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第5回審議会摘録

ページ番号4191

2007年11月8日

京都市都心部のまちなみ保全・再生に係る審議会 第5回審議会摘録

○日時:平成13年10月24日(水) 午後4時~6時30分
○場所:京都ロイヤルホテル 2階「青雲の間」
○出席者
  座長 青山 吉隆(京都大学大学院工学研究科教授)
      鵜飼 泉道(市民委員)
      栗山 裕子((社)京都府建築士会常任理事)
      小浦 久子(大阪大学大学院工学研究科助教授)
      櫻田 佳正(市民委員)
      西嶋 直和(市民委員)
      平田 陽子(京都光華女子大学短期大学部助教授)
      宗田 好史(京都府立大学助教授)
      吉村 彰彦(日本不動産研究所大阪支所長)
      リム ボン(立命館大学助教授)
      若林 靖永(京都大学大学院経済学研究科助教授)

  以上11名(50音順,敬称略)

1 開会
 (事務局から挨拶)

2 議事
(1) 資料-2「第4回審議会における主な論点」の説明

(委員)
○第4回審議会におけるおもな論点を整理したので報告する。まず,都心のまちなみに関する問題と都心居住に関する問題の2つを,それぞれ1~3まで整理してある。
○都心のまちなみに関しては,まちなみのあり方,ローカルな建築基準法,資産価値,施策化に向けてという4つの柱にまとめた。
○まちなみのあり方に対しては,鵜飼委員から100年後を想定したビジョンが,栗山委員は50年先の都市の姿をという言い方をされていた。将来像を示すという必要性が再三指摘された。次に,増井委員からかつて存在していたまち単位の共同体による環境管理の仕組みをどう考えるかが指摘された。まちなみの価値をまちの中で共有する手がかりとして,お祭りの時の利用と演出を考えたまちなみをつくるべきである,という意見をいただいた。
○2番目に,京都特有のローカルな建築基準の適用を考えたらどうかという意見をいただいた。小浦委員からは,通りの連続性を阻害するセットバックをやめて,奥に空地をもつという構造に誘導できないかという点,鵜飼委員からは,小さい田の字内側の道に面する部分は,2階建てがふさわしいために道路斜線のセットバックによる緩和は見直すべきであるという意見をいただいた。西嶋委員からは,共同住宅の容積率の不算入になっている部分の制度を見直すことは出来ないか,さらに鵜飼委員からは,駐車場の配置デザインにも配慮すべきだという意見をいただいた。栗山委員からは,木造家屋の増改築にあたっての法規制の問題も考えるべきである,増井委員からは,新築改築にあたっては近隣の建物を図面化して記録を残すようなプロセスを義務づけることで,景観への配慮を期待できるのではないか,という意見をいただいた。それから栗山委員は,事前協議の段階で地域の意見がしっかりと伝えられるシステムを構築すべきであるという高田委員のコミュニティ・エンパワーメントの流れに沿った議論を展開された。
○次に,3の資産価値であるが,第4回の審議会でこの資産価値に関する議論に委員のみなさんの話が集中した。まず,土地の価格形成要因については様々な要素があり容積率だけが要因ではないが,ダウンゾーニング,つまり指定容積率の切り下げは地価に影響を与える恐れがあると吉村委員は指摘している。景観の向上が,将来地価にプラスに働くことも考えられるが,容積率を下げた分を短時間で補うことは困難ではないかとも指摘された。若林委員からは,容積率を下げ資産価値を目に見えた形で下げると土地を担保にしている事業主に大きなダメージを与えることになりかねないという意見をいただいた。吉村委員は,マンション建替えの問題の困難さを指摘され,既存不適格として残された場合,マンション建替え問題が今後の問題になると指摘された。
○4の施策化に向けてであるが,100年の大計なり短期的な政策をつくるにしても,職住共存地区の目標像を整理することが必要であるだろう,という青山座長の意見が出ている。さらに,これまでの文化財,景観行政の取り組みに加えて第3,第4の方法について都市計画的な議論をするのが審議会の使命であるとみなさんに確認していて,小浦委員と栗山委員からは短期的凍結ルールと長期的コントロールの2段構えで時間を稼ぐ弾力的な運用が必要であるという意見をいただいた。 
○次に,都心居住に関してもいろいろな意見をいただいている。①の都心居住の考え方では,4割の建物が何らかの伝統的な木造建築物である職住共存地区を考えると,その町家に住んでいる人が住み続けられることがまず何よりも必要であるという小浦委員の指摘がある。同時にその住民,あるいは,そこで行われている活動の流動性を維持しながらも,そこに生き続ける人たちが折り合うためのプログラムがまちづくりの仕組みとして必要であるといった意見をいただいた。
○②の町家に関しては,町家の保全再生に対する補助の充実など経済的な支援に関する必要性が,櫻田委員,鵜飼委員からでている。木造建築物の維持修繕についての公的な相談窓口が必要であると鵜飼委員。町家の改造店舗,再生店舗など町家の生き続け方も支援すべきであると小浦委員。町家の保存については中高層の中に一つでもいいので自分たち
のデザインの定点,まちづくりの手がかりとなる物を残すという考え方が重要であると増井委員。町家が空き家になるケースに対応できるようなことを考えるべきであると櫻田委員。
○マンションについては,定期借地権付きマンションなど,高さや容積率を抑えてもコスト的に成り立つ分譲マンションの供給手法を研究したいと西嶋委員。地域住民と新たなマンション住民との調和を図るための公的な仕組みを作るべきではないかと櫻田委員。マンションのデザインについても建築確認時により強化した行政指導が必要であると櫻田委員。外部資本による売り逃げ型のマンションがもっとも大きな問題であり,これへの対処が短期的な仕組みとして必要と小浦委員。一階の用途,駐車場の多い部分をもっと問題にすべきだと栗山委員,淺井委員等の意見をいただいている。
○都心居住に関する施策化に向けては,助成などを行う場合には,町家の定義付けを考える必要があると事務局から指摘されている。
○このほか,第4回の審議会では,どのような都市環境を維持するかを都市計画として提示すべきと小浦委員。長期的には,エネルギーの問題,ゴミの問題,緑の問題など環境問題を含んだ都市の幅広い課題として捕らえるべきであると栗山委員。そして,職の活性化に向けた行政支援が,有形の職,無形の職,特に作業所と店舗,京都の風を吹かせるという指摘を鵜飼委員からいただいている。以上が第4回審議会の主な論点である。


(2)平田委員,若林委員意見発表

(平田委員意見発表)
○生活環境を守るための施策の必要性について意見を申し述べる。
○京都の都心の建物,マンション,ビルが高層化することにより,眺望の破壊,プライバシーの侵害,日照時間や通風の確保の困難や,生活環境の面で様々な障害が生じているのは申すまでもないことである。そういう状況の中で,これまでは,景観やまちなみをどうするかの視点を中心に話し合われてきたと思うが,住んでいる住民の生活環境を守っていくにはどうするかという視点での施策,手だてを考えていくことも重要であると考える。
○生活環境を守るといった時に何を目安にするかであるが,生活環境を代表する指標として,数値化しやすい日照時間を目安にして手だてを考えていきたいというのが意見の趣旨である。
○日照時間を取り上げる意味として日照時間が確保されることになれば,その他のいろいろな条件である,生活環境を表す指標である通風,眺望,プライバシーの確保といった点ついてもある程度の充足がされるのではないか。
○手法として考えられるのは,一つは日影規制というのがあるが,日影規制というのは,住居系の地域,準工,近商という用途地域でかけられていて,それを地方公共団体の条例で地域とかを決めているが,あくまでも影の方を規制する制度であるので,必ずしも日照の確保に繋がらない部分もあるが,それでもある程度は,日照の確保に繋がっていく手法ではないかと思う。
○今一番京都の都心部で問題になっている田の字の部分というのは,商業地域であるので,現在は,日影規制がかけられていない状況になっている。何とかして,商業地域においても日影規制的な制度というのが規制政策として考えられないだろうか。
○もう一つ,高度地区という制度があるが,京都市は,10m~45mまで10段階設定されていると思うが,商業地域では,31m~45mの規制になっていて,かなり高い規制だと思う。商業系の用途には規制はかかっているが,31mや45mを建てられるというのは,そこまで建ててもいいという数値ではないかと私は思う。新しく建てられるマンション,ビルに対しては,何か規制をしていくことが出来ないかと思う。
○規制がかけられたらどうなるかであるが,日影規制的な制度だとか,高度地区の規制が厳しくなれば,当然建てられる建築物の高さは低くなり,容積も下がると考えられる。そうすると,まちなみが中層化,多少は低くなり,日照をはじめとする生活環境の改善を図るのに繋がるのではないか。いろいろな立場の方がおられので,こういう規制は難しいと思うが,住民の方にとっては建物の高さが低くなれば,日照,通風,生活環境の改善に繋がっていくので,日影規制的な規制とか,高度地区の規制がかかる方が望ましい。
○ただ,新しく建物を建てようとする方にすれば,建築可能容積の範囲が小さくなるので地価に跳ね返って下がって来るであろう。新しくマンションを建てる業者の方には,建設しうる建物容積が小さくなるので,採算が合わなくなるとか,マンションであれば,分譲の価格が高くなるというようなマンション購入者にとれば販売価格が高くなる問題が生じる。
○新しくマンションを購入する人にとって分譲価格は高くはなるが,長い目で見れば,規制がかかっているので,自分のマンションの周りに高いマンションが建つ危険性はない。自分の住んでいるマンションの環境が守られる。日影規制的な規制が商業地域にかけられるようになれば,地価としては下がるが,住民にとっては生活環境が守られる。長い目で見た場合に,中低層のまちなみということでまちなみが形成されていくことになれば,生活環境が担保されることに繋がって,結果的にそのような環境のまちだということで価値の増加に繋がる。
○二つ目にどういう規制がかけられるとしても,自治体としてどういうまちにしていこうと考えるのかビジョンがないと,ある時期は31mや45mの規制になり,ある時期は抑えて,またある時期は変わるということになると,長い目で見ると結局は景観のそろわないまちなみになっていってしまうと思うので,京都市としてどういうまちなみに考えていこうとしているのか,ビジョンも合わせて考えていく必要がある。

