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第6回審議会摘録

ページ番号4193

2007年11月8日

京都市都市部のまちなみ保全・再生に係る審議会 第6回摘録

○日時:平成13年2月6日(水) 午後4時~6時30分
○場所:京都ロイヤルホテル2階「青雲の間」
○出席者
  座長 青山吉隆(京都大学大学院工学研究科教授)
      淺井國勝(京都商工会議所議員)
      鵜飼泉道(市民委員)
      栗山裕子((社)京都府建築士会常任理事)
      小浦久子(大阪大学大学院工学研究科助教授)
      櫻田佳正(市民委員)
      高田光雄(京都大学大学院工学研究科助教授)
      西嶋直和(市民委員)
      増井正哉(奈良女子大学助教授)
      宗田好史(京都府立大学助教授)
      吉村彰彦(日本不動産研究所大阪支所長)
      リムボン(立命館大学助教授)
      若林靖永(京都大学大学院経済学研究科助教授)

  以上13名(50音順,敬称略)

1  開会
(事務局から挨拶)

2  議事
(1)シンポジウムを振り返って

(委員)
○当日のシンポジウムの一番最後に,青山座長から,シンポジウムで議論された内容については,過去の一年間にわたるこの審議会の中で,多かれ少なかれ議論されてきた内容であったという指摘があった。すなわち,この審議会で議論されてきたことに,ほとんど論点は集約されてきたといえる。
○当日の報告者の方々,それから討論の内容というものを,私なりに整理してみると,結局論点は3つに絞られる。
○第1点目は,急速,かつ急激な開発インパクトにどう対応していくかという問題である。それが象徴的に現れているのが,今回のマンション問題であり,それがたとえ法規制の枠内だとしても,30m,あるいは45mというマンションが低層のまちなみの中に突如として現れる。しかもそれが大量に,一時に発生する場合の開発インパクトがまちなみを急激に変貌させる。あるいは,地域内外のコミュニティの間で軋轢が生じるといった問題である。
○このことに対する取り組みとしては,容積率を引き下げるなど,ダウンゾーニングによって急激な開発インパクトを緩和していくということが一つの手段としてあり得るという指摘がされた。
○開発事業者の方の立場からすると,法規制の枠内で最大限の利潤を追求するというのは当然のことである。しかし,同時に京都の都心でマンションを開発する場合には,事業者にとっては付加価値になるという指摘もあった。したがって,この中での開発行為について,事業者の自発的,あるいは,善意の開発コントロールというものは,基本的には不可能であって,京都のまちなみを考慮した開発行為というのは,共通のルールの元で行われなければ解決しないものであるということも指摘された。
○2番目の論点が,都市としての活力の問題である。近年急激にマンションが建ったことで,都心部の人口が一気に回復し,これまでの長年の悲願が,一時に達成されたコミュニティもある。このことは,都市の活力問題としては,相反する二つの意味がある。
○第1は,高齢化して人口が減少している地域内に,若い働き盛りの世代が大量に入ってきて子育てもしているということで,多世代交流ができて,非常に都市としての活力が高まるという点である。
○一方,今回のマンションの開発に伴う急激な人口増加というのは,コミュニティを活性化するということとは裏腹に,京都の地場産業が,軒並み不振に陥った結果発生しているものである。これは,イコール経済の活性化に繋がっているとは言えない。むしろ,その逆ではないかということが指摘できるわけで,このような2面性を持っている。
○先ほどの第1点の急速な開発インパクトと人口回復に関わる問題であるが,ここで議論されたのが,マンションに住んでいる人々と,以前から暮らしているみなさんとのコミュニティの間でどのようなお付き合い,連携をしていくのかということで,一旦できたマンションの人々に関しては,その人達を地域コミュニティのメンバーとして暖かく受け入れて一緒にやっていきたいということがあった。
○しかし,一方でこのことによって,まちなみが壊れるのをどう考えるのかというご指摘もあったが,両方の意見に共通していることは,決して新規来住の人々を拒否しようというのではなくて,いったん出来たところに新たに入って来られる人たちとは,基本的に地域コミュニティとして一緒に付き合っていくべきという点である。
○そういった開発行為が発生する前の段階,急速な開発インパクトに対応するために,どのような対策を講じておかなければならないかが,問題である。
○第3点目の論点は,まちなみの保全と再生という問題である。その際に,京町家の価値をどのように見ていくのかという指摘があり,京町家にこだわるのはおかいしいという指摘もあった。この点については,委員の方から,現在我々が知っている京町家というのは,近世末期までに確立された一つの完成された建築様式であって,そのことが1200年の京都の歴史をずっと貫いて存在してきたわけではない。むしろ,きわめて最近に出来たわけであるが,これを我々が,今日の京都の都心部のアイデンティティ,京都らしさの一つとして大切にすることに対する価値観は,京都市民,京都以外の人々とともに共有できるものであり,歴史的資産となるストックではないかという指摘があった。
○他方で,このような京町家を,保全したり継承していこうとすると,実は,そのことが,建築基準法に違反する問題と直結してしまうという指摘もあった。
○このことに我々はどのように取り組んで行くのか,あるいは,行政はどのような手段をここで講じていくべきなのかという指摘があった。
○たまたまNHKのドュメンタリーで隈研吾という建築家の方の番組があったが,その方は,地方のある美術館で,屋根材に木材を使っている。建築基準法では,屋根は不燃材でなければいけないが,それがどう処理できたかというと,遠赤外線処理をすることによって,不燃材としての性能が認められるということである。
○そういった問題は,防火地域の線引きをどうするかということではなくても,現在の科学技術によって,いくらでもクリア出来る問題ではないか。そういったことを,是非行政の方達にも研究していただければと思う。
○以上,3点述べてきたが,いずれにしてもこの審議会で問われているのは,今の3つの論点を統一的に解消していく施策の方向性を提示せよということである。
○最後に,そういった方向性に対して,発表者の中の方から提言もあった。例えば,とりあえず,ダウンゾーニングをして,急激な開発インパクト,マンションラッシュというものを阻止した上で,地域住民と行政の間で,個々の地域の再生策を考えていきながら,それに沿って容積も元に戻していくような施策があるのではないか。このことは,本審議会で既に提案されているコミュニティ・エンパワーメントと共通するように思える。
○さらに,もう一つ,京都で,このような問題を,我々が真剣に議論していることに対して,非常に恵まれた贅沢な京都ならではの問題だという指摘がある一方で,我々は,好むと好まざるとにかかわらず,京都が歴史都市であるという呪縛から逃れることは出来ない。したがって,まちなみの問題と,歴史都市としての価値を有するストックをどのように再生していくのかということも強く問われるように思う。

(委員)
○リム委員からシンポジウムの内容を非常に体系的に整理していただいた。市民の方々がこの問題に対して,直接どのように考えて発言されたかが整理できたと思う。

(委員)
○シンポジウムの席で市民の代表の方がいろいろな意見をおっしゃったが,それぞれいろいろな立場からこの問題に対して真剣に悩み,取り組まれている。町家住民の方もおられたし,あるいは不動産業に携わった方やデベロッパーの方もおられた。また,積極的に肯定的に具体的な施策を考えようという発言もあったし,一方で今からでは遅い,と言う悲観的な発言もあった。
○ただ,今までの京都の都心のまちなみに関わる問題に関してそうであったように,それぞれの立場あるいは言い回しは違ったが,確信としていわれているのは,急速なインパクトにどう対処するかという課題に対して,具体的な手だてを示せ,という点。この点において市民のみなさんの意見は収束していたのではないかと理解している。
○都心人口回帰にしても,よい面と,まだまだ憂慮すべき問題があることはもっともであるが,拒否するのではなく,前向きに都心の再生を図るという形でマンションを受け入れるという方向で,みなさんの議論は収束していたように思う。
○ただ,歴史都市としての京都のスタンスというか,取り組みに関しては,必ずしも,具体的な方向をシンポジウムの席で議論できたかというと,まだまだ実は討議すべき内容は多いし,もっともっと多様な意見をお持ちの市民の方がおいでだろうと思う。
○おそらくリム委員が整理された3番目の点というのは,現代社会の文明の問題といってもいいくらいに大変重い課題であり,第1点にどう対処するか,第2点の都心再生をどう図るかという具体的な知恵に対して,より長い時間をかけて考慮していくべき点であって,特にこの3の点に関して市民のみなさんに議論に参加いただくような場が今後とも続いていくということが必要ではないかという印象を持った。
○1点目と2点目に関しては繰り返しになるが,シンポジウムの席で発言内容は多様であったが,一定の方向に収束したのではないかというのが私のとらえ方である。

