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第3回審議会摘録

ページ番号4186

2007年11月8日

京都市都心部のまちなみ保全・再生に係る審議会 第3回審議会摘録

○日時:平成13年6月13日(水) 午後4時~6時30分
○場所:京都ロイヤルホテル 2階「青雲」の間
○出席者
  座長 青山 吉隆(京都大学大学院工学研究科教授)
      淺井 國勝(京都商工会議所議員)
      鵜飼 泉道(市民委員)
      岡村 周一(京都大学大学院法学研究科教授)
      栗山 裕子((社)京都府建築士会常任理事)
      小浦 久子(大阪大学大学院工学研究科助教授)
      櫻田 佳正(市民委員)
      高田 光雄(京都大学大学院工学研究科助教授)
      西嶋 直和(市民委員)
      平田 陽子(京都光華女子大学短期大学部助教授)
      増井 正哉(奈良女子大学助教授)
      宗田 好史(京都府立大学助教授)
      リム ボン(立命館大学助教授)
      若林 靖永(京都大学大学院経済学研究科助教授)

  以上14名(50音順,敬称略)

1 開会
 (事務局から挨拶)

2 議事
(1) 資料-2「職住共存地区における近年の建築動向2」の説明
 (事務局から説明)

(2) 各委員からのコメント

(委員)
○マンション建設の動向について,田の字の周辺地域との比較が必要。
○職住共存地区を中低層に誘導した場合,田の字の部分(幹線道路沿道)とのギャップが気になる。

(委員)
○商業地域なので,環境を考えるよりも商売が先だという感覚でまちなみができあがっている印象を受ける。
○緑が非常に少ない,空間がない。
○幹線道路から裏道まで通るようなマンションが建築されており,裏道の住宅に関する環境が問題である。

(委員)
○上から見下ろすと,容積率制限の違いが大きく効いていた。
○通り景観(歩行者の視点)については,5階建ても10階建ても,さほど違和感はない。
○マンションのあり方(高さ,分譲/賃貸,他)について,地域のコンセンサスづくりが必要。
○地域でアンケート調査を実施した場合,マンションからの回収が悪く,地域に対しての参加意識が希薄である。
○同じ集合住宅でも,賃貸よりもまだ分譲の方が回収率は高め。

(委員)
○道路斜線のセットバック緩和がまちなみの形成に少なからず影響している。
○京都の都心のまちなみにとって,セットバック誘導が有効かどうかは疑問である。
○ある程度目線に入る高さのスカイラインを揃えるなど検討が必要
○防火地区内で町家のような平屋の木造を建てるのは,「もくさん(木造三階建て)」以外は法規制上困難
○上から見下ろして瓦屋根が並ぶ景観は,この10年くらいの間に,ほとんど壊滅的になく なってしまうのではないか。
○ところどころにある廃屋や空き家も,ここ1年の間にどうなっていくのか。
○大きな屋敷,旅館については,点での救済(風致あるいは建築協定等)が必要。

(委員)
○歩行者の目線の中で,どのくらい見えてくるかという視点に加え,街区全体の生活環境を考えたときに,どういった敷地の使い方をすべきかという視点についても検討が必要。
○通り側のセットバックによって,通りと敷地の関係がどんどん変わってきている。
○通りの見え方については,「混乱しているところ」,「高くなって揃っているところ」,「様式はバラバラだが,スケールとしてはそこそこに落ち着いているところ」の3種類ぐらいに分けられる。
○残すべき建物の保全は大前提としながらも,更新していくということ,すなわち町全体が動いていくという中で,どういうまちなみを目指すのかといった議論が必要。
○マンションを今の法規制の中で阻止するのは無理。
○都心の問題は,マンションの高さ問題なのか,敷地奥の空地がなくなるという生活環境の問題なのか,まちなみが問題なのか,職の問題なのか,そのあたりの整理が必要。

(委員)
○京都の都心には,まだまだ圧倒的な歴史的ストックがあり,かつそれに対する皆さんの愛着もあり,共通認識もあり,それを再生していこうとするアクティビティもある。
○将来像を描くときにもマンションが建ってしまったから手遅れというよりも,保全的発想に値する歴史的環境もまだまだ生きていると考えるべき。悪いところ探しに陥りがちだが,良いところ探しの発想も必要である。