(委員)
○手法は,日影規制か,高さ制限かのどちらかということか。

(委員)
○両方も考えられなくはないが。最初,日影規制を考えたが,商業地域には基本的にかけられないので,商業地域で規制していくには高度地区を使うしかないかと思い2つあげた。

(委員)
○商業地域に日影規制をかけることは,市単独でも出来るのか。

(事務局)
○日影規制は商業地域にはかけられないことに法律上なっている。日影規制を商業地域にかけるという建築基準法上の条例は難しい。ただ,同様の規制を,自主条例でというのは可能性があると考える。

(事務局)
○通常の公害規制と同じであるが,建築基準法上商業地域には日影規制はかけられないことになっているので,同じ目的で,条例で日影規制をかけることは出来ない。他の目的で同じようなことを条例でしようと思えば,法律と重ならないので出来るかもしれない。実際上,他の目的で日影規制が出来るかどうかは何とも言えない。

(委員)
○この問題の難しさは,職住共存地区が実態的には,商業地域の本来の用途だけではなくて,多くの人が住む住宅用途に当てられているものが多いということである。それも,町家や低層の木造住宅に住んでいる方に加えて,マンションの方の日照も商業地域の中では補償されないという2つのことを平田委員は述べている。
○現に京都市内でも隣接地にマンションが建って,もともとのマンション住民から,眺望権が侵害されたということで,日照を盾に訴えることは出来ないわけであるから,眺望権が著しく侵害されたので所有権が侵された,ということで訴えられたケースがあると聞いている。
○これも,最初に建つマンションは日照も眺望もすべていい条件であるわけだが,現行の規制の状態で田の字地区のあんこの部分に将来マンションが建ち並んでいくとすると,日照も眺望も補償されていない建物がほとんどである。どういうことかというと,最初に建てる人が,周りが建てていないということによって,過大な権利を行使していると同時に,周りに日影を垂れ流しているということである。
○最初に建てるものと,後から建てるものを調整する必要がある。このため,都心のビジョンを示すことが先であるが,職住という以上,低層,中層で住む場合に限らず,生活上の権利として,眺望日影等を保障する施策が何らかの手段として考えられれば,日影規制ではない,生活権の様々な観点からこれを条例化していくような手段もあるのではないか。それがおそらく職と住を保障する,職住共存地区にふさわしい建築規制の一つではないか。

(委員)
○基本的に,商業系だけども住居系に重点をおいた施策を取らなければいけないという矛盾がある。本来なら,用途地域を変えないといけない。

(若林委員意見発表)
○これまで,この審議会に出させていただいて考えてきたが,正直いって,勉強すればするほど難しい。
○第1の目標は京町家の保全再生である。すでに,京町家を基本的に保全再生していける方向で応援していく京都市の施策としてまとめられている。しかし他方で,いろいろな高い建物が建って建て替えていくケースもあれば,そうではなくて非常に小さな一戸建ての建物が建って,それはそれで隣の町家と並んでいるのを見ると,まちなみとしていいものかというと,それほどいいものではない。
○前回の小浦委員のお話の中で,町家タイプという言葉が出てきて,おもしろいなと思ったが,いわゆる伝統的な町家だけではなく,鉄筋コンクリートで建て替えてはいるのだが,町家としての連続性を考えたような建物なんかがつくられていて,そういうところはたいていの場合は,一階部分は商業として使われていて,都心部における産業という意味でも一定の役割を果たしているというような話があった。
○したがって,第1に京町家の保全再生という場合に,現在の町家を大事にしていきたいということに対してどういう施策を重要視させていくかと,その点で不十分な点は何なのかということでやっていくことが大事である。加えて,建て替えにおいてまちなみとして調和のあるデザインをつくっていくことで,町家は変わっていくが,住んでいる人たちにとっての見た感じのまちなみというのは,その形でも十分に維持・発展させていくことが可能なのかなということを学んだ。
○2つ目に中低層中心のまちなみ継承に関して,この審議会の一番念頭にあるのは,近年急速に増加している高層マンションの問題が非常に大きく,当面手を打たないとこのままどんどん増えていっていいのか,ということがあるように思う。この評価が難しくて,長期的に見れば高層マンションが増えていくことでまちなみのもっていた価値が下がっていき,生活環境としての価値,経済的な価値として長い目で見れば,高層マンションが増えていくことは事業者にとって,短期的には利益を拡大する合理的な構造だか,長期的に見ればその地域全体の価値を下げることになる場合もあるという意味で,それに対して一定の議論をすることの意味があると思っている。
○ところが,その対応策の一つとして,容積率の規制,ダウンゾーニングということが提案されているが,その点については正直危惧を覚えざるを得ない。経済不況が深まる今日の状況の中で,ダウンゾーニングをすると,それは京都市の都心部で営業している事業者に打撃は直撃すると思われる。
○ この点について,京都のある金融機関に話を伺いに行った。土地本位性から脱却しなければいけないというのは,確かに,金融機関の課題ではある。もっと,知能,知識,頭脳とか,そういった視点でお金を貸せるように変わっていきたい。したがって,土地担保が不十分であっても,十分利益が上がるビジネスをやっているところに関しては,当然一律に土地担保だけで融資をうち切るような乱暴な扱いになるわけではない。しかし,現実には多くの事業者の経営状況は苦しい状況にある。そうした事業者は,実際には土地建物の担保に応じて融資を受けてなんとかやりくりをしている。容積率が下がると路線価が下がる。路線価が下がると当然担保価値もそれに見合って下がるということになる。銀行側としては,お金を融資し続けるとなれば,担保がないのに超過して貸し付けるということで,そうすると引当金を充てないといけない。引当金をどんどん充てると,自己資本の状況が良くないということで,これはこれで銀行の経営に対する安全性が低くなるということで,お役所から「もっときちんとしなさい」と言われ,不良債権の処理が要求されている。したがって,銀行は基本的に,経営が苦しく見通しがはっきりしない事業者に対しては,担保価値の下落に合わせて融資回収を行わざるをえない。
○ このように,残念ながら容積率を下げるということは,中小の事業者にとって直接的な打撃を与える可能性が高いと判断している。だから,今の時期にそれをするのは非常に厳しく,まして,それをするということであれば,何らかのつなぎ融資なり対応策が求められる。民間の金融機関は金融機関で安定的な経営を要求されているから,担保がないところには貸さない方がいい,ということで金融機関は指導を受けている状況である。ここは,行政として別個のフォローを考えていく必要がある。
○3つ目の都心部の産業振興ということで,長期的に見ればそこに住んでいる人たち,そして,そこで働く人たちにとって,いろいろな豊かな営みが展開されていくことが,まちなみというものを結果的に作っていくのであるといえるように思う。都心部で,高齢化も進んでいるが,一方でマンションが出来,若い人たちが戻ってきているような面もあり,そういった状況で,都心部の生活環境の充実といった点で,どのような点が問題なのか,食品スーパーは足りているのか,などの評価は必要である。
○より根本的には,都心部における様々な事業が展開されなければ,根本的な解決の見通しは大変である。最近は町家を利用したレストランその他の営業も工夫されて行われている。従来の研究会の成果として,都心部のまちなみが形成されていった一つのサイクルが崩れていったことが問題であるという報告もあった。その通りだと思うし,重大な課題であるが,本審議会で産業振興そのものを取り扱うのは,大きな課題すぎて難しいように思う。
○最後に住民参加のまちづくりということで,地域協働型地区計画という,地域が主体となってルールを作っていくという例があった。今の民主主義の到達点の段階としては,やはり市民の合意をもとに行政がルールを行使していくことが基本的な方向だと思う。
○現実には,市民の中でなかなか合意が出来ないということがあって,様々なトラブルが出てくるということもある。そこがルールとしては大変であると感じている。その点では,一つは地域の商業者が,積極的にまちづくりに関わっていくこと。また,そうではない職住の基盤がない土地所有者とか,大土地所有者に対しては,特別にまちづくりへの理解を求めたり,話をしていくようなこともしていかないと,そういう人たちが「こういうまちづくりを考えている」という話が実際あったとしても,それを無視するような行動を取ることが多いわけであるから,この点での対策が一つの課題である。 
○何を残していくべきかということについての合意がしっかりあれば,いろいろな形でルールをつくっていくことは可能だ。どういった都心部のまちなみ保全再生という内容を考えているのか,そこのところをはっきりさせていくことがまず大事な問題である。そこのところで私自身も迷いながらもはっきりさせていくように努めたい。

