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巻頭対談「音楽文化創造都市・京都の過去・現在・未来」

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2010年10月15日

 「きょうとシティグラフ2010」に掲載された,門川大作市長と広上淳一氏の対談原稿を掲載しています。

門川大作[京都市長]×広上淳一[京都市交響楽団第12代常任指揮者]

巻頭対談ページの画像

広上さん・楽団員・スタッフの心が一つになっていると実感(門川)

門川市長 京都市交響楽団の定期演奏会を明日(平成22年7月17日)に控え、広上さんには本番直前の慌しい中、今日はありがとうございます。よろしくお願いします。

広上氏 私の場合、本番前でもいたって普段どおりです。もっとピリピリしてた方が、皆さんが持つ指揮者のイメージに合うのかもしれませんが(笑)。直前の練習で大きく何かが変わるものでもなく、本番で表れるのは、この数年で私と楽団員が心を通わせてきた成果でしょうからね。今日は私も、門川市長とお話させていただくのを楽しみにしていました。よろしくお願いします。

門川 それにしても広上さんを常任指揮者にお招きして2年ですが、「京響」は大変な評判です。定期演奏会のチケットも毎回、完売が続いていますし、演奏会への高い評価も集まっています。

広上 ありがとうございます。

門川 あちこちで「京響を聴きに行ったけど、素晴らしかった」という声を本当によくお聞きします。そんなときいつも言ってるんですよ。「私、実は京響の楽団長なんですよ」って(笑)。それぐらい誇らしい気持ちです。

広上 そう言っていただけるとうれしいです。なんといっても我らが楽団長ですから。

門川 京響の運営をより効果的に行うために、平成21年度から京都市音楽芸術文化振興財団に運営をお願いする改革を行いましたが、これも功を奏しました。広上さんの積極的な姿勢もあって改革の効果が上がり、同時に広上さんと楽団員や周りを支えるスタッフの心が一つになっているのを実感します。

広上 おっしゃっていただいたとおりで、練習の場でも本当にいい雰囲気で充実しています。

門川 広上さんの提唱で今、演奏会終了後に楽団員がお客様をお見送りしていますね。そうした、お客様と心を通い合わせる取組も大変好評です。広上さんに京響に来ていただいて本当に感謝しています。

広上 門川市長から身に余る言葉をいただいて恐縮です。でも心からうれしく光栄に思います。

京響には「二度と来たくない!」と思ってました(広上)

広上 実は「京響に」というお話をいただいたとき、随分悩みました。以前、井上道義さんが京響の常任指揮者をされていた頃、当時、あるコンクールで優勝した私を、京響の特別演奏会の指揮者として招いてくださったことがありました。そのとき、京響の楽団員は必ずしも友好的な雰囲気ではなかった…。ここだけの話ですが(笑)。

門川 どうぞこの際、おっしゃってください(笑)。

広上 「どれほどの腕前か」と若造を試すような空気で、駆け出しだった私は終始冷や汗をかいて緊張しっぱなしでした。正直、「もう二度と来たくない!」って思いました(笑)。

門川 それじゃあ広上さんの京響の第一印象は良くなかったんですね。

広上 当時は、どこのオーケストラも「自分たちは芸術家で特別な存在」というような雰囲気がありました。音楽家が大事にされていた時代です。でも社会経済状況が世界的に厳しくなる中で、音楽家が「聴かせてさしあげましょう」という意識で音楽ができる時代ではなくなる。音楽活動を続ける中で、私はいち早くそういう危機感を肌で感じていました。

門川 長く海外で活躍され、幅広い経験を積んでこられた広上さんならではの感覚なのでしょうね。

広上 ですから私が悩んだ末に、それでも心惹かれて「京響に」というお話をお引き受けしてから、まず楽団員と共有したかったのは、感謝の気持ちです。すなわち、京都市民の皆様が半世紀以上にわたって京響を支えてくれたこと、そして演奏会に足を運んでくださることへの深い感謝です。今、楽団員一人一人がそういう気持ちを真摯に持ってくれています。

門川 広上さんとお話しするといつも「感謝」という言葉が出てきますね。この「感謝」が広上さんの音楽の軸になっているからこそ、多くのお客様の心の深くに広上さんの音楽が届くのではないでしょうか。それで広上さん、念のために確認しておきたいのですが、今は「やっぱり京響に来てよかった」と思っていただけているんですよね(笑)。

広上 もちろんです!京響の楽団員は非常に優秀です。私は、そんな仲間たちの力を信じ、より引き出すために「僕はみんなを裏切らないから、みんなも僕を信じて」と約束を交わしました。もし、おほめいただいているように演奏力が向上しているとすれば、そういう信頼関係を築いた結果、もともと実力が高かった彼らが頑張ってくれているからです。楽団員に心から感謝しています。

まちづくりは「人づくり」から(門川)

門川 京響は、我が国唯一の自治体直営のオーケストラとして昭和31年に設立しました。でも実はその2箇月前、京都市は財政再建団体に指定されています。そんな厳しい状況にも関わらず、私たちの先人は目先のことだけではなく、将来につながる「心の豊かさ」を大切にしてきたんです。

広上 日本の文化を育んできたまち・京都の人々ならではのふところの深さや心意気でしょうね。

門川 同様に京都は、1200年の歴史のなかで幾多の危機に直面しながら、そのたびに困難を乗り越え、蘇ってきたまちです。そのまちづくりの源泉は「人づくり」にあると思います。

