スマートフォン表示用の情報をスキップ

多文化共生部会第2回会議議事録

ページ番号25285

2008年2月7日

 

1 日 時  平成19年9月5日(水) 午前10時~午後12時

2 場 所 「京都市国際交流会館」3階 研修室

3 出席者

   

    座 長            仲尾 宏(京都造形芸術大学客員教授)

    委 員            安藤 いづみ(京都YWCA・APT運営委員)

                   髙木 壽一(財団法人京都市国際交流協会専務理事)

                高田 光治(財団法人京都ユースホステル協会ユースホステル部長)

               鄭 禧淳(特定非営利活動法人京都コリアン生活センターエルファ理事長)

             浜田 麻里(京都教育大学国文学科准教授)

   顧 問     中村 順一(財団法人国立京都国際会館館長)

     オブザーバー 水野 直樹(京都市外国籍市民施策懇話会座長・京都大学人文科学研究所教授)

                 江口 尚志(保健福祉局子育て支援部児童家庭課課長)

                 西窪 一(保健福祉局長寿社会部長寿福祉課長寿施策担当課長)

                 宿久 勝彦(消防局安全救急部市民安全課課長)

                 折坂 一也(消防局防災危機管理室担当課長補佐)

                 的山 泰久(教育委員会事務局指導部学校指導課担当課長)

                 伊佐 久次(財団法人京都市国際交流協会事務局長)

                 井上 八三郎(財団法人京都市国際交流協会事業課長)

  事務局         京都市総務局国際化推進室

 

4 議 事(○委員・顧問,●事務局,京都市側出席者)

(1) 開会

 

(2) 京都市外国籍市民施策懇話会からの意見について(報告)

~水野京都市外国籍市民施策懇話会座長から,同懇話会からの京都市国際化 推進プラン(仮称)に対する意見を報告~

 

○     3年半前から外国籍市民施策懇話会の委員になり,座長を務めております。京都に住んでおられる外国籍市民の方々の意見を市の施策に生かすということがこの懇話会の役割であります。細かな問題についてはこれまでも市長宛に報告・提言をしてきたわけですけれども,今回の国際化推進プランの策定に当たって,細かな問題ではなく,少し全般的な,あるいは今後取り組むべき課題について懇話会から意見を出してほしいということでしたので,先月懇話会で会議を開き,今日お配りしている意見をまとめたところであります。

  まず,全般的な事項ですが,この策定委員会でも議論されているところだと思いますが,京都市に住んでおられる外国籍市民には,在日コリアンの2世や3世,さらには4世5世の世代に入っています。また,新しく来られた方々でも国際結婚の形で住んでおられる方々が多くなっているということで,外国籍市民という捉え方が適当かどうかということについて懇話会で意見が交わされました。最初の所でダブルの子どもという言い方をしておりますけれども,これは国際結婚による両親から生まれた子どもということです。それから外国籍であったけれども日本国籍を取得した人及びその子孫もおります。つまり,国籍が外国であるということだけに捉われるのではなく,これらの人々,文化的な背景を外国に持っているという人々を含めて施策の対象にする必要があるということです。そうしたことから外国籍市民という言葉について,この国際化プランの中でも是非とも適切な言葉にしていただくか,あるいはそれについて正確な説明をお願いしたいと思います。

  それから2点目ですが,多文化共生のためには,やはり外国籍市民の人権をしっかり守るということが必要だと思います。その指針となるべきものとしてはもちろん日本国憲法があるわけですが,それ以外にも日本が結び,そして批准もしている国際人権規約,児童の権利に関する条約,人種差別撤廃条約など,国際的な条約があります。こういう国際条約に定められている事柄を京都市が今後その施策に生かしていく,そういう理念を持つことをこのプランにおいて謳っていただきたい,と考えております。

  それから3番目ですが,外国籍市民と言いましても多様な方々がおられます。とりわけ戦前から在住しておられる在日韓国・朝鮮籍の市民が京都市においては依然多数を占めております。その一方,新たに日本に来て定住しておられる方々も多くなっているということもありますので,それぞれの京都に在住するに至ったその歴史的な経過や背景,さらには抱える課題というものを正確に理解し,それらを踏まえたうえで,それぞれの特性と言いますか,置かれている状況に対応した,必要な市の施策を検討し,実施することが必要だと思っております。

  以降は少し具体的な課題として挙げております。最初の情報提供でありますが,外国から京都に来られた方は,生活を進めるに当たって様々な問題あるいは疑問を抱えておられるわけであります。そのため,京都で生活していくうえでのオリエンテーションが必要であると思いますし,その生活を支援したり,アドバイスしたりする人々,あるいはボランティアバンクのような組織を設置して外国籍市民をサポートする体制を作り,取り組んでいくことが必要であると思います。

  情報提供の2番目ですが,現在,この国際交流会館で相談事業あるいは日本語教室が行われておりますが,京都市内でもここ一箇所で行われています。 京都市全体をカバーするのはたしかに大変なことだと思いますけれども,外国籍市民が住んでいる身近な生活圏,例えば各区単位などが考えられますが,そういう市内の様々な地域においてこのような相談事業や日本語教室というものが行われるように努めていただきたいと思います。

  つづいて教育についてのことですけれども,京都市において定められている外国人教育方針が15年前に策定されたわけですが,それ以降,状況が大きく変わってきております。新たに京都に来て住んでおられる外国籍の子どもたちが増えている,また日本国籍を取得する子どもたちが増えている,それから国際結婚によって生まれる子どもの多くが日本国籍になっている,というような状況の変化というものが起こっています。しかしそれらの子どもたちも,やはり外国のあるいは異文化の背景を持っているわけです。したがって,それぞれの児童・生徒たちが抱えている課題を改めて正確に理解・把握した上で,この外国人教育方針を改定する,あるいは改定というものが非常に大変な作業になるかと思いますので,改定とは違う形で新たな状況に対応して補足を行うことが検討されるべきであろうと思っております。

  それから教育の2番目ですが,民族学校をはじめとして,京都にある外国人学校に対する支援というものが一方で必要でありますし,他方,公立学校に多くの外国籍の子どもが在籍しているわけですけれども,そういう外国籍の子どもやあるいはダブルの子どもに対して母語,あるいは継承語(親やおじいさん,おばあさんの世代が使っていた言葉をその子どもが継承できるようにという意味で継承語という言い方がされている)を学ぶ機会を提供するということが必要であろう,という意見が出ておりました。そういう外国にルーツをもつ子どもたちがその背景となる文化や言葉を学ぶ機会や場を提供する・拡充するということは,やはり行政としても取り組むべきであろうと思いますし,そういう機会や場が作られれば,他の市民が異文化を理解したり他の国を理解する助けにもつながるものであろうと思いますので,そういう機会や場の提供を進めていただきたいと思います。

  3番目ですが,やはり民族学校をはじめとする外国人学校と他の一般の学校との交流を一層促進して,相互理解の促進に努めるということが今後さらに必要になってくるであろうと思います。

  それから留学生・就学生についての問題です。留学生の問題については前の国際化推進大綱にも挙げられていたと思いますが,まだ大学に入っていないけれども日本語を勉強するために日本に来られる人達,すなわち就学生に対する支援というものがまだまだ十分には行われていないので,ここで留学生とともに就学生を挙げています。

  今後,留学生の増加というものが予想されるわけですけれども,留学生が住む住宅の問題や,アルバイトなどの問題も大きくなっております。そういう問題への対応や,留学生・就学生など,外国から日本に学びに来ておられる方と京都市民との交流の場を拡大する,そういう形で留学生・就学生の生活の支援,交流の促進が図られるべきであると思います。

  2番目ですが,言葉の問題や生活上の問題など,より多くの問題を抱えているのは留学生よりも就学生です。日本での在留の資格というものも決して安定的なものではないわけです,その就学生が安心して勉学に励むことができるよう,生活の支援について,やはり京都市としても今後検討して取り組むべきであろうと思っております。

