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第4回審議会摘録

ページ番号4189

2007年11月8日

京都市都心部のまちなみ保全・再生に係る審議会 第4回審議会摘録

○日時:平成13年8月21日(火) 午後4時~6時30分
○場所:ホテル日航プリンセス京都 3階「ローズの間」
○出席者
  座長 青山 吉隆(京都大学大学院工学研究科教授)
      淺井 國勝(京都商工会議所議員)
      鵜飼 泉道(市民委員)
      岡村 周一(京都大学大学院法学研究科教授)
      栗山 裕子((社)京都府建築士会常任理事)
      小浦 久子(大阪大学大学院工学研究科助教授)
      櫻田 佳正(市民委員)
      高田 光雄(京都大学大学院工学研究科助教授)
      西嶋 直和(市民委員)
      平田 陽子(京都光華女子大学短期大学部助教授)
      増井 正哉(奈良女子大学助教授)
      宗田 好史(京都府立大学助教授)
      吉村 彰彦(日本不動産研究所京都支所長)
      リム ボン(立命館大学助教授)
      若林 靖永(京都大学大学院経済学研究科助教授)

  以上15名(50音順,敬称略)

1 開会
 (事務局から挨拶)

2 議事
(1) 資料-2「職住共存地区における近年の建築動向3(都心部における近年のマンションの供給状況について)」の説明
(事務局から説明)

(2) 第3回審議会における論点整理の説明
(委員から説明:内容は資料参照)

(3) 各委員からのコメント
(委員)
○コミュニティ・エンパワーメント・プログラムとは日本語でいうとどうい意味か?

(委員)
○まちづくりを支援するシステムである。

<委員提案>

(委員)
○本能学区におけるマンションに関する実態調査の結果について
・件数として,工事中を含めて61件が建っている。
・戸数は,トータルで1732件である。
・建築時期は,半数がバブルの時期と重なる1985年から1994年までの10年間に建てられている。その後一時低迷したが,2000年以降が20%近くなっており,マンションの件数が増えてきた。
・戸数で見ると,2000年以降が35%を超えており,大型のマンションが供給されるようになってきた。
・所有関係は,賃貸が全体の73%と多い。
・戸数で見ると,分譲が1/3強を占めている。
・地上階数は,当初4階建~7階建が半分を占めていたが,2000年以降10建以上のマンションが出て,戸数として10階建以上が5割を占める状況。
・戸数の割合は,19~39戸くらいの小規模なマンションが多い。
・ファミリーとワンルームの関係は,件数としては半々で,戸数としてはファミリーの割合が50%を超えている。
・分譲,賃貸の戸数を調べている。5ページ以降は省略。
○職住共存地区は都心部であり,多くの住民は商業地,業務地としての魅力とポテンシャルに魅力を感じており,直ちに住居系の都市計画規制に変更していくことには,抵抗がある。
○一方では,安心して子育てをし,家業を継承して老後を迎えることのできる地域でありたいと願っている。
○都心住民の感情や関心をきちんと反映する将来の事業のあり方や,生活のあり方を明確に示しながら,それにふさわしい空間像を提供していくための取り組みが求められている。
○そうした空間像が結果的に住居系の都市計画規制によって達成できるのであれば,それに対する受け入れということもできる。
○私たちの地域としては,そういった観点で,地区計画を視野に入れて考えていけたらと思っている。
○共同住宅の共用床や駐車場部分の容積率の不算入という制度については,見直しができないか議論していただきたい。 
○都心部に定期借地権付きマンションの普及というものを推進してはどうか。定借のマンションによって,分譲であれば,10階以上のマンションでないと価格的に折り合いがつかないところを,高さを抑えながら提供する金額が同じくらいで成り立つようなことが考えられないか。
○町家について保全再生に対する補助を充実させる等,経済的な支援策が考えられないか。
○そのためには,町家の公的な定義付けが必要。

(委員)
○修徳学区には,洛央小学校の人気もありファミリー向きのマンションが非常に多く建っているが,地域住民とマンションの方々との協調性がなかなかとれない状況である。両者の調和を図るための窓口が必要。
○分譲の高層マンションのほとんどが10階建であり,2500万2600万くらいの低価格で出ているが,これではマンション業者がデザイン云々を考えてられないのではないか。マンションのデザイン等について,建築確認を取るときに行政指導する方法はないのか。
○京町屋に住んでいる方は,二つの悩みを抱えている。一つは,増改築時に係るコストの問題であり,二つ目は相続税である。やむなく町家を手放す人もあるなかで,町家を残そうというのであるなら,対応策が必要ではないか。

