スマートフォン表示用の情報をスキップ

巻頭対談「困難を乗り越える知恵と心を不屈のまち 京都から。」

ページ番号109244

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

2011年10月25日

 「きょうとシティグラフ2011」に掲載された,門川大作市長と鳥越俊太郎氏の対談原稿を掲載しています。

鳥越俊太郎[ジャーナリスト]×門川大作[京都市長]

巻頭対談ページの画像

日本が豊かになったのは,人という資源でものづくりをしてきたから(鳥越)

門川 お元気で大活躍の鳥越さんにお会いでき,嬉しいです。本日はよろしく。

鳥越 いやー,これまで多くの地方首長にお会いしましたが,和装で通されている方は初めてです。私も好きで,時々家で着ていますが,いつもとなると大変ではないですか。

門川 最初は時間がかかりましたが,今は一人で数分でささっと着られます。京都の伝統産業を守りたい一心で着ていますが,着心地がよく,“頑張って着てる”感覚は全くないですね。夏でも風通しがよくて涼しいですよ。

鳥越 伝統的なものづくりの素晴らしさを,市長自ら発信されているんですね。資源のない日本が世界に肩を並べられたのは,人という資源でものづくりをしてきたから。最近は皆,大学に進み,ものづくりから離れたホワイトカラーに就きたがりますが,この風潮を教育から変えていかなければならないと思いますね。

今こそ,日本の伝統的なものづくりを見つめ直すとき(門川)

門川 従業員1000人以上の企業の求人に対する申し込みは,募集の約2倍ですが,中小企業への希望者は少ないんです。京都は99%が中小企業。素晴らしい会社がいっぱいあります。東日本大震災が起こり不況と言われる今こそ,手間,ひま,心をかける日本の伝統的なものづくりや商店街の役割などを見つめ直し,振興させねばと思っています。

鳥越 中小企業でも素晴らしい人生が拓けることを知ってもらわないと。大企業でなければ幸せな人生が送れないという価値観が戦後広まってしまいましたからね。

門川 そのためには,伝統・地場産業の商品需要を開拓することと,若者の仕事をつなげていかなければなりません。観光でも「ほんまもんの京都」,質の良いものに触れてもらうことが大切です。若い人にその価値を実感してもらおうと昨年「東京ガールズコレクション」に,メイド・イン・京都の着物を初出展しました。すぐには需要につながらなくても,新たな一歩を踏み出さなければ未来は拓けませんから。

鳥越 日本では,ほとんどの首長が先端技術に目を向けがちです。地場の伝統技術やものづくりの人材を育てられていませんね。

門川 千年を超える「ものづくり」のまち・京都では,伝統産業と先端産業が共存・融合しています。さらに京都は,「源氏物語」や,マンガのルーツとされる「鳥獣戯画」などを生み出した「ものがたりづくり」のまちでもあります。来年は鴨長明が「方丈記」を記してからちょうど800年になるんですよ。

鳥越 「方丈記」はいいですね。いつも鞄の中に入れている私の愛読書です。来年,記念の催しなどされるなら,伺わせてもらいますよ。

門川 ぜひ,お願いします!「方丈記」は,「源氏物語」に次いで世界で翻訳されている素晴らしい古典。鴨長明は組み立て式の琵琶を携帯し,庵を馬車に積んで移動した,いわば「携帯文化の先駆者」だったそうですよ。

鳥越 さすが京都人,お詳しいですね。御教示ありがとうございます。

がんに直面したとき,父の言葉に救われました(門川)

門川 今回の『きょうとシティグラフ』のテーマでは「不屈」がキーワードになっています。何度もがんを乗り越えてこられた鳥越さんは,まさに「不屈の人」ですね。

鳥越 大腸がん,左の肺,肝臓,右の肺と4回手術を受けまして。今も完全にがんと縁が切れたかどうかはわかりません。ところで市長もがんを克服された「不屈仲間」だそうですね。