(委員)
○かなり苦しまれた形跡があるが,たぶんこれが実状だと思う。
○先生のご意見では,完全な町家を残すのか,町家タイプでもいいのか,そこの線引きがまだということですね。

(委員)
○その線引きの議論が必要なのかなと。私自身は「まちなみ」ということであれば,完全な町家でなくても,まちなみとしての効果はあると思う。

(委員)
○改造したものでも良いということか?

(委員)
○そう思うが,いやそれは違うのだと,まちなみとはそんなものじゃないといわれれば,勉強しなければいけない。

(委員)
○それにはかなり個人差がありそうだ。

(委員)
○そのことに関して,例えば文化財保護法の中でも重要文化財建造物として建造物単体で文化財に指定する場合は,それがオーセンティックな町家(民家)であることが原則である。
○もうひとつ,1975年に改正された文化財保護法の中でも伝統的建造物群保存地区というのがあるが,あれは単体の建物を指定していくわけではなく,その伝統的建造物群の中に入っている個々の建物,この場合町家にあたるが,それがかなり改造されているとか,建てられた年数がきわめて新しいとかいう場合でも,群としての文化財になるわけである。
○さらに,文化財保護法の伝建地区によらない,例えば都市景観条例のようなもので景観地区を指定している自治体がある。京都市も実は,界わい景観等のもっと幅広い制度を持っている。その場合,仮に建て替えの場合の助成金を出す場合は,新築であってもそこに修景をしてくれて,例えば瓦屋根をのせる,格子をつけるという場合は,それは町家と判断して景観の一部という形で保護するということになる。
○こうしたことから,町家風というものは,すでに文化財制度あるいは景観行政の中では,充分町家になる。小浦先生が評価されたうち,改造町家についても木造であれば本来の形は町家であるわけだから,表側の部分だけを直せば,本物と区別が付かないくらいの町家になるものが多々ある。
○それ以外に,町家風のマンションとかビルというのがあるが,これは例えば,イコモスという世界記念物遺産会議では,1972年に歴史的建造物群の中に建てる新しい建築物に関する国際会議というのをやっていて,そこで国際的な基準も出した。日本では修景と一般的にいわれる手法であるが,インフィル(挿入)としてどういう形の建物がふさわしいか,その場合どこまでを行政的な助成の対象にするかの手法を議論したい。
○町家というものは決して厳しく限定して守っていくものではなく,都市全体を文化遺産としてとらえ,保護するためにできるだけ幅広く,町家の概念を広げていくべきてあり,ここで町家を限定するという考え方には反対である。マンションまでこの席で新しいタイプの町家と呼んで,支援をして,町家らしく見えるように誘導していくという知恵があればいいのではないかと考える。

(委員)
○実際にそこに住まれている方のご意見はいかがか?

(委員)
○どこまでが町家かということは本当にわからない。ただ,雰囲気という形は非常に捉えにくい抽象的な概念だが,現実にはそれが一番大事で,雰囲気で捉えていく以外にないといわざるを得ない。
○これでなければならないというものが限定化されて理論上できあがったとしても,実際にそういう形の町をつくっていくことは不可能なのではないかと思う。
○したがって,いい意味でのアバウトさというか柔軟さを捉えておかないと,町家というものを取り扱うことは難しくなると思う。
○商業地域か住居地域かといった用途地域の問題であるが,ずっとこの審議会に係わらせてもらっていて,どうしても現行法制度の枠の中でものを考えていこうというある種の常識が,実は一番我々を災いさせているように思われる。したがって,用途の問題も,商業地域だ住居地域だという考え方で考えたとしたら,結局は行き詰まってしまって何も答えが出てこないのではないか。
○ましてや,職住共存でいこうじゃないか,木造的町家を残そうではないか,とするためには,もっと思い切った提案も入れていってもいい。ここはすでに商業地域だ住居地域だという規制すら省いてしまって,とりあえずどんな形のものをつくるんだというビジョンをつくって,逆に,それにいかにして法律を当てはめていくかという発想に持っていかない限り,かなりしんどいところに来ているのではないかという実感がある。
○問題を解決するためにとんでもない問題を背負い込んでしまうというところに来ているのではないかと思う。

(委員)
○いわゆるダウンゾーニング,容積率の切り下げに関する経済的な影響の部分であるが,4ページの下のところに,町家で事業を営む事業者の経営に打撃を与え,それが意図に反して,職住共存地区を破壊することにつながる可能性までご指摘になっているが,私どもも町家再生店舗というのにヒアリングに回って,どういう経緯でどういう融資を受けられて改造されているかということまでいろいろ聞いた。
○先生がおっしゃったように,土地の限度額いっぱいまで借りて商売をされているような大型の町家再生の事例もあるが,中小規模の町家の場合は土地本位主義から脱した,その人の企画と能力によって銀行からちゃんとお金を借りて事業をされている方もいる。むしろ町家再生店舗の場合には,割と健全な金融環境にあるのかなと思う。
○そうでないビルで問屋をやっている方とか,その他の比較的規模の大きな経営をやっている方が苦しんでいるのかなということがあると思が,そのことはともかくとして,この実態を調べる方法というのはあるのでしょうか?どのくらいの影響が出るかということを踏まえて。

(委員)
○一般には個人事業者の融資,つまり借金の状況について正確な調査を行うということは,ほとんどできそうにないと思われる。直接,事業者に聞いても,正確な回答は期待できない面がある。金融機関側は取引相手のデータを持っているが,それを集計して公表するのは難しいだろう。いずれにしても,シミュレーションが必要だといいながら,金融機関が試算をしないと現実には難しいと私自身は思っている。
○それと今の町家再生店舗の場合,限度額いっぱい借りてないから大丈夫だろうということに関しては,つぎのようにも考えられる。つまり,金融機関がお金を出すときには,容積率いっぱいの限度額のような考え方で土地の価値を評価する,つぎに,容積率いっぱい使っていない形での現実の町家での事業の収益性やリスクを評価する,こうして,融資限度額を設定する。
○ただ,容積率いっぱいに使われていないところでも,路線価が下がれば,当然担保価格は下がる。そのときに従来通りの融資規模が継続できるかどうかというのは,融資額の大きさと担保価値の下落の大きさによるだろう。あまり借りていなければ影響はないだろうし,担保価値の下落が小さければやはり影響はないだろう。

(委員)
○容積率いっぱいに使っていない町家の場合の路線価にも,法定容積率というものは影響を与えているのですか?