(委員)
○マンション対町家という形でこの審議会は動いているが,マンション以外のビルはどうなるのか。同じ対象として取り扱うべきである。
○単なる点的,一定の箇所だけの保存ということを考えていった場合,本当に成功するのかどうか。100年くらいかけてこのまちがどうなっていくか,ということを考えるくらいの思考にたたないと,本当の意味での解決にならない。
○明治維新以降,京都ブランドはブランド価値を落としてきている。この京都ブランドを発信し,本当の文化的なものが発信できるまちでない限り,京町家を思考に入れたまちづくりは不可能ではないか。
○建物はそこで生産されてくる,発信されるものによって形が決まってくるのだから,形だけ京町家を残そうといっても発信されるものがなければ,かけ声だけで終わる。
○そのためには,できるだけローカルな建築基準法が必要である。
○国の法律によってどこまで縛られており,行政の条例によってこの辺までは変更できるといった柔軟な対応が可能なのか,不可能なのか。それを可能にしていかない限りまちなみは残っていかない。
○町家を残していく考えであるならば,町家を残す努力をしている人たちに対して経済的な負担の軽減措置というものを行っていくべきである。
○木造建築と現代建築がマッチしている部分と,違和感を持つ部分がある。大きな田の字の中にある歴史的建造物のかなりのものが洋風建築であり,実はマッチするものもある。単に町家に固執した形で考えるのではなく,建物の外観から与えられるイメージというものを,もう一度トータルとして考え直してみる必要がある。
○道に面する部分の議論として,2階建てで揃えるとか,セットバックの禁止とか,道路の車線緩和の見直しなどがあるが,これらは内容的に一つのものである。現在のセットバック方式というのは,下げれば高いものが建つ,高いものを建ててくださいという発想になっている。京都のまちなみというものは,一定の幅のところに顔をつきあわせながら基本的なまちの構造が成り立っているという観点から見直す必要がある。
○今の時代に,駐車場は絶対必要であるが,駐車場そのものもデザイン化されたものとして,どういう形でまちに作っていくかということも考慮しなければならない。本能寺の例が参考になるのではないか。
○木造建築の維持については,公的,ないしは準公的な形でサービスできる,そこへ連絡すれば調達の方法の相談にのってもらえるといったものがない限り,単に保存しなさい,残しておきなさいだけではどうしようもないという現実に来ている。
○職を持つ人がこの町に住まない限り本来の意味でのまちづくりにはならないということを大前提としている。一定の職種が一定の範囲に住むとするならば,当然そこに一つの風が吹いてくる。その時初めて職住共存というものが生きてくる。一つの職業的なものを今後作っていく,そういう行政指導も必要ではないか。
○単に建物の外観が京町家となっているだけではなく,その建物が吹き出す風,そこを歩いている人たちが風というものを感じられるような施策,思考を意識する必要がある。
○点的保存は可能であっても,それだけでは結果的には悲惨な状態をもたらすのではないかというのが,ここ十数年来の私の基本的な考え方である。

(委員)
○土地の価格というのはここ10年ほど公的評価の中では,ずっとマイナスを続けており,まさしくキャピタルゲインが得られる時代から,場合によってはキャピタルロスが発生する時代に変化している。
○一方,土地の価格形成要因の中で,容積率は土地の価格と密接な関係があるということは,いろいろな地域で実証されている。京都の田の字の中においても,とりわけ400%の容積を指定しているところでは,ダウンゾーニングは土地の価格に大きな影響があるだろう。
○容積率,或いは高さの限度について規制を強化すれば,結果として提供される床面積が小さくなるので,土地の価格は下がって行くであろうということが一ついえる。
○どういう方たちに影響があるのかを見ると,現にそこで生活している方,営業されている方,或いはこれからもずっとそこに居続けるという方。2番目としては,いろいろな事情でそこから出ざるを得ない,あるいは不動産を担保にして金融機関からお金を借りておられる方,土地を財産として強く認識されている方。3番目としては,これから新たに入ってくるであろう方。
○ずっと住み続ける側にすれば現在の環境を守るということで,むしろ容積率を下げて150%に近いようなものでも望ましいであろう。その結果土地の価格が下がってもやむを得ない。キャピタルゲインも見込めない訳であるから,税金その他も下がるのであればその方がいいだろう。
○2番目の人にとっては,そこから出で行くというのであれば,売却価格が下がるというのは困るだろう。
○3番目のグループの方にすれば,購入価格が安い方がいいのは当然であるが,容積率が下がれば,開発業者にとっても採算が合わなくなって,供給物件が減少してくるということで,これが分譲価格の低下に必ずしもつながるかはわからない。
○容積率が下がって地価も下がるということが一般的にいえるといったが,反面低層のまちなみということで景観がまとまって環境が整備されるということであれば,地価にプラスに働く要因も考えられる。
○現状で低層の建物が多く残っている地域については,容積率を下げることで環境を守るというのも解決策の一つである。
○一方,田の字の中でたくさん点的にもマンションが建っており,これからまちなみを整備していく中で,すでに建っているマンションを無視するわけにもいかない。
○建て替え時期になっているマンションについては,資金の積み立てが不十分であるということで,法定容積率に余裕があるマンションであれば,余剰容積が期待でき,その床を売ることで建設費に充当できるということも一回限りでは出来た。
○職住共存地区で目一杯容積を使って建っているものについては,例えば200%にダウンゾーニングするとすれば,床面積を半分にするか,半分の世帯がそこを建て替えるときに売れなくなるというようなことも生じてくる。
○ダウンゾーニングというものが,そんなに簡単にいかないのではないかというのが私の素朴な疑問である。

