京都市交通事業審議会-中間報告(要旨)
規制緩和実施下における市バス事業経営のあり方について(中間報告)【 要 旨 】
平成14年9月24日
京都市交通事業審議会
はじめにこの中間報告は,京都市交通事業審議会への諮問内容の一つである「市バス事業の果たすべき役割」と,最終提言に向けた今後の検討方向を示したものである。 |
1.交通事業の現状 -市バス事業を中心として- ●京都市バスは昭和3年に事業を開始して以来,現在は廃止されている市電や地下鉄と連携を図りながら市街地のほぼ全域でネットワークを形成し,都市構造の骨格を形成する交通サービスを提供している。 ●市バス利用者は,昭和55年の598千人をピークに平成12年には336千人と減少傾向にある。 ●交通局ではバスの運行,運賃,走行環境改善など多くの面でサービス改善に取組んできたが,利用者から見た改善余地が残されている。 ●平成8年度以降,経営の健全化を目指した取組みが実施されているが,民間バス事業者との比較において高コスト体質となっているため,さらなる経営健全化が必要であり,その計画が検討されているところである。 | 2.市営交通をとりまく時代潮流の変化 ●今後人口は減少の見通しであり,これに伴って交通需要も減少することが見込まれる。 ●少子・高齢化の進展が見込まれ,通学交通の減少と高齢者の外出機会の増加等が予測される。 ●環境問題への対応のひとつとして,公共交通の利用促進や自動車交通の適正な利用が求められている。 ●乗合バス事業の規制緩和が実施されたことにより,今後バス事業に対しても競争の原理が導入され,内部補助による赤字路線の維持が難しくなるなどの問題発生が懸念される。 |
3.市バス事業の今後の課題(1)公共交通サービスの提供を通じた都市活動の維持 ●人口減少や少子化で需要の増加が見込めない中,引き続き公共交通サービスを提供していく。 (2)市民のニーズに応じたモビリティの確保 ●利用者の立場にたったバスサービスを提供し,規制緩和実施下において市民生活に必要なモビリティを確保していく。 (3)京都市の目標とするまちづくりへの貢献 ●『歩いて暮らせるまちづくり』という目標に対する貢献 (4)高齢者や移動制約者への対応 ●高齢者のニーズに対応したバスサービスの向上と,誰もが使いやすいバス交通の実現 (5)環境負荷の軽減 ●自動車からの利用転換を図る上でより一層の利便性の向上が必要であるとともに,バス車両自体の低公害化を引き続き進める。 |
4.市バスの果たすべき役割 【都市の路線バスとして今後も発揮すべき役割】 (1)公共交通優先型の交通体系の形成 ●市バスが移動の主たる手段,鉄道駅へのアクセス交通手段として重要な役割を担うことで,公共交通優先型交通体系形成を実現していくことが求められる。 (2)市民生活や都市活動の支援 ●市バスは京都市の面的に広がる交通需要に対して地下鉄との連携で対応しており,両者が一体となって使いやすいサービスを提供し,市民生活や都市活動を支援することが求められる。 (3)快適に観光できるサービスの提供 ●京都市内に広範囲に分布する観光施設等を観光客が快適に周遊できるよう,他の交通機関と連携して分かりやすく利用しやすいサービスを提供していくことが求められる。 (4)高齢者の社会活動参加の支援・促進 ●市バスは高齢者の日常生活の足として気軽に使える交通サービスを提供することが求められる。 (5)移動制約者への移動手段の提供における先導的役割 ●民間事業者に先駆けてリフトバスやノンステップバスなどの車両を先導的に導入し,交通事業者全体のバリアフリー化を索引することが求められる。 (6)地球環境保全への寄与と先導的役割 ●低公害車両の先導的導入と公共交通の利用促進により,地球環境保全に寄与することが求められている。 【公営事業として果たすべき役割】 (7)「まちづくり」と一体となった交通サービスの提供 ●都市政策,福祉政策及び環境対策などを含む総合的な「まちづくり」に向けて,京都市の政策と緊密な連携を図りながら積極的な事業運営を行うことが求められる。 (8)市民や利用者の声を反映させた事業の展開 ●市民との協力体制をとるのが容易であるので,従前にも増して市民や利用者の声を反映させた事業を展開することが求められる。 (9)市バスと地下鉄が一体となったネットワーク機能の発揮 ●市バスと地下鉄の既存ストックを最大限活用して,利便性が高く,全市的一体性を保持できる公共交通ネットワークを戦略的に構築することが求められる。 (10)「生活交通」(企業性を発揮しても赤字になる路線)の維持 ●市民のモビリティを確保する観点から,新たに交通空白地域を生むことなく生活交通を維持することが求められる。 【役割を果たしていくうえで解決すべき課題】 (1)人件費の削減や市民ニーズに迅速に対応する体制の構築に取組むこと。 (2)「市バスの果たすべき役割」を具体的かつ確実に遂行するとともに,その結果を市民に対して説明する責任を果たしていくこと。 (3)これまでにない大きな環境変化の中にあって,積極的に環境条件の変化に対応していくこと。 |
5.今後の検討内容と検討を進めるうえでの方向性 -規制緩和実施下における具体的な事業改善のための対応策について- (1)生活交通のあり方 ● 規制緩和に伴う競争によりネットワークの維持が困難になると考えられるので,生活交通の維持・運営に対する新しいシステムの構築も必要と考えられる。 (2)利用促進を図るための課題の抽出と解決の方向性 ● マイカーに勝るとも劣らない利便性を確保していくため,利用者ニーズを的確に把握し,市民とのパートナーシップのもとで利便性の向上策を検討する必要がある。 (3)企業としての経済性を発揮する方策 ● 利用促進とコスト削減が重要課題であり,既に実施してきた管理の受委託などの方策を評価するとともに,人件費の削減に取組むことが不可欠である。 |
おわりに ~市バス事業がその役割をよりよく果たすために~市バス事業の改善を図っていくためには市民,利用者の理解と協力が不可欠で,情報を広く市民と共有し,市バス事業に対する理解を深めていくという点から,事業者が経営やサービス水準に対する目標を設定し,それを経年的にチェックして市民に公表するといった新たな手法を導入することが必要である。 |
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