(委員)
○指定容積率をベースにしていくらまでだったら建つだろうということで計算しておいて,それを100とおくならば,金融機関それぞれの各融資先に対するリスクというのが出ると思う。リスクマネージメントというか掛け目で,6掛けで貸すとか,半分しか出せないということである。提供される不動産がどれくらいの価値があるのかということをまず押さえておいて,それから支払い能力のチェックに入っていくと思う。どちらにしても,100の評価をするときには,すでに町家の建物が建っているから低い評価をするということではなく,更地としての評価をまずやって,それから掛け目を落としていくということではないか。

(委員)
○更地の評価には,指定容積率が影響している,考慮されていると。

(委員)
○可能性の話であり,そういう風に建ちますよということで,お金を借りる方は自分に有利なように主張するでしょうし,貸す方もそれに問題がなければスタート地点をそこにおいて,後は個別に,先程言いったように掛け目で落とすということではないか。
○それと今土地の価格の下落が非常に進行中ということもあり,容積率以外の要素の影響で土地の価格が下落している現状を見ると,これだけをとらまえて,容積が下がったから土地の価格が下がった,たちまちにして大変だ大変だということには,直ちにはならないと思われる。
○しかし,影響はないとはいえない。すでに多くのマンションが建っているわけで,住んでいる方に対してのコンセンサスはどうするのか,あるいはそういうことはする必要がないのかどうか。一つや二つではなくかなり多くのマンションがすでに建っているということで,それらのマンションを今度建て替えるときの仕組みも考えておかなければ,下げるということを直ちにやることについてどうかなという感じがする。

(委員)
○そこは非常に難しいところである。現行法制度でできることだけを考えていると,なかなか解決できそうにない。

(委員)
○今の法制度の中,条例の中では,おのずと取れる施策というのは限定的にならざるを得ないということになってしまう。それを一度白紙に戻して新たな視点で,という議論は私も必要だと思うが,この審議会の設置の目的からすれば,そんなに時間的な余裕があるわけでもなさそうな感じもする。なかなか出しにくい決断である。

(委員)
○それともうひとつ。今おっしゃっているように,それぞれの施策は誰かに何らかのダメージを与えるが,そのダメージが無いような施策もまだ見つからない状況である。

(委員)
○何か起こせばその時点で,作用反作用でマイナスの効果を受ける方,事業が当然出てくるので,それを考えて,みんなが良くなるような施策というのが果たしてあるのか疑問である。

(委員)
○たぶんない。今まで議論した経過を見れば,誰かが何かの影響を受けるということになる。それを打ち出さないといけない。

(委員)
○今そういう大きなマンションが建ったり,町家型のレストランなりいろいろな事業をされているが,持ち主がされているという例はけっこう少ない。町家を利用したレストランをされている方も,外資というか,よそでレストランをやったり,事業展開をしている中の一環として今の町家ブームに乗ったりとか,売られた土地を利用しながらマンションを経営するとか,それも1棟2棟でなく,いろいろな都市にも資本をおとしているというところが,京都は売れるということで,そういう資本をおとしているといえる。
○その土地にもともといた方がそれで潤っているのかというと,そうとも限らないというのがある。いろいろな個別の経済状態を一個一個あげていくと,都市計画として今計画していくことのデメリットの部分ばかりが見えてくることになる。
○今日ここに来るのに,どうしたものかなぁと思って,一度あの辺を歩いてみるかということで,何か見えてくるものがあるのではないかという感じで考えてみたが,考えれば考えるほど本当に難しくて,では何を言ったらいいのだろうと,結果そんなところになってしまった。
○ただ,わかったのは今いっていたような,京都の町の中心地に,京都の資本ではない資本がすごくたくさんおりているというところは,目に見えてわかった。したがって,そういった外の資本がおりてくるということは悪いことではないが,負担金みたいなものは取らないといけないのだろうなぁと思った。
○郊外の町などではそこに住むときに,人口が増えていくということはいいことだと思うかもしれないが,一つのファミリーが移って住むと,そこの子供が学校に行ったり,下水を引いたり,電気を引いたり,すごくお金がかかることだということで,一つの単身者マンションなどを建てるときには,ちょっと前の話で,城陽や亀岡なんかでは一戸に対して10万円とか負担金を請求する。ファミリーだと30万とか40万というお金を取る。
○そうすると,100戸のマンションを建てるとか,50戸のマンションを建てるとかいうと,それだけでもすごい費用になってくる。それは何に当てるのかというと,学校を建てたり,道路をつくったり,下水を引いたりという,そういう費用に充てるというのは恒常的になされてきたことである。
○ただ,京都はもともとそれがあったもので,それを受け入れるときにも,そういった負担金を何も持たなくて,どうぞというような感じで受け入れてきたということがある。町の成り立ちが違うのでそれはしかたなかったのかもしれないが,今新しく都心の町の形を考えていくときには,そういったものを避けて考えてはいけないのだろうなと,改めてこの間町を歩きながら思った。
○ここで町の成り立ちみたいなものを,今ダウンゾーニングをしたといっても,高層の400%を享受しているのはもともとそこにいた人ではなくて,そこに新しく住む人はそういうことをわからずに住んでくるわけであり,実際そこで事業を行っている人だけが恩恵を受けているということになっていると思う。
○先生方のレポートを読ませてもらったときにも,そういうことはいえるかもしれないけれども,実際のどれだけの人が路線価の恩恵を受けているのかなと思った。町を歩いた限りではあまり受けていないように思える。
○そうであるならば,現状の状態にできるだけ戻すということも考えられるのではないかなという風にも考えられる。

(委員)
○今日発言するとしたら,もう一度まちなみ税しかないといおうかなと思っていたところである。
○要するに,都心部が衰退して,地価も下落し続けているし,再生しなければいけないのは京都だけの話ではなくて,ほとんどの政令指定都市がそうだが,要は都心の魅力アップをどうするかということである。
○魅力アップするということは,人も戻ってきて,経済活動も活発になって,それ以外にも何かある。京都の場合はやはりまちなみというものが,京都の都心の魅力に絶対欠かせない問題であるからこれだけ問題になっている。
○そのまちなみを消費していくというか,食いつぶしていくようなことに関してはそれなりのペナルティがあって当然というスタンスを持たなければいけないと思う。それが開発負担金である。京都の町には大昔にあったシステムだと思うが,そういうものを課して,それで魅力回復に使う。
○マンションを全部否定することは現実的には不可能だとすれば,その人たちが住むことで人口が増えて,人口面での魅力アップになるけれども,一方で失われていく京都の再生みたいなところにも使うということで,市民的にも合意が得られるし,来る人も,ちょっと京都に行くには高くつくけれども,それがステイタスだということで払っていいのではないかということを改めて感じた。

(委員)
○まちなみ税という議論の時に,ダウンゾーニングを前提に考えられていますか?

(委員)
○まったく考えていない。ダウンゾーニングということをやらなくても。ダウンゾーニングといういい方をすると,先程のような問題点が出てくる。200%以上の容積を使う場合には開発負担金がかかる,といういい方をする。そうすると,それだけ開発負担金を取られるのであれば200%以下でやめておこうとなれば,自然にダウンゾーニングになる。
○京都はどちらかと。その程度でやめましょうということになるのか,それでも京都で開発したいとなるのか。いずれにしても,京都のまちなみが今よりも悪くなることはなくて,むしろ開発がどこかで圧力が進めば,それを逆手にとって再生するという仕組みをつくる。
○おそらく無傷のまま京都を再生しようというのはあり得ない。どこか武道でいう,肉を切らせて骨を断つという部分が必要なのかなという気はしている。

(委員)
○今議論になってきているところで,マンションの問題というのが容積率をどうするかとか,まちなみをどうするかを考えるに当たって,一番最初の発端というか,問題意識の出発点だったのではないかと思う。
○そのときに,一つには今のまちなみ,京都の場合まちなみを守るということがある種地域的価値というか,環境価値というか,地価が高くなる要因になるのではないかという認識を私は持っている。
○つまり,単に容積率がいくらだからどんな土地利用ができて,それがいくらだからというこれまでの単純な経済価値ではなく,文化的な価値が地価なりあるいは環境の価値として評価されていく方向を目指すべきだというふうに私自身は考えている。
○ある程度低層の町家を核としたまちなみというものを維持していくことが必要になってくるということは,ほぼ合意されつつある問題ではないか。それをどういう方法論で実現していくかというときに,簡単にいえばまちなみ税の提案は,経済的なというか,お金でバーターするという話である。
○それと都市計画で抑えるかという,都市計画でイメージするかという問題。都市計画でイメージした場合,今みなさんの議論の中では,マンションはどうなるの?という話があるが,既存不適格の問題は日本中どこにでもある話で,都市計画的にいえばどこで割り切るかだけの問題だと思う。既存不適格は悪いことではないというのが,都市計画をする立場ではある。
○もしマンションの建て替え問題であれば,既に始まってはいるが,今仮に京都で容積を落として,今建っているマンションをどうするの?ということが目の前の問題になってくる頃には,たぶんもういっぱい山のようにケーススタディが積み重ねられているので,あまり気にしないでもいいのかなぁというのがまず1点。既存不適格については,あまり心配しなくてもいいのではないかと,私自身は思っている。
○第2点に,もしどうしてもマンションの問題が気になるのであれば,例えば西宮で地区計画がばんばんかかっている実状はみなさんご存じだと思うが,それもマンションの高さ問題から発している。
○もともと西宮は高度地区が非常に緩かったために,それと西宮自身が持っているまちづくりの条例が極端だったがために,そういうことが起こってしまっている。何が極端かというと,500㎡未満の高さ規制を10mにしているため,大きなお屋敷がマンションに替わるときには突然バーンと建って,それ以外の普通の敷地であれば絶対建たないという,かなり極端な開発規制をしているため,二つの要因で西宮の場合は高さ問題を引き起こした。
○それに対して西宮の地区計画は,現存しているマンションについては適用しないということを明示している。このため現存しているマンションについては,まったく同じ形で建て替えを可能にするということを要件として,地区計画で高さを完全に落としている。
○方法論的にはいろいろなことが考えられると思う。したがって,経済的手法でいくのか,あるいは都市計画として完全に出していくのか。マンションの建て替えの問題は,ここ10年であちこちで解決を探ると思うので,それを見ながらやっても十分なくらいのスピードではないか。京都の状況はそうではないかと思う。
○それよりも京都の姿勢として出すべきではないかと,私自身は感じている。
○先週東京の集団規定の見直しの審議会に出ていたが,国の状況というのはまだまだ経済的な規制緩和の方向によって町を活性化しようという,そういう発想が強い。そんな中で,京都としては文化的価値で町を活性化するのだということをはっきり明示するというのは,都市計画的にも環境価値的にも意義のあることではないかなという風に現在は感じている。