(委員)
○御池と四条の間,烏丸と堀川の間の幹線道路に面していない町内について,まちなみの調査を行った。
○低層建物が3割もあるのだからすごいという実態であったが,ただ,実際に見てすごい町家だなというのは少ない。多くは改造されていたりとか,看板がついていたり,見た目は町家と見えないものもかなり存在する
○その中には,保存とか,保全とか対象とされているものとはかなり違うかもしれないが,町家が持っていた生活,空間の特徴を維持しているものがかなりあるというのが実態である。
○室町通りは4~5階建のビルのまちなみが出来ている。新町通りはかなり町家らしいものが残っている。油小路通りは低層木造が多く,その中にぽつぽつマンションが建つ。問題となるのは6階以上の建物の割合であり,町内に占める割合は低いか゛点在しており,まちには無関係に表れてくる。点在するだけに扱いが悪いのが今の現状である。逆にそれも面で考えるのが一つの方法ではないかというスタンスで考えてみたい。
○町屋に住んでいる人は,普通の家と思って住んでいるのであって,町家だと思い,残さないといけないとか,何とかしないといけないとかではなくて,自分が相続するとき,建て替えや修理の時になって初めて困る。普通に住んでいる人が普通に住み続けられるというのも一つの形ではないか。
○一方で,町家を改造してお店にするなど,人が集まってきたり,活性化していくような形で残るのであれば一つの方法としていいのではないか。
○マンションについては,人が増えるということで肯定的な意見が多かった。ただ,10階建とか,大きなマンションについてはしっくりこない。特にそういうものについては,周りの環境を収奪した中で,一つの環境をつくっているわけであり,どうしても新しいところは,空調の廃熱で庭の木が傷んだり,隣同士の関係が変わってきている。
○一番大きなマンション問題が,外部資本による売り逃げ型マンションである。地元の人が自分で作り経営されている場合は,話が出来るが,分譲売り逃げ型の場合はお金の計算しかしないので,法的根拠がない限り止められない。
○これは,京都だけの問題ではなく,日本中の環境の安定していた地方都市,ある程度まちなみが安定していた都市の共通する今の問題ではないかと考えている。
○今,土地を動かして採算が合っているのはマンションだけであり,多くの場合マンションが供給されて土地が動くという実態もある。これをどうするかはコミュニティエンパワーメントであるとか,地域像をつくるといったことを超えて難しい。
○今すぐ良いアイデアが浮かばないなら,短期的凍結のルールと長期的コントロールの二段構えで,時間を稼ぐ短期対応もいるのではないか。
○大通りの中の市街地は,やはり都心であり,ずっと町の生活をしてきた。そこで都市性が変わっていくような住居系の用途は困るというのはよく分かる。しかし,烏丸や河原町の通りが都心らしい繁華街になったり,業務集積になったりということはあると思うが,大きなエリアが都心だというゾーニングをするのも難しい。
○今議論されているところは,都市性を維持した形での京都らしい次の環境をどうつくるか。それは,形だけの問題ではなくて,そこでどんな仕事をして,どうやって生きていくのか,町にとっての税収もそうであるし,住んでいる側の収入もそうであるが,いろいろな意味でどのような生き方をするのかはとても難しい問題である。
○普通の人が普通に住み続けられる,或いはそこにいることが選択できるようなことを前提とすべきである。新しいこと,仕事が流動することは非常に望ましい。お寺や町家の話にしても,中の人が入れ替わって維持されてきたものはある。そういうのが町の中の活力であり,空間を支えてきた。
○それが所有になり,相続になり,それが今問題を起こしている。つまり,全てが所有ということでお金に替わった。流動を維持しながら,そこにずっといながら生きていく人たちが折り合っていく姿が見えないということが一番大きな問題で,それをどうつくっていくかのプログラムが地域として必要である。
○もう一つは,持続する都市環境という意味でどういうような環境を維持するかは,都市計画として提示していく必要がある。
○意外に都市の構造は変わらない。家は建て変わっても道は変わらない。敷地も比較的維持されている。間口が狭くて奥行きが長いそういう構造の中で環境が維持されてきたのは内部に空地をもって,というある種の構造が都心の中の高密居住,あるいは高密度な都市環境を維持してきた背景にあるのではないか。容積率がおそらく200%くらいの中にあったのではないか。
○実際400%で仕事もしているし,生活もしている。このあたりのギャップをどのように埋めるかが大きな問題である。
○いくつかの選択があって,下げるのも一つの選択である。
○もう一つは通りにセットバックしないで奥に空地を持つという構造で誘導できないか。奥に持てば当然前に出て,前に出れば斜線がかかってくるので,ある程度収り,容積もそんなにも使えなくなる。高さの自由度を持たせて空地を抜くことによって,隣接関係を維持していく。これまでの規制手法と違うコントロールを考えてもいいのではないか。
○まちのコミュニティ単位の調整も変わっていく。かなりいろいろなところでの調整がいる。長期,短期的に考えて時間を稼ぎながら,長期的なビジョンを持つ。それに併せて都市計画で,面でやってもいいのではないか。その像を造っていくのにコミュニティの調整,共有化プロセスのようなものを支援していく。
○ただし,今動きが早いので,時間的なことをどう考えるかを頭に置かなければならない。

