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門川市長記者会見(2018年7月4日)

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2018年7月30日

市長記者会見(2018年7月4日)

「平成29年 京都観光総合調査」について

 本日は,私から,「平成29年の京都観光総合調査」について御報告いたします。京都市では,これまでから,日本が誇るべき伝統文化や地場産業を守り,未来へつないでいくため,観光の「質」を高めることで「量」を確保するという考えの下,観光客の皆様に感動していただく取組を実施してまいりました。そして,これらを市民の皆様の豊かさにつなげるため,「観光消費額」等を目標に設定しております。

 一昨年,観光消費額は,平成25年の目標設定時から,わずか3年間で7,002億円から,55%増,3,860億円の増加を記録し,「京都観光振興計画2020」に掲げた目標である1兆円の大台を,4年前倒しで達成しました。これは,市民ぐるみで同計画に掲げた191の事業のうち189の事業にスピード感を持って取り組み,伝統産業,地場産業の振興,後継者の育成と活性化,市民生活の豊かさにつなげてきた結果です。これらの取組の結果,イギリス旅行誌「ワンダーラスト」等でもベストシティ部門で,2年連続で第1位に選ばれるなど,世界からも高い評価を得ております。特に昨年は,2位の都市と大差をつけての1位でありました。

 本年5月には,市民生活と観光との調和を最優先に,また,市民や中小企業の皆様に,より豊かさを感じていただけるよう,既存の計画に27の事業を追加した「京都観光振興計画2020+1」を作成したところであり,合計で218の事業に取り組んでまいります。あらゆる政策を総動員して,この計画に掲げた,観光消費額1兆3千億円の高みを目指してまいります。1兆3千億円。平成25年比で85%増と,非常に高いハードルと認識していますが,高い目標であるからこそ,意味があると考えています。数字を示すと,違和感を持たれる方がおられるかもしれませんが,京都の伝統産業製品,おもてなし等は,宮廷文化からの流れを受けるものもあり,手間ひま,お金が掛かります。伝統産業や伝統文化に繋がる観光にしていくためにも,観光消費額1兆3千億円という目標を掲げました。

 この目標を達成するために,さらに京都観光の「質」を高めてまいります。質の高まりをあらわす一つが,観光客の満足度。満足度向上のため,「おもてなし」に更に磨きを掛けていきます。さて,京都観光総合調査は,観光の質と都市格の向上,観光客の満足度を高めることを目的に,内容を充実させながら,昭和33年から60年間もの長きにわたり実施してきたものです。トータルで,日本人4,000人,外国人1,600人を対象として,四つの季節ごとに大規模なアンケート調査を全国に先駆けて実施してまいりました。これにより,観光客の皆様の不満などをきちんとお聴きし,一つひとつ解消し,満足・感動していただけるように,そして,京都の強みをさらに伸ばせるよう,取り組んでまいりました。

 平成29年調査のポイントは,「観光消費額」や「宿泊客数」が大きく伸びている点です。日帰りから宿泊,1泊から2泊へとできるだけ長く,京都でお過ごしいただく「泊まってこそ京都」の理念が浸透してきました。

これは,長年にわたる,オール京都での地道な努力が着実に成果として表れてきた。このように感じております。

 それでは,調査結果の主な内容について御報告いたします。「観光消費額」が2年連続で1兆円の大台を突破し,過去最高となる1兆1,268億円となりました。「観光振興計画2020」策定時の平成25年と比較すると,60.9%,4,266億円増加しております。図表2の消費額規模ですが,この観光消費額1兆1,268億円は,約78万人分の市民の年間消費支出額に相当します。京都市の人口の約53%に相当し,観光が京都の経済に大きく寄与していることが分かります。また,今回初めて,外国人観光客の消費額を算出しました。その結果,外国人観光客は全体の観光客数に占める割合が約14%程度にも関わらず,消費額では全体の約4分の1を占めることが分かりました。外国人観光客の消費も,京都経済に大きく寄与していることがお分かりいただけると思います。一方,日本人観光客の消費額単価につきましては,前年よりも減少しました。これは,昨年,宿泊施設が充実したことなどにより,平成28年に1,600円上昇した宿泊代の単価が,平成27年に近い数字に落ち着いてきたことが要因の一つであると分析しております。このことは,「京都に泊まりたくても泊まれない」状況が改善されつつあるとともに,観光客の多様なニーズにもお応えできるようになってきたことの表れと考えております。後程詳しく御説明しますが,平成29年の宿泊客数は日本人,外国人共に増加しております。