門川 はい。胃がんでした。今からちょうど10年前,教育長に就任し,さあこれからと意気込んでいるときでね,ショックでした。お医者さんに「仕事が忙しいし,通院で何とかなりませんか」と聞いたら,「若いときには進行が早いから,それは難しい」と言われました。

鳥越 医者としては,適切なアドバイスですよ。忙しいからと手術を伸ばしたために,取り返しがつかなくなった人もいますからね。

門川 しかし,そのときに父がかけてくれた言葉が有り難かった。「百人の聖人の話を聞くより,一つの病に向き合ったほうがいいと言う。勉強やな」「人生に無駄なことなし」と。それを反芻するうちに,気分が晴れていきました。隣の病室の人に「なんでそんなに明るいんや?」と言われたくらいです。

鳥越 それは良かったですね。前向きに明るく振る舞うと,免疫力も上がりますしね。

門川 そうですね。そのおかげか,当初は胃を全部摘出することになるかもしれないと言われましたが,結果として半分は残りました。今はほぼ年中無休の状態で,朝から夜まで元気に仕事に没頭させてもらってます。

失敗・ピンチのときこそ,ポジティブシンキングです(鳥越)

鳥越 僕はがんになってからのほうが元気なんです。悪いところを取っていますからね。退院後,筋力トレーニングを始めたおかげで,以前は1時間半くらい立って講演していると必ず腰が痛くなって椅子に座っていたのに,平気になりました。

門川 私もおかげさまで,手術してからのほうが健康状態が良い。体重は以前80キロ近かったのが66キロに。出来るだけ歩いて毎日体重を記録しています。

鳥越 僕も体重・体脂肪,基礎代謝量・体内年齢,筋肉量・骨量がわかる計りに乗って,毎朝ノートに食べたものまでつけています。基礎代謝量に応じて体内年齢が出るのですが,今71歳で,体内年齢は46歳くらい。

門川 それはすごい。

鳥越 ちなみに“心の年齢”は18歳だと言っています(笑)。

門川 永遠の18歳ですね(笑)。がんにかかるとガタっと落ち込む人がいますが,鳥越さんが御自身の本にも書いておられる「ポジティブシンキング」で,物事を前向きに捉えて生きていくことが大切ですね。 

鳥越 どんな失敗・ピンチであろうと,必ず心の持ちようによっては得られるものがある。しかし,僕も昔からポジティブな性格だったわけではありません。京都出身の僕の母からは「あんたのような子は,京都では『好きやすの倦(あ)きやす』って言うのよ」と言われ続けてきました。「好きになるのが早いけど倦きるのも早いから駄目」と。それで劣等感をずっと持っていました。ところが新聞社に入って仕事するうちに,この倦きっぽさは好奇心が強いから,好奇心をうまく使えば記者は天職になるかもしれない,と価値観がガラリと変わったんです。

門川 ものの見方が変われば,人生は180度転換するんですね。まちづくりでも,マイナスをプラスと捉えて都市の個性を活かしていくことが大切だと思っています。

鳥越 毎日いろんな事件やニュースに出会い,そのたびに好奇心を刺激され,調べたり勉強したりする。色んなことが自分に返ってくるのが楽しいんです。残り時間は,あっても10年。この10年をどう充実させ,後悔しない生き方をするか。とりあえずやりたいことを片っ端からやろうと決めています。

震災を機に,あらゆることの「気付きの元年」「変革の元年」に(門川)

門川 鳥越さんはがんと闘いながらジャーナリストとして,ずっと現場に立ち続けておられます。この度の東日本大震災でも,被災地に足を運ばれていますね。

鳥越 4月4日に福島第一原発の正門前まで行きました。当時マスコミは自粛して,原発から30キロ圏内に入らなかった。でもこういうときこそ,メディアは一般の人が苦労している場所に行き,何が起きているかを取材して伝える必要があると感じていました。