(委員)
○ありがとうございました。続きまして増井委員お願いします。

(委員)
○私は,歴史的な経過の中から気づいた点について述べる。
○かつて美しい姿とか,うまくいっていた姿があって,それが美しくなくなっている要素が出て来るということは,どこかかつて美しいものを生み出していたメカニズムが狂っている。それは何かというところから考えてみたい。
○もう一つは,容積率とか大きな枠組みを決めていく一方で,審議会の提言として,ボリュームだけの話ではなくて,どちらかというと細かいデザインの話,方向付けの話とうまくリンクさせていく提言にしていただきたいということに絞って述べたい。
○まず,この歴史的なまちなみを造り出してきた要因の一つとして,住んでいる方々の環境管理の仕組みが,かつて機能していたのではないかと考えられる。
○それは,町内という共同体があって,お互い助け合ったり,戸籍管理などをされていて,建築都市景観に係わる部分を考えると,町家のデザインとか,隣り合う者同士の権利関係の調整などを,町内のレベルでやっていたということ。つまり小さな単位でいろんな環境をコントロールする仕組み,常に自分たちが近隣の環境に係わっていく仕組みがあったといえる。
○例えば,土地の分筆,合筆の規制であるとか,軒高の調整,通りに面して何を建ててはいけないとか。ある町に行くと,格子のデザインも決めている町もあった。
○こうした町内のような小さな単位で行っていた環境のコントロールの仕組みは,建築基準法など国レベルのものに持っていかれた部分がある。
○例えば,隣に困った建物が建った時,文句をいう先は,市役所の窓口しかないという状況にある。自分たちの環境が,法制度の中で手の届くところにないことに問題点を感じる。
○町中に住んでいる人の価値観が多様化し,価値の共有が非常に難しい中で,あえて京都は,価値観の共有が出来るまちであると考える。
○例えば,他都市のいろいろなまちなみを見ていくと,土地の形状も同じだし,気候風土も同じで,環境管理のルールも同じであるのに,全然まちなみが違う場合がある。本当にまちなみを作っていくということの背景は,どちらかというとそこに住んでいる人々の気風,好みによる要素がとても大きい。審議会でいわれている価値観の共有が,まちなみ形成に欠かせないということがよくわかる。
○他のまちでは,実際にいろいろなルールづくりをしていく中で,このまちの町家らしいデザインは何かという時に,非常にガイドライン化していくのが難しい。しかし京都の場合は,京都らしさについて共通理解が得やすいのではないか。
○例えば,町家再生のあり方をみても,実は,軒庇の扱い,伝統的な分節線の活用は,いろいろな建築家が試みている事例に共通する部分がある。それは,京都のイメージがかなり共通する部分が既にあるからではないか。
○このあたりでいくつかの仕掛けを作っていくと,価値観の共有みたいなものが出来るのではないか。
○こうした観点から,小さな単位で環境管理する仕組み,価値観を共有していくような仕組みについて4つ提案したい。
○1つは,より細やかな単位の環境管理の仕組みを整える。これは小浦委員からあったが,町という単位がふさわしいのかの議論は別として,町レベル,街区レベル,通りレベル,学区レベルといった単位が適当ではないか。
○新築,改築に当たっては,そのまちの特性をいかに生かすか,町の景観にどうなじむのか,というスタンスで建物を建てていかなければならない。ところが,そういうものがどれだけ建物のデザインに配慮されているかということは,やっているようでやっていない。そこで,隣の建物を図面化する具体的なプロセスを義務づけてはどうか。環境管理のデータをストックしていくことで,まちの将来像を考えるための図面集ができあがる。設計者にとっては,町家を測ったり,近隣の屋敷構えを勉強したりするかっこうのデザインのトレーニングなる。
○「祭礼時の利用と演出を考えたまちなみをつくる」というのは,これも価値観の共有するための一つのアイデアである。まちなみを考えるときに,どうしても日常的なユーティリティや商売上の便利さなどが大事になり,便利なように作っていく。ところが,非日常的なところが,具体的にいうと祭りの時にどんなふうに使うかというところについては,将来的な景観イメージについての価値観を共有するときには,大きな手がかりになるのではないか。
○一般に祭りの時は何もないところにいろいろな装飾をするということで成り立っているように思われるが,祇園祭の場合は,背景になるまちなみそのものに価値があり,実はそれを非常に良く活用している。例えば,町家の軒庇線とか通りに対する開放性が随所に生きている。これは,都心に建つ建物の設計に当然配慮するべきで,意識的に盛り込むことも出来る内容である。非日常的であるからこそ,建物の意匠に盛り込んでいけることもあるような気がする。
○最後の一点であるが,まちなみの定点となる町家というものの保存対策は,いろいろな生産技術とか材料の提供とかも必要であるが,とにかくデザインの定点になるようなものを残す。つまり,中高層の中に一つでいいので自分たちのデザインの手がかりになるものを残すという考え方があっていいと思う。

(委員)
○大阪で建ぺい率を基準法以上に建てられる方策という手法をとって,古い家屋の建て替えを促進するという方法がとられた。
○普段,古い木造家屋の建て替えであるとか,増築であるとか改修であるとか,いろいろなことで法の壁を痛いほど感じている。
○ダウンゾーニングについては,使われていないのだったら少し低くしてもいいのではないかと基本的には思うが,田の字の中心部だけの問題としてとらえるのではなく,他の地域とのタイアップがないと,実現は難しいのではないか。
○この地域が高度集積地区で,その中で仕事もし,住まい,文化も発展させ,いろいろなことを全てこの中でやっていこうというのは,人間の動きの中では無理である。
○この地域の中で伝統産業に携わっている方の動きとして,三条通りを下がったところであるが,ショールームと会社の母体,それと手作業による見せ場みたいなところはこの地域の中で,大きな作業に関しては竹田駅の近くでやっている方がある。竹田駅と四条烏丸は20分余りである。
○車というのは高い税金を納める土地の中で,車に税金を納めるということは不合理なことなので,出来るだけ公共の乗り物を使い,合理的な動きをする必要がある。循環バス等を使ったり,福祉施策とか緊急用などに有効に車を使わないといけない。
○容積に関しては,南部の京セラのビルの建っているあたり,パルスプラザの見本市会場があるあたり,あのあたりと四条の烏丸あたりを,動けば30分足らずで動ける場所であるから,それをタイアップしながらのダウンゾーニングを考えていかないといけない。
○今すぐにとは行かないので,小浦委員がいったように,凍結とはいわないが計画は長期的な展望と短期的なものとに分けて考えていかなければならないと思う。
○長期的には,エコロジーというエネルギーの問題,木造の家屋がどんどん潰れていくのであればゴミの問題,それから,屋敷やお寺がなくなることで失われる緑の問題,これら全て含めて都市の問題として考えて行かなければ問題は解決しない。
○それには,恩恵を被る人からの収益というものを,各町家の保存とかを個々に手当をするのではなく,環境税みたいな使い方を長期的にしていかなければいけない。
○風致地区に関しては,この地区には関係ないが,町屋の隣接している景観の問題は風致的な施策の中で全市的に取り組んでいかないと解決しない。今風致は,50坪程度の敷地が連なっているところでも,厳しいところは30%の建ぺい率のところがある。現実離れしたことをきちんと現実に即した常態で見ていかないといけない。
○もう一つは,当面すぐに今の基準法の中で消防法の中で出来うることを考えていかなければいけない。
○今木造建築を再利用していくのが大変高くつくといわれるが,そんなことはなくて,ビルを建てる方が高い。木造建築は大変なパーツで出来ているが,京都の家屋で豪華な材料を使って建てているのはほんの一握りで,一般の住宅は大変安価に建ったものである。それをパーツ毎に取替えたり修理をしていくのが高くつくというのは,放置をしているからであって,恒常的にメンテナンスをしていけばそんなに高くつくものではなく,大変合理的に出来ている。壊したほうが安くつくというのは事実ではない。
○今あるものを大切にメンテナンスしながら住み続けていくほうが資源的にも安価であるし,個人的に出す費用も安くついている。そのあたりの問題意識をきちんと明確に数字にして表すシステムが必要である。
○今の木造住宅については,材料もたくさんあるし,職人がたくさんいて,木造住宅を支えている。人的なメンテナンスの組織は他の都市に比べるととても充実している。底力の産業が充実しているので利用しない手はない。役所の建築に携わっている人たちは,法的規制のフォローをしていただきたい。今あるものを大事に使い続けていくことと,いい木造の住宅を建てるには,建築素材の選択。町屋に住み続けていくための方策。
○マンションの問題では,住まいだけであるなら住居の専用の地域で考えればいいが,そこに住む人がいろいろなコミュニケーションをしながら住み続けていくには,建物の美的なものと同時に用途的な面も重要となる。
○今度,御池烏丸の西に駐車場を一階に持つマンションが出来るが,私は,狭い京都のマンションであっても一階がガレージになるというのは形状がどんなに美しくても用途的には好ましくない。人が集えて,ウィンドウがあって,ショッピングが出来て,お茶が飲めて,いろいろな生活のにおいがしたり,という場所であるべきではないかと思う。
○このため,事前協議の段階でもう少しみんなの意見が建物の中にはいるシステムというのを作っていくべきではないか。それなどは,法令を変えたりするものではないので,ソフト面で対処出来ることである。こういうものは短期的に考えていかないといけないものである。
○その窓口には,役所の行政マンは行政の立場で法を守ることも大事であるので,民間の人を入れてそういう組織を作っていただけると,柔らかい指導が出来るのではないか。形状についてもみんなで考えていくシステムなどは,早急に出来ることである。

