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国際交流・協力部会第1回会議議事録

ページ番号25157

2008年2月7日

日 時 : 平成19年7月17日(火) 午前10時~午後12時

場 所 : 京都市教職員互助会館「おいけ」2階 第1会議室

議 事 :

1 開会

2 部会長の選出

3 部会の進め方について

4 歴史都市・京都創生策について

    〔講師〕総合企画局京都創生推進室 室長 西邑昭裕 氏

 京都創生推進室長の西邑でございます。

 本日のテーマであります「京都市の国際的な魅力の向上」と「京都市に関する情報の国際的な発信」についてご議論いただくに当たり,京都市の最重要政策に位置付けられております京都創生について,簡潔にご説明させていただきます。お手元にお配りしておりますリーフレットをご覧いただきながら,お聞きいただきますようお願い致します。

 はじめに,「京都創生」という言葉についてですが,先日,7月12日の木曜日に立命館大学朱雀キャンパスにおいて「京都創生推進フォーラム」のシンポジウムを行いました。その関係で市政広報板にポスターが貼られたり,関連の記事が新聞にも掲載されたりしましたので,これまでもお目にされたり,聞かれたことがあるかと存じます。

 

 さて,京都創生の定義を一言で申しますと,京都が持つ山紫水明の美しい自然や落ち着いた都市景観,受け継がれ,磨き上げられてきた伝統文化などを,日本の歴史文化の象徴として,この「日本の歴史文化の象徴として」というのが大変重要なんですが,自然景観や都市景観,伝統文化などを守り,育て,その素晴らしさを国内外に発信していこうという取組であります。

 

 申し上げるまでもなく,京都は,794年に桓武天皇が都を定めて以来,1200年もの長きにわたり日本の文化を育み続け,今も147万の人口を有する近代的な大都市であると同時に,「日本人の心のふるさと」とも言われるように,日本の心を今に伝える歴史都市であります。神社仏閣や京町家などの伝統的建築物,お茶・お花や能・狂言などの伝統文化,あるいは,本日ちょうど山鉾巡行が行われていますが,祇園祭などの伝統行事,更には清水焼などの伝統産業も含め,京都は日本文化の集積地であり,家元や本山,ルーツが京都にあるものが数多くあります。

 このように日本の歴史文化の象徴である京都を守り,発展させることは,日本の国としてのアイデンティティーを確立し,日本の文化を世界に知らせていくことにつながると言えます。一方,世界には,数多くの歴史都市があり,それらの都市に受け継がれている美しい景観や文化は人類共通の宝でありますが,これは京都にも当てはまります。

 つまり,国内はもちろんのこと,世界的にも稀有な歴史都市・京都は,日本の財産,世界の宝であり,国全体として,守り,育てることが必要である,すなわち国家の戦略として取り組むべきであるというのが京都創生の大きな柱,眼目であります。

 

 では,なぜ,京都市がこの京都創生に取り組むことになったのか,これまでの経過をお話しさせていただきます。

 京都市では,現在のように「京都創生」というタイトルを掲げ,景観・文化・観光の3分野で多彩な取組を展開する以前から,国の政策をリードする形で,伝統的建造物群保存地区の指定による歴史的町並みの保存など,他都市に先駆けた取組を行ってきたわけで,これまでも努力を積み重ねてきていますが,今回の京都創生に取り組むことになった直接のきっかけなどについてであります。

 まず,今から5年前,平成14年に,日本建築学会から「京都の都市景観の再生に関する提言」が出されました。

 この提言の基本的な考え方をご紹介しますと,

「京都では,不燃化:これは簡単に言えば,木造からコンクリートなどの非木造へということですが,この不燃化や,道路交通の近代化のために大きく破壊され続けただけでなく,ごく近年では,高層マンション・ホテル・巨大商業施設・広告・立体駐車場などの建設や自動車交通の増大による変貌が加速し,貴重な価値を有する京都の景観は,重大な危機に瀕している。

 このような事態を招いた原因は,根本的には近代の価値観に起因するということもできよう。しかし,長い人類の歴史にとって,京都のような歴史都市の景観の美を継承していくことは,まさに現代人の責務と言っても過言ではない。京都を世界に誇れる歴史都市として再生するためには,国は京都の都市景観問題をナショナルプロジェクトとして取上げ,一般国民のコンセンサスを形成して,特別立法や財政措置など,緊急に対策を講ずることが必要である。」

と,いうものです。

 また,この提言とほぼ同時期に,「京都経済同友会」からは,「京都の都市再生推進に向けての緊急提言」が出されました。

 

 こういった動きを受け,京都市はどうすべきかを考えるため,平成15年,梅原猛先生を座長とする,京都創生懇談会を設置しました。

 この懇談会で,意見交換を重ねていただき,まとめられたのが,「国家戦略としての京都創生の提言」です。パンフレットの裏面にその全文を記載しております。

 この提言は,山紫水明の風土や1200年の歴史とそこに凝縮された文化,更には,文化的創造力などから,京都を世界に二つとない都市と位置付けております。そして,日本の国家財産,世界の宝であるその京都を京都の力だけでは今や守れない緊切な事態,危機的状況にあることから,国家の戦略として京都を守るべきとしており,京都を保全・再生・創造し,活用・発信するための提案をいただいております。要約しますと,国は十分な財源を確保し,国家の戦略として京都の景観,文化を保全,再生,創造あるいは保護・活用し,また,京都を拠点として観光立国を目指すべきである,ということであります。

 

 これらの提言を受け,まず,本市が国に対し働き掛けましたのは,毎年度の国家予算要望のトップに「国家戦略としての京都創生」を掲げ,景観面を中心とした京都に対する制度的・財政的特別措置等の要望であります。

 この国家予算要望は,国会議員や中央官庁に対し行うものでありますが,これに加え新たに平成16年には,京都創生に関係の深い中央省庁の課長級職員や学識経験者等からなる「日本の京都」研究会を設立し,国に京都の現状を把握してもらうこと,それから,国が実施しようとする施策・事業で,モデルとして京都で実施できるものはないのかなどの研究を共同で行っております。