(委員)
○当日,みなさん聞いておられて,シンポジウムでの意見の交換もあったわけだが,市民の方々の意見を参考にして,提言骨子を作っていくわけである。
○次に,とりあえず作業部会の方でこれがないとなかなか前に進まないだろうということで,提言骨子のたたき台を作っていただいた。これを踏まえて,シンポジウムの意見も考慮しながら,みなさんから意見を頂戴したいと思う。

(2)作業部会からの報告(提言骨子(たたき台)について)
(委員)
(説明)

(委員)
○先ほどの説明で理想とは思うが,疑問点が2つある。1点目は,軒を並べて下をテナントにして,景観的な見た目をよくするということだが,一定の建物を建てる時には駐車スペースの付置義務というのがあるが,駐車の関係はどのように考えているか,ということ。
○2点目は,今の写真では,テナントが並んでいるが,建物はそううまくは建っていくわけではなくて,点,点,点と建つと思うが,その辺の調整はどのような考え方を持っているのか。

(委員)
○駐車場の問題は確かに重要であり,それが理由で今建っているマンションの一階部分が店舗にならないということが,往々にして起こるわけである。
○その場合実は,交通政策の関係と合わせて議論すべき内容だと思うが,駐車場の設置場所を建物以外の場所に移す,勿論近い距離だということが制度で決まっているわけだが,そのようなことも考えられるし,駐車場を地下に入れて設計上の工夫で,確かに進入路は通りに面したところにあるものの,残りは店舗にするというようなことは出来ないか。
○何らかの形で現行の駐車場の付置義務を満たしながらも,美観地区の指導で店舗化が進まないかということを考えている。駐車場の付置義務が,マンションの問題だけではなくて都心の交通政策全体,あるいは都心のにぎわいに大きく関わってくるため,付置義務そのものを将来的に見直すことも必要ではないかと私自身は思っている。
○都心のにぎわいをどう再生していくかということがより大きな政策課題になるが,一概にはいえないが,現行の付置義務制度の中でも十分店舗になるだろうと,工夫できるだろうと思っている。
○今示したのは,将来のビジョンであり,5年や10年で最後に示したような目標像が出来るとは思っていない。ただ,町家を重視しながらその周辺で新しい建築行為が起こる,部分的に街並みの更新が起こる課程の中では,一階部分に関しては少しずつであっても,店舗にしていく,にぎわいを取り戻していくということが今後の目標像,まちなみづくりの目標像として定まっていれば,そんなに大きなマンションを作らない方でも,小さな町家にお住まいの方でも一階部分をもう一度お店にしてみようとか,店でなくても工房にしてみようとか,何らかの都市的な,商業的,あるいは伝統産業的な使い方が促進されるのではないか。
○今とりあえず,新しく建物が建つものに関しては,店舗を重視するという方向だけを示す。それで長い時間をかけてにぎわいを取り戻していこうという趣旨である。

(委員)
○(3)②に,「京都の個性として継承していくためには」という一文があるが,現存する建物等をどう維持していくのか,残していくのかが大事である。変わるときにはこう変わったらいいという話はいろいろあるが,現存している町家そのものが,所詮は法的に不適格物件であるといった現実がある。もう少し現存のものを残していくという形の思考があってもいいのではないか。もし法的にやりにくければ,逆に法律を変えるくらいの発想が必要なのではないか。
○京町家が何かというということについて一年間議論されてきたなかで,店舗の部分が表に出てきた感があるが,基本的には住まいであるという部分をおさえる必要がある。住居専用の建物を,今後現在の法律下において再生していけるのかどうか。できないのだとすれば,それを再びつくれる状態をつくっていけるのかどうか。
○マンションが建つが故にやむを得ず下の部分をどうするとか,4階の建物があるが故に仕方なく下の部分を何とかしようというのは,消極的発想である。やむを得ない発想ではなくて,木造そのものの1階ないし2階の建物をつくっていく道というのが,実はこの審議会の非常に重要な部分であって,その部分をもう少し議論していきたい。
○2枚目の⑤に出てくる「環境負荷の少ないまちづくりを目指して,屋上緑化を含む都市緑化の推進を検討する」の説明の中にもあったが,確かに東京や大阪で今屋上緑化ということが一つの都市の緑化運動,環境整備の問題として注目を集めていることは承知している。私は,東京や大阪に関しては必要性を認めているつもりである。しかし,あえていわせていただくと,私はやっぱり木や草というものは地球の上に生えているのが自然の姿であって,空中庭園というのは異様な状態であると思う。こういうことをやめようというのが,逆に京都の提案ではないかと思う。

(委員)
○最初の指摘についてであるが,伝統工法による木造の町家をそのまま再建するということは建築基準法上はできない。現存の町家を補修するのにも,既存不適格であるが故にいろいろな制約を受けるということがある。これを根本的に回避しようとすると,防火地域の指定を見直すということが必要となる。ただ,むやみにそれを行うと,防災上の安全性を著しく損なう危険性があるため,簡単には見直しができない。
○この問題については,いろいろな議論がこれまであった。たとえば,資料に書いた神戸大学の室崎先生の提案は,歴史的景観を継承するに値する地域である,地区計画等で安全性が担保されている,防災・景観両面を考慮したデザインガイドラインがある,新たな防火地域規制についての住民の合意がある,と少なくとも4つくらいの条件が整っているところについて,景観形成型防火地域という新たな制度をつくるというもの。地域性を考慮するとともに,地域の総合的な安全性能,つまり,物理的な材料の性質だけではなく,コミュニティの防災力も評価していきましょう,というのが今までと違うところです。
○京都はこういう制度を考えるのには全国的に見ても一番適当であり,かつ,実行する必要性が高いところだと考えている。ところが,これを実行するにはいろいろなハードルがあり,そのハードルがなかなか越えられない。もちろん,京都市でもこうした制度を考えていないわけではなくて,過去に研究会をつくって検討してこられているし,私もその検討会に参加したこともあるのだが,残念ながら実行には至っていない。
○しかし,そういうことをいっている間に,現状はどんどんまずい方向に動いていく。私の個人的な意見としては,何とかここでそのハードルを越えてしまうということができないかと考えて,その思いをここに書かせていただいた。直ちにこうすればハードルを越えられますよ,というほどのすごい名案を持って提案しているわけではないが,もう一度仕切直して積極的に検討しましょう,ということを言っている。
○この提案は,建築規制ということでいうと,規制の緩和になる。ただ,世間一般にいわれている経済活性化のための規制緩和とはかなり違う。これは,全国一律の建築規制を脱し,地域適合性を高めるためのルールをつくるための緩和である。
○この問題を含めて,これまでの建築基準法がベースとしていた建築規制に対する考え方を超えて,真に地域に適合した新たな建築のルールづくりに取り組んでいかなければならない。町家の再生だけではなくて,あらゆる建築について,根本的な考え方の転換の流れをつくり出さなければ,本物にはならない。

(委員)
○先程のご指摘の中で,町家というのは必ずしも店舗ばかりではなくて,専用住宅もある。それをどう継承するかというご指摘は,まさにその通りだと思う。今町家として存続できるところというのは,個人的にものすごく努力していらっしゃるか,私も直接調査して知っているが,これは職住共存地区ではなく少し離れた都心のところで,有名なある老舗で,そのお店というのは,マンションを経営していたり,たくさん駐車場も経営しているという大地主さんである。そういったところで大成功していて,なおかつ自分のお店はものすごい町家を維持していらっしゃる。今の町家というのは,そういうものなのかなと思う。
○財源があって町家が維持できるところと,「できることなら町家を継承したかった。でも相続を契機に,敷地の半分で賃貸マンションをして,自分のところも同時に建てて住まざるを得なかった。」とおっしゃっていた方がいる。
○そういった意味で,結局いろいろなシステム,装置はできるが,それを動かすための燃料が必要で,それが財源ということだと思う。そういう意味では,今回の提言で法定外目的税というのは,長期的視点に立った○であるが,本当は長期的ではなくこれがむしろ緊急で,◎にすればいいのに,ワープロをピッと変えればできるのになぁ,ということを思っていた。
○それからもう1点。作業部会としてではなくて,今のプレゼンテーションを聞いていてふと思ったのだが,1階部分を店舗にすれば容積をいっぱい使っていいですよ,というご指摘があった。それを聞いていて思ったのは,法定外目的税がダメなら,1階部分を店舗にされても,ひょっとしたら地域コミュニティにとっては好ましくない店舗が来るかもしれないから,その1階部分をコミュニティに寄付する場合は400%使ってもいいですよ,としてしまえばいいのではないか。これはこの間のシンポジウムの方がおっしゃっていたが,マンションの場合,上に行けば行くほど価値が出るのであって,いわば低層部分というのはあまり重視していない。つまり,そういうことであれば,下1階部分を放棄する代わりに,最上階をもうひとつ高いのがつくれるというのは業者さんにとってもいいのかなと思った。