  つぎに外国籍市民の市政あるいは社会への参画の問題でありますが,まず外国籍市民については市の職員になるということは現在も認められているわけですが,管理職に登用するということについてはまだ不明確な点があると思っております。それを今後解決するということが必要であると思います。また,京都市の行政に意見を反映させるという点では,各種の審議会の委員に外国籍の市民も就任が可能であるのですが,それが実はあまり知られていない,ということが指摘されています。ですから審議会の委員になれるということについて広く周知するべきであると思います。それから,これは京都市だけで解決できるものではないかもしれませんけれども,やはり今後外国籍市民の参政権についても検討をする必要があると思います。このようないくつかの問題を踏まえて,外国籍市民が市政に参加できるよう一層その促進に努めるべきであると思います。

  それから社会への参画ということですけれども,京都という地域社会において,多文化共生の社会というものを築いていくという点において,京都に住んでおられる外国籍の方々をもっと活用してほしいという意見が懇話会の委員からもたくさん出ております。ですから母国の文化や言語を紹介する,そうした方々の活躍の場を設けるということや,新たに京都に来られた外国籍市民に対しても,同じ国あるいは近くの地域から来ておられる方々がすでに京都におられる場合が多いわけですから,そうした方々の生活を援助するという意味でも,多文化共生大使といった名称のものを設けてはどうかという意見が出ておりました。これは例えば留学生であれば,各大学ですでに日本に来て長く勉強している留学生もいるわけですので,新たに来られた方々がそういう人たちの援助を受けるということが大学などでは比較的やりやすいわけですけれども,それを京都市全体に広げる,そのようなイメージであります。

  最後に,国際化の推進体制についてですが,プランが策定されたならば,それが確実に実行されるように,各行政のセクションや窓口,その他学校や企業,NPOなど,それぞれ国際化を推進するという目的をもって,それぞれの機関が果たすべき役割というものを明確にする,それとともに効果的にお互いに連携協力して国際化に取り組んでいく,そのためにネットワークの強化が必要ということであります。

  それから,これは全般的なことであるかもしれませんが,国際化推進プランの中に多文化共生という言葉,これは現在ではほぼ日本でも定着している言葉だろうと思いますが,この文言を含めることによって,国際化の中身を明確にするということが必要であろうと思いますし,外国籍市民に対する施策や他の京都市の行政において多文化共生という視点を持って今後施策を行っていく,そのことを明らかにすべきであるという意見であります。

  それから最後ですけれども,外国籍の市民に対する他の一般の京都市民が持っている認識・理解を深めるということが必要であるということです。同じ市民として共に生きていくという意識を持っていただくように啓発を一層促進する,そしてさらに交流する,お互いに理解し合うことのできる機会をさらに増やしていくことが必要である,ということです。

  大体以上が懇話会の委員から出ていた意見です。他にももちろん様々な意見が出ておりましたが,国際化推進プランを策定するに当たってぜひとも取り上げて検討していただきたい事項に限って報告をした次第であります。

 

○     どうもありがとうございました。今からしばらくの間,今の御報告に対して質問あるいは御意見を賜りたいと思います。まず私から質問ですが,市政・社会参画のところの市管理職への登用ですが,これは登用の検討ということですね。現在は登用の道がないということで。それから,外国籍市民の参政権ですが,これは京都市議会でも議決しているように,国政の問題ではなくて地方参政権,つまり京都市の市会議員等の参政権の問題ですね。

○     その通りです。

●     管理職の件について,事務局から御説明させていただきたいと思います。今のところ京都市の中で,いわゆる課長級以上と課長級以下でも一部のポジションが管理職と呼ばれているところがあるのですけれども,管理職に外国籍の方がなれないということはありません。そもそも,外国籍の方は,何か権限を発動するような,公権力の行使に関わるポジションや,公の意思形成に関わるポジションにも就くことはできません。京都市の課長級には大きく分けて課長と担当課長というものがございまして,その中でラインの課長級というのは今のところ就くことができないとされていますが,担当課長については就くことは可能となっております。ということで,管理職に登用の可能性がないことはないのですが,まだ国籍用件の緩和も13年度実施の試験からということもありまして,まだなられていないのが現状です。

○     課長はラインで,担当課長はラインではなくて,その問題について取りしきるセクションの長であるということですね。

●     そうですね。その担当課長の職についても,一部本市の基本政策の決定に関わるようなところは除外されるのですが,担当課長の職についてはなれるポジションもあるということです。

○     実態としては担当課長になられている方は現存するのですか。

●     国籍要件の緩和が13年度試験実施ということでまだ期間が短いこともありまして,まだなられておりません。

○     経験年数というものがありますのでまだ難しいでしょうけど,技術分野ではかなり可能性が高いと思います。

 

○     参政権のところの認識ですが,選挙権と被選挙権の両方ということですか。

○     懇話会でそれについて詳しく議論したわけではありませんが,私の個人の意見で言いますと,もちろん被選挙権も含まれると思っています。

○     かつての地方参政権は投票ができるというところに限られていたと思うのですが。

○     国会に提出された案はそういう風になっています。

 

○     大変示唆に富む,素晴らしい御報告だったと思います。今の御報告を伺って賛同するところがほとんどなのですが,質問も含めて述べさせていただきます。  

  まず是非,外国籍市民を少し広げた形の名称というのが考えられればいいと思います。よくオーストラリアでもカナダでもエスニック・グループという言葉を使っています。ただ,今ここで議論しているのはエスニック・グループとも少しちがうようです。少し長い文章だとなんとなく意味の通じる言葉が出てくると思うのですが,4つか6つかの言葉でというのは非常に難しいと思うので,これは周知を集めてということでしかないかと思います。

  多文化共生部会の守備範囲と言いますか,検討事項で,今報告されたように,戦前からの方,中・長期の方,短期の方,短期と言っても旅行者は除外していいと思うのですが,京都には割合3ヵ月とか6ヶ月ぐらいで研究に来たり,夏期講座に来たりする外国の方もあると思うのですが,そういう方も含めるとすごく大変になるのですが,その辺りの色々な多様性に対し,項目別に対応を検討するのか,重点をつけて,共に生活をするということで,戦前からの長い方,あるいは中・長期,少なくとも1年ぐらいは生活をする方という方を主とするのか,ということはアプローチの問題としてありうるのかという気がいたします。

  外国人教育方針についてはまだ見ていないので,これから勉強したいと思っております。民族学校などの支援は非常に大事で,大いに推進をする必要があると思います。多文化共生という視点で考える場合には,公立学校や私立学校にいる外国籍児童・生徒,外国に関わる文化的背景を持った人をどうするかということと,その場合にそれぞれの学校で何をしたらいいかということと,そういう方を集めて補習という形ではなくて,共生に必要な,あるいは共生の一員として資するような機会の提供というものを考えるということが重要ではないかと思って,伺っておりました。

  多文化共生というのは,これから日本で一つの重要な課題になっていくと思います。第1回会議でも申し上げたかもしれませんが,私はオーストラリアに長く住んでいまして,ちょうど1960年のウィットラムが,アングロ・サクソンへの同化主義から多文化共生(マルチ・カルチュラル)へと政策の180度転換をしたのです。それで州の政府の大臣にも多文化担当の大臣が置かれたりしました。今は保守党で少し後退しているような感じがあるようですけれども,しかし厳然として社会の中に組み入れられています。例えば通訳の問題にしてもそうです。

  オーストラリアの人の名前を見ますと,ラテン系の名前も東欧系の名前も中南米の名前もアジア系の名前もみんな入っているような状況です。日本の中でも,例えば委員会で,何人かの外国籍と,あるいは外国に関わりを持った方というものが一目でわかるような,そういうメンバーが入っているものももちろんあります。日本とオーストラリアと比べると状況は非常に違いますが,そういうものをこれからどんどん増やしていくということが必要だと思います。