 さらに,平成17年に,国会議員の関係では,自民党・公明党の議員による「歴史的都市維持・再生議員連盟」が,続いて,民主党の議員による『「国家戦略としての京都をはじめとする歴史都市再生」国会議員連盟』が設立されました。

 

 「京都創生」を,国家の戦略として,という趣旨から,国に関係する働きを先にご説明いたしましたが,もとより,京都創生は京都市による単なる国への要望活動だけではありません。例えば,町並みにしても伝統文化にしても京都市や国が,というのでは不十分で,やはり市民の皆さん一人一人の力が必要です。市民の皆さんへの京都創生の広がりを目指し,平成17年には,京都商工会議所や京都府に参画していただき,「京都創生推進フォーラム」を設立しました。現在,このフォーラムには,500近い団体や企業等が会員として参加されており,京都創生を考えるシンポジウムや,京都の良さを再認識する連続セミナーなどを開催しています。冒頭申しました,先日開催のシンポジウムは,この「京都創生推進フォーラム」の主催により行ったもので,定員400名を超える450名の方に参加いただきました。今回は,京都創生の輪を更に広げるため,環境から見た京都創生,京都議定書発祥の地・京都の更なる課題とのタイトルの下で,基調講演を浅岡弁護士に行っていただき,その後,景観・文化・観光といった京都創生にかかわる各分野で活躍いただいている方々の取組内容について,ご発言いただくとともに,京都創生に向けた今後のあり方についてパネルディスカッションを行いました。

 

 このような市民の方へのPR等の取組も今後引き続き行っていく必要があると考えております。

 

 続きまして,現在京都市が取り組んでいます具体的な創生策について,いくつか特徴的なものをお話します。

 現在,京都市では,平成18年に策定した「歴史都市・京都創生策Ⅱ」に基づいて,景観・文化・観光のそれぞれの分野で取組を進めていますが,特に力を入れて取り組んで参ります事業につきましてご説明致します。

 

 まず,景観につきましては,この9月からいよいよ実施いたします,新たな景観政策についてであります。50年後,100年後の京都の将来を見据えたこの新たな景観政策では,市民の皆様にとって痛みや負担も伴いますが,全国でも類を見ない歴史的大事業と言っても過言ではありません。

 主な内容の一つ目は,都心部の高さ規制を45mから31mにするなど,市街化区域全域での建築物の高さ規制の見直しであります。二つ目は,風致地区等の拡大と建築物のデザイン基準の見直し・強化であります。三つ目は眺望景観・借景の保全の取組であります。この眺望景観・借景の保全といいますのは,例えば大文字を見ることができる鴨川河川敷などからの眺めや,山並みなどを借景としているお寺の庭園からの眺めを守るため,そこからの視界に入る建物については,一般の規制にプラスして標高による高さやデザインを厳しく規制しようというものです。四つ目は,屋上広告や点滅照明の全面禁止など屋外広告物対策の強化であります。

 更に,この新景観政策と併せて,景観面では,無電柱化の取組や,放置自転車対策,更には,歩行者優先の「歩いて楽しいまちなか戦略」などについても積極的に推進していこうとしています。

 

 次に,文化では,今年の3月に策定した「京都文化芸術都市創生計画」に基づいて,京都を新たな魅力に満ちあふれた世界的な文化芸術都市として創生するため,取組を進めているところです。今年度からの新規事業を一つご紹介しますと,京都に息づく伝統芸能を発信・継承する拠点として,国立による京都伝統芸能文化センターの整備を提言しておりますが,その関連として,伝統芸能の舞台公演などを行う京都創生座という事業を実施します。

 また,来年,2008年は,我が国が世界に誇る文学作品である源氏物語が,記録の上で確認されてから千年を迎えます。この大きな節目,正に千年に1回というこの千年紀を契機として日本文化の奥深さ,素晴らしさを広く国内外にアピールするため,今年の1月に設立しました「源氏物語千年紀委員会」とも連携を図りつつ,多彩な事業を実施する予定をしているところです。

 

 続いて観光につきましては,京都への観光旅行者数5000万人を目指して,平成18年に策定しました「新・京都市観光振興推進計画」に基づき,国のビジット・ジャパン・キャンペーンとも連携しながら,海外旅行者数の増加などに取り組んでいるところです。具体的には,韓国,中国,台湾,オーストラリア,アメリカへの海外情報拠点の整備,宿泊施設や航空券の海外の自宅から予約が可能な英文観光サイトの開設などに取り組んでいるところです。なお,先日発表しました平成18年の入洛観光客数は,6年連続で過去最高記録を更新し,約4800万人となっており,目標としております5000万人までかなりのところまで来ております。ちなみに,外国人宿泊者数につきましても順調に増加しており,初の80万人となっているところです。参考までに申しますと,海外のどの国から多く来られているかといいますと,アメリカが一番多く,あと台湾,韓国,中国,オーストラリアの順となっています。

 

 また,来年は,主要国首脳会議,通称サミットが日本で開催され,外相会合が京都で行われることになりました。ここでコンベンションの関係について少し触れさせていただきます。

 日本全体として,コンベンションの数は,絶対数は減っているわけではないと思うのですが,世界でのシェアが必ずしも振るっているわけではない中,国内では京都は近年2位ないし3位,場合によっては4位といったところでございます。先ほどの観光についてもそうですが,やはり東京が一番多い,国際会議の件数も一番多い,訪日外国人客も東京が一番多いという状況でございます。

 参考までに,国際的な情報発信という意味では,これはなかなかデータがないのですが,過去に調査した中で,京都の情報量に比して海外への情報量は東京が圧倒的に多い,というようなデータも過去に調べたことがございます。

 それから京都の国際的な情報発信の内容についてでございますが,前回の委員会でもお話がありましたように,COP3の関係もあっておそらく最近は,環境面が大きく取り上げられているのではないか,環境の絡みで京都の名前が発信されることが多いということが想定されます。以前調べましたときには,京都のいわゆる都市特性である文化,芸術,歴史,学術といった内容の情報が多かったように記憶しているところでございます。