(委員)
○2点補足する。1点は住まいとしての町家に関してだが,冒頭申し上げたように,当面強化すべき施策のうちの一つが京町家再生プランの話であり,中で都心部の町家に関して,大きい200 坪以上のものから15 坪くらいの長屋まで含めてみんな町家と呼んでいるので,小規模の,特に住宅として使うものに関しては,具体的なアクションプランが考えられている。
○それから,京町家再生プランと平行して,最近策定された京都市の住宅マスタープランの中でも,町家の保全再生に関する記述があり,特に,住宅として使われる町家に関する新しい仕組みが提案されている。これは,住宅マスタープラン等の方でご検討いただくことだと思う。
○私の研究室でも職住共存地区の空き家を調査して,例えば,堀川五条ブロックとか烏丸五条ブロック,それから烏丸御池ブロックとか,小規模だが決して無視できない数の空き町家が存在している。これに関しても,規模が小さいから,店舗として使うということもあるが,住宅としてお使いになりたい方がおられるわけで,大家さんと(小規模な大家さんが多い)入居希望の方とのマッチングを図るような仕組みについて,京都市景観まちづくりセンターが取り組み始めているが,そういうものも是非当面の計画として,職住の住に関しては,徹底的に守っていくという取り組み,これはもう既定の事実である。
○それから,ご指摘の2ページ1行目⑤の「環境負荷の少ないまちづくり」に関してであるが,屋上緑化というのは確かに提言として筆が走りすぎたかなという気もしないでもない。ただここで申し上げたかったことは,町家がなくなるということは単に表側の景観の問題ではないのだと。その裏側の敷地,特に庭があったところで緑地が失われる,あるいはその緑地がその街区全体の環境を担保するような仕組みになっていたわけで,これがなくなることに関する手だてが必要だということが,先生方から指摘されていたので,いろいろ考えた結果,都市緑化という言葉,都市緑化を職住共存地区でといったら屋上緑化,という非常に短絡的な表現で「屋上緑化」となっているが,私も個人的には,木や草は地面に生えるのが本来の姿だと思っている。ただ,そこまでまだ充分考えられていないので,ついつい最近の流れに飛びついたということで,是非ご検討願いたいと思う。

(委員)
○続きでいえばということになるが,この「環境負荷の少ない町」というのは,もう少し声を大にして,今特に京都はいわなければいけないところではないかと思う。そのときに緑地だけをターゲットにしたものではなく,町を形成する素材であるとか,エネルギーの循環のこととか,そういったものも何か言葉としては,これから50 年100 年という長期の骨子として提言するのであれば,そういったところは避けて通れないので,もう少し明確に謳うべきだという気がした。
○それと緑化に関して,緑化というのはおかしいが,この屋上緑化という言葉も私は抵抗を感じたが,それよりも,裏の庭は単なる空地であったり緑地であったりするのではなくて,一つは建物と同じ程度に価値のある庭園である。京都の造園技術というのは,町家の庭園を外国にまでも持っていこうというくらいの文化性の高いものである。それが今までは隣と隣という町家の庭が連続していることで,通風の面であったり防災の面であったり,いろいろな用途をそこが担っていたというところがあり,一つの建物のそれが空地ではなくて,建物と同じような文化を持っている空間だということだ。それが今のセットバックみたいなかたちでその空地を前に持ってくると,隣と隣の空地が分断されてしまう。それが連続しているという空地の取り方で,風の通りとかそういったものをまかなっていたところがあるので,現存する町家の庭等の連続を大切にするとか,そういう文言を入れて,マンションを建てるにしても,隣の建物がどういう空地を取っているか,緑地を取っているかということで,そこと連続したような空地の取り方をするとか,そういったものが提言できればいいかなと,この項目を見て思った。
○町家に関しては,(3)③であるが,防災面に対するということは,○だったらこのままなくなっていってしまうだろうなという感じがする。基準法ももちろん建物が建った後からできたものだし,その運用に関してもいろいろ今まで京都市サイドでは考えてきたはずである。町家の出入りが平入りで入るという形状をしていたために,北側斜線の緩和で棟の高さ,桁の高さで規制をするということが今までも行われてきたわけだから,何か独自の方法で,ソフトな,人的な,何軒かに一つは消火栓を設けるとか,今町家再生研などが考えている噴霧装置をつけるとか,町内の夜回りがあるとか,いろいろなソフトな面とハードな面を組み合わせて,防火壁にしても,軒裏にきちっと防火壁を立ち上げることで,もし延焼があったときには,軒が落ちても本体には火が回らないとか。それから,サッシの構造も二重サッシを設けるとか,いろいろなソフトなものと建築的なハードなものを組み合わせた提案ができるような項目を,◎でつくっておくべきだと,町家のところに関しては思った。

(委員)
○宗田委員の説明の中で,私は多少理解の仕方が違う。特に「中低層中心の良質な建築物」ということで,その中で当然31mを上限として,20mを超える部分に対して設ける一定の基準として,私は目的税といったものを考えるということも,これから議論していったらいいのではないかと思う。
○2番の「容積を300%に引き下げる」という部分であるが,先程の説明の中では,「300%に引き下げることによって,高さを押さえることができる」ということをいっておられたが,私はそうは思ってはいない。というのは,300%に引き下げることによって,隣との空間がより広く取れるのではないか。そういった形でのある種グレードアップしたマンションができあがってきたらいいのではないかと思う。
○必ずしも,中低層を望んでいるというのは,我々の地域の中で全ての方々が思っておられるわけではないと思う。その中で良質な共同住宅が建つことを望んでいるし,また,地域とのコミュニケーションの持てる空間というものが今後出てくることを望んでいる。そういったことが,いわゆる共有部分の不算入というものを組み込めば,住宅部分は300%であっても,それを400%,500%にすることは可能になるわけだから,高さの制限内で,より地域とのバリアがなくなるようなマンションができていってもらえばいいなと思う。
○その意味では,中低層というものが,私のところの地区計画の中で一番議論の争点になった部分でもある。というのは,現在10 階建て11 階建てが既に建っており,建築中のところもある。我々の審議会というのは,マンションを反対するためにできた審議会ではなく,また個人的にも,そういった気持ちでやるのであれば,わざわざ仕事を放ってまでやろうとは思わない。やはり住民の方々が増えていって,より地域が活性化し,なおかつこの地域を選んで良かったと思ってもらえる,そういったことで何かお役に立ちたいと思っている。必ずしも,低い方がいいということで,うちの地域としては進めていきたくない。
○高くなっても,高くなっただけのメリットが生まれるような形での300%だと理解している。その辺の解釈の違いがあると思うが,例えば新聞で「300%に高さをダウンゾーニングする」という捉え方をされてしまうと,皆さんそういった理解になってしまう。その辺は使い勝手の良いように,また地域地域によっても考え方が変わってくると思う。そこらのことは充分配慮していただきたいと思う。

(委員)
○指摘された300%ということについて,「高さを引き下げる」というのは私の表現の間違いで,その点はまったく同感である。「周辺環境に配慮した」という表現にもあるように,隣の建物との間隔を確保することに容積が少なくなった部分を使うということも,当然考えられる。
○誤解のないように申し上げると,共用部分の不算入に関しては,この制度をやめようとはあまり思っていない。共用部分を算入にすると,共用部分が狭くなってしまうということがあるので,防災上とか居住環境上あまり良くない。このため居住部分に関しては,一定共用部分不算入は認めつつも,1階店舗部分の仕組みで何とかできないかということを考えているので,周辺地元との協議をした上で承認制度を,ということは,そういう学区の考え,地元の考えがあれば,そのことのために300%にした意味を使っていただければ,それが一番いい方法であろうと思う。

(委員)
○今のご意見によると,目標像のところにある「中低層中心」という表現もないほうがいいということになるのか?