(委員)
○現状に既にあるまちなみには,非常にばらつきがあることから,ブロック以上にさらに細分化して,それぞれもう少し細かい単位での価値判断が必要。

(委員)
○京都らしい環境を売物にしている開発業者が,その環境を破壊している点に矛盾がある。
○商業地域と近隣商業地域の違いに見られるように,規制内容によって地区の雰囲気が大きく左右されることから,どんなまちにするのか方針を立てて規制をかけることが大事。

(委員)
○京都のまちなかの魅力に惹かれて分譲マンションを買った人達にとっても,結果的には私たちは別にこんな京都に住みたかったわけではないのに,というようになってしまう。
○個々の経済主体からすれば自分の資産を有効に利用しようとして選んだ行動が,マクロな規模で一定期間集中的に皆が同じような投資行動をすると,最終的に皆が損をする。
○ミクロとマクロなところで矛盾がはっきりしてきている。
○土地資産を有効に使いたいと思っている人も,市民も,この矛盾を踏まえた上での議論が大事。

(委員)
○どのくらいのスピードでまちなみが破壊されていっているのか,が分からない。

(事務局)
○田の字の周囲については,一度事務局の方で検討させてもらいたい。

(3) 作業部会からの報告
 (委員から報告)

○職住共存地区の現状について
・職住共存地区はマンションが建っているために定住傾向が強いが,事業所,オフィス等の減少はまだ歯止めがかかっていない。
・近年では,併用住宅の専用住宅化,或いは住居専用のマンションが急に増加している。
・烏丸五条ブロック及び,堀川五条ブロックは道路基盤が弱く,袋路にある宅地が多い。
・烏丸五条ブロック及び堀川五条ブロックの西側については業務系用途の集積が弱い。
・烏丸五条ブロック,堀川四条ブロック,堀川五条ブロックの南と西の方向では商店街を除いて,特に商業集積がない。
・和装産業を中心とした事業所が流出していくことによって低利用地,未利用地,空き地等が数多く発生している。
○近年の建築動向について
・烏丸四条ブロックで,特に中高層化が進行している。
・町家の中に高層建築の混在する状況は,ほぼ職住共存地区の全域で発生している。
・低層の新しい建築事例にも京都の都心にふさわしいとはいえないようなものがある。
・住居専用のマンションは,高層化する傾向が非常に強い。
・職住共存地区の中では,オフィスビルは今までそれほど高いものが無かった。
・高層建築物のセットバックにより,まちなみの連続性が失われ,より高いものが建っている。
・マンションの建設により,高い建物が奥の敷地いっぱいに建つことによって,周辺の広い範囲に様々な影響を及ぼすことがあり,周辺居住者に多大な迷惑がかかっている。
・職住共存地区では京町家を利用した商業施設の増加が見られる。
・現状と市民が望む町の姿というものの間に矛盾が発生しているという点が大きな問題。
○職住共存地区整備ガイドプランを進める上での課題
(地域協働型地区計画について)
・地域協働型地区計画は策定までにかなりの時間を要する。
・小学校の跡地問題のような急な課題が契機とならない限り,住民が集まりにくい。
・地域協働型地区計画の実現が担保できる整備計画の策定には,更に長い時間を要する。
(地域のまちづくりの動向について)
・本能学区においては京都市まちづくりセンターとのパートナーシップ,協働により,地域まちづくりの取組が活発化している。