 都市格の向上やブランド向上につながり,地元への経済効果の高いMICEも順調です。図表4の国際会議の開催件数ですが,300件の大台を突破し,過去最高の308件と,前年から30件増加しました。これまでの誘致活動が実を結び,昨年は,平成31年の国連世界観光機関と国連教育科学文化機関(ユネスコ)主催による「第4回観光と文化をテーマにした国際会議」の日本初開催が決定したほか,平成32年の「国連犯罪防止・刑事司法会議」の開催が決定するなど,多数の大型国際会議の京都への誘致が成功しております。また,来年は「ICOM(世界博物館会議)」が日本で初めて開催されるほか,「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の国内候補地にも決定しております。引き続き,MICE誘致施策を充実させるとともに,京都の認知度及びMICE都市としてのブランド価値を向上させ,新たな国際会議の誘致につなげてまいります。

 宿泊観光は,観光客の滞在時間を伸ばすことで,日本文化の神髄ともいえる伝統文化や伝統産業,食文化に触れ,感動いただく機会の創出につながります。そして,伝統産業や地場産業の振興,後継者の育成と活性化,市民の皆様の豊かさにつながってまいります。宿泊施設の拡充・誘致や,朝観光・夜観光の取組により,平成29年の宿泊客数は過去最高を大きく更新しました。平均宿泊日数や,全体の観光客数に占める,宿泊客の比率も上昇しています。外国人宿泊客数も,過去最高を更新し,平均宿泊日数も2泊を超えました。「京都」ブランドが世界で認知されていることを実感いたします。「京都観光振興計画2020」に掲げた,「外国人宿泊客数300万人」は,平成25年の113万人から約3倍となる大胆な目標で,当時,周りからは不可能だと言われました。しかし,最初から達成できると思われる目標は目標とは言えない。市民,事業者の皆様の御理解と御協力のもと熱意溢れる職員の力を結集すれば必ず実現できると,私は確信しておりました。その結果,平成27年に目標を5年前倒しで達成し,平成29年は計画策定時から240万人も増加し,353万人となっております。

今後,この効果を観光業界のみならず,広くまちの活力アップにつなげるため,引き続き,「観光振興計画2020+1」に掲げた延べ宿泊客数の着実な増加や,旅館の経営支援や魅力発信などに取り組み,宿泊観光の推進に努めてまいります。一方で,無許可民泊施設の稼働率を30%として推計しますと,平成29年の宿泊者数は,依然として前年と同程度の110万人程度になります。違法民泊を根絶する,同時に民泊を良質な宿泊施設として活かしていく。こうしたことが大事だと思っています。そのため,全国初となる「民泊通報・相談窓口」をいち早く開設し,警察とも連携して「「民泊」対策等連絡協議会」を立ち上げるなど,地域の御協力を得て,市民の不安解消に取り組んでまいりました。また,観光庁には,ウェブサイトに掲載されている届出のない民泊の削除を求めております。本年4月からは,民泊対策の専従職員を41名体制に強化したほか,「民泊通報・相談窓口」の体制強化など,「違法民泊を許さない」という決意のもと違法・不適切な民泊への指導強化を進めているところです。

 修学旅行生数につきましては,宿泊施設の皆様,観光業界の皆様と連携して取り組み,全国の修学旅行対象生徒数が1.8%,6万1千人減少する中,昨年よりも1.9%,2万1千人増加しております。修学旅行生は一時,93万8千人まで減少しましたが,宿泊関連業界や様々な市民団体と一緒になって,修学旅行生の誘致に取り組んでまいりました。例えば,修学旅行生のアレルギー対策等です。全国に先駆けて,その対策に取り組み,学校関係者に安心していただいております。あくまで推計でありますが,近郊を除いて,大半の生徒が,小学校,中学校,高校のいずれかの段階で京都に修学旅行に来られていると考えております。修学旅行生は,日本の未来を担う児童・生徒。日本の心や精神文化,歴史を京都で学ぶ機会を通じて,将来にわたって京都ファンとして,愛着をもっていただける大切なお客様です。今後もより一層の誘致に努めてまいります。