(休憩)

(委員)
○前回いただいた3人の先生の意見も踏まえて意見をちょうだいしたい。

(委員)
○実際,今町家を残していく,再生して利活用していく時に考えられるサポートのメニューとはどういうものがあるのか。文化財行政でどこまで可能で,どういうところがバリアになっているのか。また,税制ではどんなサポートがあるのか。

(事務局)
○町家については,京都市が11,12年度に調査してた上京区,中京区,下京区,東山区の32,000件の内,28,000件が京町家という結果が残っている。
○保全再生のためにどうするかということについては,平成12年5月の京町家再生プランの中で,21のアクションプランを具体的に提示をして,その取り組みを進めている。具体的には,町家を残していく上で一番大切なこと2点について取り組んでいる。
○一つは,町家を貸したい時,どのような不動産業者に頼めばいいのか。どういうシステムがあるかについての所有者の不安があるので,これについては,11,12年度の中で賃貸借システムということで確立している。
○もう一つは,町家をすぐに工務店が取り壊せばいいではないかとか,修理が高いといわれているが,これについても改修システムという形で,この工事ならこれくらいかかるということを12,13年度の中で整理をしていきたいと思っている。今,京都市景観まちづくりセンターで行っている。
○税制上どうなのかというと,すでに第2回審議会の資料で示したように,文化財の場合は固定資産税の減免をしている。

(委員)
○大きくまとめると,対策はどうしているのか

(事務局)
○町家がたくさんあるが,個人所有でない町家は別にして,個人が持ってる町家についての税の減免の問題とか,助成の問題について小分けして説明する。
○基本的には個人の財産に対しては助成は出来ないということが,今までの行政の考え方である。ただし,個人の財産に対して行政的に何らかの一定の規制をする場合は,税の減免とか,助成等をする場合がある。個人の財産に対して自由を押さえる場合は,自由を押さえる強さによって,助成の仕方の濃い薄いが決まる。一番の典型が,国宝や重要文化財であり,税の減免の場合もあるし助成の場合もある。
○今京都市内の場合だと,国宝並み,国の指定文化財,京都府の指定文化財,京都市の指定文化財,或いは国の登録文化財,府の登録文化財,市の登録文化財があるし,一番ゆるいものとして京都府の歴史的建造物がある。これらは点的なものである。
○面的には,伝統的建造物群だとか,京都市の中で独自に指定している歴史的景観保全修景地区の指定などがある。
○今回国の方で初めて,震災対策として,個人の財産であるが一定の助成をしようという発想が,来年度予算に向けて出ている。これは国レベルで考えると,初めての規制の強さに係わらない公共目的による助成制度の考え方である。
○町家に対しての助成は,規制の濃淡,強さ弱さに応じた助成が今までの基本的な考え方である。京都市は,今28,000件くらいあるが,現段階での指定,登録は1,000件くらいある。
○歴史的景観保全修景地区の地区指定を今回新たに,1地区,界隈景観形成地区を新たに3地区指定する予定にしている。歴史的意匠建造物の指定もやろうとしている。それでも1,000件を超えていくらのばせるかくらいであり,28,000件に比べると数少ないものである。
○個別の家屋に対する減免だとか,助成だとかということではなく,現に修繕をされるときのいろいろな助言だとか,或いは賃貸に出すときにいろいろ不安だったのをきちんとしたシステムで提供するとか,相談に応じる等の対応が中心にならざるを得ないと考えている。28,000件に対して全部を助成するのは無理である。 

(委員)
○基本的には,町家は文化財ではないのか。

(事務局)
○町家という定義そのものは特にあるわけではなくて,京都市が今回京町家の再生プランを作ったが,そこではじめて一定の定義をしたくらいである。町家については,国の法律や市の基準などによる公式な定義はない。