門川 原発がどうなるかわからない状況のなか,いち早く現場に赴き,情報発信されている姿に感動しました。私もちょうどその日,仙台の被災現場にいました。京都市からは,3月11日にまず医療班や消防隊が現地へ。それから全職員に呼びかけたところ,「お役に立ちたい」との多くの提案が上がり,薬剤師,建築士,土木技士,ごみ収集作業員,教員,カウンセラー,上下水道局等々,どっと被災地に向かいました。これまで延べ1400人,市職員の10人に1人が行ったことになります。

鳥越 皆さん,いい経験をされたでしょう。

門川 どんな研修よりも魂に作用する経験になったと思います。阪神淡路大震災の年は後に「ボランティア元年」といわれました。私は,この東日本大震災発生の年を「気付きの元年」「変革の元年」にしなくてはと思っています。エネルギー政策から,まちのあり方,ライフスタイルまであらゆるもののあり方を見つめ直し,持続可能な社会へと向かわなければならないと思います。

鳥越 まさに価値観が変わる,節目の年でしょうね。明治維新以来,日本は物質的・経済的な富を目指し,残業も単身赴任も厭わず,ハードワークの中で豊かな社会を実現した。けれど,この震災がきっかけとなって「さてこのままでいいのか?」という反省が出てきた。新しいものを追いかけどんどん消費して,背伸びする社会ではなく,西陣織・友禅染をはじめ古来日本人が携わってきたものづくりを大事にする社会にしなければ。

門川 まさにそうした社会のモデルを,京都から創っていかなければと考えています。

子どもたちが地域で遊び,学ぶことが大切です(鳥越)

鳥越 日本では高度成長で核家族化が進み,地域コミュニティが失われていった。僕らが子どもの頃はガキ大将がいて,地域の中で揉まれて社会性を身につけ,遊びながら皆いろんなことを学んでいった。それが今は学校と塾と家だけ。子どもたちが地域で一緒になって遊べる環境がなくなってきています。

門川 京都市では,この春に「子どもを共に育む京都市民憲章の実践の推進に関する条例」を制定しました。また現在,「地域コミュニティ活性化推進条例」を検討しています(対談時点)。子どもからお年寄りまで皆が,住み慣れた地域でいきいきと暮らせるまちにしていきたいと考えています。改めて伺いますが,鳥越さんがこれからの京都に期待されることは?

鳥越 市電を復活してほしいですね。僕は学生時代を京都で過ごしたのですが,市電は良かった!縦横に市電網が張り巡らされていて,どこへでも行けましたから。

門川 その市電網を受け継いで生まれたのが地下鉄と市バスです。市バスは現在74の系統があり,民間の鉄道も含め“公共交通の利便性日本一の都市”を目指しています。新しくLRT(※)の研究も行ってます。大人数が乗れ,音が静かで低床の電車です。

鳥越 ノンステップ電車なんですね。京都でぜひ実現してもらいたいなあ。

門川 クルマ中心ではない,低炭素社会実現のためにも様々な取組に挑戦して参ります。本日は「不屈」の鳥越さんから,「不屈のまち・京都」を推進する貴重なアドバイスをたくさんいただきました。誠にありがとうございました。

※ Light Rail Transit 次世代型路面電車システム

(2011年8月3日,無鄰菴(京都市左京区)にて対談が行われました。)

鳥越俊太郎氏プロフィール

 昭和15(1940)年,福岡県生まれ。京都大学文学部卒業後,毎日新聞社入社。社会部・外信部,『サンデー毎日』編集長を経て,フリージャーナリストに。テレビ番組「ザ・スクープ」における「桶川女子大生ストーカー殺害事件」報道で「日本記者クラブ賞」を受賞。東日本大震災被災地の取材や復興への提言も行う。2005年に大腸がん発覚,肺や肝臓への転移が見つかり,4度の手術を受ける。がん患者やその家族を対象とした講演も積極的に行っている。

お問い合わせ先

京都市 総合企画局市長公室広報担当

電話:075-222-3094

ファックス:075-213-0286

フッターナビゲーション