》
(1)利用促進策
● 実施計画を策定し,目標年次を定めて実施していく。ダイヤや定時性の確保など個別に取り組むことが可能な改善策については2年以内にモデル的な改善に取り組む。
● 系統・乗継などの路線全体のあり方に関する方策については,モデルの実施結果を踏まえ,検討し,実施していく。
(2)経済性の発揮
● 新たに策定した経営健全化計画を着実に実施する。
● 計画の進捗状況などについて,市民に情報開示しながら取組を進める。
(3)「生活交通」の確保方策
● 「生活交通」を維持するため,当面,民営並コストで運営してもなお生じる赤字に対して,早急に財政支援の枠組みを構築する。
● 中長期的には,市民意見の反映をはかりながら,サービス水準の設定や負担のあり方などについて議論を深め,生活交通を確保するための新たな仕組みづくりに取り組む。
おわりに
本提言では,より高い水準のサービスを提供して市バスの信頼性を向上させるとともに,地下鉄と一体となったネットワークを形成し,利便性の高い公共交通システムを構築していくべきことなどを示した。
本提言を踏まえ,今後とも,市民との厚い信頼関係を構築しつつ,豊かな都市生活を支える都市交通システムの実現に向け,より一層の努力を払われることを期待する。

 

 

 

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