広上 先ほどおっしゃった「京都の人は将来につながることを大切にしてきた」ということが、つきつめると「人づくり」になるのですね。

門川 そのとおりです。例えば明治維新の頃、京都市内は半分以上焼けてしまい、人口は3分の2に減って都市の衰退が危惧されました。しかし京都ではそのとき、まちの将来を担う子どもたちの教育こそ京都復興の要と考え、地域の皆様の力で全国に先駆けて明治2年に小学校が創設されました。また、京都大学を誘致して開設し、多くの私立大学も誕生しました。ほかにも様々な復興の事業を行っていますが、その礎にあったのが、まちぐるみで人を育てる「人づくり」の取組です。

広上 ウィーンやローマなど、世界を代表する美しい歴史都市も、それぞれ辛い歴史を乗り越え、都市の魅力を磨いてきました。京都にはそれらの都市と共通する、まちづくりの哲学を感じます。

門川 終戦後、生活が豊かでない時代に、今度は京都に音楽高校を設立しようと奔走した先人たちがいました。当時は音楽を含め単一科目の専門高校は作れなかったので堀川高校音楽課程を創設。それが現在の堀川音楽高校に、更に市立音楽短期大学を経て現在の市立芸術大学音楽学部にもつながったんです。

市立堀川音楽高校は日本一だと思います(広上)

広上 私も昨日、新しい堀川音楽高校を見学に伺いました。実に素晴らしいですね。

門川 ありがとうございます。

広上 単にお金をかけているという意味ではありません。音楽ホールも非常に音の響きがいいのですが、特に感心したのがハンディキャップのある方への配慮です。段差の解消など大変工夫されていて、エントランスやステージに車椅子の生徒やお客様が無理なく入れる。そういうきめ細かい配慮が行き届いている音楽高校という点で、全国広しといえども京都の堀川音楽高校が日本一でしょう。

門川 うれしいお言葉ですね。でも堀川音楽高校だけが特別ではないんですよ。京都市では、ハンディキャップのある方をはじめ、全ての人ができる限り生活しやすい社会環境をめざす「京都市みやこユニバーサルデザイン推進条例」を推進しています。

広上 大変意義のあるお取組だと思います。

門川 堀川音楽高校について言えば、今年度新築移転した校舎の場所は、元々、明治期に地域の町衆の力で小学校として開校し、後に城巽中学校となった学校の跡地です。この場所に息づく「一人一人の子どもを徹底的に大切にする」という地域の皆様の志と思いが、堀川音楽高校にも宿っている。だから多くの方々に、子どもを大切にする良い学校だと感じていただけている。そんなふうにも思います。

広上 京都の音楽文化も、そうした「人づくり」の志と実践の上に成り立っているのですね。

門川 そうですね。「人づくり」の伝統という「縦糸」に、多彩で活発な音楽団体、音楽系の大学・高校などの「横糸」が合わさり、独自の優れた音楽文化を形成している。そんな京都を「音楽文化創造都市」として、ますます音楽があふれるまちにしたいと思っています。

心を“満腹”にする音楽という“ご馳走”を、これからも(広上)

広上 今、祇園祭の時期で浴衣姿の方を多く見かけますが、京都は和装がよく似合いますね。ところでいつも思うのですが、門川市長が和装産業が厳しい状況の中、何とか盛り上げたいと取り組まれ、自らも常におきものをお召しになっている。理念と行動が一致されていることに感銘を受けます。

門川 ありがとうございます。でも、きものが好きだから来ているというのが一番の理由なんですよ。明日(平成22年7月17日)は京響の定期演奏会が行われますが、祇園祭の山鉾巡行の日でもあります。昨年、ユネスコの無形文化遺産に登録されたこの世界に誇る伝統文化と、世界一流の演奏の両方を、一日のうちに身近に楽しめる。こんな都市は世界にそうないんじゃないでしょうか。

広上 世界が讃える祇園祭と京響を並べていただくなんて、すごいプレッシャーですが光栄です(笑)。

門川 ところで海外で長く活動されていた広上さんから見て、京都ってどんなまちですか?

広上 1200年もの間、美しい歴史だけでなく悲しい歴史もこまやかに吸い取ってきたまちの独自の空気。歴史の中で多彩なドラマを織り成してきた人々がいて、神社仏閣がその魂を慰めている深い精神性。そんな目に見えないものが、国を超えて人々に心に沁みて惹き付けるんじゃないでしょうか。日本を語るときに京都を抜きには語れないと思います。

門川 広上さんは、現在放映中の大河ドラマ「龍馬伝」のテーマ音楽指揮を務めておられますね。龍馬たちが活躍した幕末をはじめ、京都は常に日本の歴史の表舞台となってきました。そんな歴史の中で伝統を培い、同時に常に新しいもの、世界の最高のものを取り入れて、今の京都のまち、文化があると思います。そして今の、更にこれからの京都の文化を語るときに、京響抜きには語れない!

広上 門川市長は、人をいい気持ちにさせて働かせるのがお上手ですね(笑)。私の仕事は、楽譜というレシピに添って、京響ならではの味わい深い「音楽」という料理を仕上げ、お客様の心を満腹にすることだと思ってます。最高のご馳走を提供できるようこれからも楽団員と共に頑張ります!

門川 素敵な表現ですね。ますますのご活躍を期待していますのでよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

広上 私こそ、今日は門川市長と楽しいお話ができてよかったです。ありがとうございました。

(対談日:平成22年7月16日 於:京都コンサートホール)

広上淳一氏プロフィール

京都市交響楽団第12代常任指揮者。昭和33(1958)年、東京都生まれ。東京音楽大学指揮科卒業。第1回キリル・コンドラシン国際指揮者コンクールで優勝。1991~95年ノールショピング交響楽団首席指揮者、1991~2000年日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、1997~2001年ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者、1998~2000年リンブルク交響楽団首席指揮者、2006~08年米国コロンバス交響楽団の音楽監督、2008年4月から京響第12代常任指揮者。東京音楽大学教授も務める。

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