 

 これまでお話して参りましたように,京都創生における取組は,前回の会議でも出ていたかと思いますが,いわば「守る」,伝統文化なり景観なりを「守る」という方向に力点がありまして,新たに創造するとか,さらに発信する,とりわけ国外に向けて発信するというのが,少し弱いといいますか,今後の課題とも感じているところでございます。

 本日この委員会におきまして,皆様方にそのあたりにつきましてもご議論いただき,京都創生の面からも国際化推進プランについてご検討頂ければと考えているところでございます。

 以上,少し脱線を致しましたが,京都創生につきましての現在の取組なり,考え方,国際化との関連についていささかなりとも素材を提供できたかと思っております。

 京都創生についての私からのご説明とお願いは以上でございます。

 

5 審議 (○委員・顧問,●事務局)

   ●(事務局より本市のこれまでの主な取組と今後の方向性について説明。)

ア 京都市の国際的な魅力の向上について

○ ちょっと伺いたいのは無電柱化のことです。無電柱化というのは,どのくらいのエリアでどのくらい進んでいて,これからの計画はどのようになっているか具体的なことをお聞きしたい。また,資料にはいいことがたくさん書かれているのですが,難しいこともあると思います。大きい意味では50年経った時に世界中から京都に来て,京都市のキャッチフレーズのように「京都があってよかった」といっていただけるようにしなければいけないと思います。いいことをたくさん計画していますが,先ほど「痛み」というお話があったようにここで踏ん張って,それをみんながわかって,痛みを自分でいいですよと言ってくださる方が多くならないとできないことだと思います。それをどうやってみんなで共有していくことができるかということが,これからのことだと思います。

  今いっていることは全部いいことだと思います。ただ,私は歩くということと自転車の問題,放置自転車の追放と書いてあるが,ただ追放するだけではだめで,どうしてたくさんの自転車があるのかということから考え始めないといけないと思っています。学生と付き合うことが多いが,事故がとても多い。また,盗まれるなども多い。どうしてこうなっているのかを長い時間がかかってもいいから,原因と結果を考えていかなければいけないと思います。 

○ 景観政策課長にお答え願えますか。これは国際的な都市の魅力を向上させるためにというニュアンスもこめて出てきた新しい政策であるわけですね。

●  新景観政策という名前で思い切った規制の強化であるとか誘導策ということで,京都の四季折々,美しい自然景観であるとか1200年の歴史に育まれた歴史的景観を保全・再生あるいは創造していこうという取組をこの3月に議会のほうで承認いただいて,9月1日から実施いたします。これにつきましては,さきほど「痛み」という言葉がございましたけれども,たしかに市民の皆様にも制約をかけるわけですから,一定の「痛み」というのは生じる場合も出て参ります。けれども,基本的に景観を構成する建物は皆さんの私有財産でありますが,景観というのは市民の共有の財産,みんなのものであるということ,そしてそれを良くしていく,守っていくということは市民の宝になって,市民の皆さんが良くなっていくということであること,ひいては京都という都市そのものが,50年後100年後にも,「京都があってよかった」というキャッチコピーにもありましたように京都が京都であり続けるために必要な政策であり,そうすることによって今住んでおられる方が住み続けたい,あるいは他都市の方が住みたい,そして交流ということでいいますと,いわば訪れてみたいまち,そういうまちにしていくということからこの政策を始めたわけであります。

  無電柱化は詳しくは建設局という部局での話でありますけれども,今現在は50キロ弱の延長でありまして,例えば景観上重要な東山の山麓部のねねの道や八坂の道であるとか,今現在,参寧坂でも事業中でございます。つまり景観上重要なところであるとか都心部の幹線道路といったところで無電柱化事業をしてきた,あるいはしているということです。ただ,聞いておりますと無電柱化はかなりの事業費がかかりまして,今現在のままの予算規模では100年近くかかるのではないかということです。よって,逆に国家戦略としての京都創生という観点から,これは京都だけのものではない,京都の景観を守っていくのは京都市民だけではなく国の宝として国としても積極的に財政支援をして頂きたいという中での無電柱化についての支援も強力に要望をしているということです。

  痛みの共有につきましては,市民のみなさんが,景観というのは市民の共有財産であるということをこれからも機会あるごとに訴え,理解をして頂く中で,景観を守る風土というものを確実なものにしていきたいと考えています。昨年の新景観政策の中では,マスコミが行ったアンケートで8割以上の方が景観を守るということについて賛成をいただいているという結果がでています。

○ 50年後のより理想的な景観ということを目標にして,市民一体になってこう進めていけばいいという仕組みだと思うのですが,気になるのは,私は条例を詳しく読んでいませんが,規制がかかってきたときにこの看板はいいとか悪いとかやっていくのは,委員会のような機関が判定をしていくような仕組みになっているのでしょうか。私が特に関心があるのは,何がいい景観かということを決めるときに具体的な,例えば外国の方の意見とかいろんな角度から決めるとか,どういう風な仕組みで景観を年々歳々,ある目標に向かって進めていかれるのかお聞ききしたい。

● 今回,高さ・デザイン・屋外広告物についての規制の強化を行いました。広告につきましても屋上広告物の全面禁止であるとか,あるいは看板の大きさ,設置場所等の規制強化を行っています。一昨年に設置して審議いただいた景観づくり審議会での提言を踏まえて行政内部で基準を考えていったわけであります。今後の仕組みとしては,基準をきめ細かく数値で判断できるようにしていますので,一定については行政内部で審査が出来ます。ただし,色とかにつきましては,これまでにも他都市にはない,たとえばマクドナルドの看板につきましても赤色ではなく茶色にしているなど特徴的なことをやっています。ただ,色につきましては繊細な問題ですので,今年度から色の調査研究を始めまして,より適切な色彩誘導ということをやっていきますし,進化するデザイン基準について,今後いろんなご提案,もちろん海外の方も含めてご提案いただく中で,まず今回は緊急的に守っていかなければならない基準をつくりました。そして,それを進化させていきたいと考えております。