(委員)
○非常に本質的な議論が続いているが,ここで事務局の方からまちなみのシミュレーションについて報告していただいて,そのあと休憩を取った後にまた議論に入りたいと思う。

(3) 「まちなみシミュレーション」及び資料-5「まちなみの目標像の議論に向けてのキーワード」の説明
(事務局資料説明)
(委員)
○では,ここから一番大事な目標像について審議をお願いしたいと思います。

(委員)
○地域の方々は,どれだけまちなみというものに対して意識を持っているかということであるが,うちでも地区計画を進めている最中であるが,確かに,高さの問題も議論になるが,どちらかというとソフトの面での地区計画を進めていきたいということもあるし,みなさんの思いもどちかというとそちらに向いているのも現状である。というのは,今私たちのまちでは,和装業界が中心になっているが,衰退の一途をたどっており,他人のことを考えている場合ではないといった状況である。本当に真剣に考えておられる方は,地域の中でも一部の方で,その一部の方の声が大きいといった現状ではないかと思っている。
○地域の方々がより安心して暮らせるまちにするにはどうしたらいいかということについて,地区計画の中でも地域の方々に認識を持ってもらうことが第一歩であると思っている。目的税ということに関しても,私たちの地域もマンションがたくさん建ってきている。その中で何を町内会で重視されているのかというのは,目的税に代わる町内に対する迷惑料みたいなものが入ってくることによって,目一杯の建物が建っても,みなさんが何とか共存していくことを考えていこうというような形を思っているのが現状である。
○そういった意味においては,これから,全体として考えていく上では,それなりのルールは必要であるし,そのルールをつくってもらうためには,それ応分の負担を認識していただいて建ててもらうということも一つの方法ではないか。
○それと,商業地区ということに対しては,以前にも言っているが,商業地区に住んでいる誇りというものは,小さな家に住んでいる私たちでも持っているわけである。その中で,一つ疑問に思うのは,今,計画されている私たちの地域の中でのマンション,14階建て,45mいっぱいに建てられるところの説明会があったが,容積が900を超えている。地域の方々は,容積が700であるからどうだとか,400であるからどうだとかという思いはあまり持っておられないが,どうして,700のところに900が建っていいのか。そこに900が建てられるのは,住宅専用物件であるから建てられるのであるが,だとすれば,商業地区はおかしい。やはり,商業地区であれば,テナントビルであっても,住宅専用物件であっても,同じ容積で考えるのがいいのではないか。油小路通りで,400であるが,ふたを開けると500を超えているのが現状である。そのあたりを考えてもらえれば,多少なりとも高さを抑えることも可能になってくると思う。
○結論的には,私たちの地域では,なかなか高さを抑えて,まちなみを揃えるのは現状では難しいが,田の字地区のあんこの部分で,シミュレーションを見せていただくと,電線がない。私たちの地域で,電線が地中化になっているところはないが,新町通りを歩くと電線がまたがっていない。あれだけでも空を見るのに気持ちがいい。まだ遅くないと思うので,新町通りだけでも私たちの思いが伝わっていくような施策を考えてもらい,そのことによって少しでも広がりがもてるような意識を,私たち住民が持つことが必要である。

(委員)
○まちなみの目標像に関して,住民のみなさんの間にどのような認識があるのかという点に関して,大変悩んでいる。京都の町家を基調にして,まちなみをつくっていくということが私の主張であるが,正直なところ職住共存地区にお住まいの方全てがそのような認識を持っているかというと疑わざるを得ない経緯がある。
○これは,実は,歴史的経緯があって,我々が町家と呼ぶ建物は,私は,意図的に広く取るが,住民のみなさんに判断してもらったところ,町家だと判断した方は13%しかいない。後の5~6割の方は,町家風の建物とおっしゃっただけである。
○どういうことかというと,戦前から大店を都心で張っていた方が,町家という強い自覚をもって,戦前は3割以下が持ち家であって,それ以外の方は店子だったわけで,その方たちは自分の建物に対する認識もない。京都の文化を支えるという強い認識もないわけである。
○その後,戦後持ち家化が急速に進み,職住共存の中では,8割以上持ち家化が進んでいる。その方たちが,大家さんと大工さんとの出入りの関係があったものを失っているので,買ったはいいが手入れもできないような困難を抱えている方たちが住民となっている。
○つまり京都の文化としての町家を生かしたまちなみは,いまだかつて,市民や住民の皆さんに共有してもらったことはない。ただ,近年,町家ブームがおこって,町家再生店舗をはじめ,多くの市民の方が町家を楽しむような状況になってきたということは,ようやく京都では,マンションが都市的で文化的な生活ではないということで,町家の方が京都らしい住まい方も出来るし,京都らしい商売,ものづくりも楽しめる,あるいは,町家を生かしていくことで京都らしい職住が維持できるということに関する市民合意が出来つつあるということだろうと思う。
○これは,行政が,町家,まちなみこそ京都の目指す方向として押しつけるものではなくて,長い間京都の伝統的な資産が封建時代を経て,戦後の民主化を経てくる中でようやくみなさんが,何が文化かということになるのなら,やはり町家しかないということを認識してきた,戦後55年かけた変化ではないか。
○今,我々は,これを正面から受け止める必要があるわけで,1960,70年代の考え方ではない,21世紀の初頭に京都市民が,今,町家を文化として選んでいるなら,これを軸に生かしていくということを明確に将来像にすべきである。
○この審議会の第1回での市民アンケートの結果でも,今や82.6%の市民の方が町家の保存・再生を望んでいる。この10年間の間に急速に延びている数字であるが,これらの方々が町家を軸に再生する新しい都心のイメージを持とうとしている。実際,本能学区だとか,隣の明倫学区だとか,共存地区のいくつかの学区に行くと,この割合で町家が支持されているわけではない。もちろん「町家が残っている方がいい」が,自分がどのような役割を果たして,どのような規制を甘受してとかになると,つい最近出来たブームであるので,考えたこともないわけだし,戦前に大店を構えておられた町家の大旦那と比べたら地域の普通の住民の方は,京都のまちのまちなみを支え,文化を支えるという自覚をもっていただくまでには至っていない。
○そういった意味では,封建的な仕組みが残っているまちであるが,ようやく,市民の声が町家ブームという形になって顕在化している。したがって,これからは住民のみなさんに,町家ブームのまちなみを大切にする方向を語りかけながら,一緒に共闘していくことは十分できるのではないかと思う。その意味で,市民に支持されている町家を生かしたまちなみというのは,審議会の目標像としてとりあえず掲げられる。まだ,もちろん克服しなければならない困難はあるとしても,とりあえずこちらに今大きな流れが出来ているのではないか。

(委員)
○一つ質問ですが,市民というのは,その地区以外の京都市民もですか。

(委員)
○第1回審議会で出された京都市民1万人のアンケートだったと思うが,広い全般の意見であって,必ずしも,中京,下京地域の住民の意見と一致しないということもある。ただ,中京,下京には非常に熱心な町家ファンも多いことは事実であり,逆に中京,下京にも自分は,昭和30,40年代に長屋の一角を買って住んでいるだけという消極的な町家所有者も多いことも事実である。
○その違いをどう見極めて,理解を図るようなイメージを共有していくのかといった議論が残ると思う。ただ,私は,十分やり得ると思う。時間はかかると思うが,地域協働型地区計画づくりとか,まちづくり活動の中で広がっていくべきだと思う。

(委員)
○もちろん我々審議会は,目標像を押しつけるというわけではないが,市民の意見をくみ取りながら一つの提案をしないと始まっていかない。審議会には,一つか複数の提案をしながら市民と一緒につくっていこうという姿勢が必要だ。