(委員)
○狭い範囲の地域での思いではないわけだから,誰しもが高いより低い方がいいというのが当たり前のことで,町家の問題でも,木造の京都らしい町家が残っていくのは,大きい小さいは別にして,誰もが望んでいるわけである。
○そういった中で,目標像の中でまちなみに配慮したというのがうちでは一番考えていることで,私は必ずしも中低層がいいとは思わない。まちなみに調和のとれたということが一番大切なことではないかと思う。特に高さの問題とか,共同住宅の問題というのは,京都全体で考えていくこういう場というのはわかるが,最終的には隣接している家,その次に町内会,そこの協議がうまく進めば,今のところ我々の地域では何ら問題は起きていないわけである。それをむやみやたらに,ごり押しに開発業者が建てていっているということは,そう聞くことではないので,何とかその中で地域と共存していくためにどうしたらいいかということを皆さん考えておられる。
○「低いマンションの方がいい。その代わり,価格は倍になりますよ」果たしてそれで,需要と供給のバランスが取れるのかといえば,それはなかなか難しい。
○郊外の沿線でのマンションよりも都心部のマンションの価格が安くなっている。これは考え直さなくてはならないのではないかという点で,私は容積が下がり,なおかつ空間をたくさん持つことで,当然価格も多少高くなっても仕方がない。またそういったところで,我々の地域を選択してもらえればありがたいなと思うし,京都市の中でできる限り,むやみやたらに高いものがいい,また我々も低いよりも高い方がいいと思っているわけではないので,全体の目標としてはそれでいいと思う。

(委員)
○まず,全体的な提言のつくり方の問題であるが,基本的な構成はいいと思う。「地域の個性を大切に継承するために」と「中低層中心の良質な建築物を更新させるために」というところに5つずつ書かれているが,どちらも大切なことだと思う。提言の表現の仕方として何を目的とするのかということと,それをどういう制度なりどういう仕組みでやるのかという,2段構えで書いた方がわかりやい。
○はじめの「地域の個性を大切に継承する」というところについては,どのような方向,目標を持つのか,町家をどう評価するのかは書かれているが,その実現のための方法や方策について書かれていない。「中高層中心の建築物の更新させるため」については,その市街地イメージやどのような街並みを目標にするのかが書かれていなくて,中高層中心に更新するために,「こうする」ということだけが書かれている。目標と手段と2段構えで書いたほうがわかりやすい。なぜかというと,制度にしていく部分の提言は,まだ議論の余地があると私自身は理解しているが,目標や方向性,将来の町のイメージや街並み像,町家の評価と歴史的市街地の個性などについては,共有化できると思う。そういう意味で,どのような目標や目的をもつか,というところについて,まず共有化できるところの確認をしておく必要がある。
○木造,町家については,一応の価値を認めていこうではないかという議論がある。もちろん異論もあると思う。それぞれの私有財産であることに対して,どこまで制限ができるのかとか,いろいろ問題はあると思うが,歴史都市として,一定,町家の価値を共有化しよう,何らかの形で,歴史的環境の資源として維持あるいは残していくことを考えよう,ということは共有化できる。そのうえで,町家を保全再生するためには,木造建築についてこういう問題があり,これをクリアする方策を検討するという組み立てである。
○例えば,防災性能を考えれば,性能規定的な考え方で何かできないかとか。それに対して,制度的に何をどういうことをしていくかという組み立てで書いた方が,わかりやすい。
○それから,さきほど指摘があった高さの問題と街区内部の空地の問題とか,沿道の賑わいの問題とか,今後の市街地像,街並みのあり方として共有化できる問題がある。それを前提として,それを実現するには,こういう仕組み,こういうルールにしようという2段構えでまとめるほうがわかりやすい。「こういうことのために」の部分は,最低限共有化しておくということが必要なのではないかと思う。
○次に,「中低層中心」のところで書かれていることは,それぞれ1個ずつの問題ではなくて,相互に関連している。つまり高さの問題,容積の問題が書かれているが,これは別々の議論ではない。

(委員)
○②は容積規制ではなく用途を問題としている。

(委員)
○建物低層部の用途を問題というのは,住宅以外の用途を入れれば400%までいいということですよね?つまり,マンションを建てるときのボリュームの枠組みの基本に,高さ20m容積率300%があり,次に,低層に店舗を入れれば,20mで400%になるということが,まず第一段階としてあると,そう理解してよろしいですか?
○ところで,20m300%とか20m400%でどんな建築計画ができますか?この条件では,容積が減ったから空地ができる,とはとても思えない。商業地域建ぺい率80%というこであれば,容積率は消化できるが,空地はほとんど取れないと考えてもらった方がいいと思う。
○高さ20mだったら250%であれば多少空地は出ると思うが,20m300%といったら,かなり建て込んだ計画になる。高さと容積の問題は連動している。300%だけを見たら,400%と比べて,おっしゃられたように,空地が出るような気分になるかもしれないが,高さを押さえればべたっとなるわけだから,当然空地はつくりにくい。
○先程指摘されているように,高さの問題というのは,商業地域では非常に難しい問題だと思っている。ある程度高さで押さえる方がいいのか,あるいは容積で押さえて,その配分の中で敷地内空地をどう取るか,むしろ背後壁面線指定とか,そういうものの組み合わせも入れたようなボリューム配置の問題を,京都のような奥行きの深い敷地の場合は検討すべきではないかと思う。

(委員)
○具体的には同じ考えである。ただ,この審議会の最初の時から話題になっていたダウンゾーニングはわかりやすい言葉であり,また高さの問題もみなにわかりやすい話題である。そして,その二つが審議会の重要な検討案件になってきたのも事実である。ところが,今回の案では容積や高さについて,具体的な数字をあげられていて,どうしてこうなったのかと思うところがある。審議の過程で経済的な問題とかいろいろな話があったが,それがどういう経過でこの案に盛り込まれたのか。そのあたりを明確にすべきである。いろいろな条件が可能で勘案して,どのようなことが実現可能で,短期的な作戦としてリーズナブルなところはここなのだ,という風に作業部会からご説明いただいた方が,市民も委員も納得するのではないかと思う。

(委員)
○今日の提言の説明を受けて,いくつかこの審議会で議論してきて,こんな感じかなという,例えば,道路沿いから見てどんな風に見えるかというので,4階部分以降が見えなくなるようにしようとか,1階部分は商業店舗などが入らないと町に賑わいという点でどうなのかなとか,そういうことはいくつか議論されてきたことで見える部分がある。
○しかし,すでに他の委員からも出ているように,実際に町家を再生する意味で具体的に方策を提案しているかということになると,「そうなるといいね」という感じで,そちらの方はやはり具体性が乏しい印象を持つ。
○それともうひとつ,中低層の方について,何を実現するためにこういう制度を導入するのだろうかというので,今日のご提案の中で理解が難しかったのは,2枚目にある①である。つまり,一定の基準を設けるなどということになっているが,これは要するに,基準は設けるけれど31mが建つのだと理解するのか,かなりがんじがらめに隣接地の人の意見でOK のはんこがもらえない限り京都市長は認めないから,事実上20mしか建たなくなる,というくらい強制力をコミュニティの中で持つことのできる制度なのですよ,ということなのか。
○しかもその際に,何が争点になるのか。先程の,街区の空地の連続性みたいなものを要求するという話なのか,それともグレードの高いマンションなら認めるとかいう話なのか,何が争点になって,この一定の基準がつくられるのか。最後に数値化,客観化しなければダメだという話なので,何か基準をつくろうということもあるが,目標の像が見えない。

(委員)
○「中低層中心」の2ページ目2番の容積率の話で,「300%程度」という風に遠慮して書かれているような気もするが,いきなり200%にするにはきつすぎるという中での300なのかもしれない。その前の「住居専用の共同住宅に限る」ということで,これは提言の骨子なので細かいところに目を向ける必要はないかもしれないが,店舗あるいは事務所を1階部分の一部分だけでも設けることで容積をもう少し取れるのかなと,こういう抜け道を最初からいうのも不謹慎なのかもしれないが,そういう点で作業部会の先生もご苦労で大変だと思うが,焦点はこういうところにあるのではないかと私も思う。