○ 進化する基準ということで,デザイン基準に外国の方々からのご意見も反映しようとしていることは画期的なことだと思います。

 

○ さきほどの自転車の話で,自分自身も自転車でよく出かけています。不法駐輪が悪いのはわかっているのですが,それに代わる駐輪場所を今後確保されていく計画はあるのでしょうか。前回の時,外国人の方に「自転車文化がない」と言われた話が出ましたが,ヨーロッパに行くと無言のルールみたいなものがあって,自転車を乗っている人は多いが不法駐輪はあまり見かけません。観光「歩く京都」といいますが,そうなると交通の便のいいところですとか,東山のように観光スポットが集中しているところにばかり行くことになると思います。かといってタクシーとなると高いですし,そうなると自転車というのがある程度分散するということが考えられるし,新たな観光ポイントの掘り起こしにもなると思います。最近,出町柳の駅前に,民間の方がやっていると思うのですが,シェアサイクル,つまり皆で月いくらで乗り合って,決められた場所で乗り捨てられるというのがある。もう少し自転車に乗ってもらえるような方向もあるのではないかと思います。それは,まちの国際的な魅力をあげる1つの大事なポイントになるのではないかと思います。

● 専門ではないのですが,交通政策全般については自転車をメインにしてこなかったということは正直あったかと思います。何が中心になっていたかというとはっきりいって車,しかもモータリゼーションです。近年でこそ自動車の保有台数とか消費量はそれほど伸びていません。むしろ,これが人口減少に伴って減るとも言われているわけですけれども,やはりいわゆる高度経済成長期以降,車はどんどん増える,そしてその需要に応じて道路を造る,あるいは車をどうさばくかが基本的な交通政策で,自転車,ましてや人などは二の次ということは正直あったのかと思います。それではだめだということで,今,歴史的都心地区といっていますけれども,四条通・河原町通・御池通・烏丸通をトランジットモールという形で「歩いて楽しいまちなか」という形で全部締め出すわけではありませんが,歩行者優先,四条通などは簡単に言えば車道を半分にして歩道を倍にするという,車が主役の道路から人が主役の道路にしようという逆の考えがあります。ご存知のようにイタリアのローマのような海外の古い都市ではよくやられていることで,都心から車をできるだけ排除しようという考えです。自転車でいいましても,歴史的都心地区を中心にして,いわゆる駐輪場は都心ではなかなか土地がないわけでありますが,公園の地下であるとか,あるいは廃校になった学校の運動場を活用したりして,できるだけ自転車でまちの真ん中まで来ていただけるような方策を採っているところではあります。ただ,まだまだ全体的な大きな交通政策でいうと自転車や人のシェアは少ないです。やはり車の比重のほうが大きいのかなというのがあるかと思います。

○ 私も本当に自転車が好きなので,80万人の外国人の1人として言わせてもらいたいのが,日本では歩行者と自転車が同じスペースで戦いあっている姿があるというのが,非常に特異であると思います。私の過去5年間住んでいた中国でもヨーロッパにおいても普通は自転車というのは車と競争しあうものであって,日本ではかわいそうだが歩行者がそれをやらなければいけない。私は歩行者よりの気持ちがありますので,日本の考え方は非常にユニークだと思うのですけれども,歩行者用通路のところを自転車が我が物顔のように動いて走って行くということはいけないことだと思います。

○ それはまた法律で厳しくなると思います。昔は,自転車は車道を走らなければいけなかったけれども,知らぬ間にじわじわと歩道に乗りだしました。たしかに危ないです。そして,歩道の自転車道に自転車を止めて荷物を置いてあったりしています。ドイツでは自転車道に,歩いている人がちょっと踏み込んでぶつかっても,それは仕方ないという法律の厳しい感覚があります。ただ,この話は交通局なり交通政策が,例えばもっと歩けるようにするとか観光用の車は外で駐車してもらうとかいうものがあれば,このプランでもやってくれというような声の上げようがあるのですが,今日の議論はここまでにしたいと思います。誰もこれに反対する人がいないので。

● 私はこれまで建設局長も務めておりまして,無電柱化の取組や駐輪場の整備などの対策をやっておりました。無電柱化につきましても,していかなければならないエリアがございますけれども,京都市の財政状況をみますと毎年投下できる予算が決まっておりまして,これを割りますとだいたい100年かかるという計算になります。そういうことで,特区申請などもしたのですが認めてもらえません。国の支援がなければなかなか難しいのです。ただ,景観法ができまして景観計画として位置づけたら可能という話しもありますが,現実は難しいです。無電柱化も5箇年計画というものがありまして,それはあらかじめ関電とか電線の関係の業者と計画をするときに先に合意を取り付けまして,その計画に基づいて国が補助金を出してくれるというように,先にそういう話をしなれば強制できないようです。それから自転車の問題ですけれども,京都はもともと道路が狭いですから自転車の専用道路というのはありません。桂川沿いに1箇所程度で,あとは自転車歩行者の専用道路となっています。次に駐輪場の問題ですけれども,やはり土地の確保が難しいということがあります。総合計画を作ったのが平成12年だったと思いますが,それ以降,駐輪場の台数でいいましたら,民間等もあわせて1万台ぐらい整備はしてきているのですけれども,やはり難しいところではあります。

○ このプランとしては,要するに国やらいろんな法律やらによって働きかける部分と,いわゆる市民のモラルマナーの向上,小学校や大学,大学は特にいけないのですけれども,京都は自転車に限らずマナーのいいまちだということが国際的な都市として価値を得るときに重要な部分になると思います。中国は今頃になって文明という言葉を,スローガンとしてだけ言っていまして,その下で車は一方通行反対に走ってきたりしますけれども,それは一例で,京都も今の自転車のマナーはかなり近いものがあると思います。

● マナーについては警察でも力をいれておられます。今,小学校等で出前教室みたいなことをやっています。

○ これは次回の議題にも入れてやらなければいけないと思います。本当に大事なことです。留学生でも来るなりそれで事故を起こして,後始末のために1年ぐらい何をやっていたかということになる。怪我した人はもっと気の毒ですが。