  外国籍市民の管理職の登用のことなども今話題に出ましたが,外国との関わりを持っている方で市民権を持っている,あるいは日本国籍の方が当然なれるということがあるものですから,そういう方も大いに共生と言う視点で中に入り込んで,例えば,なんとか大使ということで京都府の方でもやっておられます。外国から来た人が外国のことを色々話をするという大使です。むしろ社会の中の一員として共生している人が京都の社会の中でどういう関わりを持つかという,そういう役割を持つ人というので,名前は多文化共生大使がいいのかどうかはわかりませんけれども,そういう人材が必要なのではないかと思います。

  最後に1点,母国語という言葉は,今外国でどういう風にしているかはわかりませんけれども,マザー・タングという言葉が一応流行っているのですが,母国語という言葉,あるいは母語という言葉と合わせ,継承語という言葉が使われているのは,どういう視点か質問させていただきます。

○     母語と言った場合には,例えば在日コリアンでも4世ですと,ほとんど日本語を話しますので,母語というと日本語になってしまうのです。他方で,母国語と言うと,韓国籍の人の場合は韓国語ということになります。その点では母語と言ってもちがいますし,母国語というのも必ずしも適切であるとは言えない。日本籍になっている人の場合であれば,そもそも母国というものは何なのかということが非常に難しいのです。そういったことから最近提唱されているのが継承語という言葉で,お父さんかお母さんかどちらかが韓国籍であれば,その言葉を引き継ぐ,ということで,そういう引き継ぐという条件をつくる,という意味なのです。必ずしもそれを学ばなければならないというのではなく,その人が学ぶ意思があれば学ぶことができる,そういう条件を整えるという意味だと思います。それはカナダなどでも言われていることです。

○     英語で言うと何と言うのでしょう。

○     ヘリテイジ・ランゲージ。英語のそのニュアンスも日本語にうまく置き換えられていないのです。ヘリテイジというのは要するにその社会の非常に貴重な文化・遺産であるという発想だと思うのです。

○     今の言葉の件なのですが,ここで明確に書いていないのですが,今海外から来た子どもで,ある程度就学年齢になっている子どもたちは,自分の前に住んでいた国の言葉はわかるが,日本語がわからないで日本語についていけない,そういう子どもたちに対して日本語を教える場,プラス母語で教育をする機会を与えることも大事だと思います。というのも日本語を習得することも大事ですけれども,それプラス教育の中身というものを年齢に応じて身につけていかなければならないからです。そういう場合には継承語ではなくて母語という言葉もいるのではないかと思うのです。

  全般的事項のところでも,外国籍市民という言葉についてということがありますけれども,本当に今いろいろな人がいて背景が複雑なので,私たちが考えているのでは,その時と場合によって言葉を分ける必要があるのでは,場合によっては長くなるけれども,いくつか併記する必要があるのではないかと思います。

 

○     御報告いただいたことのほとんどのところに触れていただきました。私は皆様方の御発言がなかったところでかなり重要なことがあると思うのです。一つは,多文化共生という言葉についてです。前回,市民がこの言葉にまだもう一つ馴染みがないので,多文化共生という部会を作るということになってもあまり関心がないのでは,という意見があったのですが,他都市の色々な施策を見たり,総務省の方針を見たりしても,全部多文化共生という言葉になっているのです。そうすると国際化推進プランというよりも,メインにするか,サブにするかは別にしても,むしろ多文化共生という言葉を使って,京都市の今後の施策としてもどんどん広めていくという機会にしたらいいのでは,という気がしてきました。それはまた後ほど皆様方の御意見を伺った上でまとめていきたいと思いますが,今から多文化共生という言葉を引っ込めるよりも,むしろ使っていった方がいいのではないかという気がしました。

  もうひとつは国際条約です。これについては日本国憲法の第3章の基本的人権の条項は国民の権利と義務と書いてありますが,これは単純に日本国籍者に限定するものではない,ということは学会の定説になっておりまして,日本社会に住んでいる全ての市民と解釈しないと合わないということです。そういう点から言うと,日本国憲法で十分ではない表現になっているところを生かす意味でも,日本の議会で批准しました,国際人権規約,人種差別撤廃条約,児童の権利条約,そういうものに基づいて多文化共生施策をするのだ,ということを理念としてはっきり打ち出すということはとても大きな意義があるように思います。これも皆様方の討論の中で御賛同いただけるなら,ぜひとも織り込んでいきたいと思います。

 

○     先ほどの報告で,ほとんど議論するべき観点については挙げていただきましたので,今後それぞれの項目については議論を深めたらいいと思うのですが,外国籍市民施策懇話会そのものについて,これはもともと国際化推進大綱ができたときに外国籍市民の市政参加のひとつの方法として,懇話会で外国籍市民の方々が中心となって議論して市政に求めるべきことを反映していくということで,市政参加の方法として考えられたわけですが,今の時点で,これまでずっとしてきたような提言の仕方,方針なり報告の仕方で外国籍市民の方々の意見が市政に十分に反映できていると懇話会自身がお考えになっているか,何か御意見がないのかなと思います。

○     そのことは私も念頭に置いておりませんで,懇話会でもそのことは議題にいたしませんでした。懇話会は創設から10年になっていますから,その役割や名称の点で見直しも必要かとは思います。それを今回の国際化推進プランの中に書くかどうかについては,すぐには難しいと思いますが,今後それについては考えていかなければならないと思います。一つには市政参加の役割を果たしているわけですが,それに加えて今回の国際化推進プランの促進を図っていく,推進体制の一部としての役割を果たしていく,ということも考えられます。

○     それでは,他に御意見がないようでしたら懇話会の御報告はこれで終わりまして,次の議題に移っていきたいと思います。

 

(3) 審議

~事務局から子育て支援・教育,福祉・医療,防災対策,留学生等支援について,主な取組や主な課題の説明~

○     次に補足資料として提出いただいた件について,各委員から御報告いただきたいと思います。

○     今日教育分野について討議をされるということで,時間も限られていると思いましたので,考えていることを簡単にメモにまとめてまいりました。水野座長の御報告とも重なる部分もあるので,適宜省略しながら進めさせていただきます。

  まず,外国人教育方針の改定というものが教育分野で一番大きな課題だと思っております。先ほども名称をどうするか,外国籍市民か外国人なのかということがありましたが,この部分につきましても外国人という枠組みがすでに成り立たなくなっておりますので,できれば名称の変更も含めて検討する必要があるのではないかと考えております。

  前回の会議のとき,外国につながる子ども,国籍で括るのではなくて,両親の背景を含めた調査をする,と申し上げたのですが,まだ実際には行われていないということですので,是非,実態調査をしていく必要があるだろうと思います。その実態調査に基づいた形で新しい方針を策定していく必要があるだろうと考えております。

  2点目ですけれども,今学校現場で,特に行政のレベルでですけれども,こういった分野を扱う枠組みが3つに分かれておりまして,外国人教育,主に在日コリアンの方々との共生を扱う分野,それから国際理解教育,色々な国の人たちと仲良くしていこうという分野,それから外国からやってきた子どもたちに当面の日本語教育をするということや生活の適応支援をするといった3つの分野がバラバラに行われている感じがあります。多分,学校の中の分掌でも別々だったり,あるいは京都市の先生方の研究会でも,そういったものが現在はバラバラになっているということがありますので,行政のレベルでこの3つをうまく連関させ統合させるような仕組みづくりというものが求められているのではないかと思います。今在日コリアンも非常に多様化しておりますし,国際理解といっても国際化が進んできて遠い国のことではない,本当に足元のことになっておりますので,3つを連関させることで効果も上がるし,より意義のある教育ができるのではないかと思います。