(委員)
○皆さんのおっしゃることは,その通りだと思うし,また,そういう議論を作業部会でしてきたつもりである。今日の資料の位置づけであるが,「提言の骨子のたたき台」とあるのは,今日議論をしていただくための材料ということである。これは提言でもなければ,提言の骨子でもなくて,そのたたき台だという位置づけなので,数字とか表現についてはあくまでも一つの可能性だとご理解いただいて,今のような議論をやっていただくというのが,今日の審議会の目的である。
○それから,作業部会の委員としてではなく,私個人としての意見を,先程の資料3に基づいて説明させていただきたい。
○私が以前に個人の報告として述べたものを具体化し,もう一度整理してきた。図が2つあるが,左の図が現行の建築規制にあたる価値調整型規制誘導システム。異論もあるかもしれないが,私なりに現行のシステムを単純化するとこういうことになる。要するに,行政が規制値としてのある点を決める。これを上に上げると規制緩和になり,下に下げると規制強化になる。単純なダウンゾーニングとは,この点を下に下げることである。この枠組みが今の建築規制の基本的な考え方であり,この枠組みから出ていくことは実際にはなかなか難しい。
○しかし,それを乗り越えて,右の図,つまり価値共有型規制誘導システムをつくっていけないか,こうした動きを京都から発信できないかと考えている。地域における価値共有のまちづくりに対応するような検討の余地を何らかの形で制度的に生み出して,地域の住民と事業者が同じ方向を向いてまちの将来を考えることが出来きるような仕組みがつくれないか,と思うのである。
○私は,この審議会の出発点となった職住共存地区ガイドプランをつくった時の議論が大変大事だと思っている。あのときに,中低層中心のまちなみについてどういう議論があったかを思い出す必要がある。
○一方,この審議会では,前回のシンポジウムの時に私がまとめて報告させていただいたように,例えば,街区の居住環境とか,通り景観とか,まちの活性化とか,地域コミュニティ形成とか,共有すべき価値がずいぶん議論されてきたと思う。
○中低層中心というのは,中低層にしなさいというのではなくて,既存の中低層建物に配慮する,それを,尊重して新しい建物を建てましょうということ。尊重するということは具体的には何をすることかというと,さきほどの,居住環境に配慮したり,景観に配慮したり,まちの活性化に配慮したり,コミュニティに配慮したり,ということになる。
○建築の設計者というのは,本来,そうした価値を含めて,まちのことを考えて建築の設計をするのが当たり前である。少なくとも私はそのような教育をしているつもりである。そういう当たり前のことがやれる環境をつくり,事業者や設計者にそのことをきちんと説明してもらうということが提案である。
○こうした活動は,図の中で下から上に向かうベクトルである。その結果が,行政による支援によって一定の範囲内に収まるようにする規制誘導システムをつくっていくというのがこれからの建築指導行政の基本的な方向だろうと確信している。京都での取り組みがそのような方向に世の中を引っ張る契機になってほしいと考えている。
○もう一つの重要課題として,緊急に行うべき施策の明確化がある。これまでの審議会の中でも,議論をこれ以上引っ張るともっとまずいことになる,という指摘があった。じっくり考えるべき政策論とは別に,今の時点で打てる手だてを打つという視点で◎と○を示している。◎と○は重要性を示しているのではなくい。○は十分議論をして検討すべき政策を示す。◎は緊急に対応しないといけない,かつ,する方法がある施策を示す。
○私自身の作業部会での役割は,おそらく○を忘れてはいけないということを主張し続けることであろう。しかし,もう一方で緊急にしないといけないということがあって,今の時点で何が出来るかということを考えないといけない。
○多分,◎のついているところは,数字をどうするか,あるいは,その根拠は何かということが論点となると思う。例えば,20mというのは,必ずしも十分な根拠がないともいえる。ただ,現行のシステムの下では,合意可能な規制値として可能性が高い。将来,地区計画などの中で,地域によっていろいろな値に変わっていくことも想定されるが,とりあえず,当面は,20mでコントロールしてはどうかということである。
○用途については,一階部分に,住宅以外の用途を誘導する仕掛けづくりが大事だろう。それが②の主旨であるが,これを左側の図,つまり現行の建築規制のシステムの中で実現しようとするとなかなか難しい。こういう方法しかないかもしれない。さらに抜本的に解決しようとすると,今の法律や制度の基本的なものの考え方を動かしていかないと変わっていかない部分もある。
○個別の取り組みを積み重ねて,前よりもましなものが建ったとか,まちなみの再生に対する市民の意識が上がったとか,そのようなことがなかったら,法律や制度を動かすことはできない。そういうムーブメントをつくるために,緊急の取り組みとして何が今提案できるのか,そういうことを議論したい。
○緊急提言だけだと,ものすごくフラストレーションが溜まるのは,具体的には,行政による絶対的な規制をどうするかという議論しかできないことだろう。地域における合意形成は,実は⑤の所にあって,◎ではない。地域で望ましいまちのあり方を考えていくための仕組み作り,具体的にどのようにしたら地域の思いが伝わるのかということは,残念ながら,今ここで具体的な提言にまで落とし込むことができない。
○従来の行政,京都市によるコントロールをどう改善していくかという段階の提言しか,年度末までには出来ない。より本質的な政策提言はさらに議論がいる。そういう状況の中でのたたき台だという位置づけであると理解をしていただいた上で,中身については,たたき台なので,操作の余地があって,それについてはできるだけ建設的な意見を今日出していただけたらという主旨である。

(委員)
○実は,提言の骨子のたたき台に関しては,11月の終わりくらいから議論してきて,いろいろ書き換えてくる中で,当初,作っている段階で共有すべき点を明確にしておいて個別の具体的な対応策を記述するという流れがあったが,それが失われたことは確かである。確かに,おっしゃる通りでもう一回練り直して,ご指摘いただいたような見立ての文章にしていくべきだ,ということは同感である。
○そのために,審議会の最初の時に市民の意見として,82.6%の市民が町家を重視したまちづくりを進めろということを言っている。そのことを確認しつつ,職住共存地区整備ガイドプラン,京町家再生プラン等があるという形の中で,より具体的な進め方を文章的に整理していく必要があるだろうと思う。また,その中に共有すべき点を審議会の結論として盛り込んで議論を整理するということがあるだろう。
○それから,2ページ目の中低層の件に関して,価値共有型建築規制誘導システムの実施という議論は,たいへん優れたご提案だと思っている。私は,個人的にはもう少し単純に20m,200%,250%という非常に単純な主張を当初からしていた。地域の判断に任せて,地域に決めてもらうのだという考え方の二つの間で議論があったことは確かである。この提言としては,地域のみなさんに判断いただくことと,建築家の方に判断があるというところに依存するという,きれいに言えばパートナーシップ型の建築誘導,悪く言えば地域に多大なご負担をおかけする様な提言になっている。
○しかし,これが確かに,価値共有型の主旨だと思って納得した上で,この提言にまとめさせていただいている。勿論,この中低層の建築物に係る部分の数字に関しては,まだまだたたき台なので議論の余地があると思うし,前回の市民シンポジウムでも玉虫色にならないような厳しい提言をしろ,というような意見も最後の方に出ていた。あのことも,私たちもいろいろ意識するのだが,当面,合意が出来,実施出来る方策という形になると,個人的な意見は捨てて,こういうたたき台として示す線になるかなという形である。したがって,一定の基準とか,300%程度とかという表現が残っているというのが正直なところである。まさに,そこをたたいていただければと思う。

(委員)
○たたき台としては,非常に良くまとめていただいていると思って聞かせていただいたが,一市民として考えた場合,町家というものとマンションというものの接点がたたき台の中にないと思う。私は,一時町家だけを集めてはという暴論をはき,後々難しいなということも良く理解したが,これから,美観地区を設けるとか,ガイドラインで5,10年というスパンで見ていくという場合,マンションというのも勿論建っていく。まちなみですから,多分,海外の方がまちを見られて,マンションがある,町家があるという極端なまちなみではない。何とかしようというのが,今回の会議だと思う。
○中低層で揃える地域は,中低層で揃える。でも先々は,2階建ての木造,または,3階建ての木造,先ほど示されたようなきれいな家並みが並んでいくようにリードしていかれるのが理想だと思うが,中には,その場所で職住一体ではないが,住みながら,事業をやって,古い自分の家も維持したい。しかし,両隣がマンションになってしまって,自分はどうしようもない。こういう時にやはり,行政の支援をいただいて,テレビでサンプル的な場所を1ヶ所紹介している番組があったが,1~2階で事業をされて,中をマンションにされて,そして,元住んでおられた一階の家屋を最上階に持っていかれた。そして,真ん中をマンションにされていた。勿論,ある程度面積があった。建築家,専門家の先生はいろいろなアイデアをお持ちだと思うが。そういう工夫でもって,中低層のまちなみが揃うように,まちなみなのだから,あくまでガタガタのまちではおかしい。それを何とか提言の中に盛り込んでいただける方向があればと思っている。

(委員)
○まず,市場の問題や,住民の人々の意見など,立場によって,いろいろな意見があり,それらは,都心で仕事をし,住んでいるのだから当然出てくる問題としてある。そのような問題意識や街並みへの評価を踏まえつつ,審議会としては,町家の残る歴史的都市環境に価値を見いだすと書ききっていいのではないかと思っている。保全色が強いと,住民の方はから反発を買うかもしれないが,一つの争点であり,歴史的都市として生きるということをベースに考えるかどうかという判断が必要と思う。
○生活環境重視ということでは,快適な生活と都心が活力を持って生きていくことが基本で,そのためには町家の建て替えも当然という意見のあるだろう。町家もまた建築様式の1つでしかない。町家を残すことと,快適で元気な生活の両立をどうすればできるのか,すごく大きな問題である。これを,曖昧のままいくのか,両論併記でいくのか,両立を可能とする方向を示すのか,重要なところと思っている。
○次に,まちなみの目標像については,中低層中心とは何かということがある。街並みの見え方としての中低層と,実際のボリューム,環境としての中低層の議論があるかと思う。4種美観地区では,通りからの見えとしてのまちなみを前提とするかどうかによって,規制とその他の都市計画との整合性が変わる。
○町家と,新しい様式の建物をどのように共存させるか,多様な生活が共生したまちをつくっていくのかという議論においても,緊急対応とゆっくりやっていく長期的方策の2本建てで考えるのが現実的である。
○提言においても,緊急対応と長期対応の目標を明確にした方がいい。緊急については,開発インパクトを当面抑止するということを,第一の目標とすることを前面に出してはどうか。緊急対応をして,長期的なまちづくり,街並みづくりのための制度の作り方は,地域での相互調整や,議論を踏まえた地域的な判断,地域的な選択の中で作っていくプロセスを重視しようという提言にするということができると思う。
○インパクトを押さえると言う意味であれば,少々厳しくてもいいのではないか。高田委員が提案されている資料の行政の上からの矢印が当面の規制。それに対して,地域の人たちの判断によって,もどしていくという考え方でもいいと思う。実施すべき施策の検討の前に,共有すべき方針を示して,何を求めて(目標),何をする(方策)のかがわかりやすいたたき台にしませんか。