 

○ この中で来年度,京都を発信する素敵な小さなポイントは源氏物語だと思っています。今,京都新聞に「源氏物語千年紀 紫式部の生きたまち」というのが連載されていて,50回になるということでびっくりして,長いものだなと思っているのですが,そこに書かれたお寺が面白いと思います。私は宇治に住んでいるので宇治十帖ですが,宇治では,京都市の5分の1ほどの小さいまちですからでしょうけれど,もっと源氏物語のことについてやっています。源氏物語も,あるだけではなく本当にどんな話なのか,光源氏がいっぱい女の人をつくっただけではだめなんで,そういうことを知るということ,でもこれを学校教育に取り入れるのは不可能なことだと思います。そのために京都の文化・観光もそうですが,市民がもっと深く知るための機会をどのように作っていったらいいのだろうかと考えています。先生に何でもお願いしてもいいのですが,今は中身を3分の1に減らしたところをどうするか,土曜日をまた復活させようかというところまできているところで,総合学習というものを使ったら多少は出来るかもしれませんが無理があると思います。市民の意識,文化,観光に対して,あそこに清水寺がある,連れて行ってあげる,だけど清水さんてなんだろう,どういうものなのだろうということはあまり知らない。京都はあまりにもお寺が多すぎるのでそれもひとつの原因ですけれども。そういうことを親が知って,家で多少話しをして知る,そしてそれが発信することにはなっていかないかと思うのです。観光地に連れて行くだけが京都を知らしめることにはならないのではないかと思います。ですので,源氏物語というこの来年の1年はすごく大きな価値のある年で,保護者にも源氏物語を点でだけでなく,もっとストーリーとしてとか奥に流れるものとか紫式部についてとかを知ってもらいたいと思います。

○ 知る,知らないということでいえば,国際的な価値というものを意識しなければならないと思います。

○ 日本語でもなかなか難しいですが,この頃は現代語版も出ていますから,引き込まれるようにして読めるのではないかと思っています。

  たとえば,宇治の宇治十帖なんかでも回ってみると,現実のものと架空のものが一緒になっていてすごく複雑なのです。そして,歩いてみることが大事なので,何かをポイントとして市民が知り,それが子供に伝わる。そして,それを子供が発信する一角になるというようなことが考えられたらいいなと思います。    

○ 文化と観光に絡む分野で,京都再発見を市民レベルでやろうと。それがたぶん京都の国際的な価値を深めていくのではないかということですが,これに絡んで最近は如何でしょうか。

○ 源氏物語については,源氏物語千年紀委員会から(独)国際交流基金に対して資金の協力要請がきております。ハイライトとしまして11月には国際シンポジウムを開催する計画が決まっていまして,海外で源氏物語を研究している学者・研究者が30人ぐらいおられますが,そういう方をお呼びする計画が進んでいるようです。その外国から参加される方々の旅費とか滞在費をもって欲しいということで資金要請がきております。これから検討を進めていくというところです。

  これを成功させるということは,源氏物語の魅力を海外に発信する大きなポイントになると思います。

○ 大連寺だったか大雲寺だったか,私が聞いたことがないようなお寺が関係があるということで行ってみたのですけれど,どんなに保護されていないかということがわかりました。

○ 大雲寺の釣鐘は一度無くなりましたね。あのお寺は,御所で狐憑きになったらそこで護摩を焚いていました。煙をはる籠があって。もともとその周りに塔頭があって,全国から修行に来ていました。

○ お寺という体をなしてないという感じで,あそこで紫の上を発見したであろう,それは紫式部がよく行ったからなのですが,そういうようなイメージが全くないわけです。お金がないのでしょうけれども保護されていないという印象を受けました。

○ 海外でやっておられる源氏の研究家というのは,今までかなり趣味的に非常に狭い範囲でやっておられますし,ものすごく学術的には精密な議論をされるのですが,それが今の人類にどういうメッセージを持っているかだと思います。はでなことをいったらアーサー・ウェイリーが20世紀の前半に,これはあまり丁寧な訳ではなくて自分のインスピレーションでの私的作品としてつくったからベストセラーになったのですが,その後はだんだん細かくなっていっています。ぜひスポンサーをなさるなら,ご注文をつけられて単なる学会ではなくて京都のために意味のある企画をしてくれと。今,挙がっている話題はたぶん一例だと思いますけれども,大学とまちというのがもう一度お互いに語り合って歩み寄ってという,共同で何かをつくるという時期かもしれないですね。お願いしたいです。

 

イ 京都市に関する情報の国際的な発信について

○ 項目アと項目イと別々にやっている時間がないようです。セットでイの部分についても話しをさせてもらいます。

  海外からみて都市に魅力があるというのは,日本では地方分権といいますけれども,まち全体が地域主権の気風を持って,日本に行ってもそこのまちでないといけない,そういうまちの在り方は他のとこはないといけないと思います。ただ国が守っている文化財があちこちにあり,その数が京都にはたくさんありますというだけでは,まちの魅力として乏しいところがあると思います。京都創生のような国のほうにもいろいろな要望はしますけれども,京都が主体的に日本を代表する魅力的なまちを創っていくために必要なことをやれといっているだけであって,国にやってもらうという意味ではないということを今ご承知いただかないといけないのではないかと思います。

  例えば京都でいえば環境問題で,世界的には京都といえばご承知のとおりプロトコルが付いていると理解をされるぐらいなのですけれども,それも今の段階では評価は高いのですが,もうすぐポスト京都というのがでてくる。そういう点でも,国がどういう環境政策についての考えを持っているかということ以前に,京都市はこれまで歩んできたCOP3開催地,京都として世界の環境問題,特に環境問題というのは都市に大きな責任があるわけですから,それをリードしていくんだというぐらいの発言をしなければいけないと思います。日本の京都ではなくて世界の京都として独自の発言をしていかないことには,環境面においても魅力ある京都ということにはならない。しかし,そういう発言をしていると,これはどういう場所なんだという関心は非常に持たれる。