(委員)
○文化財行政の枠組みと,景観行政・まちづくり施策の枠組みとの仕切は,どのような調整があるのか。

(事務局)
○文化財行政の仕切が,国宝,重要文化財関係と,指定あるいは登録の国,府,市の文化財。それと伝統的建造物地区が文化財的な枠組みである。
○京都の場合,それだけではまちなみがとらえられない。このため景観行政的には,個別では歴史的意匠建造物があり,面的では歴史的景観保全修景地区があり,祇園の南側で地区指定をしている。さらに,界隈景観形成地区があり,これは美観的な観点から指定して守っていこうということである。これらは京都市独自の条例に基づく制度である。

(委員)
○例えば,町家を持っているとすると,今いった文化財の枠組みと,まちづくりの制度があるなかで,どういうメニューを活用すればいいのかといった相談の窓口はどこになるのか。

(委員)
○文化財と考えない方がいいのではないか。

(事務局)
○通常人が住んでいる町家の場合については,文化財指定の場合は非常に厳しい規制がかかるので,文化財よりも景観的な側面が強いと思われる。
○どうすればいいのかといった相談については,景観まちづくりセンターに行ってもらってもいいし,本庁の中にある都市計画局景観部に来ていただいてもよい。いずれにしても,相談や案内は出来るようになっている。

(委員)
○増井先生の確認であるが,文化財と考えることによって守れることと,都市計画規制とか景観条例による位置付けによって規制誘導できることと,そのレベルは2つあって,今のところ文化財であれば,一定守り方として税制なり助成という形があるが,都市計画的な規制で行く場合どのような可能性があるのか,という質問ではないか。
○みなさんのイメージとしては,文化財としてとらえるのではなく,都市計画的に面的に議論するということではないのか?

(事務局)
○文化財的な考え方というのは,現在有るがままの姿をそのまま残すということであり,われわれの景観的な考え方の場合は,修繕も建て替えもやろうと思えば出来るわけである。外形的,中身的,生活も含めて出来るだけ今の現状のものを再生し,残しながら繋げていくというイメージでいる。
○歴史的景観保全修景地区の場合は,潰して同じようなものに建て替えていただければ,補助金を出すし,一部の修正の場合でも補助金を出す。その時に,今ある形状を変えると困るということである。今ある柱を取って,そっくりそのまま新しい柱に変えても補助金の対象になる。ただ,文化財の場合はそうはいかない。

(委員)
○他にも意見をお伺いしたいのですが。何かありますか。

(委員)
○下京区は超高齢化社会であり,私の学区だけでも800世帯のうちの80~90世帯が独居老人となっている。消防団とか自主防災会で調査しているのでそれくらいの数がある。
○独居であるので,けがや病気をされるわけであるが,家族は地方など遠いところで住んでいるので,引き取ったり,病院生活されたりする。
○独居のお年寄りは町家に住んでいる方がほとんどであるが,空き家になるとどうしてもお化け屋敷のような状態になる。そういう時の対策は,行政としては何か考えているのか。

(事務局)
○今回,賃貸借情報システムを確立したが,そういう空き家についても利用願える部分があれば,町センに行ってもらい,システムを生かしてもらえればよい。
○ただ,個人の資産の中で,空き家について行政がどう取り扱うかについては,今のところ対応策はない。

(事務局)
○われわれが分析したところでは,一定期間貸す時に,通常の不動産業者にお願いすると返してもらう時にも難しい問題があって,その辺についても景観まちづくりセンターで検討したり,分析したりしているので相談していただくとよい。

(委員)
○今の話の中で,京町家の定義というものの共通認識を持っておきたいと思うが,そのあたりの認識はどのようにすればいいのか。

(事務局)
○実は,一言でいえる定義は難しい。平成9年,10年度に,京町家の調査ということで32,000件の調査を行ったが,その時,戦前の木造住宅で,ある一定の形式を持っているものを町家として定義した。
○具体的には,平入り,軒先から入る形式であって,木造平屋建てもしくは二階建て,例外的に戦前の一時期三階建てが増えた時期もあったがそれもカウントしている。そのあたりの様式の整理は,初回のパンフレットでビジュアルに見ることが出来る。次回に再度お配りする。都市づくり推進課にきていただいても,お渡しできる。

(委員)
○その場合に,住んでいる,住んでいないは?

(事務局)
○外観調査をしたということで,それが空き家かということについては掌握していない。

(事務局)
○いずれにしても,法的にあるいは公的にこれが町家である,これが町家でないと提言しているものはまずない。32,000件を調査した時に,町家がこれだけあるという分析をしたが,そのときにどこかで線を引かないとどれだけあるかがいえないので,調査の結果をまとめて町家再生プランを整理する段階でその限界を定めただけである。
○今後何らかの政策をする時は,きちんと定義する必要がある。