  それから,学校にいる外国籍の子どもが多様化しているということですが,子どもに対する対策だけではなくて,その保護者に対する支援も今求められていると思います。国際結婚が増加しているのですが,やはり多いパターンはお母さんが外国の方でお父さんが日本籍の方というパターンがニューカマーの場合には多いだろうと思います。そういった場合,お母さんが日本の学校制度をあまり御存じない,学校の側から十分にお伝えすることができていない,あるいは担任の先生とのコミュニケーションがうまくいかないというようなことで,非常に課題が大きいと思っております。学校の先生としては多分お父さんに伝えてそれでいいだろうということがあると思うのですが,実際お母さんが子どもに関する色々な判断を責任をもってできないことがありますので,その部分をカバーしていく必要があります。具体的には,学校からの色々な情報を多言語化していくということがあります。

  3点目は,外国語や外国文化に精通した教員を積極的に採用していくということも今後求められてくると思います。資料には書いていませんが,この中には在日コリアンの方の問題も含まれています。すでに在日コリアンの方で教員になっている方がたくさんおられると聞いております。ただ現実には色々な問題で,通名でお仕事されている先生も多いのです。子どもたちには本名を呼び名乗る運動ということで進めているのですが,先生の方が実現していないという状況もありますので,そういった面も含めて多文化の背景を持つ教員の採用ということで,問題として考えていったらいいのではないかと思っています。

  それから,外国につながる子どもの学力向上ということで,これは京都市の中国帰国者の子どもに限定した調査なのですが,調査をされた先生がいらっしゃいまして,それによりますと明らかに進学率が低い,あるいは高校の中退の率も非常に高いという結果が出ておりますので,そこの部分をどうやって支援していくかということを具体的に考えていただきたいと思います。今すでに京都市では,特に外国から来た子どもが多い学校に,日本語教室を設置したり,日本語の先生を配置したりということをされているのですけれども,ただ非常に残念なことに,常勤講師の先生が担当しておられるため,安定した運営になっていってないというようなことがありますので,そういった日本語を担当される先生の位置づけというようなことも含めて,今後改善していく必要があるだろうと思います。

  それから,先ほども御意見がありましたとおり,来日した当初には日本語での学習というものができませんので,母語での支援に力を入れていく必要があるだろうと思います。カナダやスウェーデンなどで実例があるのですが,そういった外国からやってきた子どもたちが,例えば5人くらいでまとまって中国語で授業を受けたいと言えば,中国語ができる先生がやってきて算数や社会の授業をしてくれるという,そういうシステムを持っている国もあるのです。今京都市のレベルでそれを実現するというのはかなり色々な問題があるだろうと思いますが,そういった面も視野に入れながら,今後母語での支援や継承語の教育といったことを考えていくべきだと思います。

  それから保護者への支援とも重なるのですが,進学・進路に関して色々な情報を多言語・多文化化していく必要があると思います。出身国との学校制度との違い,などということが案外理解されていなかったりしますので,そういったことも含めてやっていく,そして,各レベルで,例えば小学校に入るまでに小学校のことをきちんと理解していただいた上で小学校に入っていただく,中学校に入るときには,多分日本語での説明会というものは普通にされているのだと思うのですが,外国から来た保護者の方にはそういったものに参加されてもなかなか理解ができないということもありますし,それから日本人同士でしたら大体どんなものかということがわかっていますので,その共通理解を前提とした上での説明になりがちなのですけれども,外国から来られた保護者の方には,こういうところが違うのだということを,日本人にとっては当たり前のところまで含めて説明するということも必要ですので,そういった形での進学説明会・学校説明会を開催していく必要があるだろうと思います。

  それから,これはかなり大きい問題だと思うのですけれども,市立高校に外国人受け入れ枠を設けるということも進路保障として非常に有効ではないかと思います。今京都の府立高校には中国帰国者の生徒の受け入れ枠というのが一定あるのですけれども,実はその枠というのはかなり条件が厳しくなっておりまして,小学校4年生以上の来日でありますとか,中国帰国者以外の外国の方には利用できないような仕組みになっています。それをもう少し門戸を広げて,広く外国人に対して門戸を開くような受け入れの枠をつくってもらえれば,外国から来た子どもにとって非常に励みとなるのではないかと思うのです。

  それから子育て支援の部分とも関わると思うのですが,すでにいくつか主な取組の中でも取り組まれているようですけれども,外国から来られた保護者の方,お母さん達が孤立をしないような,多言語・多文化による子育て支援ですとか,あるいは育児サークルなどを開いていく必要があると思います。(資料には母語と書いてしまったのですが,)お母さんが外国から来られた方,お父さんが日本の方という形で日本で育つと,なかなかお母さんの持っている文化なり言語なりを子どもに伝える機会が保障されないことが多いです。やはり子どもは日本の学校に行ったり,日本の社会で育ちますと,日本のものにより強く影響を受けるということがありますので,そういった形で日本語・日本文化を主に学ぶ形で大きくなると,今度は思春期になったときにお母さんとうまくコミュニケーションができない,ということでまた色々な問題になったりするということがありますので,色々な意味で親の継承語の学習ということは非常に大事だと思うのです。そういったことを今は家庭の責任でするということになっていると思うのですが,継承語というのは単に個人にとって親から受け継ぐという意味だけではなく,社会全体にとって財産であると思いますので,そういった観点から家庭言語の教育の支援というものにも目を向けていくべきだと思います。

  最後になりましたけれども,こういった色々なことを国際化推進プランなり外国人教育指針なりに盛り込んでいただくことは非常に大事なのですが,その精神なりその理念なりが,実際に学校の現場あるいは保育の現場で働く先生方・保育士の方々に,いかに浸透していくかということが実は一番キーになるのではないかと思っておりますので,適切な研修を行うなり,あるいは実際にそういったことを実践の場でするにはどういう風にすればいいかということを,より具体的な形で現場の先生方に示していくことが求められているのではないかと思います。

○     私が今日参考に持ってきたのは,大阪府内での外国人,特に民族学級をどうやっているかという状況の資料です。総務省の報告に神奈川や川崎などが載っていましたので読みましたが,取り組み方によってかなり運動の展開もちがうのだということを大阪の資料で感じましたので,参考になればと思い,持ってきました。京都よりはかなり門戸が広く,多くの人に対することができているのではないかと思いました。

  私も外国籍というように,なぜ国籍で括るのかということを,私自身2世,外国人として非常に思っております。外国人意識がないものも3世・4世になるとありますが,私は日系ブラジル人だとか日系アメリカ人だとか使われるように,世界的に使われている外国人系市民という形でくくった方が理解しやすいのではないかと思います。

  最近私はダブルの国籍の悩みを聞くことが多いのです。国際結婚によって生まれた子どもは,自分の中に2つの国を持っており,アイデンティティ確立の意味で,どちらかの国籍に偏重していくということを感じます。国籍法によって20何年前からそうなったのですが,その後20歳を迎えた子がたくさん出てきています。この子たちは,生まれたときから国籍をまだ決められていないわけですね,それはすごい理解があるようですけれども,現実としては小さいときから日本人扱いされることで,自分の中の一つの民族・国,文化を排他して育っていくということなのです。それがその人にとっては気づいたときにとてもショッキングなことなのです。ですから,認識して,自覚して継承していくということを,意識的に幼いときから与えることが大事で,幼いときにシャットアウトしてしまって日本人扱いをするのではきちんと成長しにくいかなということを思っています。ですから,未来の子どもたちのために,この資料は参考になるのではないかと思い,京都でも,もう少し他の地域の経験も入れて新たに10年の策定をした方がいいと思って資料を持ってきました。

○     ありがとうございました。今の2種類の資料ですが,少し補足をしますと,大阪府の場合,これは2001年,今から6年前の基本方針ですね,大阪府もこの時点で改定していると思うのです。それまでは在日韓国・朝鮮人の教育に係る基本方針だったと思います。それが,サブタイトル,多文化共生の教育を目指して,を含めて2001年に改定されています。