○ 実行は伴わないですが。

○ 実行は伴わなくても,少なくとも発言だけでもするほうが威力はあると思いますし,実際,実行が伴っている部分がたくさんあります。ところが,そういうことが知られていませんので,何かはっきりとした他のところにはないメッセージを送らないことには,それ以上のことを知ろうとしてくれません。そして,そういうことをやっていくには,地域主権の考え方を強く持たなくてはいけないというふうに思います。先ほどの自転車のこともコンベンションのこともそうなのですけれども,自転車でもヨーロッパに行ったらレンタサイクルというのは観光のツールとして大きな意味を持っています。バスや地下鉄はある意味ではわかりにくい,乗りにくいということがあっても,レンタサイクルだったら地図を見ながらとにかく走ったらいい。そしてさっきのように歩道であっても歩道のここが自転車レーンだといえば,安心して観光ができます。そして,今いろんな観光案内が携帯でとれるとかいうような新しいツールがたくさんできていますけれども,ああいうのもレンタサイクルで,自転車で観光するための情報がGPSを使ってやるようなものができると思います。自転車というのは,観光の交通手段として非常に有力なものであるし,便利であるし,実際にわかりやすく提供されればほとんどの人が使うと思います。他のものは全部高いですし。そういう観光にとっても非常に有用であるということもあるのではないかと思います。まちの交通手段としてでなくて,そういう点でも大事だということを考えていったほうがいいのではないかと思います。

  そして行政が大変扱いにくい問題ですけれども,京都が打ち出していけるものとして宗教があると思います。これをどのように扱うかということは,この委員会自体で大事な問題だと思います。宗教については,立派な先生方が日本の仏教がいかに世界平和に貢献するかということは十分語っていますので,そういうことをまさに京都が発信していくということからしても,宗教はどう京都として扱うかということが大事な議論だと思いますし,そういう点も考えたら如何かと思います。

○ 宗教については,今日か次回ぐらいでしか取り上げられないと思います。京都のことわざで「鰯の頭も信心から」というのが17世紀から記録に残っています。ああいうもの,陰陽道一般がそうですけれども,今の環境を大事にしようというのと近い部分がでてきています。(財)国際交流協会の組織の中でこういった超越的な神を信じるかという話以外でも幅の広い“宗教についての議論ができるまち”をどこかで売り込んでいきたいと思います。

  それと,地球温暖化対策室から言って欲しいのですが,今の委員の発言だと,いろいろ京都でされている環境施策についてあまり知られていないことが多いようです。特に海外で京都は環境改善のためにこういう姿勢で臨んでおりますというようなことについて何か方針とかございますか。

● 京都はCOP3以来,京都議定書誕生の地ということで地球温暖化対策を率先して取り組んでいくんだということで,全国では初の地球温暖化対策条例というのを平成17年4月に施行致しております。これは全国で初めてのことです。その中で温室効果ガスを10%削減しようという目標を定めています。

○ それはいつまでにですか。

● 2010年までにです。日本では温室効果ガス6%なので,それよりも上を目指しています。

○ それをもっと知らしめたらどうでしょうか。

● それがなかなか難しいことでして,今現在,家庭部門にエネルギーの需要・利用が高まっておりまして目標どおりにいかないというところがあります。市民の皆さんになんとか温暖化対策の取り組み,いわば省エネルギー・省資源の取組を普段から心がけて頂きたいということで,今年度は市民の皆様に宣言をしていただくとかの取組を考えているところです。

○ 温暖化対策室の中の職員の方で,国際的に協動していかなければならないような活動を担う人材の育成は考えているのでしょうか。

● この2月には世界市長協議会を,これは桝本市長がきっかけでイクレイと協動し2月16日から18日に実施しまして,その時には通訳ができる職員を揃えて新たな体制を組み,3日間ですけれども実施いたしました。それは国際的な取組でして,これからは国内を含めて自らの取組をきちっとしていかなければ世界には発信できないだろうということからです。

○ 10%削減は,先に世界に発信してから頑張らなくてはいけないということですね。

○ でも,廃食用油とか,いっぱいやっているではないですか。そういうことを紹介しないといけないのではないですか。他ではやってないことをやっているわけですから。

● 実は,循環型社会ということで,各家庭から出されるてんぷら油を市民の方々から回収しまして,京都市の環境クリーンセンターで,てんぷら油を化学的にはエステル化というのですけれども,精製しましてバイオディーゼルにして,パッカー車=ゴミの収集車全車にバイオディーゼル燃料を用いています。

  市バスにつきましてもバイオディーゼル燃料を20%混合で使用しているところであります。市民と行政が一体となって取り組んだひとつの事例だろうと考えています。

○ 今日は市役所の広報担当の方がおられませんけれども,こういう動きはやはり世界に向かって知っていただきたいと思います。そしてそれが市民の意識にもつながっていくと思います。京大も桂キャンパス,小さな規模ですけれど,急に学生さんが一生懸命になって弁当箱も自分で持って行ってゴミを減らそうという動きがでてきたりしています。そしてそれが知られる,知らせることは大事なことであると思います。その間に反省もでてくると思います。 

 

○ 今の京都再生の件に関しまして地球温暖化対策室の方へ,先ほど環境の事例を掲げた委員のご意見に基づいて提案をしたいと思います。歴史都市・京都創生の宣言には,景観・文化・観光3つの分野があります。この中で京都の市民としましては,観光というのはいらないのではないかと思います。どうしてかといいますと,景観や文化の結果として観光というのが生まれてくるわけでして,観光都市というものに住みたいと思ってわざわざくる人はいないと思います。200万人のツーリストにわざわざこんなところに住みたいと思う人がいるでしょうか。ですから,この3つを同列に置くのではなく,観光をとって持続性ですとか環境への責任というものを景観・文化と並べておいたら,これはつまり京都議定書の結果としてこういう取組をしているということになって,結果,観光というものが付いてくるのではないかと思います。

○ ただ,観光はその土地の持っている“光”を見せてそれを楽しむ,だからこの使い方だと入れてもいいと思います。これはこういうことだというふうにして私たちは入れていくことができると思います。