 観光客数は5,362万人となりました。図表7の内訳を見ますと,京都を訪れる外国人観光客数は743万人と増加傾向にあり,宿泊客についても大幅に増加していますが,日本人,特に近畿圏からの日帰りの観光客が減少しております。この要因としては,京都縦貫道の開通など,近年の近畿圏内の交通アクセスの改善に加え,京都府域や関西の他地域との連携により,広域観光が広がってきたことなどが考えられます。満足度については,日本人,外国人ともに9割以上の方に満足と回答いただいております。個別にみていきますと,日本人観光客の混雑に対する残念度,外国人観光客の公共交通への残念度が増加した一方,日本人,外国人ともに,京都の「人」のおもてなしに触れ,感動された方の割合が増加しました。これらは,京都観光に携わる,市民や事業者の皆様のおもてなしの心が評価されたことの表れであり,感謝するとともに,一緒に喜び合いたいと思います。さらに,これまで京都の奥深い魅力,すなわち伝統文化や伝統芸能,歴史に関する魅力の発信に注力してきた結果,日本人観光客の文化体験をされた方が増加。また,外国人観光客の歴史,伝統文化への感動度が年々上昇しております。京都の歴史や伝統文化への関心や評価が高まり,京都の魅力が着実に届きつつある手応えを感じます。

 今回の調査結果を踏まえ,市民生活と観光との調和を大前提として,今後の方向性を5つに絞って御説明します。1つ目は,文化を基軸とした観光の推進による「文化と観光と経済の融合」の取組です。「文化」は,京都,いや日本の魅力の源泉であります。伝統文化や伝統産業をはじめ,暮らしの中にある「たしなみ」や「しきたり」など,大切に受け継がれてきた日本の文化が,ここ京都には息づいています。この「文化」を基軸として,ストーリー性を持って,京都を訪れるお客様に語りかける必要があります。これまでから,京都市認定通訳ガイドを育成。認定通訳ガイドが迎賓館や二条城,京都の古い街並みが残る地域,商店街等といった場に秘められた,京都の歴史や匠の技を紹介する着地型ツアーを実施し好評を博しています。また,京都の文化遺産を地域性,歴史性,物語性を持って認定する,「京都遺産制度」など,文化や文化遺産の魅力を,より多くの方にお伝えする取組を進めております。特に,最近では地蔵盆に興味をもたれる外国人の方もおられます。さらに,京都御所においては事前申し込みを必要としない,通年一般公開が開始されたほか,桂離宮や修学院離宮,仙洞御所では,当日受付枠の拡充などが行われております。今後この動きを強化し,文化庁や観光庁をはじめ,伝統産業業界,文化団体,大学等との連携を更に深め,知られざる魅力を観光客の皆様にお届けしていきます。そして,その価値を体感いただいた国内外の方々が,理解と愛着を深め,ファンになられることで,伝統芸能や文化財の保護,伝統産業の振興につなげてまいります。また,「ICOM(世界博物館会議)」の開催も文化を基軸とした観光の大きなきっかけとなると考えております。パリでは,美術館や博物館は観光スポットの大きな一つでありますが,京都ではまだ,美術館や博物館と観光の融合が十分ではないと感じております。

 2つ目は,宿泊日数や消費額単価の増加など,「観光の質の向上を市民生活の豊かさにつなげる」取組です。観光客の皆様の満足度を向上させるとともに,消費額単価の向上,多様な地域の活性化につなげていきます。日本文化を五感で感じることのできる旅館の魅力の世界への発信,京の食文化やナイトライフの情報発信,観光施設や商業施設におけるキャッシュレス化の支援など,観光の効果を地域に波及させる取組を強力に進めてまいります。