  京都市の場合は,先ほど話にもありましたけれども15年前に外国人教育基本方針ができたのですが,そのさらに10年前にその試案として,事実上25年間にわたってこの方針は出され生きております。ただしサブタイトルでは,主として韓国・朝鮮人の子どもの教育を中心として,というものがついておりまして,当時の情勢から言うと,京都市の外国籍市民の8割5分が韓国・朝鮮籍者で占められていた,ダブルの子どももまだ非常に少なかった時代でありますので,そういう方針の名前であって,実践もそのようになっていたと思います。それが大阪の場合は,2001年の段階で少し名前と中身と改めなければならないということになってきたのです。それが先ほど皆様方からの御指摘がありますように,今の段階での多様化をどのように反映させていくかということを,この策定委員会で結論を出していくということになろうかと思います。

  それから民族学級については,これも在日コリアンの方々の子どもの教育というところから,各地で設置されております。大阪ではここにありますように100校以上と非常に多い数です。これは在日コリアンの方々の人数が多いことにもよりますけれども,京都市の場合でも,国籍だけで勘定しても2万数千人の在日の方がおられて,やはり7割5分か8割が在日の方であるということなのですが,民族学校は京都市では3校しかまだ設置されておりません。それから国際クラブという形で,中身は在日の子どもを中心にしているという学校も1・2校あるようですが,先ほど窓口がバラバラになっているという御指摘もありましたように,どうもそのあたりがちぐはぐな感じがいたしますので,そういうことを含めて,この民族学校,あるいは国際理解教育,日本語教育をどうするかというところの検討材料としてお考えいただければよいかと思います。

  今お二人の方の補足資料を含めて,中身が子育て支援・教育のことに入っておりますので,事務局からの資料も含めて,今お二人の御報告プラス他に御意見がありましたら賜りたいと思います。

○     最初に,このままでは話がしにくいので,外国籍市民は一応これまでどおり外国人登録をしている外国人の人達ということにして,ダブルのと言うのもあまり聞こえがよくありませんので,あと最終的にどうするかは別にして,ここで話をするときには外国系市民とでもとりあえず呼びませんか。これらの方は,市民として,国籍をもった市民として,たまたま外国系であって,本来はもともと日本人市民と同じように等しく,市民社会での権利を保障されるべき,当然そういう権利を持った人たち,がたまたま外国系である,だからどうしようか,という議論をしたらいいのではないかと思います。

○     御提案ありがとうございました。

○     先ほどの御報告,私はすべて大変大事なことだと思いますし,賛成なのですが,2番目の3つの柱の統合ということについて,個人の意見なのですけれども,外国人教育,外国系市民子弟の教育,これはまさに多文化共生ということで非常に大事です。国際理解教育,これも日本では一番,京都でももちろん大事で,いかにして学生・児童一般に国際情勢・国際理解というものを徹底して教育の中に入れるか,これもものすごく大事な課題だと思います。それから,帰国外国人児童というのは中国の外国人で,日本の帰国子女は入っていないわけですね。

○     帰国子女の枠組みも本当は一緒にすべきだろうと思いますが,この席での議論には少し馴染まないと思います。

○     帰国子女の問題もすごく大事で,ここでは多文化という文化で括っていますから,帰国子女は直接入らないので,このワーキンググループの範疇には入らないと思うのですけれども,日本の社会というものが異質なものを割合排除する,仲間外れにするというような風潮が社会全体にあって,学校の中でも帰国子女いじめというようなものが,かなりなくなってきたとは思いますが,そういうことを排除するという意味では,色々な異なる環境の人が一緒に生きていき勉強するという意味で,帰国子女も同じような共通する位置づけもありうるのではという感じはいたします。ただ,私が申し上げましたのは,帰国子女は3本柱には入っていないのですけれども,それぞれ基本的にはちょっと違うものですから,特にその3者が外国人教育と帰国外国人児童生徒支援という第1番目と第3番目はひとつの大きな括りの中で取り扱ってもいいのかと感じがいたしますけれども,ものすごく相密接に関連はするのですけれども,統合という言葉にためらいというか,少し違うことで両方ともすごく関連するというところを感じたものですから発言いたしました。

○     この辺は組織体制の問題でもありますので,教育委員会から,現状はどうかと,3つはバラバラのように見えると,なんらか関連づけて統合なりなんなりという御意見が出ているのですが,いかがでしょうか。

●     バラバラとはあまり思ってはいません。体制的に申しますと,外国人教育に関しましても所管を学校指導課でしていますし,国際理解教育,あるいは児童生徒支援という,こういう枠組みそのものが外国人教育に含まれてくると思うのですけれども,バラバラというほどのものではないと思います。学校現場の受け止め方としてそれぞれの担当の先生が異なるとか,実際の研究会の活動などでも分かれている部分がありますので,その辺の連絡ができていないという現状があることは確かだと私も思います。そういう情報交換でありますとか人的な交流でありますとか,そういうことはこれからもしていかなければならない課題だと思っております。施策そのものとして融合ということになりますと,担当者が今現在異なる場合にひとつにするとか,ひとつのセクションをつくるとかいう御提案だと私は受け取ったのですが,それも今後の検討課題だと思うのです。

○     ということは,学校の現場で先生方の公務分掌としてそれぞれあるけれども,教育委員会としては同じような分野の担当の方が掌握されているということでしょうか。

●     一人ということではないのですけれども,課としてはひとつですので,その辺の連携はとれると思っております。ただそれを専属に新たに融合という御提案ですので,そういうことになりますと,またこれからの検討課題かなと思います。

○     組織上どうなるかというよりも,むしろ有機的に関連させて進めるという,それが必要なことですね。

○     参考までに,懇話会の中でもそういう意見が出ておりました。学校の現場でそれぞれ担当しておられる先生が,何か取組みをするのにお互いに話し合ったりしてやっていないのではないかということが指摘されておりました。確かに教育委員会の中では,全体としての施策ということを考えておられるのでしょうが,もう少しそのことを学校の現場の方で受け止めてやっていただくことが必要だと思います

●     それについては,当然各研究会ですとか学校の先生方の御意見もいただきまして,また有機的な関連とおっしゃっていただきましたが,そういうことも当然していかなければならないと思っております。

○     例えば,合同で研修会をされるとか,合同で集まりを持たれることは学校内で可能だと思うのですね。

●     校内研修ということであれば,可能だと思います。

○     こういう取組をするときに,ある程度学校にそういう子どもたちがたくさん集まっている学校だと,進めやすいのですけれども,居住地域によってはその学校に一人か二人しかいないと,学校としての体制の作り方やそこへの重点のかけ方というのは変わってしまいますよね。そうすると同じように学校に通いながら,環境において格差が生まれてしまう。逆を言ったら,少数のところでそれを補うような,学校だけではなく地域の中にそういった,社会教育の分野になるのかもしれないが,それを補完するような教育の機会を設けられるような仕組みも検討が必要なのではないかという気がします。

○     かえってそういうところの保護者や子どもほど孤立していますね。

○     多文化共生という言葉をこれから盛り上げていくというスタンスで考えた場合,多文化共生という言葉を教育の面で,小学校・中学校・高等学校で,やっぱりこれが必要なことなんだ,これは非常に大事なことなんだと広げていくことが,特に日本にとって必要だという気がいたします。おっしゃられたことを具体的にカリキュラムの中に入れるというくらいでいい話だと思いますし,こうやってそれぞれの地方自治体の教育委員会でもこのような指針が出ているところもあるわけで,文科省でもそういうことであれば,カリキュラムに多文化共生が入ってもいい,というようになるのではと思います。