(委員)
○栗山委員から御池にマンションが出来,一階に駐車場が出来きることの批判があったが,これについての報告がある。
○まず,御池通りというのは京都市長が自ら,御池通りシンボルロードを提唱されて,大きな木を切られて,広い歩道を作られて,立派な石を張られ,道はきれいになってきている。我々の地域整備開発委員会としても,御池通りは京都祭,祇園祭,時代祭の時に晴れの舞台になる通りであり,将来はパリのシャンゼリゼ通りのようになればという構想すら持っている。
○そこに,マンション業者がマンションを建てるということで京都市も指導したが,法律いっぱいに建てる。そして,一階に駐車場を作るということで,これを耳にした委員が,マンション業者に掛け合ったり代表者に話をしたりしたが,なかなか対応していただけなかった。
○多々意見が出でいるが,行政の指導というのは強制力がない。先ほどから短期的に凍結する等の意見が出ているが,やはり法整備をしたり,基準法については,細かくローカル的に定めて,シンボルロードにふさわしい建物が周りに建っていくようにしていただきたい。
○我々委員会としては,地域においてそういうプロジェクトが起こる場合は,事前協議という話もあるが,これからは京都市の担当の方と建物を建てるという業者の方と会議をする。また,第三者的な者も出席する協議機関のようなものが出来ていく方向が,法整備の大前提として大事ではないか。
○御池通りは,石を張って立派なまちなみを造っていただいているわけであるから,一階に駐車場が出来て,出入りする車が横切って歩道をふさぐというようなことがあってはならない。できたら,その一階には栗山委員がいったようなショップとか,ギャラリーとかコミュニティが図れるようなものができたり,祇園祭で四条の横丁の町家で行われている屏風祭りのようなものを,貸し会場のような形で出来れば非常にすばらしいものになると思う。
○将来的には,ビルの1階にはショップのようなものが並ぶ立派な京都の代表的なメインストリートにしたい。そういうものにしていただかないと,京都市長が声高に歌われて立派な道を造っていただいても,両側に出来る建物が業者の協力が得られないままどんどん建っていくのであれば,その間もマンショはどんどん建っていくのでじれったい気もする。

(委員)
○何を議論するのか,もう少し論点を絞るべきではないか。
○今の景観の問題というのは,非常にフィジカルな物理的な話である。それを支えている経済的,社会的,コミュニティ的,いろいろな問題の議論が出てきている。それはその通りであるが,どこか軸を決めたほうがよい。どこに軸足をおいて議論すればよいのか,わかりにくい状態になっている。
○例えば,町家を残すとことを大前提にするのであれば,残し方はどうするか,どう定義づけをするか,都市計画はどうするのか,とやっていけると思う。そういう可能性があって,それについて何が起こるかという議論になる。
○都市計画でいえば,用途,形態くらいまではいけるが,細かいデザインは難しい。まちなみをどう作っていくかということで,ひとつには地域ごとに決める。これはプロセス論として,そうすると決めればそういう方法を議論すればよい。
○そうではなく,都市計画で一定京都の町中の景観をこうしたいというのであれば,それに係わるいろいろな制度上の可能性があると思う。

(委員)
○論点を整理したいと思う。
○増井委員からもあったが,文化財保護が一番古い制度で,文化財の中で重要文化財建造物指定が一番古い方法で,1975年に伝建制度が出来た。文化的でも歴史的でもない単に伝統的な建造物を群として指定するという考え方。更に90年代に入って登録文化財が出来た。
○第二の方法として景観行政というのがあって,これは条例であり,これも勿論歴史的に発展しているので,景観行政でどこまで救えるかという話はあると思うし,その先に第三,第四の方法として都市計画的な手法が考えられないかというのがこの審議会の大きな使命であると思う。
○そのために,より都市計画的に踏み込んだ制度の改革,条例という議論があるが,第三,第四の方法を考えると同時に都心の職住共存地区の中により細かく,通り通り,町内町内で考える手法がある。
○更にいえば一つ一つの建物で考えていく方法があるが,その場合,第一の方法,第二の方法を適用する,あるいは第二の方法を改善して,その地区に限定的に適用するということは常に考えるべきであるし,あり得る方法である。
○ただ,われわれの第一の使命は,第三,第四の方法がないかということを考えることである。その場合,起こってくる矛盾に対してどう対応するかということがあると思う。
○ちなみに町家の定義が話題になっているが,第一の方法,文化財の範囲の中でいったように,重文民家に指定する場合は,厳密な定義が必要である。伝建地区になってくると,町家であるかないかの定義は余り意味がない。まして景観になってくるとエリアで指定するのでその意味がない。都市計画の段階では,第三,第四の方法の中では,町家を厳密に定義することに余り意味がない。それより,京都の都心として木造の建造物が集まることによって,形成されている環境が持つ価値というものを注目するわけであるし,あるいは,低層の建物が,あるいは裏側の空地がという問題が関わってくるわけであるから,厳密に町家を考える,そこに踏み込むということは少々危険であり,本質を見誤るかと思う。
○第三,第四の方法として小浦委員がいう空地,裏側の穴の開け方を問題にする方法であるが,もう少し具体的にそこの手法を説明していただきたい。

(委員)
○今の都市計画制度の中で,技術的に空地の指定が出来るのかというと,かなり難しいと思う。
○発想だけいうと,ここの都心の経済的社会的な状況から,ある種の環境容量というか,空間容量みたいなものを決める。これは容積に繋がってくるが,その空間容量をどう配分するかがまちなみに係わってくるのではないかという発想である。
○配分の方法を,今まであれば高さの規制であったり,建坪率であったり,そういう言葉でやるわけある。そういう意味で,空地の指定をどうするかについては,唯一壁面位置指定しかないわけであり,今の技術的な中では難しい。何か工夫をしなければならない。
○特別用途地区とか,地区計画とか別の枠組みをかけてその中でできるかどうかわからないが,それを条例化する中でやらなければいけない。
○空地で動かすことによって,街区としての環境を維持するようなそういう規制が出来ないかという発想である。

(委員)
○建築的な手法の話が出ているが,吉村委員の話は性格が違っているのでお聞きしたい。
○不動産資産価値として把握しておかないと実行可能性が難しい。つまり容積率が下がれば資産価値が下がるという指摘だったと思う。町家を残して景観を良くしても資産価値というのは上がらないということなのか。

(委員)
○要するに,ボリュームいっぱいに建てたときに,どれだけの床を稼げるかという話で,その床を賃貸に回せばどれくらいの収益が上がるか,分譲であればいくらで売れるかという非常にシンプルな話である。それが容積400%の場合に出来る床面積が,200%に下がれば単純にいえば半分になるという話である。
○まちなみに環境面でプラスだと判定を下す人にすれば,容積を下げることでまちなみが良くなると評価する方もいると思うが,経済的に見ればどれだけの床が売れるか,貸せるかというだけの話である。