・これらの取組により,マンション住民と元々の住民との交流を進め,地域のまとまりを進め,そこから地域計画を考えていく必要がある。
・これにも時間がかかると同時に,地域の京都が誇る住民自治の伝統をどう継承していくかが課題。
(職住共存地区の職について)
・伝統産業のおかれた状況は依然厳しく,例えば産業の高度化の他,この産業が継承されていく,発展していくような形には十分なっていない。
・各方面で大勢の方々が努力しているにもかかわらず,伝統産業をめぐる状況というのは大変厳しい。
・一方,町家再生が今都心の新しい力になっている。職住共存地区内でも飲食を中心に町や再生店舗が急速に増加し,物販でも寺町通りでは町家を活かしたギャラリーが集中しつつある。伝統産業分野でも「繭」のような取組が民間主導で進んでいる。
・町家,京町家によって職を得ている,都心の職を発展させているという非常に重要なキーファクターになっている。
(京町家の保全・再生について)
・京町家は京都の町の歴史・文化の象徴として広く認められるようになってきた。
・保存と再生は現在のところ主に所有者の個人的な努力に委ねられているのが現状。
・一方で,町家の維持・再生に努力をする方を支援するという,大きな市民的取組が進んでいる。
・町家の所有者,町家を保全しようとする方を支援する仕組みは,まだ十分でない。
・京都市では平成12年五月に京町家再生プランを発表し,京町家にふさわしい賃貸借の仕組みの整理など,行政としても広範な取組を進めつつある。
○行政分野別に見た課題
(上位計画に係る課題)
・職住共存地区の土地利用方法には昭和60年の京都市基本計画以来,都心的な機能と住居的な機能の共存が盛り込まれている
(都市計画上の課題)
・整備開発保全の方針において,職住共存地区の密度構成に関わる方針を,中低層で高密度を主体とする土地利用としているものの,近年の建築動向から見て,その実現はきわめて困難である。
・容積率制度の改善,特別用途地区の類型の撤廃,権限の移動など,最近の動きを活かして,新しい仕組みを検討していくことが必要。
(文化財保護上の課題)
・文化財自体の保護に問題が生じるような建築行為が進んでいる。
・周辺の高層化に際し,景観が悪化し,その有形文化財,特に建造物,文化財建造物のようなものの周辺環境が著しく悪化している。
(都市景観上の課題)
・職住共存地区は,建造物修景地区に指定して市街地景観の向上に取り組んでいるが,届出という制度の性格上,これによって景観を整備していくということには限界がある。
(建築指導上の課題)
・建築主と住民との間で紛争が多い。
・京都市が独自に条例を設けて紛争の防止に努めているものの,建築確認という制度の性格上,また手続き上,関連の条例では限界がある。
・道路斜線規制の緩和が道路幅から見て高すぎる建築を可能にしている。
(市民総合アンケートから見た課題)
・京町家を残すべきという市民は既に8割に及んでいる。
・職住共存地区の高さに関しては,もっと低い方が良いと考える市民が6割に至っているが,都心地区,中京・下京では,こうした意見が比較的少ない。
○審議会での議論の前提として合意すべき事項
・職住共存地区には,まだまだ守るべきものがあり,守るための努力をみんなでしようということ。
・マンション建設のスピードに対して,我々の取組をスピードアップする必要があるということ。