○     何点かあるのですけれども,よろしいでしょうか。一つは,先ほどの話で家庭教育の支援という部分があるのですが,前回のとき,私が日本語を学習するということを質問させていただいたのですが,例えば地域,児童館などできるだけ地元にある所で,何人かの外国籍のお母さんがいた場合に,日本語を児童館とかそういうところを拠点にして,または小学校でもいいのですが,例えば児童館,そのぐらいの年齢のいるお母さんであれば,そこで日本語のボランティアによる学習をする,そこを拠点にすることによって,その児童館とかの出入りをする,そしてそうすると地元のお母さん達とも顔見知りになったりしてある程度コミュニケーションができるようになると,学校のことについても何か情報を得られるようになる,そしてまたそのお母さんが親しくなると,そこの児童館で自分の国の絵本を読む,という形で,多文化共生と日本語とか情報とか,そういうものを連携させていけないかと思います。そのためにはやはりどこか遠くではなくてその人のいるできるだけ近いところで,理想ならばその人が住む地域の児童館で,日本語と多文化共生につながる様々なことが同時に行えたらいいかなと思っていて,これをひとつ,教育の部分だけでなく,母親の女性の支援などと連携して考えられないかと思います。

○     それと,ここに出ていないことなので,ここで言うのが適切かどうかわからないのですが,私が非常に感じていたことが,学校に就学するときに保証人というのを出さなければならないと思うのですが,そのときに私が担当しているお母さんですと,DVなどで離婚している,お母さんが外国籍,子どもはそのお母さんと一緒のときに保証人になってくれる人がいないのです。周りに親戚がいるわけではなく,日本人でもそれほど親しく保証人になれるような人がない,私が知っているケースだと結局最終的にどうしたかと言うと,離婚したお父さんの方に頼んだのです。本当は頼みたくない,または借りができてしまうというのもあったのですけれども。ですから保証人制度がすごくついてまわるのですけれども,それが何とかならないものかと思います。それと,就学のための奨学金をもらおうと思ったのですけれども保証人がいる,結局誰も保証人になってくれる人がいなくてあきらめた,というケースがあるのです。他市の施策を見たときに,住宅などでも市の保証人制度があって,個人に頼まないでいいということをやっているところもありますので,そういうのがあればいいと最近非常に思っています。

○     今個別の問題についても色々な御意見が出ましたので,全体の中でこの策定委員会の結論で包含できる部分と,懇話会の中でも議論していただきたいこと,色々あると思いますが,それは後ほど整理をしながら話を進めていただきたいと思います。色々な問題は個々に出していただくのはもちろん結構ですので,続いてよろしくお願いします。

○     1点だけよろしいでしょうか。私はやはり京都市に住んでいる子どもに最低限,教育を受ける権利を保障するということが大事だと思います。外国籍の子どもの場合,京都はまだそれほど問題になっておりませんけれども,隣の滋賀県などではブラジル人の子どもがたくさんいるわけですが,不就学の状況が非常に問題になっております。ですから子どもたちに教育を受ける権利を保障するという観点から言いますと,外国系市民の子どもの就学状況をきちんと把握するということが最低の条件だろうと思います。おそらく京都市でもこれからそういうことが問題になってくると思います。とりわけ不就学の子どもを一人でも少なくしていくということが私は最低条件ではないかと思いますので,プランに書き込むかどうかは別にして,入れていただければと思います。

○     それは先ほどの実態調査がまだだということにも関連すると思います。私も滋賀県の方にも関わっておりまして,滋賀県の場合,県教委に調査をするようにと大分前から言っていたのです。ところが中々腰があがらなかったのです。でも簡単なことなのです。外国人登録の学齢人口から,公立学校に行っている,あるいは民族学校やラテン学校に行っている人数を差し引いていけば,どこにも行っていない人数が統計上すぐ出るのです。それを学校・学区ごとにしていけば,この学校に不就学の対象者が何人いる,ここの町では合計何人いる,ということが一辺にわかってくるのです。ようやく昨年出ました。そういうわけですから,もし京都市の方でもそういうことがまだであれば,先ほどの実態調査と併せて基本的に調べて,そして不就学,子どもの教育の権利を事実上奪われている状態をなくしていくことも非常に大きなことだと思います。教育委員会ではそのあたりのことは,就学児童のことは日本人の子どもについて行っているのは当然ですが,いかがですか。

●     実態把握は今おっしゃられたようなものはやっておりません。

○     日本語教育のことなのですが,多文化共生の前提として非常に重要なことだと思います。その人たちの継承語や母語で市民が接するのは中々難しいわけですから,日本語がいつでも問題になって,それが障害になって学校へ行くのも嫌というようなこともあると思います。ですけれども,どういう人でも日本語だけを勉強しようと思ったら,普通にやることプラスアルファでそれだけの時間や労力がいるわけです。正規の授業があって,それを補うためになお日本語を学ばなければならない,ですから基本的にはそういうことをしなければならない外国人側から見たら,そのぐらいのことは日本の国として,あるいは公のところが保障するべきことだと思うのです。日本語教育は公教育であって無料で受けられる,そうでないといけないと思うのです。そんなことはここでいきなり盛り込んでいいかどうかは別ですけれども,そういうことに向かってどういうことをしていくべきかということを考えなければ,ここにいる人達で困っている人達の立場で考えると,そういうことを基本的に考えなけばいけないのではないかと思います。

○     そういう意味では日本語教育は受ける側の子どもにすれば,公教育の公権利だということですね。現実には勉強しなければいけないという義務感があると思うのですが,習えて当然だという環境づくりが必要だということですね。

○     せめてそこに行って習う努力をしてくださいぐらいのことは言えるような条件が整っていなければならないと思います。

○     先ほどの教育の話の中ではっきりわかりにくかった部分がありました。外国人教育と国際理解教育の間で現場で起こっている問題があります。外国人教育について具体的に言うと民族学級がありますよね,その民族学級がなく,コリアンの子だとかフィリピンと日本人の子らがいる現場が九条の方であります。そこに民族学級をつくるのは無理だと,先生を派遣すると予算の問題もあるからということが言われます。国際理解教育は,日本人が外国人に対して,いわゆる国際といった場合,日本人を主体にしてその他の国のことをどう理解させるかということだから,全生徒を対象にしています。民族学級の場合は,外国,特に韓国・朝鮮人の子に自分の国の言葉を教えたり,歴史や文化や踊りや歌を教えたりするものです。だから外国人が自分の国のことを教えてもらうことです。このような教育は,現場で校長先生の考え方でなっているということがかなりありました。そういう学校への通達や学校の文書は教育委員会から来ているものだと聞きましたが,民族学級の先生が派遣されている学校で,それに関連する人達が全然その文書を見ていないとか,きちんと理解をして施行していないということもありました。融合と統合の話が先ほどあったときに,私も色々考えたのですが,現場においては融合して学校の現場で行われることが中々融合しにくいということがあります。統合という言葉が合っているかは別にして,ネットワークがあってみんなが同じ認識で子どもに取り組んでいくということ,日本人であれ,韓国系であれ,フィリピン系のハーフであれ,同じようにできるネットワークをつくることは必要ではないかとすごく思っていました。市では融合を行っているとのことですが,現場では分離されたような状況です。

●     今現在現場で全てできているという意味で申し上げたわけではありません。これからそういった形でもネットワークづくり,情報交換,人的交流を含めた形でやっていかなければならないと考えています。

○     国際理解教育ということは内容的にどういうことをしているのですか。

○     これはユネスコの教育がそもそもの原点なのです。要するにお互いの外国の言葉や民族,文化を理解しようというところが,そもそもの出発点のようです。

○     それは日本人がですか。

○     はい。日本人対象です。

○     これだけが3つの中で少し違いますね。

●     ただ外国人教育方針にあるように,他国の文化・伝統等を尊重したり,国際協調の精神を養ったりということはありますので,全く違うということは言いづらいと思います。