(委員)
○地区計画が第1号で認められた修徳学区であるが,まず,地区計画をどのような組み立てにしようかと考えた時に,現在と過去と未来,これが必ず必要だろうということであった。このまちが形成されたというのは,明治の後半であったと思うが,まず,番組小学校が確立して,その小学校の周りには,警察,消防,郵便局をはじめ,その必要性に応じて人が集まり,文化的で便利な社会形成が進められてきたというのが過去にある。
○現在どうであるかというと,マンションが非常に問題になっているが,その経緯を見てみると,景気のいい時期には呉服屋さんが高い建物を建てられ,それに伴って周りに影響がいろいろな形で出てきたとか,そのような経緯を経て今がある。
○それでは未来はどうか。現在を見ていると景気も悪いし,将来どうなるのだろうという不安材料ばかりが地区の中にはあると思う。
○地区計画の内容というのは,マンションに関しては,幹線道路には仕方がない。高層マンションを建ててもいいだろうという感覚である。その中には低中層マンションが理想であり,建てられるのなら是非そのような形にしていただきたい。それから防災・防犯に強いまちづくりをしていきたい。緑と環境の良いまちづくりをしていきたい。もう一点は,平安時代から脈々と引き続いている文化も将来的にも大事にしていきたい。だいたいそのような部分を我々地域のものが認めてきたように思う。
○目標像であるが,こういった形がいいであろう,こういうまちなみにしたらいいでしょうとか,形の部分だけではなく,中身の部分,住んでいる人にとってどういう生活の仕方が適しているか,おじいちゃん,おばあちゃん,子供,3世代がどのようなコミュニケーションがとれるまちづくりが必要か。それが大事であって,あまり高いものは建てていただきたくないが,仕方なくそれをしなければならならい理由があるとすれば,それはそれで我々住民としても認めざるを得ない。というのは,活力あるまちをつくりたいというのが大前提にあるということで,私たちは地区計画を立てたように思う。

(委員)
○マンションが建ったことによって,その隣の町家の売買価格が変化するようなことは起こりうるのか。

(委員)
○その土地を使うにあたって特別な支障が出てこない限り,隣に建ったマンションによって,町家が価値の低下を引き起こすことは,特にないと思う。同じようにマンションを建てられる可能性もある。

(委員)
○補足すると,地価の話は難しくて,容積率が低くても地価が高い地域はある。全国的に都心部の地価が下がっていく傾向にあり,地価というのは,全体の経済的なコンディションの影響ももちろん受けるわけである。
○私が,今回の報告で特別に問題にしたのは,そういう状況のもとで容積率が下がるとか,隣に高層マンションが建って日照が侵害されるとか,減点ポイントがあれば確実にそれは短期的には土地価格に反映するであろう。長い目で見れば,土地価格はいろいろな要因によって決まるので単純にはいえないが,日照が侵害されれば当然売買価格には影響される。容積率の話も同じである。
○ただし,これは非常に短期的にそのときの局面で見る話であって,5年10年という長い目で見た時にどうなっていくかの話ではない。

(委員)
○マンションが建った時,マンションと町家が併存する形が想定されてくる。その時に,木造建築が,一つの高層建築が建つことによって,10,20,30年といった時間の経過の中でどれだけ被害を受けるのか,そのあたりを見つめておかないと,単に並べて建てればいいという議論になるのは良くない。真南に高層建築が建ったことによってどのような影響を受けたかを30年間経験しているものとしては,その後に起こる変化というのも踏まえる必要があると思う。
○したがって,当然そのまちなみ等のからみがあるので,鉄筋の建物と木造の建物が共存していく場合に,見た目だけで解決しないで,永遠に影響を受け続ける部分というのは,資産的価値に加えて建築物の維持そのものにも影響してくることもあるので,そのあたりも議論の中に入れていただきたい。

(委員)
○目標像というのが,イメージとして,ある一瞬の時点の絵と受け取られがちだが,都市というのはずっと生き続けるわけであるから,その流れの中で目標像を位置づけるべきだというご指摘でしょうか。一瞬の絵ではないということ。

(委員)
○問題を単純化してしまうが,先ほどのシミュレーションを見ていても,上から見るとひどいのかもしれないが,歩いている人の目線においては,高層31mであったとしても,第4種の美観地区でセットバックは認めない,斜線規制は緩和しないというルールであれば,空の大きさは中低層が並んだ場合と同じである。
○通りを歩いていて抱く印象としてまちなみを考えるのであれば,問題は容積率や高さの問題ではなくて,実は,セットバック問題が最悪だったのだろうというようなことになるのではないか。今の話を聞いているとそうではない。鉄筋が建って町家にダメージがあるという話になるとちがう論点があるのかなと思うが,とりあえず,鉄筋だろうが何だろうが第4種の美観地区で1~2階部分の雰囲気について一定のガイドラインをつくって,通りから見える空の大きささえコントロールすれば,まちなみというものはそれなりに継承が可能ではないかというふうに,単純化すると思える。

(委員)
○わかりやすい議論である。つまりまちなみというものを評価する視点は,歩く人の目線で見ればよい。鳥瞰図ではなくて,目線で評価できればそれでいいのではないかと。

(委員)
○鳥瞰図は,生活に対する感覚とかに影響を与えているのか。やはり,下を歩いている時の感覚が我々の生活感覚に影響を与えていると思う。

(委員)
○観光客とか外の人の視点で京都のまちを歩いた時は,まちなみということが重要になると思う。一方,建築を設計する立場では,町家を壊してマンションを建てるとなると,とりあえず目一杯建てたいとなる。容積が,400というのに500が建っている。立場が変わると,目一杯という出来るだけ経済効率をよくして,マンションであったらレンタブル比というが,一つの建物の中で,実際お金になるスペースは何㎡というとことでせめぎあって,階段,吹き抜けが緩和になれば,それだけ経済効率が良くなったというような,立場が変わればそのような認識を持つ。
○今の話に戻ると,それを鳥瞰図で見ると,どんな小さな町家にも,3部屋しかない借家建ての連棟のものであっても裏庭には松が植わっており,そこは雀や鳩が来たりするという,そのような緑を持っている。細長く奥行きがあるものについては,中庭があって,採光と通風を考えて,奥庭に座敷庭がある。もう少し大きければ離れがある。そのようないろいろな住まい方が生活のパターンであり,一つの生活のパターンが建築の形としてそこにあるわけである。
○それを全部壊して高層のものを建てるということになると,そのような生活パターン,生活のサイクル,行事にまつわる生活慣習,そして具体的に地図の上で緑というところが全部なくなってしまう。その空地が何になったかというと,セットバックしたところの駐車場になったりするわけである。
○まちの資産としては,建物は確かに空地も含めて地上の部分を有効に使っているが,まちの資産として増えたかというとそうではない。どちらに重きを置くかというと価値観もあるが,まちとしての文化度であるとか,そういったものを計った時には,それは,まちの通りから見ただけの修景では納まらないのではないか。

(委員)
○住み方というか,住まい方自体がその町家のつくり方にあるわけですね。かといって,それをどこまで残しきれるのか。

(委員)
○新しいものを取り入れるという住まい方というのは,古いから残っているとか,古いから存続できて,新しいものをつくったから消えてしまうということではない。それを残しながら新しく再生していくということは可能だと思う。

(委員)
○例えば,それはコンクリートであってもいい?

(委員)
○はい。形状としてコンクリートとして,許容範囲でもっと大きくなったとしても,住まい方であったり,土地とか空間の使用の仕方は継続していけるのではないかと思う。