(4) 休憩

(5) 意見提出委員からのコメント

(委員)
~職住共存地区整備ガイドプランの促進を容易にする土地利用計画規制内容の見直しについて~
○背景
(都市計画マスタープラン素案について)
・京都市都市計画マスタープラン素案で,職住共存地区に関する内容
①町家の保全・再生と新しい産業振興,産業情報発信に向けた活用,室町通り周辺における和装・ファッション文化の情報発信地などの整備
②三条通や新町通などを軸とする職住共存地区におけるのんびりゆったり歩けるエリアの形成,電線の地中化,緑化や舗装の整備
③景観やコミュニティとの協調,調和に配慮しつつ,中低層の土地利用を誘導
④京染め友禅の伝統産業等と居住が共存する職住共存の土地利用を誘導
・この取組は,行政のみならず,幅広い地域住民,市民が主体的に参加するまちづくりの流れとなって,既に中京・下京区で展開している。
・これらを進める上での最も困難な課題は,③の景観やコミュニティとの協調,調和に配慮しつつ,中低層の土地利用を誘導する点。
(近年の建築動向について)
・未曾有の町家ブームの中で,京町家を再生・利用した住宅・商業施設が著しく増加している一方,その再生が進みつつある都心であるが故に,住宅需要が発生し,またマンションが建っている。
・この矛盾が景観やコミュニティとの協調を進めていくことを困難にし,住民のまちづくり活動を無効に,或いは地域協働型地区計画策定を困難にするような結果を招いている。
・この矛盾を解決しない限り,地域のみなさんの力は活かせない。
○目的
・職住共存地区が,京都らしい地区であるために,町なかの暮らしを守る。
・町家など多様な資源を活用した産業振興を図るべき場所として,町家を活かす生業,商業のにぎわいづくりに勤める。
・中低層中心のまちなみを継承し,町家が活かせるような,町家が生きていくような,町家を重視したまちづくりを進める。
・京都市の経済の発展のためにも,都心居住を促進し,産業を高度化させるだけでなく,21世紀にふさわしい都市・京都の再生策として,職住共存が提案されなければならない。
・住み続ける人々とその生業が成り立つまちは,地域の個性を活かし,多様な資源を十分に活用したものであり,このために町家を活用したまちなみを整備する必要がある。
○具体的な提案の内容
(土地利用規制の見直しの必要性について)
・容積率400%が28年続いていながら,このエリアでは,150%くらいの容積しか使われていない。
・今の容積率400%というものが,本来市民が望むものにはなっていない十分な理由があり,見直しが必要である。
(土地利用規制のあり方について)
・現在起きている紛争の回避として,地域住民の過半数が望む低層を基調としたまちなみの維持を明確化する
・地域コミュニティとの調和によって進める地域協働型地区計画づくりを容易にするために,より多くの地域住民・地権者が望む低層を基調としたまちなみを制度的に裏付ける。
・京町家との調和を基調とするまちなみ整備を促進するための低層化を図る。
・街路の公共性に注目し,まちなみと街路空間をより町家を重視した形に誘導する。
・その結果として,通り側の圧迫感を軽減させ,祇園祭の似合うまちなみを整備する。
(規制内容について)
・建築の形態,特に,高さ,ボリューム,容積率,壁面位置についての新たな規制が必要。
・そのため,高度地区31mのところを20mに,容積率400%のところを300%以下,壁面位置,建築線に関しても厳しく指定する。
・この点に関しては,おそらく過半数の住民の合意が得られるのではないか。
・建物デザイン,意匠についてガイドラインを設け,町家を重視したまちなみ景観の形成に方向性を持たせる。
・一部の地域については,美観地区の指定も検討し,デザイン面でも一定のレベルを確保することを検討する。
・美観地区については,一層の規制になるため,より厳しい規制に対する理解が得られた地区から適宜指定していくことが考えられる。
・用途地域を見直し,商業地域を近隣商業地域に,あるいは特別用途地区とし,その規制を詳細に検討,指定していくという手法も考えられる。
・一方で,優良な建築行為に関しては,積極的な誘導を図るべきであり,町家を活かした建築行為の誘導に向けた何らかのインセンティブが必要。
・建築行為については,事業者,建築主と地元住民との協議の機会とその進め方の仕組みを用意し,協議がうまくいくような配慮が必要。

(委員)
~まちなみ税の導入と都心部の資産保全について~
○背景
・タウンウォッチングをして,京都のまちなみは,正直醜いなぁ,と感じる一方で,町家はすごく輝いていて,町家の偉大さも両方感じる。
・勢いとして,まちなみが非常に混乱していることの方が圧倒的にパワーとして大きい。
・そのまちなみを壊してきたのは京都市民自身であるが,違反建築でなければ,合法的な経済活動である限り,責任も問えない。
・かつては,容積率が含み資産であり,ダウンゾーニングによって含み資産が減る,つまり財産が保全できないという構図があった。
・いつの時代もどんな人にとっても自分の資産を保全するというのは最大の関心事であり,生活がかかっているため,そこに何らかの支援策やシステムをもっていかないと,まちなみはなかなかよくならない。
・個人の財産権を侵せないということが,近代都市計画の前に大きく立ちはだかってきたことで,これは京都だけの話ではない。
○まちなみ税導入の目的
・まちなみ問題は単に都市計画的な問題だけではなくて,環境問題として捉える必要がある。
・現在仮に容積率がいくらあっても,今の京都の市民,事業者たちがそれを全部使い切れるかというと,現実はそうでもない。
・マンション業者だけが,都心部の容積率を最大限に活用してその恩恵を受けている。
・立地的にも文化的なインフラという意味でも京都の都市は魅力があり,これが壊れていくというのは環境問題なのではないか。
・各自治体でそれぞれの地域の実情や環境に沿った独自の目的税を,環境税として導入していくのは,これからのひとつのトレンドになる。
・環境保全のためには法的手段(規制)と経済的手段(税金)の両方が有機的に結合すれば,うまくいく。
○まちなみ税制度の概要と効果
・例えば容積率200%を超える建築活動に対しては,税金を取る。
・マンションを例に取ると,分譲価格の10%を開発負担金的な環境税として取ると,一戸あたり3,000万円のマンションで300万円が開発負担金になる。
・マンションを購入した人たちにとっては,自分たちのまちのまちなみが保全されるとともに,自分たちも,とりあえずは経済的に貢献していることになる。
・町家を真剣に維持していきたいと思っている人を経済的に支援できれば,それ自体が資産保全になっていく。
・京都ブランドという京都が持つ目に見えない資産を最大限に活用して,これで独自に財源を得ることができるのが京都である。