○     こういう試みというのは他の学校行事と比べてそんなに歴史を重ねているわけではないですから,おそらく現場の先生たちもこういうものが降りてきて,担当になった先生が試行錯誤しながら,そのときそのときの努力の中でうまく運営できていたりかなり苦労されていたりという,先生も方針が降りてきても,課題を抱えているという部分があると思います。これは所管としては教育委員会なのですけれども,そこだけでは中々解決は難しい。外国籍市民施策懇話会でも議論になったのは,共生をサポートするような人も必要だということです。これは学校の中でのこういう取組みにしても,やはりサポートとしての経験があったり,外国系市民の人でそういうノウハウや能力を持った人達との連携など,そういう形を取っていかないと難しいのではないかと思います。外国籍市民施策懇話会の中でも,例えば育児の問題についても,日本に来て相談する人や知り合いも少なくて,負担が大きくて,父親は仕事ばかりで大変だということが起こってきている,それをサポートするのは,そういう苦労を実際外国系市民として経験した人がサポートしたり,そういう経験をもった日本人の方がうまくつなぐような,そういう仕組みが非常に必要なのではないかと思います。そういう意味では逆に所管としての教育委員会であったり国際化推進室であったり,所管だけではない連携,それがすごく求められており,それをどうこの次の取組みでは進めていくのか,という気がするのです。

○     おっしゃるとおりだと思います。ですからこれは位置づけをどうするか,中身の有機的な連携はどうするかということは,ぜひともこの策定委員会の一つの結論として打ち出していきたいと思います。

 

○     大分時間が経ちまして,まだ第一番目のところしか終わっていないので,子育て・教育問題については次の機会もありますので,これくらいにして,次の福祉医療問題の御意見を伺いたいと思います。何かありましたらお願いします。

○     制度上無年金の問題はここに書いてあるとおり国の責任であるものの,京都市は一昨年の議会で金額の値上げもして,国に近づくように努力していただいていると思います。国に対する働きかけはもう少し強くするべきかなと思っております。

  医療通訳派遣の部分で私が感じたことなのですが,今は中国語と英語に関する医療通訳が制度的にはありますけれども,市民病院で何回かニューカマーの手術にボランティアとして関わったことがあるのです。そこで感じたことは,通訳できる人材はたくさんいるのですが,手術の案内書が医療の分野にいきますと,非常に専門用語が多いのです。手術を受ける方は,専門用語を全く知らないという状況で,その方は腎ネフローゼで腎臓の一つをとるという手術だったのです。腎臓という器官がどういう機能をするのかわからない60代のニューカマーで,働いていて病気になった方で,字も書けなかったのです。戦後どさくさの中で弟や妹がたくさんいて学校に行けなかった人なのです。ハングルだからわからないのではなくて,両方の言葉がニューカマーの中ではわからなかった現状で,だから先生からいただいた案内書を翻訳しただけでは通じないのです。かなり噛み砕いての説明でなければだめだったのです。次に通訳を派遣するときには,そういう医学的なことも説明できる通訳をと思いました。そういう意味で,もう少し登録制度の幅を広げたらどうかなと思ったのです。そのときはモアから派遣したのですが,ボランティアを一回やったらそこで終わりではなくて,制度的にきちっと登録する制度,研修を受けなくてもできる人というのを公認できるものがあれば認定するような制度を作らないと,私が知っている限りの運動では対応できないのではないかと思いました。

○     医療通訳の派遣を4病院が取り入れている現状の説明がありまして,その拡大に努めていく必要があるというふうに書かれてあるのですけれども,今御発言がありましたように,なかなかこれは手術に立ち会うとか結構大変なのですね。 それからボランティアの方というのも大変貴重で,その方をどういうふうに活用するか,それからひとつの市の事業としてどういう形で,市の方から依頼してやるというようなことの組み合わせ,それから本当はその国の人がいいのですね,日本語のよくできる人が通訳として従事した方がいいという面もあるので,その両者の併用ということだと思うのですが,実態的にただ4病院を6つにしたり8つにしたりするのは相当に大変なことだと思うので,かなりきちっとした通訳が求められるところに派遣される通訳と,GPSPという制度が外国にはありますけれども,何かのところにちょっと通訳に行ってくれる通訳と,段階にわけることが必要だと思います。

●     この7月から,今までの英語と中国語に加えて韓国・朝鮮語も始めました。今後も実態に見合った,患者サイドもしくは病院サイドの意見も聞きながら,ただ医療事故の問題もありますので,誰でもというわけにはいきませんが,そのあたりとどういう風に兼ね合いをつくっていくか,どれがニーズが高いのかということを含めながら,制度そのものをどうあるべきかということを考えながらしていく必要があると思っております。

○     今,試験的に市立病院で問診表を機械化して利用してもらう,となりつつあるのですね。それについて御紹介いただきたいと思います。

●     新聞では本格稼動のような感じでしたが,実際はまだ試験的な稼動です。京都大学と,医療通訳事業を京都市と共に行っているNPO法人の多文化共生センター・きょうとが開発をしておりまして,今京都市立病院に置いています。現行の医療通訳の場合,初診に行って必ずしも通訳者がすぐそこにいるというわけではありませんので,病院に行かれたときに,パソコンのタッチパネル上に日本語と中国語が両方出て,その方の症状をその方の言語で押したら日本語の方にその症状が出て,少なくともどういう理由で病院に来られたか,どういう診療科で受診をしていただくか,というところまでは出ます。ただその後の医師とのやりとりはできるような状態のものではないので,それがうまく医療通訳のシステムと連携するようなものになっていけばいいと考えているところです。

○     言語は何語ですか。

●     英語,中国語,ハングル,ポルトガル語ですので4言語です。

○     この分野は,内容的な信頼の充実ということで内容の問題と,言語数を増やすことの努力が必要だと思います。医療機関の拡大をしても,そうたくさんのところにする必要はないと思います。市内いくつかあればそこに行っていただければいいわけですので,それはそれほど必要ないです。内容的には大変難しい仕事ですので,そのあたりについてはやっていかなければならないと思います。

○     せっかく京都市と共同してモア・ネットワークができましたので,その活用をしてほしいと思います。ちょうど先月から,いつでも電話を受けて,高齢者,障害者に対応できるように,常勤1人を置くようになったのです。せっかくできたネットですので,京都市の外国人施策の中にそれをきちんと入れた方がいいと思いますし,インターネットやパソコンで呼び出して見れる人ではない場合は,モアに相談に来ていると思いますし,先ほど懇話会からの報告であったようにボランティア・バンクというものがいるかなと思うのです。個人の申告では実態がわからないからできないと思うけれども,そういう経由を通して何かそういう専門分野のバンクがあってもいいのではないかと思います。寄与できる,社会参与できるという誇りもありますし,60代になってわりと動きやすい人も外国人関係で出てきていますので。

○     最終的には業務ですから,研修等で確認が必要ですけれども,ネットワークは広く人材が得られるようにする必要があります。一番の問題は経費の問題がありまして,ある程度病院負担にできないかということを病院と折衝しているところなのですが,病院側は全然今のところ負担する気はないのです。

○     問診表の多言語化というようなことはいいことだと思います。今何箇所かに設置すればということでしたが,病気になって遠くの病院に行くことはとても大変なことだと思うのです。例えばそういうシステムがあれば,医療機関にインターネットでアクセスできる形にして,ネットの上で問診表を作成していただくということは,技術的にはそれほど難しいことではないと想像します。基本としてはお一人お一人が使いやすいようにしていくということができればと思います。そういった意味での拡大ということもぜひ検討をいただきたいと思います。

○ 試験的に実施して信頼性が高まれば,ですね。今のところそれほど信頼性が高いものではないです。問診表についてはそこで最初のことが決まりますので,ある種の信頼が必要です。今はそのための実験です。

○     病気の場合,比較的急患でない場合は,それでいいですが,急患の場合には医療の通訳システムを含めて,救急・消防の中でそういった制度があるということはもう認識されているのでしょうか。