● これはこれとして,われわれが創ろうとしている推進計画にはそれを盛り込むことはもちろんできます。

○ 今の景観と文化と観光ということですけれども,今日行われている山鉾巡行で南観音山を曳いている方々の中に私の学校の外国から来ている学生が10人余りいます。その中の半分は,ここは終わって国に帰っているのですが,毎年この時期には戻ってくるのです。それでどうしても南観音山を曳きたいと言って本当に一生懸命やっております。私はこれが京都ができる観光の本当の意味だと思うのです。一度来たからもういいわとか,たくさんの観光客がいるから嫌とかではなくて,ここに来たらこんな文化があったんだ,こんな人とのつながりがあったんだということを提供できる,感じてもらえるのが京都ではないかと思います。そういう意味での観光ということに,できるだけここではしていけたらと思っています。

○ 観光について前に私が聞いた話では,最初はそこに訪れて史跡を見たりして楽しく,次はその土地でいろんな伝統芸能とか文化を実際体験してみる,そして究極の観光はそこに住んでしまう,と聞いたことがあります。そういうところまでいければいいのかなと思います。

○ 先ほど結果としての観光と委員がおっしゃったように,京都でもそういう議論はいっぱいありますけれど,必ずしも住民にとって観光客がどんどん増えることがいいかどうかは別の話で,いろいろと議論あると思います。ただ,海外への魅力としては,観光客が多いところにそんなに行きたくないという人がいれば,そんな多い人が行くのだから何かいいに違いないと思って来る人もたくさんいるわけです。だから観光客がたくさんいるということ自体は,ある意味では結構アピールできると思いますので,特に国際的な魅力としては外す必要はないと私は思います。

    

○ 最初にちょっと言いましたように,アとイがあってイのほうは,ではその魅力をどうやって伝えていったらいいのかということも大問題で,それぞれのご専門の分野で同じご経験があるかと思いますけれども,京都の都市の魅力をどう伝えていくかという,伝え方についてのご提言をお願いします。

○ 京都というのが,生きた博物館という意味で,今のものをただ守っていくというだけではいけないと思います。例えば,ドイツにも本当に綺麗な観光都市がありますが,観光的には大成功でも学術的にはジリ貧で死ぬ運命にあるようなところもあります。ですから,大学というまちとして誰が引き寄せられるかということを考えていかなければいけないと思います。例えば,20歳,30歳の人でしたら,もっとクリエイティブなことに興味をもってくると思いますので,例えば映画ですとかマンガの親交ですとか,現代音楽の音楽祭をやったりですとか,そういったことをすればいいと思います。若い人たちが,たしかに伝統はあるけれども,廃れかけているのをただ守っているのではなくて,どんどん動いて,流動的に今も発展していて凍り付いているのではないということを伝えるということも重要だと思います。

   

○ どうしても教育とか子供たちのことに関心がいくのですが,京都市には姉妹都市というのがいくつかあると思います。教育委員会は,小学生はちょっと無理としても中学,高等学校にはかなりお金をかけているように思いますが,公立の子供たちが子供たち同士で交流ができるといいのではないでしょうか。子供たちは他のところじゃなくて,京都から行くとなるとすごく誇りだと思います。自分の住む宇治でも中学を対象に年に1回行かせていますし,こっちへ来ます。京都はあまりに人口が大きいので可能かどうかは非常に難しいのですが,そういうことをすることによって子供たちも勉強するし,そしてそういう子供が発信するものは非常に大きいと思います。そしてそのことが,行った子全部かどうかはともかくとして,京都を他の子供にも知らしめる,そして自分も将来そういう世界へはばたけると思います。そして,はばたいた後に京都に帰ってこないということはないと思います。京都は誇り高き場所でありますから。教育委員会を動かさないといけないと思うのですが,そういう具体的な交流があるのがいいと思います。中学生とか非常に感受性の高い子供というのは,すごく影響を受けて帰ってきますし,子供たちを引き受けるということがありますので,そういう年代も交流というのがあったほうがいいのではないかとすごく思っています。

● これは次の会議の議題に入っています。

○ 京都の魅力の土台になることは,やはり日本文化だということに尽きると思います。京都で生まれて育まれてきた日本のオリジナルな文化をいかに効果的に内外に発信していくかということ,そのための効果的なツールとして活字メディアということが考えられています。具体的には出版や図書を通じて根っこのところで日本のオリジナルな文化を紹介していくということです。私は京都にきて3箇月近くになるのですが,京都の文化の成り立ちですとか特徴を掘り下げて体系的にまとめた出版物があまり多くないのかなという気がしますので,これをもう少し増やしていくことが重要ではないかと思います。外国の人を受け手として意識した出版物です。できればそれを翻訳してどんどん発信していくというプロセスが重要なことだと私は認識しています。これは非常に時間もコストもかかることなのですが,日本の魅力を発信する土台となることだと思います。ですので,このへんを京都市がなんとかイニシアティブをとって取り組まれていくことを期待したいと思いますし,また日本の文化・芸術・学術の図書を通じての出版ということについては,国際交流基金も資金協力を含めて持っておりますので,もし新しい翻訳出版がでてきましたら積極的にお手伝いしたいと思っています。ぜひとも将来に向けて日本の文化の根っこになるところが外国の人たちに理解されるような形での発信ということ,これはやはり出版・図書を通じての発信ということが広がりを持った形で広範囲にしみ渡るひとつの伝わり方だと思います。

○ 出版・図書というのは,こういう会議ではあまりに伝統的,正統的なので取り上げられないことが少ないですけれども,たしかに基本となることはそういうところにいくのでしょうね。

 

○ 最後にすばらしい考えがあるので,どうしても言わせて下さい。京都で作っている1番重要なものというのは任天堂のWiiのコンソール,今は月餅よりも世界中で有名になっています。ドイツでもアルゼンチンでもアメリカでもどこでも知られているものです。京都はそれの発信地としてこれを使って,例えばゲームを源氏物語なり京都のお寺なり観光関連のゲームを任天堂のクリエイティブなエンジニアの方につくらせて,それを京都からも若干資金付けをして,それで世界中の人たちが刀を振り回しながら京都の観光をするとかいったゲームをさせてはどうでしょうか。もし大成功を遂げたら,アイデアの提供者として0.5%のアイデア料をいただき,億万長者になりたいと思います(笑)。