 3つ目は,分散化・混雑緩和,民泊対策の強化,マナー啓発などの「市民と観光客の安心・安全の確保,市域全体への観光客の誘客」を目指す取組の推進です。市民生活と観光との調和を最優先に,公共交通の混雑緩和,違法・不適切な民泊への指導強化,マナー啓発など,観光客と市民の皆様の安心・安全の確保,満足度の向上を徹底的に図ってまいります。公共交通の混雑については,市バスから地下鉄への誘導を図るため,「バス一日券」を500円から600円に値上げするとともに,「地下鉄・バス一日券」を1200円から900円に大幅値下げしたほか,市バスの「前乗り後降り」方式を本格的に導入します。私鉄,JR,地下鉄含め市内の主な路線が乗り放題となるお得な乗車券の利用促進など,民間事業者の皆様とも連携を進めてまいります。加えて,観光地の混雑は,特定の季節・時間・場所の3つの集中を緩和する取組が必要です。季節の集中については,「京の七夕」や「花灯路」などが功を奏し,月別観光客数の繁閑差がピーク時の3.6倍から1.5倍になるなど,成果がでています。時間の集中については,引き続き「朝観光」,「夜観光」の奥深い魅力の情報発信,新たな観光コンテンツの発掘,創造に努めてまいります。一方,エリアの集中については,SNS等の影響もあり,悪化していると思います。大原三千院や高雄の観光客数は,最盛期の3分の1程度であります。また,嵐山は混んでいますが,一昔前まで観光客でいっぱいだった奥嵯峨が今は閑散としています。要因の分析等に取り組んでいかなければならないと思います。しかし,嬉しいことに大原三千院がトリップアドバイザーにおいて,外国人観光客の人気観光地のトップ30位に選ばれました。情報発信等に取り組めば,それが広がって成果が表れると改めて実感しております。京都市内全域に存在する魅力的な観光資源や,隠れた名所を発掘・活用するなど,京都観光の新たな魅力を紹介し,お客様の関心が,様々なエリアに向かうような工夫が不可欠です。市内全域において,地域や民間事業者と連携した取組を推進するため,「とっておきの京都~定番のその先へ~」プロジェクトを始動いたします。このプロジェクトでは,例えば,伏見稲荷大社にお越しになる観光客に周辺地域を回遊していただくためのプロモーションや,大原,高雄地域におけるプロモーション,さらには,山科や西京など,まだまだ観光客に知られていないエリアにおいて,観光コンテンツの開発等を支援してまいります。

 4つ目は,ウェブサイトや公共交通などの,「多言語情報の充実による観光客の満足度向上,情報発信強化」の取組です。これまで申し上げてきた市民生活と観光との調和や宿泊日数の増加,観光を通じた文化・経済振興を推進するには,観光客の皆様にしっかりと情報を伝えていくことが必要です。日本全体の訪日外国人は,約85%がアジアからのお客様です。一方,京都市の外国人宿泊客は,アジアは全体の6割にも満たず,欧米やオセアニアからの割合が33%と,高い数値となっています。このことから,ウェブサイト等における観光コンテンツ,公共交通などの情報を英語や中国語のみならず,フランス語やスペイン語などでも,分かりやすく発信し,利便性を向上させる必要があります。ちなみに,姉妹都市と観光客数の関係においては,これまで,パリ市とは,平成25年の友情盟約締結55周年記念事業をはじめとする,様々な交流を進めてきました。その結果,平成29年のフランスからの観光客数は11万5千人と,5年間で約4倍になっております。また,フィレンツェとは,平成27年に姉妹都市50周年等,交流を深めてきた結果,平成29年の観光客数は8万4千人となり,3年間で約2.5倍に増えています。都市間交流,文化交流がいかに大きな役割を果たしているかを実感するとともに,そのような都市も含め,世界に対して多言語による情報発信をしていくことが重要であると思っております。具体的には,ウェブサイトにおいて,外国人観光客がストレスなく,イベントチケットの手配やレストランの予約を行えるようにするなど,満足度を高めてまいります。また,ウェブサイトやソーシャルメディアが観光の情報源となる中,観光コンテンツの充実を含めた多言語ウェブサイトの大幅なリニューアルを行い,海外向け発信を強化してまいります。 