(委員)
~価値共有型規制・誘導システムとコミュニティ・エンパワーメント・プログラムの同時的実現について~
○背景
・ダウンゾーニング的な手法についての議論は,ずいぶん以前から行われてきたが,これまではリアリティがないと言われてきた。
・ダウンゾーニング的な手法がリアリティを持たなかった理由の一つは,地権者の合意が得られないことである。京都の都心部で商売をしている方は,自分の土地を担保にして,融資を受けている。金融機関は,事業の評価に基づいて融資するのではなく,土地の担保価値に基づいて融資するので,土地の資産価値を変えるような制度変更は難しかった。
・しかし,近年の地価の下落や産業構造の変化のなかで,ダウンゾーニング的な手法は,にわかにリアリティが高まっているといえる。
・一方,地域住民が自分たちのまちを自分たちで管理運営していこうというまちづくりの気運が高まり,また,こうした力をうまく活かした持続可能なまちづくりの必要性も高まっている。こうした動きを考慮すると,単純に規制を強化する方法が望ましいとは限らないという議論も行われるようになった。
・単純なダウンゾーニングが,必ずしもまちづくりに貢献するということにはならない。もう少しそこにいろんな議論が必要なのではないかと言われ始めている。
・一方で時間がないという状況もあり,放置しておくのが一番まずいという側面もある。
・この審議会では,論点が定まらない議論をするのではなく,できるだけ論点をはっきりさせて,ある期間内にきちんとした結論を出して,何らかの施策を実際に講じることが重要である。
○地域共生の土地利用検討会の取組の紹介
 (省略)
○価値共有型規制・誘導システムについて
・この問題は,新しい建物と周辺の家との間で,日影がどのくらいあるのかとか,風がどうなるのかといった相隣問題や,権利の調整だけで解決できる問題ではない。まち全体の価値に新しい建物がどのように寄与するのかを考えなくてはならない。
・利害の調整だけをいくらやってもまちづくりにはならない。価値共有の重要性に,どこかの段階で参加者が気づく必要がある。まちは私的空間の集まりであるだけではなく,それ自体がひとつの公共空間であるという認識が必要である。
・今までの考え方は,押さえるのをどこまで緩和するのかとか,どこまで強化するかとかという話であった。
・どういうまちをつくっていくのか,という議論を立場の違う価値観の違う関係者が集まって議論をし,価値の共有を図る。こういう話し合いが必要不可欠である。
・価値共有のまちづくりが可能となる条件整備としての規制・誘導システムが必要。
・導かれるべき具体的な形態は,まちの文脈の中で結果として決まるものであって,むし                      ろ話し合いのシステムをどこまでつくれるかということが大事。
・今の法規制のままでは,この話し合いが成り立たない。
・その条件をつくるために,何らかの法的・技術的制御,あるいは経済的制御をすると         いうことが必要となる。
・価値共有と地域エゴは区別されるべきである。自分のところには中高層が建つが,隣の  まちは低層のまちなみを残したいと考えているときに,それをどう評価するかという視点がなければ,地域のまちづくりは,成り立たない。話し合いにはより広域的な視点からの公共性が必要。
○コミュニティ・エンパワーメント・プログラムについて
・新たに建つ建築に対する規制・誘導だけではなく,地域のまちづくりをもっと強力に支援するコミュニティ・エンパワーメント・プログラムが必要。
・地域のまちづくりを活性化させる,すなわちコミュニティをエンパワーメントするという動きをつくることを目的として,人的,経済的,情報的支援を考える必要がある。
・価値共有型規制誘導システムとコミュニティエンパワーメントプログラムを,車の両輪と考え,同時に実現することが重要である。