○ 任天堂は,元はかるた屋さんですね。京都大学の学生がずいぶん働いています。しかし,メイドイン京都と思われているのかどうか。

 

○ 「古都京都」という言い方をやめたらどうでしょうか。京都は新しいものをものすごく発信していますから,京都の前に何か別の言葉付けを発案して宣言したほうがいいと思います。「古都京都」ばかりですから。

○ 私は,一度フランス,パリの財界の人たちが来た時に,細かい内容はともかくとして京都をフランス,またはヨーロッパで1番知らしめる方法は何がありますかと聞きました。皆さん15分ほど議論しまして,「パリならパリのビルとか交通量の多い高速道路とかに大きな看板を立てる。それが1番いい」と言われました。西欧圏からの委員がおられますが,そんなものなのでしょうか。

○ たしかに空港に行く人はお金を持っていますし,飛行機で飛んでいくこともできるので1番いい場所だとは思いますけれど。しかし,このコマーシャルの中身が大事です。

○ そうです。そんなにたくさんかけることはできないですし。

○ 私はここに来られていい体験をした観光客のクチコミが1番大切だと思います。ここに来たけれども良くなかったというのが,1番具合が悪いと思います。ですから,無くなってしまってからではどうしようもできませんから,今もっているものをすごく大切にしないといけないと思います。お祭りでも何でもとても大切にしていく必要があると思います。その上で,いつも先生がおっしゃっているように,私は教育が1番大切だと思います。子供の時から家庭教育でも学校教育でも京都はどんなところかということと,それから環境のことも,少しずつ毎日お話しをして,そして子供たちがその意識を持って大きくなればきっと国際的,この言葉は私はあまり好きではありませんが,そういうところでもそういう考えを持って外にも行けるでしょうし,ここに来られた方ともお付き合いができるのではないかと思います。1番大切なのは,京都にあるものを守って,そしてそれを上手に伝えていく人たち,子供たちを育てるというのがとても大切ではないかと思います。

 

○ 少し質問があります。先ほど京都創生の説明のなかの観光のところで,ここに「京都の観光大使として情報の発信を行ってもらうような仕組みづくりについて取り組む」とあります。これはこれからだと思うのですが,どのようなことなのか,どの程度進んでいるのか教えていただきたい。

● 新京都市観光振興推進計画に留学生や海外の旅行エージェント,マスコミ関係者が帰国後に京都の観光大使として京都の発信を行ってもらえるような仕組みづくりについて取り組むということで,留学生の部分については,国際化推進室のところにあると思うのですが,ちょっとまだこれはできていないところです。

○ 観光については,観光客5千万人構想というのを打ち出してやっています。そして,数字をあらわすのが正しいとは思わないのですが,国際化とか文化の部分の目標,何か見やすい指標みたいなものがあったらいいのかなと思います。例えば観光大使だったら何万人とか何千人とか。また一方で市民の中にサポーターというか手助けする人があったらどうかと思います。観光大使は,外国に帰られた人をいっていますので。

○ それはいい考えですね。

○ 観光大使というよりも,京都創生大使というほうがいいように思います。百人委員会とかぶるかもしれませんが,それでも観光のことばかりいっているのではなくて京都全体のことを知ってもらうという,京都創生大使のほうが私はいいと思います。

 

○ 私が協力隊でフィジーに行っていた頃に,フィジーだけでなく大使館主催で日本文化を紹介するイベントというのを何年かに1回必ずやられていて,そのときの大使は以前ベルギーで領事をやっていたのですが,そのベルギー,ヨーロッパで紹介をやった時とフィジーという途上国で紹介をやった時とでは全然感度が違うと言われていました。ですから,先ほどの「古都京都」みたいないわゆるベタといわれる日本文化を紹介しても若い人や途上国の人は全然反応してこないのです。そこで,私はあのマンガミュージアムができたことは面白いことだと思います。私は精華大学だったのですけれど。「古都」をとるというのは大胆なのですけれども,もうちょっとゲームですとかマンガっていうところにおいていってもいいのかなと思うのと,海外のJICAですとか大使館ですとかでは日本を紹介するイベントは常にやっていますので,そこでパネル展示だけでも京都コーナーというものをタイアップしていったら面白いのではないかと思います。

○ そういうのはできるのでしょうか。

○ 可能性はあると思います。

 

○ 時々やりますね。大学にはくることがあります。2年前ぐらいにタイからお誘いがあってやったことはあります。ただ,大学は忙しくてなかなかです。自治体は数が多いですけれども,京都で特にやってみるということはできるだけ打ち出していったらどうでしょうか。

○ 結構,駐在している隊員というのは遊ぶところがないですから,仕事以外は本当に何もすることがないので,そういうのに絡めていけたらもっといいのではないかと思います。

 

○ 時間がきてしまいました。次の会は8月の下旬になると思います。詳しい日程は,また事務局のほうで調整をしていただきますので,今日言い残されたこともまた次回にお願いします。次回は主に教育がテーマになるかと思いますけれども,今日の議論はこれで終了とさせていただきます。次回は,京都市内の学校や市民団体の関連活動のアンケート調査の結果がでているころだと思いますので,その報告も聞かせていただけると思います。今後の大学や教育関連に関しての国際交流,協力のあり方についてお考えをまとめてきていただけると有り難いと思います。お忙しいところ,熱心に実のある議論にしていただきありがとうございました。

 

● 熱心なご意見をありがとうございました。次回につきましては8月下旬をめどに調整させていただきたいと思います。今後は行政側からの報告をできるだけ短く簡潔に申し上げたいと思います。それでは次回もよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

 

お問い合わせ先

京都市 総合企画局国際交流・共生推進室

電話:075-222-3072

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