 5つ目は,持続可能な観光に向けた「京都観光推進体制の強化と担い手育成」の取組です。今年,京都市観光協会がDMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)として本格的に活動を開始しました。観光客の分散化などの政策課題への対応をはじめ,地域の稼ぐ力を伸ばすための事業者支援など,持続可能な観光の中核を担います。この体制強化を,京都市もしっかりと支援してまいります。また,近年,観光業界は担い手不足に悩まされておりますが,この現場で働く方々こそ,これからの京都観光を支え,京都が観光面で輝き続けるために最も重要です。担い手が育成され,京都観光が発展することで,市民の暮らしが豊かになる。そのために,企業間の協業促進やベンチャー支援にも取り組んでまいります。また,平成24年から6年間にわたり,京都大学と連携し,「観光経営学講座」を開講してまいりましたが,その成果が実り,本年から京都大学経営管理大学院に「観光MBAコース」が設立されました。こうした観光関連の教育を行う大学との連携も図り,担い手の育成を強化していきます。

 京都市では,宿泊業界,市民,観光客の皆様からの御理解をいただき,本年10月に宿泊税を導入します。この財源を活用し,住んでいる方も訪れた方も,双方にとってより良いまちづくりを推進し,「持続可能で満足度の高い国際文化観光都市」を実現してまいります。

 また,観光は広域的な連携が何よりも重要であります。京都府下や関西,全国の様々な地域とも連携しながら,「観光立国・日本」を京都市がけん引していきます。観光は人々との交流を生み,まちに活力をもたらします。そこから,新たな文化が生まれ,世界の平和につながる。京都市の最高理念,「世界文化自由都市」の姿であります。観光を通じて,京都から日本,そして世界を元気にする取組を引き続き進めてまいります。

質疑応答

報告案件に関する質疑

記者

 宿泊客数が1,500万人を超え,宿泊客延べ人数も前年度比で2ケタ増を記録しましたが,この数字についてまだ伸びる余地はあるのでしょうか。

市長

 宿泊延べ人数は着実に伸びてきたと思っています。世界を視野に入れて観光の取組をされている方が,「京都は宿泊施設が足りず,予約もとれないというのが世界の常識になっている」と仰っておりました。2020年の4月の国際司法会議の京都開催誘致についても,世界各国から最高裁の長官や法務大臣が来られて対応できるのだろうかとためらいもありました。そんな状況を改善するためにも,宿泊施設の充実に取り組んでまいりました。

 京都に泊まりたいと思っている方は,潜在的にはまだまだいらっしゃると思いますので,上質な宿泊施設の充実を引き続き,強化していきたいと考えています。

 

記者

 混雑などによる残念度の伸びについてはどうお考えですか?

市長

 数値的に激増しているものではありませんが,混雑緩和に向けた取組はしっかりと進めていかなければならないと思っています。例えば,特定の寺院については,混雑していると報道されていますが,相国寺,大徳寺,三千院や市内の中心部の寺でもまだ観光客が少なく静かな所はあります。最初は有名な社寺に行かれて,2回目以降に静かな社寺に行かれるというのが,日本人の京都観光の姿と言われています。そのため,最初に行かれた社寺等が混雑していることで,京都は混雑しているという印象になっています。その誤解を解いていきたいと思っています。

 SNSの影響等により,混雑していない素晴らしい所があるにもかかわらず,近くの便利な所に行かれたり,もしくは行列のできる店などは,その行列が売りとなってさらに行列になるという傾向があると思います。それらをしっかりと打破していきたいと思っています。その一番良い例が,季節の集中を打破できたことです。

 京都観光といえば,桜か紅葉が主流でした。これが変わり,冬でも夏でも素晴らしい観光ができるということで,月別の繁閑差も縮まってきております。時期,時間,場所をずらして,ゆっくり京都の奥深い魅力を楽しみにお越しいただければと思っています。

 

記者

 エリアの集中の分散については,どのように取り組まれますか。

市長

 一昔前は定番であった所も今は空いています。嵯峨にお住いの方が,「自分の近所が空いていて,渡月橋には人がいっぱいいる。一昔前は嵐山や天龍寺よりも奥嵯峨の方が観光客は多かった。」と仰っていました。こういったことの分析にしっかりと取り組んでいきたいです。