(6) 審議

(委員)
○行政の力で,保全すべき町家ばかり集めたような通りを創ってはどうか。
○かといって,博物館のような生活感の無い町になるのは避けるべき。

(委員)
○時間をかけて地域と事業者が調整を進めてきたアーバネックスの隣の敷地では,利害調整ができなかったマンションが建設中であり,そのあたりにスピードの問題がある。

(委員)
○地域共生の土地利用検討会の意義は,住民や事業者などがまちづくりについての議論をすることで,今まで見えなかった価値が浮かび上がってくる点にある。
○相隣関係や,保証の問題を議論するのではなくて,どういうマンションを建てれば,まちと共存できるのか,地域のまちづくりに役立つのかといった議論が重要。
○従来は,住民と事業者がそういうことを議論する場がなかった,あるいは,そういう話し合いがもてる基礎的な条件が欠けていた点が問題。
○住民の方に十分なパワーなり情報がないところが多いため,地域の中でそういう議論が出るように,いろんな角度からの応援が必要。
○そういったコミュニティのエンパワーメントプログラムと規制誘導策をセットで機能させる必要がある。

(委員)
○議論の前提として,まちがきれいになるだけでなく,まちが継続して繁栄していくことが重要。
○子供の姿を全く見かけないようなまちで,継続的な発展が望めるのか疑問。
○町内を越えて,学区や通り単位等を対象として,用途地域と違うゾーニングを考える必要がある。
○今ある良質の木造建築(町家等)を改修したり,建てていける法的なバックアップが必要。(残すべき対象として論議されている木造建築が違反建築物で,もう少し何とか小規模な物にしていきたいという大型のマンション等が合法的な建物である,という事実をもっと切実に認識することが必要)
○さらに,防災面等について,法的規制以外にもソフト面での対応が必要。
○都市としての財産の共有が成っていくようなシステムが必要
○ソフトな面で手当をするということは,早急にできるのでは。

(委員)
○地域のまとまりの単位としては,まずは町内会であり,まだまだ強いつながりがある。
○マンションができれば,町内会費が潤うといった構図もある。
○口は出さずとも金を出せばOKという考え方は問題で,マンションの住民も地域の行事に積極的に参加できる町内会であるべき。
○地域全体で意識をもっと高めてもらう運動などが必要。

(委員)
○マンションによっては,町内会費を払わないことを条件にしているものがあり,その過半数は法人が建てるマンションである。
○開発負担金は理想であるが,実状は町内会費ですら購入者にとって経済的な抵抗になっている。

(委員)
○宗田委員の提案について
・高層をはずして中低層に限定すれば,まちなみの保全・再生に結びつくのか。
○リム委員の提案について
・税金の効果として,投資の抑制と合わせて考える必要がある。
・乱開発がどんどん進んでしまって100億お金があるけどどうするの,ということも起こり得る。
・開発の形で税金を取るのか,住んでいる方に,利用税,固定資産税のようなものを毎年とるのか,いろんな考え方がある。
・お金があれば解決するのか,ということは見極めたい。お金の問題じゃないというのであれば,そこに議論をもっていっても仕方がない。
○高田委員の提案について
・コミュニティの力,価値を共有するプロセスが大事だという場合に,そのテーブルにつかせて,そのテーブルの中でしか問題を解決できないような状況をどうやってつくりだすのかが問題。
・そのプロセスは,場合によってはラジカルな形をとってしまって,地域の雰囲気がよけいギスギスするような事すらあり得る。

(委員)
○まちなみありきではなく,市民生活が活性化しているまちなみをつくる視点で考える必要がある。
○居住空間だけをつくっただけでは,単なる住宅都市になり,それでまちは活性化しない。
○たくさんの人が訪れて,そこを歩くことが楽しい,そこを訪れることも楽しい,そこで生活している人も楽しい。そういう視点が必要。

(委員)
○景観やコミュニティの協調・調和に向けて中低層の住宅を誘導するということは非常に長い手続きを要し,ダウンゾーニングはその中低層を誘導するための最初の一歩にすぎない。
○町家を保全できるのか,良好な景観形成につながるのか,ということに関しては,次の手が必要。
○400%商業地域,あるいは31mというのは,すでに市民合意ではなく,容積率300%,高度地区20mという点においては,合意が達成できると考えられる。
○低層主体のまちなみの実現に向けては,さらに景観規制を厳しくすべきであるが,そこにいくにはまだまだ市民合意が困難である。
○当面は,ソフトな対応で町家を生かしたまちづくりを進めて,その方が京都の経済性にとって有利に働くということが認知された段階で,さらに厳しい規制強化が可能となる。