(委員)
○今の書ききるという指摘は,まちなみの目標像のところに書いてある,3つくらい書いてあるが,これでは足りないのか。まちなみの目標像の中には,3種類あって,京町家やそこに生まれたというものと,新たな建築物はこうあるべきだと,それが都心としての賑わいを維持する,これが多分,審議会の作業部会の目標だと思うのだが。

(委員)
○ある意味ではハードルを高くしておいて,地域によって,地域でコンセンサスを取っていく。当然,それでいいのではないかと思う。
○ただ,机上の空論になってしまえば,これは,どうしようもないのではないか。そこには,地域の思い,思いがあるわけだから。その中で,一定の基準を設ける場合の中身の問題。
○それと(4)の政策実施にあたっての留意点,これの解釈だが,今,現在建っている31mの部分について,やはり,これが耐用年数によって,建て替えられる場合もあれば,そうではない緊急の事態が起こって,建て替えなければならない場合もあるわけで,そういった場合において,規制ではなく,現在の既得権,建っている建物をそのまま住み続けられるように建てられるという解釈でいいのか。

(委員)
○先ほどの説明が曖昧だったかもしれないが,ここでは既存不適格物件に関することを申し上げているわけで,住み続けられるということを最大限重視しようということだ。

(委員)
○今現在,建っている建物が建て替えられる場合には,現在の高さまで認めようということでいいわけですね。その中で,今現在,例えば,地上から28mの所に住んでおられる方が,20mしか建てられない,そうすると,20m以上に住んでおられる方の権利はどうなるのか,ということになるわけだから。

(委員)
○そこは,実は,作業部会でも議論が尽くされているところではないが,とりあえず,建て替え後も住み続けられることが必要である。ただ,いろいろな意見が出たが,その建て替え時期に,今と同じような人口世帯でマンションにお住まいになるとも考えられない。権利は残るかもしれないが,もしかしたらその時になって,小さいマンションでもいいのかもしれないというのもあり得る。

(委員)
○京町家の問題で,その中で,美観地区の指定をするということだが,我々の地域で議論になっていたことだが,よその家のことについてはとやかく言えないではないか,と。
○例えば,指定を受けて,こういった形のものを建てられるのであれば,改築されるのであれば,こういった補助の仕組みがありますよ,このようなものを使っていただいたら,よりまちなみに配慮した建物,また,我々の思いが通じるような建物が建てられますよ,ということがあれば,伝えに行くことは出来る。何もない,ただ単に隣の家に対してこうあるべきだと言っていくということは,机上の空論ではないか。具体的な施策,保護策を考えて初めて,実現可能になってくるのではないかと思う。

(委員)
○今のご意見は,中低層中心の①の所に一定の基準と書いてあるが,これは,20mを超える場合に一定の基準がいるわけだが,20m以下であっても一定の基準がいるという意味なのか。
○一定の基準というものがどういうものかということまでは,書ききれなかったと思う。まちなみの目標像を達成するというのが漠然とした一定の基準である。それを,文章で書き込めるのかどうかということである。目標像を3つあげてあるが,それを達成するのが一定の基準の尺度であるが,それを文章で書くのは非常に難しいのではないかなという気がする。

(委員)
○⑤のところに,一定規模以上の建築行為を対象に,地域の思いが伝わるような仕組みを検討するとあるが,まさに地域の,周りにお住まいの住民の思いが伝わる様な仕組みを検討しなければいけない。

(委員)
○そこが,地域の思いと,合意がとれるような,ある種,一定の基準であると思うが,一定の基準というのが,容積が300%であっても,高さを31mにもっていくことによって,目一杯の建物ではなく,31mを建てることによって,地域との合意形成が出来るのであれば,これは一定の基準を満たすのではないか,そのような解釈をしているのだが。

(委員)
○その通りだと思う。マンションの建て替えについてだが,それについても,同じ原理だと思う。マンションをそこで再建するということが,地域にとってどのような意味があるかによって,良かったり,悪かったりするわけで,今ここで,こういう場合は,権利が100%保全されますとか,いや,建て替えた時は,たとえば20mまででないとだめですよ,とかは一概には言えない。
○ただ,ここに一定の基準と書いているのは,あるべき論としての基準ではなくて,当面,緊急に行うべき施策としての判断基準のことである。
○あるべき論としての基準,地域の合意としての基準が今できないので,緊急避難的にとりあえず一定の基準を決めておいて,それを超えるものは個々の計画について具体的に検討する,そのための一定の基準である。本質的に設けるべき基準というのは,今言われた通りの原理でつくられなければならない。

(委員)
○建て替えについては,とても曖昧ではないかなと思う。というのは,今の400%を300%にすることによって,単純に2割の所帯は住めなくなる。それが,30 年,40 年先になると,当然,もうここに住みたくないと言われる方もおられるかもしれない。しかし例えば,阪神大震災みたいなことが起これば,あくる日どうなるかという問題になるわけだし,心配を持ちながらお住まいになっている。
○我々の地域では,旧所帯が650 所帯しかないが,もう,1,500 世帯を超える共同住宅の世帯があるわけだから,そういった方々を無視して,合意ということはやはり出来ないと思う。

(委員)
○(2)のまちなみの目標像であるが,片方では,木造の京都の文化,京町家がいいのだと言い切りながら,中低層中心の良質な建築物として更新していくとしている。これがいいのだというものと次に目指すものが矛盾しているなかで,両方を追い求めているようで,非常に苦労はわかるが,しんどさもある。
○次に「中低層中心の良質な建築物として更新させるために」とあるが,ここでいう良質とはいったい何なのか。中低層が良質なのか,31mが悪質なのか,それとも軒を揃えているのが良質であって,のっぺらぼうの建物が悪質なのか,というところの議論が必要ではないか。
○今後,京都のアンコの部分が建て変わっていく時に,中低層,特に低層と言われればわかるが,中層の良質な建物に変えていく方向を考えているのか,あくまでこれは,31mという高層ビルが建つことに対して,せめてこれくらい押さえてくれという方向の妥協の規制なのか,このあたりがもう少し見えてくると,今の議論がはっきりしてくると思う。
○これは,審議会の文章として付け加えざるを得ないと思うのが,(4)①である。「現に存在する建築物・・・」は木造建築物だと思っていたが,高層建築を指している。31mも建て替え後も住み続けられるということは,逆に31mが永遠に建つということなのか。時代的状況の変化はあるかもしれないが,少なくとも建ち続ける権利をその土地が許してしまうと,それこそ何のための中低層としたのかという矛盾が生じる。
○したがって,どんなまちなみがいいのかを明確にしないと,今の混乱の議論しかないのかなというふうに感じた。

(委員)
○今指摘があった良質なというのは,特に我々が思っていることは,それが低層であろうが,高層であろうが,そのようなものが良質であるというのではなく,そこに住まわれた方がどういった思いでおられるかということである。
○それで良質というのは,まず管理会社が一番のネックになっている。管理会社が,お住まいになった方々と地域とが接点を持つための管理組合を作り,管理責任者をおいていくということが良質になる。この間も,自治会の役員会を開いて,ある町内の一つのマンションの管理人さんがいいと,文句のつけようがないと,配布物でも管理人さんに預けておくと,全て手続きを踏んでくださる。また,朝晩は,必ず掃除をして,ゴミ一つないようなマンションを管理されている。私が感じる良質とは,そのようなものだと思っている。