 左京区の久多では,農家民宿に泊まれるといった魅力もありますし,そういった部分を発信していきたいです。また,多言語対応をはじめとする,様々な条件をクリアしていくことが大事だと思います。

 

記者

 観光客が増えることによる市民生活への影響についてはどうお考えですか。

市長

 市民生活と観光との調和を第一に考えています。その最大のテーマの一つが違法民泊の根絶です。京都市の条例は非常に厳しいという意見もありますが,全国に先駆けてあらゆる取組をし,国の制度に対しても一定影響を与えてきたと思っています。警察の方々や関係機関とも違法民泊のパトロールを実施するなど,次々と違法民泊を締め出しています。この違法民泊を根絶する勝負の時だと思い,徹底していきたいです。

 

記者

 今回の調査結果の中で市長の一番のポイントは何でしょうか。

市長

 宿泊客数の増加です。「泊まってこそ京都。」日帰りでは,本当の魅力を感じていただけないと思います。そういった部分をこの間ずっと取り組んできました。そのことが,観光消費額の上昇や市民の豊かさにもつながると思っています。

 

記者

 京都府下や関西など広域的な連携が大事であるということですが,宿泊客数と観光消費額が京都府全体で言うと京都市の割合がかなり多いように思います。京都市の立場としてはどうお考えですか?

市長

 京都府下全域とも連携していますし,奈良,大津,あるいは,石川や北海道とも連携してきました。例えば,オセアニアからの観光客の急増加について,これは約10年前に,オセアニアで芸舞妓さんが日本の文化,京都の文化と北海道のスキーなどを紹介する取組をしました。その後,京都,北海道に宿泊されるオーストラリアの方が10倍以上になりました。このように,マッチングするということも大事です。したがって,しっかりと広域的な連携をしていきたいです。

 先日,東京の経済同友会と話をした際に「舞鶴市長だったらどうされますか?」というおもしろい質問を受けました。舞鶴には京都にないものがあります。例えば,今まで道路がなかったため,京都には舞鶴市のお魚が中央市場に入らず,築地か大阪に行っています。しかし,道路ができることで,舞鶴のお魚を京都にどんどん送り,このおいしさを京都市民や京都にお越しの観光客に再認識していただき,舞鶴に行く。このようにお互いに連携して取り組めることもあると思いますし,しっかりと取り組んでいきたいです。

 

記者

 宿泊客数が伸びる一方で,日帰り客数や観光客数全体が減少したことについて,問題視するのか,それとも問題ないと考えるのか,いかがでしょうか。

市長

 問題があるかないかという捉え方は適切でないと思います。我々は,数を求めるのではなく,質を高めていき,質の高まりを数の維持向上に活かそうと考えています。正直,数だけ目標にしている時代もありましたが,どんどん安価にして数を誘致すると,そこで働いている正規職員がリストラされ非正規職員にとって代わり,そして,質が落ちてしまうということが起こります。一時期,京都への修学旅行生の数は93万8千人まで減りましたが,京都はディスカウントはせずに,質を高めることでだんだんと戻ってきました。

 そのように,決して数にこだわらないわけではないですが,やはり質を高め,特に宿泊観光を重視していくことが正しいと思っています。

 例えば,山科,高雄,大原には観光客が非常に少ないです。こういった地域について,京都市内における広域観光ということで,一部の集中を是正して,たくさん来てほしいと思います。山科観光では,経済同友会などが地域の団体と一緒に東京まで行き「山科におこしやす」とPRをされていますので,そうした取組をしっかりと進めていきたいと思っています。

 

 

 

報告案件以外に関する質疑

(受動喫煙の対策について)

記者

 受動喫煙の対策について,国会で検討している法案では,小規模飲食店は受動喫煙禁止の例外という内容ですが,東京都の条例では,さらに規制を強化して,飲食店は原則屋内禁煙という内容になっています。