(委員)
○まちの目標として,防災・防犯,活力,そして人が住み続けられる。これはすごく大事なことだと思う。
○しかし,まちなみの将来像はなかなかわからない。しかし,ほっておくとぐちゃぐちゃになるということも今わかっている。
○将来像を合意しようとか納得しようとすると時間がかかる。納得するというプロセスはすごく大事だし,何か協議する仕組みというのはすごく大事だが,その間に町がぐちゃぐちゃになったら何の意味もなくて,そこをある程度抑えるというのが,今回緊急に求められている都市計画的対応ではないかと私は理解している。
○それで全部決めようなどと仰々しいことを考えずに,まちは動いていっている,動いていく中で,「防犯・防災」,「活力」,「住み続ける」ということを考えると,これまで住んできた人が何を大事にしてきたかということを確認すべきである。
○その一点が,自分の問題は別にしたとしても,人のものだったら町家はいいと思えるという,つまり町の文化としての町家というのはある程度納得できると思う。自分のことは置いておいたとしても。
○次に,生活環境の中にある緑というか,庭や空地の取り方はある種京都の文化だと思う。そういった採光の取り方,通風の取り方。だけどこの住まい方というのは多世帯にはかなり厳しい。多世帯で部屋を分離して自立的に住もうとすると,この町家の形態は非常に難しい。であれば,ある程度階数を増やしたりする必要はあるけれども,やっぱり奥に庭を取ろうよとか,奥に空地を取ろうねということが納得できれば,それはそれでいいと思う。
○そういった今現在の「防犯・防災」,「活力」,「住み続ける」ということの基本として,納得できる要素を形態的に整理する。けれども,それでもってどんな町にしようかということがなかなか合意できないので,でもその間にまちがどんどん崩れるといけないので,とりあえずガーンと,ダウンゾーニングも一つの選択だと思っている。
○落としてしまってそれで終わりではなく,他の先生もおっしゃったように,それプラス,非常に厳しくして協議のプロセスを残すという形がいいと思う。
○厳しくしておいて次に緩和するプロセスというのはある程度進めやすい。でもいったん緩くしたものをきつくするのは,すごく難しい。であるからどーんと落として,こういう住み方をしてこうだったら,みんないいよねといったら,200と決まったけど300になるけどまあいいやという,そういう協議のプロセスを含めた過渡的ダウンゾーニングである。
○地区計画にあるような方法でもいいが,それを都市計画的にやってしまうというのも選択肢としてはあるのではないかと思う。
○時間というものをどうつないでいくかということは,今切迫していると私自身思っている。切迫した状況の中で都市計画の中である程度きつめにかけて,協議で戻しながら,そのまちの状況をつくっていく。その前提として,ある程度今合意できている町家を大事にするということもある。そのときにできるだけ選択肢を増やしていくことも必要ではないかと思う。
○もし仮に,現在の町家的な,町家型市街地というものの文化性みたいなものに価値があるとすれば,木造の建て替えも認めるとか。木造で建て替えたいという人もいるわけで,町家で住み続けたいという人は,今防火地域がかかっているために建て替えられない。
○そういう意味である程度,いいよね,こんな住み方,と思っているものが実現できるような仕組みが必要である。それは容積を落とすということと併せて,防火に対する何らかの例をつくるということも含めて考えるべきである。
○防犯・防災といっても,木造だから防犯的に悪いわけではない。昔の路地の奥には全部木戸があって,隣に行けるというのがある。いかに,どういう市街地の中でどういう防犯・防災の仕組みを組んできたかというのは,この地域は文化として持っている。そういうものを確認しながら,いったんどんと落として,協議しながら調整していくという,そういうようなことでもないと,しばらくの時間稼ぎが非常に厳しいのではないかと思う。

(委員)
○目標像の定義を,今出ている話のように,中身の,住まい方だとか防犯とか文化だとか活力だとか,そういうもので目標像を記述するのか。あるいは,本格的な町家がいくらだとか,町家風のものをいくらくらい残すのかという,「形」として目標像を定義するのか,中身として定義するのかということはどうですか。

(委員)
○形については,はっきりいえば個々の建築のデザインである。だからそこは都市計画の扱うところではない。つまり,景観条例であってもいいし,先程いった協議のプログラムの中身でやってもいいし,それは別途持てばいいと思う。
○ただ,「形」というそういう細かいところで合意しようと思うからややこしくなると私自身は思っている。
○この議論を都市計画ということでやるならば,ボリュームとしてどれくらいのフレームで考えるのか。例えば,すごく専門的かもしれないが,容積率が200ならば200なりのボリューム感というのは,実際にそれもつくっていかなければいけないと思うが,形ではなくてボリュームの配置としてイメージするという,一定これくらいのボリュームの,これくらいの配置の可能性みたいなもののシミュレーションの方がいいと思う。
○何となくまちなみみたいに思うから,コンクリートがどうだとか,木造がどうだとか,屋根がどうとかいう議論になるが,生活環境とかいろいろなことを考えると,ボリュームの配置というのはものすごく大きな問題だと思う。
○それと併せて,防犯・防災・活力・住み良さというのは,それを求めていくときに,家を造るとしたら「どんなことは少なくとも納得できるよね」くらいは,町の人達と協議していく必要があると思う。

(委員)
○目標像というのはある一つの絵ではなくて,いろいろなもののベクトルをこちらの方向に向けようという,そういうイメージですか?ベクトルという言い方はおかしいけれども。

(委員)
○ボリューム配置である。ある意味で。空地をどこにとって,どれくらいのボリュームを道際に置くかというような,ボリューム配置の基本的な構造の可能性みたいなものを検討する必要がある。例えば,200なら200,300なら300の制限の中でやっていくというのはあると思う。

(委員)
○容積を下げて,今度緩和する場合の基準というのは,どういう基準でイメージされるのですか。

(委員)
○難しい問題であるが,おそらく元学区でいろいろと活動されている職住共存地区整備ガイドプランに乗った形で地区計画をつくっていくというプログラムの中でやっていくのがいいと思う。ただ,それに時間がかかるので,その時間をどうやってつなぐかということを,都市計画的にどう解決するかという議論が一つあるのではないかという提案である。

(委員)
○容積率を下げることが時間稼ぎになるのか,あるいは町家が残らない,町家が建て変わっていくということを抑制することになるのか,疑問である。今ある町家を守っていこうということと,容積率を下げるということの関係,効果,その点はどうですか。

(委員)
○容積率を下げるということは,マンションの立地の需要は多少押さえるかもしれないけれども。

(委員)
○でも,低いマンションが建つだけという可能性もあって,それでいいのですかという話である。

(委員)
○町家の土地自体を売りに出すことは防げないと。

(委員)
○はい。それは別問題のように思う。

(委員)
○その通りだと思う。そういう意味では,低いマンションになるだけという可能性は持っている。けれども,その議論をしている間に高いマンションが建つよりは,まだ都市計画的な意味はあるのではないかと,私は思っている。
○それとは別に,文化的価値ということを共有化していく必要はあると思うし,先程発言させていただいたように,それが京都のまちの価値だと私は思っている。
○けれども,全部を一つの手法ではできない。いくつかの手法の組み合わせの中で,都市計画の一つの役割としてそういう意味もあるのではないかということである。

(委員)
○マンションも多少押さえる。町家がなくなっていくことを防ぐ。もしくは,町家の改善・改造してもっと生き長らえさせるという,おそらく二つか三つの目的を達成させるための手法を考えなければならないでしょうね。

(委員)
○空地の問題は私もよくわからないので考慮の外になってしまっているが,未来の像としてどういう像を描くかというときに,先程も申し上げたように,高い建物は建つけれども,歩いているときのまちなみとしては,町家的な雰囲気というものが維持されていくという方向でやっていく。
○この場合は高さの規制はしないので,様々な形で規制はするとしても,私が一番懸念している,そこで本当に職住をやっている小さな事業者に対する直接的ダメージが少ないアプローチである。しかも,もし守るべき文化的価値がまちなみだったら,この方が直接的に守れると思う。
○ でもまちなみのことを放っておいて,高さ規制だけすすめるというのは,現実的にはそこに住んでいる人達が住めなくなる,廃業するということを,場合によっては促進しかねないアプローチである。
○ 確かに高層マンションは減るけれども,高層マンションが建たないということが,本当に私たちが未来の京都ということで考えるべきことなのだろうかがよくわからない。残すべき価値はまちなみであって,高層マンションを建てないということではないのではないか。

(委員)
○その通りだと思う。残すべきものはまちなみと京都がつくってきた都心部の職住環境だと思う。その中には低層系のまちなみと,街区内の空地というのが特徴だと思っている。
○だから高さの規制は,はっきりいって気にしていない。むしろ空地が残るのであれば,ボリューム400は多いと思うが,ボリュームと高さは必ずしも1対1で対応するものではない。

(委員)
○セットバックというのは,高い建物を建てる限り空地をつくりましょうという考え方ですよね?もちろん道路側ですが。道路側でなくて,逆の内側にセットバックをつくることを義務づければ,高層マンションが建っても空地保存ができるということになりうる,そういう法律はないということですか?

(委員)
○後ろ側の空地を担保するのは,法的には非常に難しい状態である。そういう位置づけは,たぶんない。がんばればあるかもしれないが。

(委員)
○つまり空地を守るためには,ボリュームの問題ではなく,同じように高層マンションを建てるときのガイドラインとして,空地をとらないと不利益を被るという風にすれば,その問題の解決は可能なことではないか。

(委員)
○けれどもそれは,ある敷地の中にどういう風にボリュームを置いていくかというこということである。前を低くすれば後ろが高くなるし,後ろに空地を取れば前が高くなるし,ボコボコするようなものである。こういう絵面でやるよりも,そのボコボコのシミュレーションをする方がいいのではないか。
○基本的に町家を残すことが必要だと思っているが,町の見え方の問題の時に,高さとかよりもボコボコのシミュレーションの方が,通り景観と街区環境ということを確認する上ではいいのではないかと思う。