(委員)
○良質の表現に関して,今議論いただいているが,この良質なというのは,はずしてもよいと思う。ただ,良質なという形容詞,質的な議論だが,質的な議論に関しては今後の,マンションを建てる方,周辺の住民の方が協議しながら,いろいろな角度から発展させていくものだと思う。当面この提言の骨子,たたき台の中では,中低層中心の良質な建築物として更新させるために,ということで①~⑤までの点しか上げていないが,その5点がここでいう中低層の建築物として更新していく目標である。5点で具体的な,量的な基準を示している。
○質に関しては良質という言葉の中に今後様々な取り決めがなされるべきである。もっと,我々が知恵を出すべきである。あるいは,経験を積むべきである。まだまだやるべきであるということを込めて良質だ,抽象的,かつ質的議論だということを言っているつもりである。
○(2)のまちなみの目標像に関してご指摘いただいた,京町家と二つ目の中低層,この共存の仕方が,今の良質に関わってくる大きな問題である。実は,審議会に入る前,都心の取り扱いに関しては,私は,個人的に加わってないが,いろいろな議論がなされてくる中で,まちづくり審議会の中で北の保全,南の創造に対して,都心部の再生という一定の整理がされて,この歴史都市京都が,町家という市民共有の,あるいは,世界人類共有の文化遺産を大事にするということまでは合意できるが,146 万都市で未だに製造業が3割のGDPを支えているまちで,どのような形でまちなみの保全再生があるか,ということに関しての議論は,まだまだこれからも進めるべきものだと思う。
○今までも,日本では,京都以外でこれが歴史都市だといったものはたいしてない。明日香のような小さな村ではこうします,片田舎の旧街道が通っていたまちではこうします,というのはわかっているが,146 万人の政令指定都市の都心部で歴史都市がどうあるべきかという議論はない。
○あえて言うならば,諸外国から例を取ってきて,フィレンツェが55 万,ローマが270 万,或いは,ピッツバーグとか,こうした規模の都市が歴史都市を標榜している。京都市がやっている世界歴史都市会議でいろいろな都市と比べてみると,だいだい人口がこれくらいの規模の場合,都心は再生であって,凍結的な保存ということはまずない。
○都心とは,その歴史的な遺産を生かしながら,そこで今もその人口,産業を支えるだけの経済活動が行われる場所である。ただ,それぞれ経済活動とはいっても世界の歴史都市,中規模のこれくらいの都市の流れとしては職住共存,歴史文化を生かした新しい文化的な産業が生まれているということも,最近になって,いろいろな研究が進んでいる中でわかっていることである。その再生ということが,それもそろそろみなさん方のご同意もいただいている極論に走らない保全論ではない再生論として,具体的に京都でも400 を超える町家再生店舗が出ているとか,というような事例にも現れていることであるが,かといって,では,町家を再生する店舗はいいとして,その隣に建つ中低層の建物がどうあるべきかということに関しては,諸外国の経験に照らしてみても,なかなかわかっていない。
○そこに関して,とりあえず,第一歩として,提言としては,ここで二つの建物,種類,町家と中低層の建物ということを併記しながら,町家を重視する,町家を再生する。中低層に関しては,これくらいの①~⑤まであげたことを第一歩として,とりあえず,共存の具体案を示した。
○我々が再生に関して議論しなかったわけではなくて,日々研究しているところであるが,その再生という非常に難しい課題に対して,今回京都の都心部にふさわしいまちなみのあり方として,一方で合意がとれればたいへん大きな前進ではないか。
○ただ,まだまだ,京都が歴史都市としてのプライドを守り文化遺産を後世に残していくためには,もっともっと知恵がいる。マンションとどう共存できるか。地域の住民の方と町家にお住まいの方とどう共生出来るか,ということに関してもっと経験も知恵もいる。ただ,これに関しては,今,我々がいくらがんばってもいろいろな委員の先生とも個別にお話したが,そこまでの新しい知恵はいただいていない。とりあえず,今まで,市民の皆さんの意見も含めて,いただいた意見を総合すると,ここで合意が出来るかなというくらいの第一歩だなと思う。

(委員)
○マンションの建て替えについて補足説明をしたい。ここでは,基本的には,建て替えに当たって,まち全体,敷地周辺に配慮をしましょうということを言っているわけです。ただし,その場合に,従前建物に既に住んでおられる方の居住継続を脅かすことにならないようにするべきであることをわれわれの審議会としては言うことを提案しているのである。その手段,方法としては,容積率や高さをそのまま保全するということに,必ずしもならない可能性がある。また,なる必要はない。
○建築の世界では,一つの問題に対して,ハード,ソフトを含めていろいろな解決の方法がある。ところで,先ほど,例に挙げられた震災後のマンションの建て替えの時,既存不適格のマンションの容積が緩和されたが,周辺から反対を受けてすぐに再建できなかったという例がある。逆に,共同建て替えなどで,いろいろな工夫を行いながら,全体としては地域にあった建物を建てながら居住継続を実現していった例もある。震災復興以外にもそのような例はいろいろあるので,それらを参考に,さまざまな手法を組み合わせて,居住継続と町並み再生の両方の目標を達成するのは,不可能ではない。こういうことがあるわけで,達成すべき目標を明示して,特に,居住継続については,そういうことへの配慮が必要だということを言うとことで,我々の審議会としての役割は果たせると考えている。

(委員)
○まだ,たぶんたたき台に対して,たたきたい意見はたくさんあると思うが,だいぶ時間が過ぎている。それで,次回にできれば提言の趣旨はまとめたいということなので,まだ残っているいろいろなご意見があると思うが,それはできたら個別に後ほど事務局の方に届けていただきたい。
○もともとこれは「保全・再生」という,どちらかというと相反するというと怒られるかもしれないが,もともとそういうものがあるわけで,二兎を追っているわけだから,どうしても大きな鉈ですぱっと割ったような提言はたぶんできないと思う。いろいろなところに配慮しながら書いてしまうと,片方からはつつかれるということになる。その中で,できるだけ趣旨に添ったものをつくりたい,しかも実行可能なものをつくりたいということで,こういうものがたたき台になっていると思う。その上で,いろいろ建設的な,こういうものをやれという意見を出していただきたいと思う。
○それからもうひとつ。◎と○について,いいご指摘があった。◎は当面で,丸は長期という位置づけで出しているが,よく考えて見ると,長期というのは非常に大事なものであるだけに,実行がなかなか難しいような施策であろうと思う。だからそういう仕分けでも,◎は大事でないというわけではないが,比較的現在の制度のもとで,しかも合意形成の可能なものを作業部会の方でつくられているのだと思う。
○この中でひょっとすると,非常に大事だけれども早急に,というものもあるかもしれない。ひょっとすると「目的税」というのが大事かもしれないし,いつ地震が来るかもわからないので「防災面」も早急にやる必要があるかもしれない。そういう面で内容とは別に,これはすぐに,これは後回しでもいい,とそういう仕分けの提言も追加していただけるといいと思う。
○いずれにしても,今日は中途半端なような気がする。それで今日ずっと出ているが,「良質な」とか「一定の」とか「地域の思い」という形容詞にあたる言葉の解釈は非常に難しくて,これは定義できないのではないかと思う。「京都のまちなみをよくする」という非常に漠然とした概念がその背景にあるので,それを形容詞なり副詞で表したときに,これはどういう意味だと聞かれても,たぶん作業部会の方もすっきりとは答えられないし,みんな意見が違う。そこのところが非常に曖昧な形で残っているような気がする。それを含めて,「これはこう解釈すべきではないか」という意見もあってもいいと思う。
○あと1回しかないので,できるだけ皆様から意見をいただいて,それを作業部会に全部投げて,作業部会の方でまた整理をしていただくという,そういう作業になろうかと思う。時間の都合で,そういう形で今日のところはまとめさせていただきたい。

<休憩>

(3)幹線道路沿道地区の土地利用の方向性について
(事務局)
<資料-2「幹線道路沿道地区の現況」の説明>

(委員)
○資料2の5ページだが,平成7年から12 年までというのは,田の字の部分だけの動向か?

(事務局)
○田の字の部分だけをピックアップした動向である。

(委員)
○では3ページは,あんこの部分も含めた地区全体か?

(事務局)
○はい。

(委員)
○では3ページの場合は,何年度の時点での調査になるのか?

(事務局)
○これは,実際に町中を歩いて調べるわけにはいかないので,住宅地図を参考にさせていただいた。それは平成12 年度版なので,データとしては平成11 年のものだと思う。

(委員)
○今日いきなりこの地区の現況を説明していただいたわけだが,我々の審議会の提言の中に,この部分に関しても何らかの提言をするかどうかということを決めないといけないと思う。かなりせっぱ詰まってこういう状況になっているわけだが,まずそのことについてご意見を頂戴したいと思う。

(委員)
○今の説明を聞かせていただいて,常々感じていることでいうと,田の字の太さをもう少しスリム化してもいいのではないかと思う。うちの学区ではないが,下京の格致学区で一つ大きな問題が起こった。堀川通のマンションが東の醒ヶ井通まで通ってしまった。
○そういった中で,もう少しあんこの部分になってくると400%の部分が700%になってしまい,ある意味で醒ヶ井通の表景観がまったく無視された状態になっているわけだから,できれば,幹線の次の道の半分くらいまでが限界ではないかなぁと思う。大丸や高島屋はそれ以上の規模になっているわけで,それは認めていくべきだとは思うが,民間の共同住宅についてはそれくらいが妥当ではないか。現実としてそれ以上大きな規模というのも民間では今のところないので,コンセンサスは取れるのではないかと思う。

(委員)
○建築基準法が変わって,前面道路の幅員の関係で,容積が700%に指定されていても,前面道路幅の10 分の6 に容積率が制限されているが,特定道路から70mであったかと思うが,ある程度の距離であれば基準容積率が緩和されるというのが,最近建築基準法が法改正されて,いわゆる規制緩和がされていると思うが,京都市内でその適用を受けて高い建物が建っているケースはあるか?