 市長としてこの法案をどう評価していて,その上で京都市でも東京都のような上乗せ規制というのを検討されているのでしょうか。

市長

 大切な課題です。健康増進のために,受動喫煙を防止する。京都にとっても大きなテーマで,旅館・ホテルはもとより,飲食店業界と一緒になって玄関に禁煙・分煙のステッカーを貼る取組を一生懸命進めています。条例で,一律的に規制するのではなく,そうした取組を市民ぐるみでやってきました。そして,今,健康増進法が審議され,近く制定され,新たな取組が国全体で始まります。 

 現在,2箇月ほどの調査期間で京都市内のすべての飲食店や,現時点で対象として明らかになっている学校,病院,児童福祉施設,バスやタクシー等旅客事業者に対してアンケート調査を行っています。調査結果を分析して,飲食業等関係する業界の代表ともしっかりと話合い,国の法案の行方にも注視し,取り組んでまいります。上乗せをするかどうかという議論まではまだいたっていません。

記者

 アンケートでは条例化の是非も聞いているのでしょうか。

市長

 そこまでは聞いていません。概ね2万件の飲食店が京都にはありますが,ステッカーの表示等がまだ20~30%ほどという状況であります。関心を高め,取り組んでいかなければならないという自覚を持っていただくこと,そして,そうした皆さんの意見を踏まえて京都市の取組を集約していきたいです。

記者

 そうすると,まずは国の法案が成立した時期を見据えて,法案の規制内容をよしとして検討していくということでしょうか。

市長

 それをベースにし,京都府とも調整しながら進めていきたいです。

 上乗せ規定をどうするかという議論よりもまず啓発,実態を把握し,それを集約した上で,法案の動きもしっかりと見ながら取り組んでいきたいです。

 

(木造住宅耐震改修助成の要件緩和について)

記者

 京都府では,大阪府北部地震で被害を受けた木造住宅向けに耐震改修助成の適用要件が緩和されることになりましたが,市長はどのようにお考えでしょうか。

市長

 事前に府市で協議もしており,今回被災された物件については,建築基準法改正(昭和56年)以降の建物も助成対象とすることで,府市一体となって取り組んでいきます。

 

(ブロック塀の撤去等について)

 大阪北部地震を受けて,市の施設のブロック塀の緊急点検をして補修が必要と判断されたものは原則撤去ということですが,通学路に面する私有地のブロック塀については,どのように取り扱うでしょうか?

市長

 まず,一級建築士を派遣する制度を発足させ,民間のブロック塀等についても診断し,撤去費用について助成する取組をただちに制度化しました。民間についても,行政が主体となって調べさせていただきます。例えば,民間の児童養護施設などにあるものも危ない場合があるので,まずは調べさせていただき,補助制度を活かして撤去していただきたいと思います。命にかかわる問題なので全力で取り組んでまいります。

記者

 民間に対しては,助成制度を利用して撤去するということを理解してもらうということでしょうか。

市長

 そのとおりであります。

 

(違法民泊への取組について)

記者

 民泊新法が施行されました。違法民泊の追跡がこれからさらに難しくなると思うが,今後どのように取り組まれていくのでしょうか。

市長

 旅館業法に基づく安全・衛生・防犯・防災の基準をクリアした宿泊施設,これが王道であります。住宅宿泊事業というのは,ホストがおられておもてなしをされる,これも本来の姿であります。現時点で,旅館業法に基づくゲストハウスや町家のような宿泊施設が増えていると同時に,民泊については,9割ぐらいがホストのおられるものです。京都市に問い合わせがある民泊についても,半分以上は家主居住型です。我々が求めた形に近いと現時点で思っております。

 だが,これからが課題であります。Airbnbだけで,3千件近い民泊の情報が掲載されており,違法なものも多数見受けられますので,国に対して厳しく追及しています。我々もネットを点検し,現状把握に努め,警察とも連携し,違法民泊を追及していきたいです。

 なお,Airbnbも,違法を承知して放置しているということではなく,手が回っていないという状況であるようですが,法治国家として許されない状態でありますので,厳しく追及してまいります。

 住宅宿泊事業ではなく,簡易宿所も含めて違法なものについては是正命令等を出しています。今回の法令を受けて,「『民泊』対策等連絡協議会」を発足させ,警察とも連携し,京都市に与えられたあらゆる権限を行使し,違法民泊の根絶に全力を挙げていきます。

 

記者会見資料

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