(委員)
○還元的な形で地価が決まるとして,まちなみが良くなったこと,景観がよくなったことによる地価の上昇分というのは,容積率を下げたことによる下落分に比べると,たいしたことはないということか。

(委員)
○それを,上回るほどのものではない。 

(委員)
○下げるということは,資産を持っている人にとっては抵抗になる。

(委員)
○下がるだろうと思うので,それについて市民的な合意が得られればいいし,得られなくても都市計画であるので,やれないことはないと思う。
○そうする場合,新しく建てるというような場合ではなしに,すでに建っている建物をどういうふうに見るのかということのほうが,むしろ重要である。

(委員)
○不適格になった時に,建て替えるのが難しい。

(委員)
○全国どこにでもその問題は出てきている。ダウンゾーニングということで,審議会を開いてやっているところが他にあるかどうかは知らないが,大抵のところは,容積を増やすことで,余剰容積,床を生み出すことで建築費をそこで生み出す,という急場しのぎでここまでやってきている。

(委員)
○長期的に見れば,まちなみが破壊されていくということは,資産価格が下がることに影響するわけであるが,短期的に動くような価値ではない。容積率を400%から300%,200%にすることは,資産価値を下げることになるだろう。
○町家では,そこでお店をやっているとか,事務所があるというケースが結構あると紹介されているが,そこはおそらく経営が大変で,金融機関からお金を借りている。金融機関はそこの事業の将来性からお金を貸さない。担保でお金を貸す。担保の最大のものは土地である。事業の先見性や価値でお金を出しているのだったらいいが,土地が担保でお金が出ている中で資産価値を一挙に下げることをやれば,職住共存地区に対して逆にダメージを与える可能性があるという評価が必要である。
○現実的なダメージ予測ということを考えないといけない。京都市における倒産を,さらに広げることになりかねない。その引き金に十分なりうる。今でもいつ倒産するかのすれすれで残っている企業がいっぱいある中で,こんなことをやられたらもう終わりという可能性は十分ある。
○私も,容積率の引き下げなしに高層マンションが急増している問題に対して,対処のしようがないのはよくわかるが,他方でそれに対応したら,逆に町家タイプの店が倒産するかもしれない。論理的にはそのような因果関係がありそうだ。
○もう一つは,町家というものがとても伝統的な建物だと思っていたら,不思議なものがあって,町家改造,町家タイプというものがあって,あれは町家なのか。つまり高層マンションだけど1~2階だけを町家型にすればまちなみが保全されるという論理が可能なのか,ということが問われているように,小浦委員の論文を読んで感じた。
○今,京都で土地を所有している人の間に,そういう点での合意はないのか。町家そのものではなくて,町家的な景観を残す方向でやっていくというのが,どんどん減っているのか,それとも現実に今でも進んでいるととらえるべきなのか。
○高層マンションもだめだけど,低層の一戸建てはもっと格好が悪いと思った。なぜここで問題ならないのか。まちなみの問題ではそれがもっとも格好悪い。町家タイプ,要素までを含めて考えた時に,もう少し発想を変えられるかという感じがした。

(委員)
○戸建てが一番ひどい。建て変わっていく時に,戸建ての奥の庭が一番減る。3階建くらいで併用住宅をそのまま建て替えて,事業しながら住んでおられるところの方が見た目は全然違いうが空間構造を維持しているところはある。
○何を残すか,何を京都らしさとするか,議論の余地があるところである。

(委員)
○まだまだ,議論はあると思うが,おそらく今まで提案していただいた方は,建築とか文化財とかであるが,若林先生,経済学的視点からなにか提案があるか。

(委員)
○今回,意見書を用意できなかったのは,結局どういう状況を作ろうとしているのかゴールがはっきり見えなかったためである。今日の議論はいろいろ刺激になったので私なりに意見書はまとめてみたい。

(委員)
○私としては,いろいろな角度から提言いただいた方が実現の可能性が出て来るのではないかと思う。岡村先生もお願いします。
 
(委員)
○さきほどもあったが,まだ課題の設定というところがはっきりしていないように思う。例えば,町家の定義も問題であるが,特定の古くからあるような単体の町家を守るのか,それとも定義には厳密に当てはまらなくても,家並みを守っていくのか,そういう点でもずいぶん違ってくる。
○今更どうしようもないところもあれば,まだまだいけるところもあるし,その点で問題の整理が必要である。
○マンションの建設についても,例えば,マンションがバラバラの形で建っているのが悪いのか,それではきっちりと整った形で建っていればそれで済む話なのか。そのあたりも関係すると思う。できれば,問題を整理された方が考えやすい。

(委員) 
○前回の提案にあったように,マンション業者と住民がその町のあり方を議論した上で,どのような建物が望ましいのかということを協働で考えていけるようなシステムが必要であり,この点をもう少し掘り下げて考えるべきではないか。
  
(委員) 
○今日非常に貴重な意見をいただいたが,まとめきれないということになってしまった。この先は,作業部会のリム委員,宗田委員と,高田委員にがんばっていただきたい。
○キーワードをまとめてみると,短期と長期,つまり短期で何が出来るのか,長期として何が出来るのかという整理の仕方が必要。
○次に空間的に,田の字地域全部に網をかぶせるのか,あるいは細かなレベルで,通りとか小さな単位で,別々の個性のあるというか,規制なり誘導なりが法律的に可能かどうか。
○法律の枠にのらないデザインだとか,空間の配分だとかをどう取り扱うか。
○資産価値と絡めて,税制の補助等についても整理しなければならない。
○100年の大系なり,短期の政策を作るにしても,田の字地域を将来どのような姿にしていくのかということを,目標像としてどういうものかを整理する必要がある。
  
閉 会

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