○     それぞれがどこで可能かということについて周知しています。

○     外国籍市民ではないのですが,海外に滞在していて一番困るのが,昼間の比較的対応しやすい時間帯だったらいいのですが,深夜に困ったことになったときにそういった制度がうまく使えたり,連絡先がわからないということで消防署に救急の連絡をして対応していただく場合には制度がうまく生かされるかということです。

○     ちょうど今消防・救急の問題が出ましたので,そちらの方にも話題を広げていきましょう。

○     防災のことで,この間,新聞報道もされましたけれども,近畿のところでネットワークをつくって立ち上げを始めておりますので,国際交流協会から御説明させていただきます。

●     総務省が運営しております地域国際化協会というものがありまして,私どもの協会もその一つです。47都道府県13政令指定都市,それぞれの地域に私たちと同じような地域国際化協会という協会があります。そちらの方の近畿ブロックというものがありまして,近畿地域国際化協会連絡協議会ということで,2府4県3政令指定都市,神戸・大阪・京都ですね,この9つの協会で昨年度から災害時のネットワークについて色々と協議をしてきました。その結果,災害時における外国人支援ネットワークという協定書を今年度中に結ぶという方向で進めております。一応各協会ともこの協定書については結ぶ必要性があるという認識で合意を得ていますので,そちらの方向で進めております。

  この協定書の中身についてですが,今現在考えておりますものが,災害応急対策支援と災害予防対策支援と大きな柱2つに分けて考えております。災害応急対策支援と言いますのは,大規模災害が発生した際に,京都から和歌山への派遣であるとか,和歌山から京都への派遣であるとか,各地域への通訳者の派遣や翻訳,ボランティアのコーディネーターをするために人の派遣などを考えております。災害予防対策支援と言いますのは,災害が起こったときにどのように対応していくかという訓練であるとか避難訓練,もしくは通訳の研修,コーディネーター研修について,お互い協力し合いながらやっていきましょう,というようなことを現在考えている最中です。

○     今年たまたま京都市がその会長都市なので,京都市で音頭をとって,他の8つの協会の協力を得て,なんとか協定に持ち込もうと考えています。協定ができましたら他の地域からも来ますので,そのときはどのように実際の活動をしたらいいかということ,あるいは訓練にどのように参加するかいいかということは,それぞれの地域の消防と相談させていただく,ということになっています。

○     災害が起こってどう救援するかもあるのですけれども,一番にあるのは,そういう状況になっているのに一体自分がどこに避難したらいいか,どういう救済が受けられるのかいう情報で,これは区役所の外国人登録などの窓口の話と同じだと思います。そういったところでそういう基本的な情報がきっちり伝達されたり,情報が事前に理解されるような状況をつくっておくとすごくいいのではと思います。そうでないと,そういった人たちは日本人の人たち以上にパニックになってうまく行動できないのかなと思います。以前消防の方とお話をする機会があって,京都には防災センターというすごく立派で地震体験ができる施設があるので,地震を日常的に経験したことがない人は災害のときに適切な行動が取れないので,基本情報の提供などを消防などと提携してやると起こった後の対応がかなりスムーズにいくように思います。

○     阪神大震災の際,神戸の朝鮮学校が大きな役割を果たしましたが,そのことから何か教訓ですとか,こうしたらいいとかいうことを御記憶でしたら御発言ください。

○     震災が起きたとき,2日のうちに西宮北口まで阪急電車で最初に行きました。4000個のおにぎりを持っていった経験があるのです。18日の夜に指令して,19日の朝4000個集まりました。300人以上の方が協力してくれました。当時の在日コリアンの組織力,ネットワークを感じました。私もかつて住んでいた長田が燃えているのを見たらいてもたってもいられなくなったのです。支援を持っていった時点では国籍は関係ないのです。西宮の小学校に持っていったとき,地域の日本人も外国人も関係なく,朝鮮人の学校でしたけれども,すべての学校が開放されて支援をしていました。

  2007年の総務省の報告を読みましたが,外国人のことに特別気を配っているように見えるけど,現実で言いましたら,私は地域では外国人とか関係なしに,災害が起きたらそんなこと言っていられるのか,というのが第1の疑問です。2番目は,地域が外国人を100%把握できているのかということです。私も砂川学区に住んでいますが,プレハブのところに結構外国人労働者がいて,ペルー人かな,東南アジア系かな,と思いながらも同じ町内なのです,町内の基本は町費を払う人なのです,市民しんぶんは町費を払う人だけに配られるのです,地域できちっと把握できるという体系を京都市が施策の中で,非常に難しいとは思うのですが,外国人登録の入管のサイドで見ると大体わかりますよね,次に入管に行くまでに移動している人たちは多分わかりませんし,短期就業で来て継続している人もいるのかと思われるところもあるので,地域できちっと把握するというのが前提条件ではないかなと思います。震災が起きたら,外国人だからといって特別なことをすることはないと思うのです。言葉の問題だけが問題なのです。難聴者と同じなのです。声をかけても聞こえないので一番困ったと言っていました。見えない人の方が助かった。見えないけど耳が聞こえるので声を出した,色々な立場で色んな話を聞いていましたら,きちんと把握するというのは地域でいったら町内になるし,組になります。

○     われわれが考えていますのも,他の地域と連携するのは災害が起こってからのことで,起こるまでは京都なら京都でするのが,毎年の防災訓練に地域として,外国系市民の人も全部含めて参加できるようにする。要するに,いざ起こったときにはどこへ行けばいいかということを示さなければならないし,ここにFM放送を聴けと書いてありますが,FM放送を聴けということを知らさなければならない。そういうことを毎年の訓練の中で地域として徹底する。いざ起こったときは通訳の問題だけです。言葉がわからないから避難所でどうしたらいいかわからない,わからないから非常に不安という人に全部がネットワークでもって助け合って,お手伝いをする。救援自体としてはみな同じことをしなければならない,あとはコミュニケーションの問題だけだと思う,それの助け合いをしようということですね。

○     災害だけではなくて,犯罪とかそういうケースがありますね。そういう現場などを見ていると,警察などの方が,言葉が話せない人が警察に何か被害があって説明にいく,そういう場面の対応は非常に難しいなというのを感じるのです。そういう警察の部分も関わった安全・安心という部分もまだまだ,言葉のちがう人のための説明・案内の資料があるかというと意外となかったり,そういう部分が遅れているなと思います。

○     それでは留学生等への支援のところですが,今,事務局の方から内容がたくさんあるようであれば次回に討論を持ち越してはどうか,ということですが,どうでしょうか。

○     一言だけ発言したいと思います。留学生に対する支援,京都市の方で色々していただいていて非常にいいなと思っています。一般の学生と地域・行政の関わりというと,学生の活力なり色々なものをどういうふうに活用していくかということになるのですが,留学生の場合はどうしても支援の方比重があるような気がして,先ほど色々な話が出ていますが,留学生は色々なリソースとして活用することが可能ですし,そのことを通して彼らは色々なことを学ぶチャンスとなりますので,そういった視点での施策をぜひ取り入れてもらいたいと思います。

○     わかりました。それは一番最初の策定委員会のときでも地域やボランティアの人の活力をどう生かすかが大きな課題だと出ておりますので,そういう観点でこの留学生・就学生の問題も支援と合わせて見ていくという視点で進めたいと思います。

○     協会のほうでも色々していることがありますのでまた説明させていただきたいと思います。

○     皆様の大変熱心な議論のために時間が超過してしまいました。留学生・就学生の支援については次回の冒頭でさせていただくことにします。次回は京都市で「外国人市民意識・実態調査」というものをしていますので,それの中間報告,単純集計ができあがりつつありますので,それの御報告が中心ですが,それに入る前に留学生問題を最初にやって,アンケート調査の中間報告を受けて,今日の討議と重ねていきたいと思います。

 

お問い合わせ先

京都市 総合企画局国際交流・共生推進室

電話:075-222-3072

ファックス:075-222-3055

フッターナビゲーション