(委員)
○今議論されていることというのは,どちらかというとやはり地域外の人の話だなと感じる。
○うちの地域の中で,特に立場で大変難しいのが一つある。その事例をいうと,間口のけっこう広い町家でご主人も亡くなられて,何とか子どもが住み続けるためにどうしていったらいいか。お店の借り手もなかなかないわけで,何とかマンションを建てて,自分たちも住んで,子どもも安心して住み続けるために計画をされたが,今の論争みたいなことで町内に大変関心の深い人がおられたら,どうしても建物が建てられない。
○住み続けるためにはそれだけの家庭事情があって,そうせざるを得ないのができない現状。これは私たちとしては,何とか町内の方々が理解を示してあげて,ディベロッパーが来て建てるのだったら,今議論しているような話でいいと思うが,今まで住んでこられた方,特に子供さんというのは我々の子供と同じ世代で,ちょっと不自由なところがある子供たちなので,何とか親御さんとしたら安心して死ねるようにという気持ちが一心にあったが,それが途中で中断しているということである。
○そういうことを考えていくと,こんなことを我々地域の中で,いや高さを押さえるべきだ,容積はどうだ,セットバックが云々といったことの話をしていくと,本当の意味でのまちづくりとは何なんだということになり,私たちの立場としては難しい問題だなぁと思う。
○その中で折衷案を見つけだして,当然残していきたい人には我々もより協力していく。しかし,住み続けるためには自分のところの家を再生しないといけないという方にも,広い目で見ていってあげるということ。それと外資が入ってくる場合に対する地域の思いを伝えていく。これが町計画だと,私は思っている。
○そういったことでないと,これはダメだ,これはダメだということになってしまえば,せっかく仲良くいっている地域に溝ができてしまうのではないかと思う。

(委員)
○おっしゃるとおりだ。そういう意味で,すべてダメだということではなく,どういうプロセスでやっていくかというときに,協議をする時間がいる。いろいろ事情によってやらないといけないこともあれば,やってはいけないこともあって,たぶん住み続けている人の中でやっている限り,大きな問題は起こらないと思う。多少の我慢がいるが,お互い様みたいな我慢は。
○それよりも巨大なマンションのような外から来るもののほうが問題が大きいと思う。それに対する歯止めをおいた上で,協議のプログラムを一緒にセットするという仕組みが,都市計画的には可能なのではないかと思っている。

(委員)
○最初の段階で基本的な目標像なり施策を考える段階で,個別のそれぞれの事情を考えていたら,最初から考えられないと思う。
○実際には最終的に決めるときに,住民参加型の形で誰にどういう形で参加してもらうかということがあると思うが,最初の段階で我々が一般的に全体に対して何か提案しようというときに,個別案件を考慮するのはなかなか難しいのではないか。

(委員)
○わかります。誤解してもらっては困るのは,逆に高さを押さえないといけない,まちなみを守らないといけないと,市民の70%以上がそう思っていると先程いっておられた。しかし我々の地域みんなが,70%がそう思っているのか。そう思っているのであれば,市民全体の意見と相似するわけであるが,そうじゃないですよといった方もたくさんおられる。70%の意見の中で,我々の地域の中で,10%か20%かわからないが,その声が全体を動けないようにしてしまっているということもある。

(委員)
○そうですね。時間が本来6時半ということで,予定の時間は過ぎているので,もし差し障りがある方はここで退席いただいてもかまわないと思います。あともう少しだけ延長したいと思うが。
○目標像は今日,結論を出さないといけないのでしたか?どこまで進行は考えていますか。

(事務局)
○目標像については,今日のご議論をきちっと整理させていただいて,作業部会の中でご論議を深めてもらいたいと事務局では考えています。

(委員)
○ではもう少し,目標像にご意見があればちょうだいして,予定の時間を過ぎていますが,何かありましたら。

(委員)
○作業部会の立場ではなくて個人的な意見でいうと,これは開発負担金もしくはまちなみ税で全部解決すると思う。
○もう論点は二つである。京都の都心だと,町家をどれだけ維持再生できるか。再生というのは非常にクリエイティブな仕事である。お金もかかる。
○それからもうひとつは,地域ごとのコミュニティの人達がどうかかわっていけるかということ。おそらくまちなみ税をどーんと取れば,前に提案したときに事務局がシミュレーションをやってくださいました過去6年間のマンションの建設動向からはじき出して,まちなみ税を計算すると60億円いや100億はいける。
○例えばそれがあれば,この10年間で100件の本格的なオーセンティックな町家を確実に保存できる。それから,各職住共存地区の学区単位のまちづくり構想委員会をつくってもらって,そこにかなりの資金を提供できる。まちづくりの目標像は,おそらく地区によって違うわけだから,そこで本格的な自分たちの目標とは何かを,5年ないし3年以内でつくってください。そのための資金が確実に用意される。こうなれば,かなりいけると思う。
○それで例えば,ある学区が5億円資金があるとすれば,もともとあった小さな町家の裏庭とか中庭と,新しくマンションができそうなところとを考えて,マンションが建つとしても,この部分の隣と併せて地区内の中庭ができるような部分に関しては,あらかじめうちの町内・学区が買い取るから,建設業者さんはここを省いて,ここを残した計画にしてください。例えばそういうこともできる。
○この間作業部会でもいっていて,基本的に都市計画の問題ではない。都市計画ができることは容積とかボリュームを抑えるとか,高さを制限するくらいで,再生とか保全というクリエイティブな仕事をするためにはそういう次元の話ではなくて,開発負担金とかまちなみ税等という言い方をしたが,具体的なプロジェクトを,確実にこれを残すとか,確実にこういうアクションができるプロジェクトというものをいくつつくれるのかということを,京都市は決断しなければいけないのではないかと私は思う。

(委員)
○その他,いかがですか?よろしいですか?今日までで,先程も申し上げたが,全部の委員の方のご意見をちょうだいして,目標像という形で今まで議論を進めてきたわけである。なかなか収斂はしないけれども,だいたい出るべき議論は出てきたかなぁという感じもする。
○作業部会では非常に難しい仕事になると思うが,今日の議論を踏まえて何か提案をまとめていただきたいと思う。まだ議論はあるかもしれないが,時間がずいぶん過ぎたので,残りは作業部会の方から,市民シンポジウムの企画案についての説明をお願いします。

(4) 市民シンポジウムについての説明
(事務局説明)

(委員)
○それでは,まだ議論が足りないような気もしますが,これで本日の審議会を終わらせていただきます。

<閉会>

第5回審議会 傍聴者意見集(中京区在住)
○現在のような状況(既存の価値が一定程度有効性を喪失し,それに基く法体系,行政システム,経済行動の変容が求められている)であるからこそ,未来に向けた"攻め"の積極的都市づくりの方向性が必要と考える。
○意識として,21世紀型の,しかも数世紀先を見据えたような「都市モデル」を創造する気概が欲しい。その際,都市の基盤になる部分での経済活動が平均以上である,乃至付加価値が高くなければ成り立たないであろう。
○「町家」だけが京都の京都性ではなく,むしろ京都の京都性が特定の時代,絆の中で発現しただけのもので本質とは言えない,ともいいうる。
○だから,京都の京都性あるいは「都市」性(日本史の中で他の地域と対立する場所)を考察するべきである。
 ― 附加価値を生み出す経済活動の育成,刺激,誘致
 ― 附加価値の高い建造物
 ↓
 マンションにしてもソーラー発電,エネルギー再利用,先端通信回線,
 構造的に断熱,遮音が充分に配慮された建物
 ↑
 これは,行政的に誘導可能
 町家としても経済価値として存続可能であれば残れるか。
○マンションの建設は避けられないだろうし,「都市」の論理から言えば,住民(昼間人口も含め)の増加は間違いなく活性化のポイントである。
○高層は効率的土地利用から有意である。― 都市には私権の制限があってあたり前
 (中低層論はウシロ向きの思考ではないかと見える)
 ↓
○高層を前提とした新しい「都市」町並みモデルを提出する。
 ― セットバック前提で道路面には町家ファサードをつける。前面に駐車場,空間をつける
 ― セットバックなし,3階以降後退斜線,それでも道路面のファサード工夫要。
○京都市のシミュレーションイメージは面白いものと見えた。

(高知市在住)
○容積率について田の字のアンコ部分は400%だが,幹線道路沿いの700%の範囲は,一筋内側の通りまでと,広すぎるのではないか。幹線道路に面したところだけにしないと,この辺りにも町家は多く現存しているので,ダウンゾーニングするなら,要検討である。
○地価の下落している時に,ダウンゾーニングは,事業者に影響を与えるとの意見があるが,地価の高い時ならば,よけいにダウンゾーニングはできない。京都の特性,低層を守るためには,地価の低い今しかないのではないか。
○地価の下落は,相続税の負担をやわらげ,町家の継承につながるので,評価すべきではないか。
○すべての建物の更新を入れていく枠組みづくりには賛成だが,多様な欲求を満たすのは難しい。むしろ,建築確認の申請には十分な時間をとるようにし,個別建物の形態等を審査できる専門機関を設置するような方法も考えられるのではないか。

お問い合わせ先

京都市 都市計画局まち再生・創造推進室

電話:075-222-3503

ファックス:075-222-3478

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