(委員)
○お金の問題で京都のまちなみが,100%解決されるとは思わないが,これまでに,お金の問題があまりにもなさ過ぎたということは,事実。
○地域協働型のまちづくりを進める上で,それに対する経済支援があれば,一気に住民のモチベーションは高まるはず。
○投資の抑制効果については,容積率300%あるいは200%のどこかで線を引いて,それ以上の投資を抑制するとなれば,自動的にダウンゾーニングが実現する。

(委員)
○町家vsマンションという構図ではない。
○都心のマンションに住むということは,歴史的・文化的な資源がたくさんある特定の場所に住むということであるが,そうした固有名詞の資源を十分に理解し,あるいは評価している人が入ってきている訳ではない。多くは,デジタル情報で評価できる立地,価格,住戸規模だけに惹かれて入居しているのである。
○その原因の一つは,地域の固有名詞の情報が全然発信されていないことである。
○職住共存地区の中でも性格の違うところがいろいろある。例えば,ある町では,固有名詞で呼べる場所で,固有名詞の誰々さんが固有名詞でよべる活動やっておられる。その場所や人や活動に関わって生活したい人が新たに入居してくるという仕組みが作れないだろうか。
○そういう歴史的・文化的資源を活かした生活ができて初めて京都に住む価値がある。
○現実には,別の情報で市場が形成され,文化の継承,発展の担い手にはならないマンシ   
ョン居住者が入ってきて,旧町内の住民とも必ずしもコミュニケーションがうまく取れない状況が続いている。
○旧町内の住民がむしろ元気になって,歴史的,文化的資源を活かしたまちづくりをして    
いこうという動きが必要。
○そこに何らかの形で魅力を感じるという人たちが,もう少し京都の都心部のマンションに住むようになれば,町家vsマンションという図式ではない望ましい関係が生まれる。
○町家を残すのが目的ではなくて,今のようなまちづくりの仕組みを育てていくことが大事。そうすれば,必然的に町家は保全される。
○レベル1・2・3について
・例えば,高さが15mあるいは20m(レベル3)を超える建築を建てるときには,関係者がルールに従って協議し,まちづくりの文脈に合致した建築の企画をつくる条件を整える。もし,そうした協議が行われなければ高さは15mあるいは20mに制限される。
・きちっと話し合いをすれば,絶対的規制である容積率400%(レベル1)以下で合意が形成され,形態が定まり,結果として高さ(たとえば25m)とか容積(たとえば250%)とかが決まる(レベル2)。
○いわゆる単純な規制強化だけだと,今まであった規制をさらに強めてそれ以上のことは何もできないということになる。
○地域資源を活かした建物をつくるためには,地域の人がいい建築をつくるために,事業者は地域のために汗をかかないといけない。お互いに汗をかいて,合意を形成していくプロセスが重要。

(委員)
○今日の作業部会の先生からの提案をごく簡単にまとめると,以下の3つになる。
・土地利用規制をダウンゾーニングという形で強化する。
・新しいまちなみ税のようなものをつくる。
・価値を共有するような市民運動といったものが活発化するような制度をつくる。
○ある程度創っていきたい目標像は漠然とはしているものの,そんなにはテーマが違うということはないように思われる。
○マンションの中低層は,やむを得ない,それは残す。
○一方で,にぎわいがあり,持続可能なまちなみをつくっていきたいということで,全部町家にしようということもないし,高層マンションを許そうということでもない。
○ここで提案する我々の審議会が,どういう結論になるのかは分からないが,別に一つの方法を提案する必要はないわけで,パッケージで2つでも3つでもセットで方法をつくっていってもいい。
○栗山委員の発言のように,例えば町家そのものを再生するのに,防災上のことが可能になるようなもっときめ細やかなソフトなプログラム等についても検討が必要ではないか。
○マンションをつくるのであれば,どういうマンションをつくっていけばいいのか。あるいは町家の改造の仕方とか,そのようなきめの細かさも短期的には有効に思われる。

3 次回の日程調整

4 閉会

お問い合わせ先

京都市 都市計画局まち再生・創造推進室

電話:075-222-3503

ファックス:075-222-3478

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