(事務局)
○今ご指摘の「前面道路に基づいて容積率が制限される」というのは,そのとおりである。例えば,6mの道路の場合,商業系のところだと10 分の6,おっしゃるとおり700%の都市計画上の指定容積率であっても10 分の6 をかけた360%までという制限を受けることになる。その場合に,70mの範囲のところに特定道路,15m以上の道であるが,それがあれば,70mのところで6m。特定道路に近づけば近づくほど,その15mに限りなく近づく幅員があるものとして,容積率の計算がされることになる。これは容積率ということであって,高さとは少し関係がない規制の仕方である。
○そういう適用を受けて建っている建物というのは,あまりないと思う。

(委員)
○今ここでこれを見てどうこうというのはとても難しいと思うが,景観保全をしていく通りというのは,三条通であったり御池通であったりというその趣旨はたいへんわかる。
○それから,烏丸通とか幹線道路についても,いろいろな理由でそういう指定をしていけると思ったらいい。というのは,まちなみ景観をつくっていくために,今はこれだけの網掛けしかないけれども,もっとこれから提言の中にこういう景観を,細い通りでしたら三条通のように,広い通りでしたら御池通のような形で,道路から見たという景観をもっと織り込んだ提言をやっていく可能性があるということで,今こういうことが出てきていると理解すればいい。
○先程の提言の中に,前に言葉としてよく出てた「町だけの基準法」「ローカルな基準法」を,ストリートというか,道のラインの形でそこだけを,そういう景観をもっと細かく,「○○通から○○通までは,町内の合意の元でそういう景観の指定ができる」といったものを,道路行政の中で,道路景観の中で,面でかけるのではなく線でかけていくことができる。それを骨子の中で謳っていけばいいのではないか。それがまちなみをつくっていく一つの要素を規制していく条件として,これをもっと利用していけばいいのではないかと私は理解したので,骨子の中にそういうような文言で提案をしていく。
○例えば,三条通の歴史的なものを残していくというような,景観行政として容積とか,高さとか,いろいろなそういったものを含めた,形状的な指定をする条件の中に,大きな道も含めた景観も少し入れていくべきなのかなと思った。

(委員)
○以前,御池通のマンション問題に関することが指摘され,私も姉小路の方々を中心に相談を受けたりして,地域に行って発言したこともあるが,まちなみ審議会が田の字の表側の部分をまったく無視して答申するということは避けるべきだと。なにがしかの意見を言えという市民の方の声が強いので,是非何らかのことをいうべきだと思っている。作業部会の方で先程ご報告もしたように,第2部として「職住共存地区以外のその他の都心部分」という扱いをすべきだと思う。
○ただそのときに相談申し上げたいのは,今事務局の報告にもあったように,そうはいうものの,御池通には沿道景観形成地区の指定があり,あるいは烏丸通には第5種の美観がかかっている。これらと堀川四条,河原町五条を一緒に考えることができるのかという観点が一つある。沿道景観形成地区なり5種美観の適用を受けるところと受けないところについて整理をする必要がある。
○先程のご指摘で,地域の住民の皆さんの協議をいただくといった場合に,町内会とか元学区という単位がいいのか,それとも,線として伸ばしていくときに,沿道でご商売をされている方,あるいは沿道のビルのオーナーの方が集まって協議会をつくり,京都の都心に特有の学区とは違った単位での協議会をつくる。仮の名称だが「御池通沿道景観形成協議会」というものをつくって,そこで建築協定のようなものを決めていただくようなやり方もあるかと思う。職住共存地区の中とは違う形での地域のというか,住民のというか,この場合商業者のということになるかもしれないが,その仕組みも考えておかなければいけないと思う。そうやって考えてくると,河原町とか四条とかという「商店街振興組合組織」というのを持っているところもある。こうなると,いわゆる法人格を持っている商店街振興組合があって,これはご商売をされている方が中心であるが,もちろんビルのオーナーの方もお入りになっているわけで,これも無視はできないし,おそらく非常に重要なご意見をお持ちになっていると思う。
○したがって,もちろん四条通にも学区,町内はあるわけだが,そことはまた違った関わり方が出てくると思う。その辺をじっくり時間をかけて協議しないと,景観行政でできない部分が取り残されているわけだから,今ここでマンションラッシュが起こって,沿道の景観が各所で壊れてくるという問題が起こっている。その景観行政が達成できていない部分というものを制度的に明らかにし,その残った部分を,今いったような特徴から洗い出してきて,それにふさわしい仕組みを考えていく。その仕組みが機能しやすくなるように,一定の具体的な手だてをかけていくというような,職住共存地区で考えたような大まかな骨組みはわかるが,その先の仕組みに関しては,あと何回議論させていただけるかという問題もあるが,作業部会としてこの最後の段階で,短期間でその仕組みも含めて議論するというのは,難しい問題を残さざるを得ないという感じがする。

(委員)
○一つだけ調整するとすれば,「際」がポイントではないか。要するに,今回議論する対象の区域を職住共存地区としているけれども,それが通りをはさんだ町の半分で切れてしまうことでいいかどうか,というそこだけは議論したらどうかと思う。
○つまり,油小路通りが切れ目になるが,油小路通りのまちなみと考えれば,反対側の半分,一町内単位分は入れるというような範囲にするかどうかという,今回の対象範囲の議論だけはしておけばいいと思う。

(委員)
○皮とあんこの部分の接点にいる者として非常に分かる話である。是非とも何らかの形でこの問題を入れていただきたい。
○裏寺通の東側は河原町の建築物の規制で,裏寺自体では考えられない建築物がいくつも建っている。これを,誰がどこでどういう風な形で議論できるのか。全てが合法的建築物である。でも裏寺というのは,何かと話題になるところである。片方にはさらに先斗町まである。したがって,その辺をもう一度,この審議会では時間的な制限もあって無理かとは思うが,その部分の問題があるのだくらいは入れていただきたい。
○私は裏寺にいるから裏寺のことがわかるのだが,堀川の一つ西の通りの人が同じような思いを持っているかもしれない。全ての幹線道路の内側について,幹線道路そのものの問題と,近接しているところの人達の思いというものも,どこかで土俵に上げてこないといけないということだけは,何らかの形で入れていただきたいと思う。

(委員)
○今日,範囲を決められますか?

(委員)
○範囲を決める部分と,書き込むべき内容を決める部分と,両方まだ未知数のまま残されていて,両方に対してご意見があると思うが,それも作業してみないとわからない。際が大事だということはよくわかる。

(委員)
○それと,あんこの部分を300%にしようかといっているときに,例えば,今いわれた油小路通で300%であるけれども,実際は堀川通から建物を建てた場合には,油小路通までが700%になってしまう。この矛盾が今まで以上に差が開くので,そこのところは当然平行して考えていくべきではないかと思う。

(委員)
○協議機関については,線で考える協議機関と,元学区や町内などとの話し合いの機会をつくることが必要である。

(委員)
○いずれにしても時間がなくなったので,この件に関しても各委員から,先程の宿題と同じように第2問として出していただきたい。これは,事務局に後ほど答えていただければいいのだが,あと1回ではどうも無理なような感じがする。その点,事務局の判断をお願いしたいと思う。
○時間が来たので,今日の審議はこれで終わりにしたいと思う。皆さんに宿題を出して,それが全部作業部会にいくので,作業部会の方も大変だと思うが,本日の議論と,皆さんから届くレポートを元にして,整理をして,たたき台パート2をつくってもらえればいいと思う。

(委員)
○1点だけすみません。2番の「景観保全地区の指定状況」の中で,地域エゴになるかもしれないが,私どもの地域,三条通というのが入っていて,三条通にお住まいの方々は「三条通界わい景観整備地区」,これが新町通で切れているということに対して,大変怒りを含め,疑問も感じておられる。そこで切れる理由はわかるのだが,すっきりと堀川通まで伸ばしてもらえるように,何とか考えてもらえないかと。これは要望も地域エゴも入りますが,お願いしたいと思う。

(事務局)
○今座長の方から,あと1回で提言を出すのには少し時間が足らないのではないかということなので,事務局としては,次回が提言をいただく最終ではないと,ご議論があればもう1回審議の場を設けていくということについてもやぶさかではない。具体的には,作業部会の中でいろいろな先生方のご提案があって,今回たたき台ということなので,もう一度ご提案をしてもらわなければならないということであれば,第7回,第8回ということまで考えていただいて差し支えない。

<閉会>

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